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樋口有介著。文春文庫。

けだるくて退屈な夏休み。高校生のぼくは不思議な魅力を持つ少女、晶子と出会う。晶子、親友の田中くん、そしてそれぞれの家庭や周囲の大人たちを傍観しながら、ぼくの夏が終わっていく…。1960年代の北関東の小さな街を舞台に、清冽な文体で描かれた、ノスタルジックで透明感に満ちた青春小説の傑作。 (裏表紙引用)



いただき本。久々の樋口さんいいねえ。調べたら樋口さん読むの12冊目だそうな。ミステリではなかったが、60年代のちょっとシラケた高校生たちのひと夏の日常がみずみずしく描かれている。

主人公はちょっと派手で奔放な母と2人で暮らす高校生・葉山研一。友人の田中くんと、田中くん経由で知り合った晶子。3人で過ごす夏休み。特別不良って感じでもないのに(真面目系でもないが)、全員お酒を飲んだり堂々とタバコを吸ったり車を乗り回したりしているのが時代を感じるなあ。大人がそれを今ほど咎めないというか。見た目や普段の態度ではどこにでもいる冷めた若者たちという感じ。

起きることは友人の死や田中のケガぐらいなのだが、それぞれ3人の家庭環境が変わっていたり、周りにいる人々が奇天烈だったりするので何も起きなくてもそれなりに読める。文章のうまさがほぼその魅力を担っている気がする。恋愛パートも、この時だけ自分の人生に関わった儚さみたいなものがあって切なげ。主人公の研一が妙に達観していて、自分の気持ちを自覚しないところがあるのかな。だから最後の展開で見せた研一の感情の迸りには迫るものがあった。

200ページちょいなので、良かったらどぞ〜。

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本多孝好著。角川文庫。

『dele.LIFE』は依頼人が死んだときに動き出す。託された秘密のデータを削除するのが、この会社の仕事だ。所長の圭司の指示を受け依頼人の死亡確認をする祐太郎は、この世と繋がる一筋の縁を切るような仕事に、いまだ割り切れないものを感じていた。ある日祐太郎の妹・鈴が通っていた大学病院の元教授から依頼が舞い込む。新薬の治験中に死んだ鈴。その真相に2人は近づくが…記憶と記録をめぐるミステリ、待望の第2弾。 (裏表紙引用)



先日読んだ「dele」の続編。なぜか2はいきなり文庫で出た。ありがたいはありがたいが…。統一してくれないと、1が分冊されたのかと思ってわざわざ収録作確認しちゃったからね。


で、今回は3作収録。2つの短編と1つの中編かな。

「アンチェインド・メロディ」
路上で倒れ急死した作曲家。彼が削除を依頼したデータは、人気ロックバンドの曲ばかりだった。そのバンドのボーカルは男の兄で――。普通に考えたらゴーストでしたって真相なんだろうと思ったけど、そんな単純ではなかったか。兄弟愛に泣ける。

「ファントム・ガールズ」
突然死したOLと隣人の女子中学生との関わりは?2人が贅沢に暮らしていたのは金づるが?
海外旅行やブランドのバッグ、高価なジュエリーにオシャレなレストラン。こういうものが幸せの頂点だと思ってしまうほど空っぽになってしまうのは悲劇だね。しかし、OLがまだまだ人生これからの中学生を同士だと思えるものなのかな。

「チェイシング・シャドウズ」
美容クリニックの理事長が病死。以前は医大教授だった男が関わった事件とは。

前2作でチラホラと伏線はあったけれど、いきなり祐太郎の過去と圭司の過去が深く関わってくるので驚いた。かなりシリアスな路線だし、唐突に二人の関係が決裂してしまうのも寂しい。これからどうなるんだろう。続きが出なくてもおかしくない終わり方だけど、これでは悲しすぎる。。舞さんも全然出なかったし、前任者の夏目も登場してないし。ぜひ続きを。

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本多孝好著。角川書店。

『dele.LIFE』の仕事は、誰かが死んだときに始まる。死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除する―それが、この会社の仕事だ。新入りの真柴祐太郎が足を使って裏を取り、所長の坂上圭司がデータを削除する。淡々と依頼を遂行する圭司のスタンスに対し、祐太郎はどこか疑問を感じていた。詐欺の証拠、異性の写真、隠し金―。依頼人の秘密のファイルを覗いてしまった二人は、次々と事件に巻き込まれる。この世を去る者が消したかった“記録”と、遺された者が抱く“記憶”。秘められた謎と真相、そして込められた想いとは。“生”と“死”、“記憶”と“記録”をめぐる連作ミステリ。 (裏表紙引用)




ひっさびさに本多さんを。ドラマ原作ということで、なんか私の周りのガールズみんな読んでいるので(←ミーハー)。ドラマでは所長の圭司を山田孝之、祐太郎を菅田将暉が演じているもよう。ピ、ピッタリ…。圭司は佐藤隆太(反論あるでしょうねすいません)、祐太郎は桐山健太(こっちはないでしょ?)でもいい気がするな〜。


圭司が所長を務める「dele.LIFE」では、依頼人の死後誰にも見られたくないデータをその人に代わって削除することができる。所員の祐太郎はその顧客が本当に亡くなったのかを足で確認するのが主な仕事。同じビルには圭司の姉が所長として弁護士事務所を開いている。

とにかくこの圭司と祐太郎のコンビがいい。圭司はどういう事情なのか車椅子に乗っていて、仕事に真摯だがドライ。祐太郎はちょっとワルっぽいが熱血で、依頼人やその家族についつい同情してしまうキャラ。まあ、祐太郎はちょっと物事を都合のいい男性目線で捉えすぎるきらいがあってそこはあまり好きではなかったけど。

最初、パソコンやスマホにある秘密の個人データを見ず知らずの人間に削除依頼するなんてことあるかあ?と思ってしまった。私だったら絶対その会社の人間を信頼できないなあ。しかし依頼人がデータは死後勝手に消滅すると思い込んでいると知ってああなるほど、と腑に落ちた。いや、自分が依頼する場合削除までの流れを絶対問い詰めるけどね。このお話に出てくる顧客それぞれの、データを一度見てみたいと思う状況も割と分からんでもないというか。どのお話の依頼人も、犯罪者であったり浮気をしていたりと褒められた人間ではないところも物語に生きていてのめり込めた。刺殺されて河川敷に捨てられていたり、通夜にやってきた女性が独身のはずの依頼人の妻だと告白したり、癌で余命幾ばくもない依頼人の夫が事務所に乗り込んできたり。血の繋がりだけじゃない、人と人との繋がりや絆を誰からも感じられる。でもやり方が皆違うのよね。

一番好きだったのは母親の娘への思いが泣かせる「ドールズ・ドリーム」と息子のために身を犠牲にする父の関係が切ない「ロスト・メモリーズ」かな。

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早坂吝著。講談社ノベルス。

メーラーデーモンを名乗る者から「一週間後、お前は死ぬ」というメールが届いた後、殺害される連続殺人が発生!「お客様」を殺された上木らいちは捜査を開始。被害者は全員、X‐phone社のガラケーを所有していたことが判明する。一方、休職中の元刑事・藍川は「青の館」で過ごすが、小松凪巡査部長のピンチを知り、訳ありの宿泊者たちと推理を展開。らいち&藍川、二人は辿り着いた真相に震撼する!! (裏表紙引用)


らいちシリーズ第5弾。

え、これでもしかして完結?おなじみの藍川警部と小松凪刑事だけでなく、過去作に出てきたキャラ総出演のサービス精神溢れる作品。作者まで出てきた。前作の事件ですっかり意気消沈してしまった藍川さんが警察を辞めたがるも引き止められ、「自分隠しの旅」と称して’あの’青の館に滞在。小松凪さんはらいちにライバル意識をメラメラ燃やして勝負を挑むし。らいちは自分のお客様が連続殺人事件の被害者になったことを機に推理に心血を注ぐ。

今までと比べ推理や捜査の軸となるキャラクターが分散しているため、「らいちの活躍」「らいちの物語」がかなり薄め。個人的に小松凪さんや藍川さんにそれほど思い入れはないので、この構成はあまり歓迎出来なかったなあ。

事件の細かい推理は色々多岐に渡っているためそこは楽しめる。特に、「あの音」の正体はこのシリーズらしく見事なるエロネタ。これがなくちゃね。そのせいで今までのような大ネタでビックリ、という破壊力がなかった。藍川さんがいないから小松凪さんが1人で捜査してフラフラして不審者に逃げられました、なんてことある?、みたいなツッコミどころもあったしなあ。警察内部の描写がやっぱりマンガ。
小松凪さんの推理もちょっと強引に感じた。らいちの推理部分はやっぱり流石って感じだし、延々とらいちが読みたいの、私は。早坂作品で初の辛口作品。

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深水黎一郎著。講談社文庫。

嵐で孤立した館で起きた殺人事件!国民的娯楽番組「推理闘技場」に出演したミステリー読みのプロたちが、早い者勝ちで謎解きに挑む。誰もが怪しく思える伏線に満ちた難題の答えは何と15通り!そして番組の裏でも不穏な動きが…。多重解決の究極にしてミステリー・ランキングを席巻した怒涛の傑作!! (裏表紙引用)



4冠達成ということで話題になっていた作品がついに文庫化〜。

な、なるほど、こういう作品か…。かなり期待していた方向とは違ったけれど、誰もやったことがないことにチャレンジしているという点では素晴らしいと思う。なんせ解答が15通りだもんね。どの推理もいちいち納得のいくロジックで固められているので15回「うんうん」と頷くことになった^^;結局なんでもいいんじゃん。

作風は極めてコミカルでバカミスの範疇なのかなと。こんな番組が大ヒットするとは思えないし、政府がこういう非人道的な法律を通すとはとても思えないがそこは読み物として容認するしかないんだろうな。問題編そのものは全く面白くない凡庸な話なので。。15通りの解決を考えてゲームブックみたいな構成を思いついたのは素直に天才的だと思う。ただ、ありえない設定、世界観、条件内で成立している小説なので、本格ミステリとして評価していいのかどうか?

うーん、もう少し最後の推理そのものに目を見張るものがあればなあ。おふざけ系の文体が好きではないので、俯瞰するとどうしても「読みやすさ」が評価のかなりを占めたのではと思わずにいられない。

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