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Q38
中国の領海侵犯が止まらないのはなぜですか? A
私は、日本が集団的自衛権を語るなど「10年早い」との思いを抱いてきましたが、そう思わせられる一例は中国の領海侵犯を許している現状です。 さきに述べたような国際的な常識を踏まえたうえで、日本が取り組むべきことは足もとを固める作業です。まず塊よりはじめよというではありませんか。 ここでは、なぜ尖閣諸島周辺海域での中国の領海侵犯を許すことになったのか、根本的な原因を考えてみたいと思います。 結論から言うなら、海洋国家としての戦略が不在だからです。 原因1 日本は海洋権益を守ろうとしていない
日本は、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせると世界で第6位の広大な面積の海を持っています。広さの順でいうと、アメリカ、ロシア、オーストラリア、インドネシアカナダ、日本、ニュージーランド、チリ、ブラジル、キリバス(以下、海外領土を除く)で、中国は第15位です。 日本の領海は水産資源だけでなく、エネルギー資源、鉱物資源の宝庫でもあります。テクノロジーの発達によって、そのすべてが日本のものになるといっても間違いないのです。 原因2 日本は海洋資源大国であることを自覚していない
一例を挙げれば、メタンハイドレートがあります。これを見れば、日本が世界有数の海洋資源大国であることがわかるはずです。 メタンハイドレートとは、カゴ状構造をした水分子の中にメタン分子が入った水和物(ハイドレート)で、水とメタンガスがあるところに低温・高圧の条件がそろうと生成され、一見すると氷に見えますが、火をつけると燃えるので「燃える氷」と呼ばれます。日本近海は世界有数のメタンハイドレート埋蔵地帯で、本州、四国、九州など西日本の南側にある南海トラフが最大の推定埋蔵域とされています。 海底には、天然ガスだけでなく石油も眠っています。海底石油の9割方は水深200メートルより浅い海底にあるとされ、大陸棚は大いに有望なのです。海底石油の埋蔵量は、現在地球上にある埋蔵量の4分の1ともいわれています。 銅、亜鉛、レアメタルなどを含む「海底熱水鉱床」も資源として有望視されています。これは海底で熱水(マグマ活動によって生じる高温の水溶液)作用にともなって形成される鉱床です。熱水は岩石を溶かしたり、岩石と反応して変質させたりしますが、冷えると溶けていた金属を沈殿させ、熱水鉱床をつくるのです。 金、銀、銅、亜鉛、鉛、水銀、アンチモン、スズ、タングステン、モリブデン、マンガン、蛍石など、さまざまな鉱床があり、政府は沖縄近海と伊豆・小笠原両諸島周辺の2カ所で海底熱水鉱床の探査を進めています。 国家戦略なき日本
このような現実を目の前にすれば、本来、日本には海洋権益を守りきる国家戦略や取り組みがあってしかるべきでしょう。しかし、それが存在しないに等しいのです。まず国家戦略の面について、問題点を挙げておきましょう。 日本には首相を本部長や議長とする○○本部や△△会議がたくさん設置されています。国家の安全保障という私の仕事に関係するものでいうと、総合海洋政策本部、宇宙開発戦略本部、原子力防災会議、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)などです。 たとえば、日本政府は2007年の海洋基本法に基づいて、海洋に関する施策を集中的かつ総合的に推進するための総合海洋政策本部を設置しています。本部長は内閣総理大臣、副本部長は内閣官房長官と海洋政策担当大臣、本部員は本部長及び副本部長以外の全国務大臣です。それが、海洋戦略について機能してこなかったのです。 ○○本部や△△会議に共通している問題が、日本に国家戦略が存在しないこと、その結果、例えば中国の領海侵犯を許してしまっている現実を物語っています。 そうした○○本部や▲△会議に特徴的なのは、その分野の最高権威と呼べる専門家を集めている一方で、セキュリティ、つまり安全保障や危機管理の専門家が不在の状態でやってきたという在り方です。 考えればわかることですが、高いレベルのセキュリティの専門家であれば、海洋や宇宙、原子力、ITの専門知識がなくても、100点満点で60点くらいの答案を書くことができます。そこに各分野の最高権威の知見が加われば、答案は常に80点以上のものとなり、世界の水準をクリアできるのです。 一方、各分野の最高権威を何人集めたところで、合格点に達するほどの答案を書くことは難しいといわざるをえません。これは、色々な会議や審議会、委員会に関わってきた私の経験からもいえることですが、日本は現実を見て国家戦略を立案しようとしてこなかった結果、「各分野の最高権威」に任せておけばなんとかなるという落とし穴にはまることを繰り返してきているのです。 政府は2014年11月7日、15年度から10年間で実施する安全保障を重視した新たな宇宙基本計画の素案をまとめ、その一日前にはサイバーセキュリティ基本法が衆議院で成立しましたが、同じ轍を踏まないことを祈らずにはいられません。 |

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