海外<サ〜ソ>作家

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フェルディナント・フォン・シーラッハ著。酒寄進一訳。創元推理文庫。

一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。──魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作!(裏表紙引用)



初読みシーラッハ。ナチ党全国青少年最高指導者バルドゥール・フォン・シーラッハの孫、ベルリンの刑事事件弁護士だそうな。本屋大賞翻訳部門1位ということで、さてどんなものかと挑戦してみたがなかなか風変わりな作風に1編目から引き込まれた。

著者が弁護士ということで、収められた11の短編は実録なのかと誤解してしまいそうになるが、弁護士には守秘義務があるのでそんなことは不可能である。なので完全な創作だとのこと。語り口がノンフィクションぽい雰囲気もあるにはあるが、柔らかく簡潔に描かれた小説らしい表現力が魅力で、どんでん返しや謎解きがないにも関わらず読ませる力がある。

特に好みだったのは、生涯の愛を誓い合ったカップルが結婚してからというものあれよあれよと憎しみ合い、老いるまで生活を共にしたその結果が恐ろしい「フェーナー氏」、恋人のために身体を売った女がホテルの一室で殺害されていた事件の顛末にホっとする「サマータイム」、羊殺しの青年は、本当に若い娘を殺したのか?狂気と天才は紙一重だと感じる「緑」、絵画『刺を抜く少年』の彼の棘は抜けたのか?がどうしても気になる博物館警備員の話「棘」あたりだろうか。他の作品もあるようなのでぜひ読みたいと思う。

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ウィル・セルフ著。安原和見訳。河出書房新社奇想コレクション。

雨のハイウェイで、ヒッチハイカーを拾った精神分析医。解体されているのは、こいつなのか俺なのか―。嘘、嘘、嘘、嘘、みんな嘘っぱち。洒落た悪ふざけか、洗練された悪趣味か。壁の中のコカイン。害虫との共同生活。異性恐怖症者が飼う巨人。刑務所の創作教室…退屈な通俗性を揺さぶり、ツマラナイ日常をひっくり返す、現代イギリスを代表する奇才の本邦初短篇集。(裏表紙引用)



読み切った自分に万歳。そして訳者に乾杯。奇想コレクションの中でもとりわけぶっ飛んでいると噂の本書。イメージしていたほどのつっかえもなく、少しの不快感と多くの疑問符の中だけで読み終えることが出来た。ここまでびびっていたのには理由があって、このウィル・セルフという作家の経歴がとんでもなかったからだ。12歳で麻薬を始め、17歳では立派な麻薬中毒者。20代半ばで薬物&アルコール中毒で入院。だが作家活動に弊害が出るためすっかり依存を断ち切ったという。それでオックスフォード大学哲学科卒、妻と3人の子供がいるというのだから驚く。

出だしの「リッツ・ホテルよりでっかいクラック」から薬物ノリが強烈で、次の「虫の園」でも同じような感じだったら挫折しよう、と決めるも虫と共に生活を始める青年が不気味かつ明るい陽気さで面白かった。

次の「ヨーロッパに捧げる物語」はIQの高すぎる赤ちゃんを恐れる両親のお話で、これが歴史と絡み合い意味不明だが味のあるストーリーとなっている。人気の高い「やっぱりデイヴ」は私はそれほどでもなかったが、行く先々で必ず会う「デイヴ」というのが荒唐無稽で良い。他は意味がわからない。

荒唐無稽と言えば「愛情と共感」だろうか。「内なる子供」が肥大化して「大人」と寄り添って生きる物語だそうだ。意味がわからんが。表題作「元気なぼくらの元気なおもちゃ」はなかなかのお気に入り。ヒッチハイクで拾った男にとにかく親切にする男だが、これは2人ともに狂気を感じるな。常識とか説いてるあたりが逆にそういう印象。

「ボルボ七六○ターボの設計上の欠陥について」は「元気なぼくらの〜」の続編だが前日譚。よくわからない^^。この作品唯一の中編と言える「ザ・ノンス・プライズ」は「リッツ・ホテルより〜」の続編。子供を性的虐待のすえ殺した(とされている)男が、刑務所で小説の創作コンクールに応募するというなんやねんこれ的なストーリー。意外や意外、設定は狂っているが、ちゃんとした読める普通の小説だった。


以上。1編目ではどうしようかと思ったが、意外と読めた。意味が本当にわかって読める人いるのかな?と思うぐらい、意味不明の薬物小説だという印象。その割にはとっつきやすかったような?他の作品を読みたいとは思わないが、最後の中編のようなものが他にあるといいなとは思う。

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ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著。浅羽莢子訳。創元推理文庫。

歩いててふと気がついたら、あたし、幽霊になってた!頭がぼやけてて何も思い出せないし、下を見たら自分の体がないじゃないの。生垣やドアをすり抜けて家のなかに入ると、だいっ嫌いな姉さんや妹たちが相変わらずのケンカ。誰もあたしのこと気づきゃしない。でも、どうして幽霊になっちゃったんだろう……現代英国を代表する女流作家の、おかしくもほろ苦い時空を超えた物語。(裏表紙引用)



1981年に作られたイギリス作家の作品。ちょっと変わったダークファンタジー、といった感じだろうか。いや、実はこれ、数ヶ月前に100ページ程読んで挫折した作品。ダークゾーンを読みきった今の自分なら読めるかと思って(実際その通りになった)再挑戦。なんということか、挫折したページから面白くなっていた。と言っても、訳文がとてつもなく読みづらかったのは私だけではなかったようで、多くの読者が同じ理由で悲鳴をあげていたようだが。

このお話は一風変わっていて、ゴーストストーリーでありながら、語り手は終始その幽霊であり、しかもその幽霊自身が自分を誰だか分かっていないのである。四人姉妹のうちの誰かだということだけは分かっているようだが。そして、その四人姉妹のみならず、母親は子育てを放棄、父親はなんだかDVのケがあり、しかも姉妹のうちの1人(幽霊)の彼氏はその彼女を走る車から突き落とし殺そうとしたというとんでもない変人悪人ぞろい。(どうでもいいが、三女の名前が「イモジェン」という。その名前が出てくるたびに、私の脳内では「芋」に変換されてしまって困ったもんだった。)魔女信仰みたいな遊びも始めるし、サーカスの真似事を妹にさせて窒息させるし、てんやわんや。

まあなんだかんだ収まるところに収まるのだが、はっきり言ってわけがわからん面白さだった。読みにくさだけはいかんともしがたかったので新訳出してよ。

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T.S.ストリブリング著。倉阪鬼一郎訳。国書刊行会。

南米の元独裁者が亡命先のキュラソー島で食事中、ホテルの支配人が毒殺された。休暇で西インド諸島に滞在中のアメリカ人心理学者ポジオリ教授が解き明かす皮肉な真相「亡命者たち」。つづいて、動乱のハイチに招かれたポジオリが、人の心を読むヴードゥー教司祭との対決に密林の奥へと送り込まれる「カパイシアンの長官」。マルティニーク島で、犯人の残した歌の手がかりから、大胆不敵な金庫破りを追う「アントゥンの指紋」。名探偵の名声大いにあがったポジオリが、バルバドスでまきこまれた難事件「クリケット」。そして巻末を飾る「ベナレスへの道」でポジオリは、トリニダード島のヒンドゥー寺院で一夜を明かし、恐るべき超論理による犯罪に遭遇する。多彩な人種と文化の交錯するカリブ海を舞台に展開する怪事件の数々。「クイーンの定員」にも選ばれた名短篇集、初の完訳。(紹介文引用)



世界探偵小説全集15。
この全集に、短編集があったとは。しかも訳がとても読みやすい倉阪鬼一郎氏(゜д゜)。この心理学者兼大学教授のポジオリは初対面だったが、論理的な分析を得意とし、世界にも名だたる名探偵。運動が苦手で時に自分の分析によって悩むぐらいしか性格的な特徴は見い出せなかったが、その頭脳は確かなようだ。色々と旅して周って度々事件に巻き込まれている模様。

「亡命者たち」
ワインで毒殺されたホテルの支配人と、ベネズエラを追われた独裁者の関係は?支配人の娘が取った些細な行動が事件にどう結びつくのか。人間心理を読み取った推理方法で犯人を当てるポジオリ、証明するために猫を殺してしまいますΣ(゚д゚;)

「カパイシアンの長官」
アメリカ海兵隊に支配されたハイチにて。反乱の指導者の呪術のイカサマを暴くために呼ばれたポジオリ。身分の差や人種差別が顕著で、聞き込みに苦労するなあ〜。危険地帯に足を踏み入れるポジオリ、どうやら運動は苦手なようだ。

「アントゥンの指紋」
建築物が犯罪にどの程度影響を及ぼすか――。知り合いになったフランス人と議論となったポジオリは、この街で起きた金庫破りの真相を追及することとなった。時代というのか土地柄というのか、犯人が現場でタバコの吸殻を21本残している(笑)。しかも指紋を残している(笑)。もはやバカミス。しかし真面目な話、この方法では指紋は付かないんじゃなかったっけ。

「クリケット」
クリケットの試合中に亡くなった青年。その父は、ポジオリに息子を殺した男が島から逃げるのを手伝えと言う。調べるうち、青年が投機で負け続けていたことが判明する。しかし、18回連続で負けるなんてことがあるだろうか――。最初は単純な事件と切って捨てていたポジオリだが、人間関係がなかなか複雑で手を焼いてしまった。それにしてもこの短編集、必ず犯人海へ逃げるなあ(笑)。

「ベナレスへの道」
ヒンドゥー寺院で寝泊りをしたポジオリだが、そこで結婚式を挙げた新婦が新郎に殺された事件の容疑者となってしまう。物凄く宗教色が強い作品だが、ポジオリは最後まで論理で勝負する。このラストシーンには度肝を抜かれた。変な作品だと位置づけられているのはこれ故か。全ての作品の記憶が吹っ飛ぶんじゃないか、最後の1ページで。


以上。
色々書いたがそれを含めてなかなか気に入った作品集。何かに挑戦しているものはやはり好きだ。旅行気分にも浸れたし、タイムスリップした気持ちにもなれるかも。人種や時代がこれだけ違うと、犯罪者のみならず人々の行動や心理は理解不可能、それをまるごと楽しめるなら大いにオススメ。文庫化もされているよう。

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マイケル・マーシャル・スミス著。嶋田洋一訳。創元SF文庫。

 『スペアーズ』の鬼才が贈る、哀感と郷愁に満ちたSFホラー集。小品ながら忘れがたい味わいを残す表題作、奇跡の医療用ナノテクがもたらした人類の意外な終末「地獄はみずから大きくなった」、田舎町に暮らす不思議な絵描きを巻き込んだ事件を描いた英国幻想文学大賞受賞作「猫を描いた男」、巨大テーマパーク兼養老院での奇怪な冒険劇「ワンダー・ワールドの驚異」など12編。(裏表紙引用)



不勉強ながら「スペアーズ」なるものを知らないのだが、ネットで見つけて惹かれるものがあったので読んでみた。背表紙が紫なのが目印のSF文庫ではあるが、白のほうのホラー系で出してもまた良かったかもしれない。

「みんな行ってしまう」
少年がある男を見かけるようになってからの、郷愁的雰囲気が強い不思議系の物語。

「地獄はみずから大きくなった」
コンピューターによるシステム設計を始めた二人の男と一人の女。十年後に女は死亡してしまうが――。出だしはSF的だが、後半はホラー。え、え、えええ?というぐらい世界観が変わってしまうので面食らった。

「あとで」
妻を交通事故で亡くしてしまった男。だが、彼女は甦り男はいつもの日常に戻った――。死者の甦りというのはよくあるテーマだが、ありきたりながら男の心情や行動が狂人的で、そこには一種の美学すら感じ取れる。

「猫を描いた男」
絵のうまい男と、夫にDVを受ける女が登場する。絵から飛び出す何か、というのも初めて見るものではないのだが、語り手の男の表現の違いなのだろうか、この独特の雰囲気というのは。

「バックアップ・ファイル」
これも交通事故で家族を失ってしまった男の物語。こちらは死者を甦らせる会社を媒介し、よりSF的だ。これまたタブーをおかしてしまった人間の、よくある末路なのだが――。SFとの融合がうまく出来ているためか、論理的かつ不気味な作品に仕上がっている。

「死よりも苦く」
ビリヤードに興じる青年の恋愛ホラー。妄想が激しく、育ちにも問題があるため悲劇的な物語になっているものの、ある種の様式美を感じる作品。こちらも前半と後半で方向性が違うように見えるが、これが効果的というか、次何が来るんだろう?というような、やめられない止まらない感情が生まれる。

「ダイエット地獄」
ギャグホラー。箸休めにどうぞという感じ。どんどん太っていく男がダイエットを決意したものの、その先にあるのは・・・。私には、これが唯一の「正統派」ホラーに見えるがどうだろう。

「家主」
家、仕事、恋人、家具――全てが借り物だとすれば、人生そのものが借り物であるかのような錯覚を起こすのだろうか。これも後半の盛り上がりは見事、やり過ぎ感は否めないが。

「見知らぬ旧知」
語り手の青年には、かつて四人の元カノがいた。いずれもそれぞれに問題を抱えていたが、現在友人のスティーブの恋人も何やら異常があるようだ――。ミステリ的な作品と捉えるなら、いつもの私なら「ありきたり」と評するだろう。

「闇の国」
大学生活からかつての家に戻った青年。だが、家がおかしい。傾き、破壊され、謎の男まで視界に入るようになった――。語り手が、目に映るもの脳内に蔓延るものを何かに喩え妄想を繰り広げるのもホラーを読む醍醐味なのだな。

「いつも」
母を亡くした女性が実家へ戻り、残された父親と思い出を語り合う。父には不思議な能力があって、プレゼント包装を、折り目が全くない状態で包むことができるのだ――。不気味かつハートフルでさえある物語。

「ワンダー・ワールドの驚異」
この作品だけ、前半が独特だ。犯罪小説さながら、語り手の男はどうやら誘拐犯のような匂いをさせている。展開も暴力的だし、レジャーランドとの対比がうまく出来ている。ラストの、遊園地のキャストの語りも唐突ながら物語の締めにいい味を出していると思う。


以上。
ここまで読んでもらえた方には伝わっただろうか。この作家の特徴として、理解が出来ないわけではないのに、後半に突入するまではどういうお話なのかがさっぱり読めないところが挙げられる。あとがきでは、訳者はそこを欠点と判断して切っているようだが、私はそうは思わない。確かに、誰にでも薦められる作家ではないだろうし万人受けはし難い作風だが、読みづらいわけではないし咀嚼し得ない世界観ではない。文章から見られる「何も起こっていない」段階での想像力や比喩あってこそ、後半の「定番」を非凡たらしめていると思うのだが。。。個人の好みで英国幻想文学大賞となった作品の収録を見合わせたというのも残念。それはさておき、個人的には上品で粘りけのないところがとても気に入った作品。長編はどうだろうな。この作家さん、短編のほうが良さそうな匂いがするけれども。

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