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この映画の予告編は見ていなかった。
水曜日の夜、どの映画を観ようかとミニシアターを検索した時に見つけたこのタイトルにすぐにGO!のサインが出た。
ハンガリー。
それは、私にとって特別な国。
ポーランドやチェコなど、旧ソ連に蹂躙された歴史を持つ国に、なぜか強く惹かれてしまう。
大学時代に「存在の耐えられない軽さ」を観た時の衝撃を思い出す。
4年前にチェコを訪れた私は、とても懐かしい気分になり、民主化されたチェコの街を歩くことを幸せに思った。
自由って素晴らしい。
この映画も私たちにとってありふれたものである、その「自由」を主題としている。
ソ連の衛星国?
衛星国ってどういう意味なんだろう?
それは、精神の自由のない、沈黙の国を意味するらしい。
AVOという秘密警察が国に駐屯し、国民を共産主義に染め上げ、反逆者を密告する者の身を守る。
歴史的な場面、場所、オリンピックを絡めた出来事は全て事実に基づいているが、登場人物に関わる部分は勿論フィクション。
そのノンフィクションとフィクションのハーモニーが絶妙過ぎた。
主人公の二人、ヴィキとカルチは、革命という精神的絆のもとに結ばれる。
水球の花形選手のカルチは、政治に興味がなかったが、ヴィキの聡明さ、意思の強さに惹かれ、自国のあり方を問うようになるのだ。
強いスポーツ選手は共産主義の象徴であり、選手同士は嫌いあっていても、旧ソ連はスポーツ選手を優遇していた。
その優遇された身分を捨て、自由のために戦うカルチ。
人を殺してしまう苦しみ、家族を、とりわけ幼い弟を守りたい気持ち、オリンピックで優勝する夢。
彼の心は戸惑いつつも、祖国の自由のために戦うことを選ぶ。
20世紀のジャンヌ・ダルクを再現したかのようなヴィキも素晴らしかった。
はかなげで聡明な顔立ちの中に、悲しみが宿っている。
AVOに両親を殺されているからこその深い怒りと苦悩。
映画の中で二回、マジャール人の悲劇を歌う国家が流れる。
何度も他国に支配される悲しみを歌うメランコリックな歌詞とメロディ。
あの詩には泣けてしまった。
ヴィキの最後は、あの歌と幸福の時計に見届けられる。。。
私には大国に支配される苦しみはわからない。
でも、自由が奪われた苦しみは少しだけ想像できる気がする。
今あるものが無くなるなんて考えられない。
それにしても、歴史にこんなにも翻弄されつつも、戦おうとする若者がいたなんて、今の日本では驚きの事実だ。
しかし、実際に存在した戦った人たちの声が聞こえてくる。
「自由の国に生まれた者には理解は及ぶまい
だが私たちは何度でも繰り返し噛み締める
自由がすべてに勝る贈り物であることを」
天使のうた −マライ・シャンドールー
公式サイト↓
http://www.hungary1956-movie.com/
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