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Q37
湾岸戦争のとき、日本はアメリカに引きずられる一方だったのでは? A
そう受け止めているのが日本人ですが実は湾岸戦争でも集団的自衛権はアメリカの単独行動を抑制したのです。 その現実は、当時のアメリカの国務長官ジェームズ・べーカーの回顧録『シャトル外交激動の四年」(邦訳は新潮文庫)を読めば明らかです。 べーカーは、湾岸戦争に向かって危機が深まるなか、同盟国やアラブ諸国の協力を取り付けるため、文字通りシャトルのように世界を飛び回りましたが、印象に残っているのはイギリスについての次の趣旨の発言です。 「今回もまた、最も手を焼かされたのはイギリスだった。しかし、今回もまた最も頼りになったのもイギリスだった」 イギリスは多国籍軍への参加について「ノー」を連発しましたが、アメリカの要求を値切り倒し、参加を決めたあとは最後まで付き合いました。イギリス以外の同盟国も、国益をかけてアメリカの要求を値切ったのです。 べーカーの回顧録を読めば、ドイツのケースと同じで、集団的自衛権で結ばれた同盟関係がアメリカの欲する軍事的突出にブレーキをかけたことがわかると思います。 なんの抵抗もしなかった日本はといえば、分厚い回顧録の中に1行半だけ、130億ドルを拠出したと触れられているにすぎません。 べーカー回顧録を読むと、ある国が国益をかけて自らの主張を貫き、アメリカと一時的に対立したとしても、国際政治の世界では、むしろそのことが評価の対象になること、対立を避けようと先方の期待を付度して黙ってカネを出すような態度では軽んじられてしまうこと、そんな国際常識についても教えられるのです。 集団的白衛権は戦争を防いできた
西恭之氏は、以下のように日本の議論に疑問を呈しています。 * 〈集団的自衛権の行使は、国際的な常識に従えば、同盟関係を活用して侵略を抑止するための前提条件とされています。それなのに日本の議論では、大国の利益のための戦争を起こしやすくしている、との指摘があります。 たとえばこんな調子です。 「集団的自衛権は、小国どうしのいざこざに大国が軍事介入する口実に使われることが多い」(2014年3月3日付朝日新聞コからわかる集団的自衛権」) 「第二次世界大戦後に起きた戦争の多くは、集団的自衛権行使を大義名分にしている。(略)集団的自衛権行使を容認していることが戦争を起こしやすくしていると考えられる」 (半田滋・東京新聞編集委員著『日本は戦争をするのか』岩波新書、2014年5月20日発行) 「集団的自衛権が戦後どう使われてきたか検証が必要だ。ベトナム戦争、チェコ侵略、アフガニスタン戦争。こういう例を見ると大国による侵略や軍事介入の口実とされてきた」(井上哲士参議院議員〔共産〕、参院外交防衛委員会、2014年5月29日) 国連憲章が集団的自衛権を国家の自然権と認めているのは、同盟関係によって侵略を抑止するためには、集団的自衛権の行使が前提条件となるからです。したがって、日本の議論のように「集団的自衛権が戦争を起こしやすくしたのか」について知るためには、抑止が失敗して集団的自衛権の行使を迫られた例や、国連安全保障理事会の常任理事国が自らの特権を悪用して行なった侵略の例を数え上げるだけでなく、集団的自衛権行使の可能性が侵略を抑止した例と対比する必要があります。 実を言えば、アメリカとすでに同盟条約を結んでいた国が第三国に戦争をしかけられた例は、南ベトナムしかありません。その南ベトナムも、北ベトナムを外国として承認したことはありませんから、北ベトナムを「第三国」とみなさなければ、アメリカとの同盟関係がありながら侵略されたケースはゼロとなるのです。 アルゼンチンがアメリカの同盟国であるイギリスの領土を攻撃したフォークランド紛争にしても、南大西洋のフォークランド諸島は、アメリカとイギリスの同盟条約である北大西洋条約(NATO条約)の地理的範囲の外ですから、アメリカとの同盟関係が侵略の抑止に失敗したケースにはあたりません。 また、9・11同時多発テロ以後、アフガニスタンのタリバン政権とアルカイダに対して集団的自衛権を行使したのは、アメリカではありません。第4章で述べたように、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアのほか、カナダ、オーストラリア、デンマーク、ノルウェーといった国々が、それぞれの理由によってNATOなどの条約に基づいて集団的自衛権を行使したのです。ニュージーランドは、非核地帯化をめぐってアメリカと対立し、ANZUS条約上の防衛義務を1986年に停止されていたのに、これらの国々と集団的自衛権を行使しました。どの国々がなぜ、集団的自衛権を行使したのかについて、事実関係をおさえる必要があります。〉 * 西恭之氏が指摘するように、アフガニスタン戦争における集団的自衛権の行使の状況を検証すれば、軍事大国でない「小国」や中立国にも、集団的自衛権を行使する場合と、それなりの理由があることが明らかになるのです。 |

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