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Q36
集団的自衛権の行使「歯止め」が必要と言いますが、法律が歯止めになりますか? A 意外かも知れませんが、民主主義国家にとっては集団的自衛権こそ自分の国や、同盟関係にある国を軍事的に暴走させないための歯止めだというのが、少なくとも先進国の専門家の間では常識になっているのです。 日本政府が2014年7月1日に集団的自衛権の行使容認を閣議決定したとき、新聞には「歯止めをどうする」「歯止めがない」という見出しが踊りました。 たとえば東京新聞の見出しはこんな具合です。 〈戦争の歯止め、あいまい集団的自衛権安倍内閣が決定〉(7月2日付朝刊) 〈歯止め策懸念73%集団的自衛権54%反対〉(3日付朝刊) 第4章で指摘したマスコミの理解不足や誤報もあって、「自衛隊が海外で戦争をしかねない」とか「日本が望まない戦争に巻き込まれかねない」と思っている国民も少なくありません。マスコミの多くは、「歯止めがない」と政府を批判し、国民の不安を煽っているかのようです。 ドイツは個別的自衛権の行使を封じられてきた
ここでは、日本で語られてこなかった国際的な常識について押さえることから始めたいと思います。以下、日本では知られていないドイツの自衛権の実情について、同僚の西恭之氏(静岡県立大学グローバル地域センター特任助教)に貴重な助言をいただきましたので、紹介しておきます。 * 〈西ドイツが成立する直前の1949年4月、他の西欧10カ国とアメリカ、カナダは、北大西洋条約機構(NATO)を結成し、「個別的または集団的自衛権を行使して(略)攻撃を受けた締約国を援助する」と宣言しました。 その後6年間、NATO諸国と西ドイツは、ソ連を抑止するために必要な西ドイツの再軍備の実現と、ナチスの悪夢の再来とならないように西ドイツ政府に軍の作戦を指揮させないようにする、という相反する条件を両立させるために知恵を絞ることになりました。 その結果、各国が「西ドイツの自衛権は、NATO諸国が集団的自衛権を行使する中でのみ行使される」という条件について合意し、西ドイツがNATOに加盟してドイツ連邦軍が発足したのは1955年になってのことでした。 NATOはソ連軍の進攻に備えて、西ドイツ東部を南北に9分割して、西ドイツ、アメリカ、イギリス、オランダ、ベルギーの陸軍に防衛地域として割り当てました。有事には、アメリカ軍人であるヨーロッパ連合軍最高司令官が、NATO諸国の軍人からなる各級司令部を通じて、この全兵力を指揮する仕組みになっていました。 このように、冷戦期を通じてドイツ連邦軍の現役部隊全てがNATOの指揮系統に組み込まれていたので、西ドイツが個別的自衛権を単独で行使することは不可能だったのです。ドイツ統一のあと、ソ連軍(ロシア軍)がドイツから完全に撤退する1994年までの間、旧東ドイツ地域のドイツ連邦軍はNATOの指揮下ではなく、ドイツ独自の指揮系統のもとに置かれました。しかし、この一時期・一地域を除いて、ドイツは冷戦後も自国の軍を自国の安全だけのために使う形ではなく、集団安全保障によってヨーロッパ周辺と世界の平和の実現に参画しながら、個別的自衛権についても、民主主義諸国の集団的自衛権という歯止めのもとで、行使する仕組みを維持しているのです。〉 * 西恭之氏が述べているように、このドイツ再軍備に至る歴史によって明らかになるのは、西側諸国が二度の世界大戦から導いた貴重な教訓、すなわち、個別的自衛権よりも、民主国家の集団による自衛権のほうが濫用しにくく、武力行使に対する歯止めになるという教訓です。そうした思想のもと、西ドイツは個別的自衛権を単独で行使できない形でのみ、再軍備を認められ、今日に至っているのです。 日本の集団的自衛権と集団安全保障の議論は、このような西ドイツの事例に触れることなく進められてきました。いま一度、西ドイツの歩みを参考に、整理される必要があると思います。 |

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