海外<ヤ〜ワ>作家

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オースティン・ライト著。吉野美恵子訳。ハヤカワ文庫。

主婦スーザンのもとに突然「夜の獣たち」と題された原稿が届く。それは離婚した夫エドワードが執筆した小説で、妻子を惨殺された大学教授の男が犯人たちを捜すという内容だった。彼はなぜこんな小説を書き、なぜ彼女に送りつけてきたのだろうか――?男女の心理を克明に追う巧みな文章と、企みに満ちた物語。ルース・レンデルやサラ・ウォーターズをはじめ巨匠作家たちが絶賛した傑作ミステリ。『ミステリ原稿』改題。


「ミステリ原稿」という邦題は最低だな^^;。この小説を正確に言い表しているのは原題だと思うけど、日本じゃ「トムとスーザン」なんていうタイトルじゃ売れないもんね。

この小説は、離婚した夫エドワードから送り付けられた小説に、ヒロインのスーザンがだんだん取り込まれていくお話。ページのほとんどはエドワードの小説「夜の獣たち」で占められていて、ある幸せな一家が暴漢に襲われ妻子が誘拐の末惨殺されるという読んでいてなかなかにキツイ内容。しかし引き付ける魅力は確実にあって、スーザンは読み終わるのが惜しいと思うほどのめり込んでしまった。

「なぜ夫はこの原稿を元妻に送りつけて来たのか」に対する明確な答えはここにはない。推察するに、一番想像しやすい真実は夢見がちな夫と現実的な妻が分かり合えず、現在架空の幸せに溺れている元妻に対するエドワードの復讐だというものだろう。しかし、スーザンもエドワードも同じレベルの人間だと悟ったスーザンと、小説の登場人物トムはスーザンを投影したものだという答えは本質的には同じだろうか?それは最後まで私には分からなかった。


映画を先に観たのだが、映画で理解出来なかった部分が原作で理解出来た、ということはなかった。映画と違い詳しく心理を描いているので、ああこの時スーザンはこう思っていたのか、とかトムはこういう状態だったのか、というのが分かる。映画はアートに寄った作風だったのでそちらの要素はあまり期待してはいけないかな。

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ケン・リュウ著。古沢嘉通訳。ハヤカワ文庫。

香港で母さんと出会った父さんは母さんをアメリカに連れ帰った。泣き虫だったぼくに母さんが包装紙で作ってくれた折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動きだした。魔法のような母さんの折り紙だけがずっとぼくの友達だった…。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作など、第一短篇集である単行本版『紙の動物園』から7篇を収録した胸を打ち心を揺さぶる短篇集。 (裏表紙引用)



いま世界中のSFファンに最も期待されているというケン・リュウの作品を読んでみた。文庫化にあたり2分冊され、お試ししやすい価格に設定したとのこと。ありがたいやね。

「紙の動物園」
カタログで妻を選ぶという設定だけで全部心持って行かれる感じ。香港出身の母がアメリカの暮らしに適応出来なかったのが悲しいな。

「月へ」
月での生活を渇望するが月人に受け入れてもらえない'父'と、亡命事件を担当する新人弁護士のサリーのお話。本当の正義とは?お手伝いルイサのエピソードが全てを示唆していると思う。一気にSFくさくなった。

「結縄」
ミャンマーはナン族の村にアメリカからやってきた男・ト・ム。ここ数年の干魃がひどく、ト・ムは村長を種籾と引き換えにアメリカの研究所へ連れ出すが――。作者が元プログラマーだという経歴が発揮された作品。結び目が言葉を紡ぐというのが面白い。しかしト・ムひどいなあ…。

「太平洋横断海底トンネル小史」
太平洋横断海底トンネル掘りの台湾人の男の身に起きた出来事を描いているが、このお話は正直全くわからなかった。どう改変されているんだろう。

「心智五行」
人間が生存可能な惑星から六十光年離れ遭難中の調査船。生き残りのタイラとアーティ、ファーツォンの通信で物語が進む。これぞ文化の違いが生んだ悲恋?

「愛のアルゴリズム」
最先端テクノロジー人形を設計した妻とトイ社CEOの夫。心を病んでしまった妻と頼りになるようでならない夫の関係には現実感あるかも。今の時代、人形が喋ったとしても誰も取り憑かれたとは思わないけど、不気味であることに違いはない。こうなるだろうなという結末が不憫。

「文字占い師」
小学生のリリーは、アメリカから台湾に引っ越してきたが同性からのいじめに耐えていた。そんな時、ある中国人の老人と知り合うが――。漢字で運勢を占ったり、漢字の成り立ちについて語られたりと色々勉強になる(笑)。忘年之交って素敵だなあ。しかし2.28事件を題材にしていて内容は重い。拷問シーンは読んでいられなかった。


以上。「紙の動物園」が圧倒的に面白く取っ付きやすいが、個人的には「結縄」「月へ」も好みだった。作者が米国育ちの中国人ということで、中国の歴史はもちろん医学や架空史、IT関連と引き出しは多い。テーマが愛の喪失であったり偏見と差別であったり、戦争がもたらしたものの重みや変えられない宿命であったりするため全体的に読後感は重い。ファンタジーであることとのバランスがいいのかな。読みづらくはない。

まあ、全ての作品を気に入る必要はないと思う。もう1冊のほうもいつかは読むかな。アジア文学いいかも。

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アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ著。ヘレンハルメ美穂・羽根由訳。ハヤカワ文庫。

凶暴な父によって崩壊した家庭で育ったレオ、フェリックス、ヴィンセント三人兄弟。独立した彼らは、軍の倉庫からひそかに大量の銃器を入手する。その目的とは史上例のない銀行強盗計画を決行することだった―。連続する容赦無い襲撃。市警のブロンクス警部は、事件解決に執念を燃やすが…。はたして勝つのは兄弟か、警察か。スウェーデンを震撼させた実際の事件をモデルにした迫真の傑作。最高熱度の北欧ミステリ。(上巻裏表紙引用)



このミス1位で話題となっていた作品に挑戦。タイトルはシンプルだが名前長いな。コピペしたわ。原題のままなのかな?字面でなんとなくの想像。

父親の過剰な暴力で支配されて育った3兄弟(レオ、フェリックス、ヴィンセント)が長じて父親と決別し、幼馴染のヤスペルを巻き込んで銀行強盗を始めるというお話。初めは順調だったが、やがてレオは父親と連絡を取ったり兄弟同士で衝突があったりとどんどん問題が広がっていく。物語は過去と現在が交互に語られ、兄弟の心の闇がどうやって形成されたかが明らかになっていく。

文章が非常に平易で読みやすいし、題材も刺激的だしもちろんとても面白いのだが、私にはあまり合わない部分もあった。確認しなかった自分が悪いのだが、銀行強盗ものはジャンル問わず好きではないのだ。なのでどちらかというと彼らを追うヨン警部の視点のほうが読みやすかった気がする。

暴力シーンは当然辛いし、その父親の性癖を受け継いだかのように見える長男のレオには全く相通じるものがなかった。正論派のフェリックスや末っ子気質のヴィンセントはまだ共感するものがあったが、レオの恋人アンネリーなんてイライラする女の代表みたいなキャラだったもんなー。悪いことは言わん、犯罪者だからとかじゃなくレオはやめとけ。ヤスペルなんてあれだけ深く関わっていながら最後まで他人扱いひでえ。

終始哀れで悲しい物語なので痛快とも言えないし警察との攻防が前面に出ているわけでもないのでちょっと想像していたような、自分が読みたいものではなかった。自分以外の人にはとても面白い作品なのだと思うのであしからず。

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ピエール・ルメートル著。橘明美訳。文春文庫。

カミーユ警部の恋人が強盗に襲われ、瀕死の重傷を負った。一命をとりとめた彼女を執拗に狙う犯人。もう二度と愛する者を失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠し、残忍な強盗の正体を追う。『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』の三部作完結編。イギリス推理作家協会賞、痛みと悲しみの傑作ミステリ。(裏表紙引用)



カミーユ・ヴェルーヴェンシリーズ第3弾、ついに完結編!終わってしまった・・・(つд⊂)。しかもこんな形で。時系列では(本国の出版順では)イレーヌ→アレックス→カミーユとなるので、本来はその順番で読めた方が良かった。まだシリーズ未読の人はぜひその順番で読んで欲しい。でないと満身創痍過ぎるカミーユの運命に心ズタズタになります^^;

今回は、カミーユが妻イレーヌを失ってから出来た恋人・アンヌが強盗事件に巻き込まれるところから始まる。それによりアンヌは酷い暴力を振るわれるのだけど、のっけからこの描写がエグい。。。初めてこのシリーズに触れる読者は最初の数ページを読んだだけでリタイアするかも。。。ただでさえイレーヌを残酷に殺されて精神的に参っているカミーユに次々襲いかかる悲劇。責任を感じたカミーユは警察のルールを破ってでも捜査を始める。やがてアンヌがカミーユの恋人だと見抜いてしまった金持ちボンボンの部下・ルイを巻き込んで――。

恋人が瀕死の重傷というだけで酷いのだが、そんなカミーユにさらに追い打ちをかけるかのような真相。いくらなんでもこれはあんまりだ。シリーズキャラに対する執着はないのか作者。

意外性という意味では2重の意味で充分。ストーリー的にはひたすら残酷。これがシリーズの中盤ならそういう時期だと割り切れるが、ここでカミーユとお別れとなると後味の悪さしかない。だって、カミーユを嫌いだって人いるの?

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アンドレ・ド・ロルド著。平岡敦訳。ちくま文庫。

いたるところから恐怖は我々を狙っている。殺人と処刑の場面を再現した蝋人形館での一夜、屋敷を取り囲む血に飢えた暴徒の群れ、手術台の上の惨劇、抉り取られた眼球、妻に裏切られた男の恐るべき復讐…20世紀初頭のパリで絶大な人気を博した恐怖演劇グラン・ギニョル座の劇作家ロルドが血と悪夢で紡ぎあげた22篇の悲鳴で終わる物語。甘美な戦慄と残虐への郷愁に満ちた“恐怖劇場”開幕。(裏表紙引用)


グラン・ギニョール座の劇作家ロルドの恐怖物語を集めた作品集ということで。実は全然知らないのだがなんとなく面白そうかなと思って読んでみた。ちくま文庫買ったの初めてだドキドキ。

収録作

精神病院の犯罪
蠟人形
デスマスク
ヒステリー患者
高名なるトリュシャール教授
無言の苦しみ
究極の責め苦
地獄
生きている木
ベリギーシ
死児
もうひとつの復讐
死にゆく女
夜明け
助産婦マダム・デュボワ
事故
強迫観念
恐怖の実験
恐ろしき復讐
告白
無罪になった女
大いなる謎

基本的には精神病者をネタにしたものや、復讐ものが大半。自業自得の罰を受けるものも多々。差別的表現は原作を尊重し緩められてはいない。意味すら分からないものも。時代の雰囲気を感じられたり文学表現として楽しむ分には良いのだが、それが恐怖に結びつく感性は現代でもそれほど変わっていないのかもなと感じる。先が読めるものが多いため、展開に期待するというよりは単にその人物の行く末を見守るという読み方をした方がいいかもしれない。こういう話読んだことあるなあというものもいくつかあるし。

好きなのは「精神病院の犯罪」「地獄」「恐怖の実験」。

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