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中町信著。創元推理文庫。

柳生照彦から持ち込まれた犯人当てリレー小説―柳生の問題編に対し、タレント作家の尾道由起子に解決編を書いてもらい、その後に自分の解決編を載せる。要するに作家同士の知恵比べをしよう―という企画は順調に進行するかに見えたが…。問題編を渡したまま、柳生は逗留先から姿を消し、しかもその小説は半年前の実在事件を赤裸々に綴ったものだった。全面改稿決定版。(裏表紙引用)


中町さんは「模倣の殺意」を昔読んだことがあるが、それ以来ご無沙汰していた。ミステリファンなら1冊は必ず読んでいる作家なのかな。この度ブロ友さんに頂くことが出来た本書を読めることになった。


で、内容。
まあどこに出しても恥ずかしくない「ザ・推理小説」で、作中作と本編が錯綜し、章が変わるごとに真相が変わる構成にとにかく翻弄させられた。推理作家の柳生が編集者の明日子に提案したリレー小説。その解答編をタレントで小説家の尾道由起子に依頼したいと言う。柳生が描いた問題編を読んだ明日子だが、その内容が過去に起きた殺人事件と寸分違わないことに気づく。関係者の氏名まで同じなのだ。やがて明日子は同僚の真弓の協力を得て捜査を始めるが、関係者が次々と死んでしまう。盗まれた解答編、旅館に現れた偽物の女、尾道の浮気――物語の着地点はどこにあるのか。

今となっては驚くこともない手法、真相ではあるのだが充分に楽しめた。特に明日子にまで魔手が伸びるところは緊張感MAXで、いよいよこの謎の袋小路から抜け出せるのかとワクワク。真相自体は少し予想したものではあったが、この小説の肝は探偵役にあると思う。多くは語れないが、颯爽と現れ事件を解明し、疾風のように退場していったあの人物…。只者じゃなさそう。

文章が古臭いという意見が出ているようだが、私は気にならなかった。むしろ文章の手本のようにスラスラと読みやすかったのでオススメなのだが…まあここは好みなのかな。続けて色々読みまっす。

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中田永一著。祥伝社文庫。

ある理由から存在感を消せるようになった高校生、鈴木伊織。彼女を認識できるのは、友人の春日部さやかだけ。けれど、さやかと話すうちに、伊織はバスケ部で人気の上条先輩のことが気になりだした。ついにはその“体質”を活かし、彼の後をつけ始め…(表題作)普通じゃない超能力者たちの恋。それは切なくて、おかしくて、温かい。名手が紡ぐ、優しさ溢れる六つの恋物語。 (裏表紙引用)



乙一さんの別名義、中田永一作品集。恋愛物語をテーマにしたものばかり。

「少年ジャンパー」
軽い引きこもりの少年が年上の瀬名先輩に恋したことから始まる成長物語。瞬間移動を使うから物事がうまく行くのではなくて、その能力を踏み台にして努力することが出来た少年の姿に胸打たれる。

「私は存在が空気」
メタファーではなく、本当に周りの人間から姿が見えなくなる少女のお話。その能力が身に付いた理由が、父の暴力というのが悲しいね。中田作品には自分を肯定できない自分を皮肉っているキャラクターが多いがこれはそれの最たるものかな。恋した相手の正体がそのまんまだったので「あれ?それだけ?」って感じ。オチは良し。現代ぽい。

「恋する交差点」
数ページのショートストーリー。トンネル効果で、交差点で繋いだ手が別の人間の手と入れ替わってしまうカップル。なんだか何を描いたのかよく分からんが平和でいいな。

「スモールライト・アドベンチャー」
スモールライトの説明はいらないと思うが。誘拐されたクラスの女子を救う物語。スカートの中うんぬんはともかく、まっすぐな気持ちが可愛い。おっさんだったらこれ変態だな。

「ファイアスターター湯川さん」
ごめん、もうスティーヴン・キングの小説しか頭に浮かばない。アパートの管理人を勤める大学生と、パイロキネシスの店子・湯川さんの恋物語。

「サイキック人生」
霊障があるとウソをつきクラスメートを混乱させる泉。死んだ妹と話したいという男子にこっくりさんを使って手助けするお話なんだけど、あんまりこういうウソ好きじゃないなあ。昔「天国からの手紙」とかいう番組あったじゃない。あれを思い出してしまう。自分が死者だったらやめてほしい。。ひねくれててすいません。


以上。う〜ん、「少年ジャンパー」とか表題作とかは中田さんっぽい中二病感があっていいんだけど。。あとはなんかよくわからない普通の小説だったな。面白いか面白くないかで言えば面白いんだけど。。乙さんだと思ってなかったらもう次は読まないかも。

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貫井徳郎著。角川文庫。

二日酔いで目覚めた朝、寝室の床に見覚えのない女の死体があった。玄関には鍵がかかっている。まさか、俺が!?手帳に書かれた住所と名前を頼りに、女の正体と犯人の手掛かりを探すが―。(「女が死んでいる」)恋人に振られた日、声をかけられた男と愛人契約を結んだ麻紗美。偽名で接する彼の正体を暴いたが、逆に「義理の息子に殺される」と相談され―。(「憎悪」)表題作他7篇を収録した、どんでん返しの鮮やかな短篇集。 (裏表紙引用)




貫井さんの、未収録作品集。描かれた年代がバラバラで、古いものでは1997年ものも数作。寄せ集めという感じではなく、「どんでん返し」をテーマにしている作品ばかり。実は図書館で取り寄せしたら、くだんのライセンス藤原写真集(表題作1作しか入ってないやつ)とコラボした本が来てしまった。一応それもパラパラ見たが…。意味不明すぎて白目。藤原さんは作品に登場する主人公のビジュアルとしては申し訳ないが再現できているとはとても言えないルックスだし、突っ込めるほどブサイクってほどでもないし。本当に心の底から意味がわからんビジュアルブック。まあそれで本屋で見たやつと違うな、と思って文庫を手に入れたわけだけど〜。

朝起きたら部屋で知らない女が死んでいた「女が死んでいる」、青酸カリを飲まされ殺された男性を殺したのは被害者に夫を殺された妻なのか?「殺意のかたち」、ホームレスが住み着いたせいで客離れしてしまった蕎麦屋と喫茶店の店主がホームレスを殺害する「二重露出」、有名デザイナーの夫が義理の息子に殺されると愛人に告白する「憎悪」、夫の浮気相手を着信履歴の名前だけで見当つけて殺しに行く「殺人は難しい」などなど、バラエティに富んだ作品集。

確かにどれも騙されたし、サクサクと読める面白さではある。でも作風のせいか、どれも軽いんだよな〜。「こんな理由で殺す奴いてへんやろ」と思ってしまうものが多くて、ストーリーには入り込めない。技巧だけを味わうにはいいかもしれないが。。うーん。ビジュアルブックを先に読んだ人、こっちは未収録作品集なのか、とわざわざこれも読まなくてもいいんじゃないかな。。。と、特定の誰かに言ってみる。

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貫井徳郎著。幻冬舎。

人間の心を捨ててもずっと一緒にいたかった。
何が“警察官連続殺人事件"を引き起こしたのか?
山本周五郎賞受賞作『後悔と真実の色』続編。渾身のミステリ長編!!(紹介文引用)



西條シリーズ第2弾ってことでいいのかな?かつて「指蒐集家事件」を解決し(「後悔と真実の色」)、不倫騒動で警察を追われ一時はホームレスにまで身を落とした西條は、現在警備員の職に就いている。

主なメインの視点は3人。この物語で発生した警察官連続殺人事件、最初に犯人は明かされているので、西條がこの捜査にどう関わるか、新人高城が警察の女性を軽んじる風潮の中どう解決していくかが読みどころ。犯人である渕上の悪魔のような犯行心理も興味深い。

西條が馴染みの古本屋で店主と心を通わせるシーンが好き。理那との接触で西條のスーパーマンのような洞察力が生かされていくのが痛快だが、この本好きの店主の力も大きい気がする。理那と村越のコンビも、最初はセクハラ調で飄々とした村越に反感を抱いていた理那が村越の能力を認め、お互いを尊重し合って事件に向き合うようになる姿が素敵だった。


事件そのものは、さすがに今どこにでも防犯カメラがある時代、これほど何人もの警察官を殺せるかっていう疑問もある。渕上の、レイを全力で守るという決意が「殺人」というそこから最も遠い手段でしか表現出来ないところも。頭がいいのか悪いのか。過去に経験した事件は確かに善良な市民として許しがたいものだが、無関係の人間まで手にかけた時点でもうアウト。ラストの救いがたいあの人物と同じく彼もそういうことなのだろうか。そもそも憎むべき相手は白バイ隊員じゃないだろう。理那の父親との感動的なエピソードや、古本屋店主の娘のストーカー問題など、背景がしっかりしていただけにちょっと残念。

というわけで数点惜しいが、最後まで面白く読ませられた。貫井作品で一番好きなジャンルだ。

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貫井徳郎著。双葉文庫。

母は死に、父は人を殺した―。五歳で伯父夫婦に引き取られた峰岸晄は、中華料理店を手伝いながら豊かさとは無縁の少年時代を過ごしていた。心に鍵をかけ、他者との接触を拒み続ける晄を待ち受けていたのは、学校での陰湿ないじめ。だが唯一、同級生の木下怜菜だけは救いの手を差し伸べようとする。数年後、社会に出た晄は、まったき孤独の中で遂にある計画を実行へと移していく。生きることに強い執着を抱きながらも、普通の人生を捨てた晄。その真っ暗な心の底に差す一筋の光とは!?衝撃のラストが心を抉る傑作長編。 
(裏表紙引用)



こ、これはキツイ…

内容は犯罪小説×社会派という感じで、幼い頃母に軟禁され餓死しかけた上、目の前で父が母を殴り殺すという体験をした主人公の峰岸晄の半生を描いた物語。最初はイジメを甘んじて受け、怖いからではないと達観したような口を利く晄にまるでいい印象はなかった。いくら辛い過去があったからって、万引きや詐欺という悪事にまるで抵抗を抱かないのってやはり普通の感覚ではないなと。

しかしその印象は作品の途中から覆った。晄の体験してきた過去は、本当に身をえぐられるような我々には想像もつかない過激なものだったから。幼馴染の怜菜や従兄弟の慎司に対する態度を見ると、根っからの悪人ではなさそうだなあと思いつつ。なのに25歳の時に出会った日野との友情がああなるなんて…やはり心の底の闇は相当深い。

貫井さんの作品であることを考えるとこれも相当挑戦している作品だと思うが…。気分的にコレは完全にアウトだった。確かに衝撃の結末ではあったし、放り投げているわけでもなかった。うーん、でもねえ、貫井作品にありがちな、「………で?」の系統だった。問題提起はしているけれど響いて来ないというか。。かと行ってドス黒さに徹底している感じでもない。こういう技巧的なもの、新しいものを表現していくスタイルにそっちの要素が加われば鬼に金棒だと思うのだが…。

まあ、貫井さんとしてはこういう評価不本意だろうね。

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