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Q10
もし日米同盟を解消したら、日本の防衛はどうなるのですか? A いままで述べたように、日米同盟を選ぶのなら集団的自衛権の行使は前提条件になります。でも、どうしても集団的自衛権を行使したくなければ、同盟を結ばず、武装中立国として生きていけばよいわけです。非武装中立が非現実的なことは明らかですから、「集団的自衛権の行使反対!」「米軍は日本から出ていけ!」と叫ぶ人たちは、日米同盟を解消し、個別的自衛権だけでやっていく、つまり武装中立を選ぶしか、日本の平和と安全に対して責任をとる道はないのです。 しかし、武装中立を実現するには莫大なコストがかかることを、覚悟する必要があります。そのコストを調べもせずに日米同盟の解消を叫ぶのは、無責任きわまりない話です。
2012年6月に出版された『コストを試算ー日米同盟解体国を守るのに、いくらかかるのか』(毎日新聞社)という本があります。著者は防衛大学校安全保障学研究会に所属する武田康裕、武藤功の両教授です。日本が日米同盟を解消したり、核武装に踏み切った場合のコストを緻密に試算しており、非常に妥当性を備えた内容となっています。 これまでの私の主張を、試算デー夕を示して学問的に裏づけてくれた本ともいえます。両教授の試算にそって、日米同盟をやめることのリアリティを吟味しましょう。 武田、武藤両教授は「日米同盟のコスト」を、①日米安保条約に基づき米軍の防衛協力を維持するために日本が負担する直接費用、②在日米軍基地を提供することで失う利益を勘案した間接費用の合計と見積もります。①は接受国支援(いわゆる思いやり予算)や基地対策費などで4374億円。②は米軍基地が別のものに置き換わる経済効果などで1兆3284億円。以上を足した約1兆7700億円が、日米同盟を維持するコストです(2012年の現行価格。以下同じ)。 次に、「自主防衛のコスト」を、③新たな装備調達に必要な直接費用と、④自主防衛によって失う利益を勘案した間接費用の合計と見積もります。③は空母機動部隊や戦闘機の取得など4兆2069億円。④は貿易縮小によるGDP縮小約7兆円や株・国債・為替の価格下落約12兆円など19兆8250億円〜2!兆3250億円。以上の③と④を足した約24兆〜25兆5000億円が、在日米軍がいない場合の自主防衛コストです。ちなみに、この計算には自衛隊員の人件費は含まれていません。 後者の自主防衛のコストから前者の日米同盟のコストを引けば、「日米同盟解体のコスト」がわかります。これを計算すると、年に22兆2661億円〜23兆7661億円になるというのです。これまで私は、日本が武装中立するには年に20兆円ほどが必要と発言してきましたから、両教授の試算結果とだいたい一致しています。 日米同盟ほど安上がりな安全保障はない
二人の教授の試算の段階とはいえ、日米同盟をやめてしまい、日本だけの力で日米同盟があったときと同じような平和と安全を維持していくには、このように毎年22兆〜23兆円もかかるのです。 当然ながら、単独で日本を防衛するためには一定規模の兵力も必要になります。 日本周辺国の兵力は、極東ロシア(陸上兵力8万人、海上兵力240隻・60万トン、航空兵力340機)、中国(陸上兵力160万人、海上兵力890隻・142万トン、航空兵力2580機)、北朝鮮(陸上兵力102万人、海上兵力650隻.10万トン、航空兵力600機)・韓国(陸上兵力男人、海上兵力190隻.20万トン、航空兵力620機)、台湾(陸上兵力20万人、海上兵力410隻・20万トン、航空兵力500機)といった規模なのです。 それに対して、自衛隊の定員24万人(陸海空)では、装備品の性能や質はともかく、人員の面からして、まるで足りません。国民皆兵を検討する必要も出てくるでしょう。 米軍が日本から出ていけば、米軍基地は公園か緑地にでもなると思っている能天気な人がいるようですが、そんなことはありえません。すべての在日米軍基地は自衛隊基地になるのです。しかも、自衛隊だけで高いレベルの平和と安全を実現するには、基地の数が足りません。沖縄にしても、島という島に自衛隊の基地をおくことになるでしょう。 それに、多くの人が忘れているのは、米軍が日本から出ていけば、アメリカからは敵性国家と見なされかねず、日米関係が極端に悪化する可能性です。日本は味方だった世界最強の米軍や、韓国軍にも備えなければならなくなるのです。 もちろん、核武装の検討も叫ばれるようになるでしょう。 しかし、核武装論者には「核兵器を持つだけですむから効果的で安上がり」と思っている人がいますが、核兵器の抑止効果は、自国の核兵器を敵国の攻撃や破壊活動から守ることができなければ生まれません。核兵器を守るには高度の通常戦力が必要ですから、決して安上がりにはなりません。 だいいち、日本が使用に耐えるレベルの核兵器を備えるまでの間、それまでのアメリカによる核抑止力に替わる抑止力をどのようにして手にしようというのでしょうか。日本の技術力をもってしても、一定水準の核兵器システムを実現するには10年は必要とみられています。その間、各国の干渉や妨害をはねのけながら開発を続けるには、国全体の安全を実現するための抑止力が必要だというのに、そのあたりの議論は見当たりません。 しかも、日本が核武装に踏み切れば、核拡散防止条約(NPT)を脱退し、核燃料供給に関する国際協定も破棄せざるをえず、原子力発電用のウランを輸入できなくなります。 いくらプルトニウムをため込んでいると言っても、それをエネルギー源とするには限界があることは明らかです。同時にさまざまな経済制裁を受け、経済・食料安全保障は大打撃を受けるでしょう。 いずれにせよ、日米同盟を解消し、米軍を追い出して、日本が個別的自衛権だけでやっていくというのは、まったくリアリティに欠ける妄想も同然の話です。それだけの負担に耐えられる国民性なら、戦後10年間くらいのうちに日本は軍事的自立を遂げていたとも言えるでしょう。 先に紹介した中国の習近平国家主席へのアメリカの警告を見てもわかるように、日本列島への攻撃には米軍が反撃するのは明らかですから、どの国もうかつに手を出すことはできません。その意味で、日本の安全はアメリカと同じレベルで、世界でもっとも安全な国の一つと言うことさえできるわけです。この安全が、年間4兆8000億円の防衛費プラスアルファで実現できているのですから、日本にとって日米同盟は最も安上がりで、費用対効果に優れた安全保障体制であることは間違いありません。 日本が備えるべき集団的白衛権モデル
いかがでしょうか。日本がすでに集団的自衛権を行使している状態にあることが、おわかりいただけたと思います。と言っても、日本はまだ憲法との整合性などの問題を、時間をかけて整理しなければならない段階にあります。それまでの間、なし崩し的に」線を越えてしまったり、必要以上に自己規制して国際社会の信頼を失うようなことがあってはなりません。 そこで、私は日本が備えるべき二通りの集団的自衛権に関するモデルを提示し、アメリ力政府との間で協議すべきだと主張してきました。むろん、両者を合わせてモデル化することも可能です。参考になれば幸いです。 日本が行使する集団的自衛権モデル1
日本列島はアメリカにとって唯一無二の戦略的根拠地であること、その在日米軍基地がおかれた日本列島を自衛隊で防衛していること、在日米軍経費の大半を負担していること、日本の防衛に直結する、例えば周辺事態の範囲内で米軍と武力行使をともにすること、これをもって、日本が既に集団的自衛権を行使しているものと認定し、足りない点については改善に努める。 日本が行使する集団的自衛権モデル2
国連憲章第51条(第2章を参照)にある「国連安全保障理事会が機能」した状態について、それがどのような状態かを日本として具体的に定義し、その安保理が機能する段階まで、例えば日本の防衛に直結する周辺事態の範囲内で米軍と武力行使をともにすることをもって、日本の集団的自衛権の行使と認定する。 もうおわかりと思いますが、1は日本列島の現状を集団的自衛権の行使とする考え方です。2は安倍内閣が集団的自衛権を説明するときに出してきた事例でも、断片的にではありますが、触れられています。 |

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