星屑ひとつ

ゆきの初期作品「先生は俺のモノ!」(ケータイ小説)を掲載中♪ 拙い作品ですがお楽しみ下さい。

最後に・・・

最後まで閲覧頂きありがとうございました<(_ _)>
この予約投稿が無事表示されるなら、皆さんに最後までお届けできてホッと安心しました。
このお話は、小説を書き始めた頃、小説投稿サイトのモバスペにて書いたものです。
他にも拙いお話ですが執筆当初のお話をUPしていますのでお楽しみください。
他にもベリーズカフェにもUPしています。
「メクる」にもUPしていますが、この予約投稿時点ではサイトがメンテナンス中で開けないので、別の私のTL専用ブログからメクる作品読めますしリンクも貼っていますので、メクる再開後にお楽しみください。

今日でyahooブログともお別れですが、寂しいですねぇ。
でも、他のサイトでも活動していますので、これからも宜しくお願いします(*´∇`*)


恋愛小説公開中のブログ


本当にこれまでありがとうございました<(_ _)>


◆[杉田君の気持ち](11/12)
「そもそも振られたのは俺で、留美は俺を振ったんだぞ。なのに、何だよその顔は」


杉田君は私を担ぎながらもの凄く怒っている口調で言い続けた。


私は何も言えなくて黙って聞いているだけ。


すると杉田君は止まることなく次々と私に文句を言い続ける。


「まるで、オバケみたいに目は真っ赤で腫れあがって。瞼なんてその中に何か入れてるのか? ったく、こんなに醜い顔して学校へ出て来るなよ。生徒が見たら絶対に男に振られたって直ぐに分かるだろう」


かなり厭味な言い方をされているけれど、それがどこか心地よくて私は杉田君の背中を必死で掴んでいる。


振り落とされないようにと言うよりは、杉田君のこの温もりが嬉しくて離したくなくてずっとくっ付いていたくて。


昨夜はどうしてあんなに杉田君のプロポーズを悩んだのだろうって思える程に、今は素直に杉田君と一緒に居たいって思う。


「あの・・・杉田君、私ね」


「お前は黙っていろ。お前が喋ると変な方向へ行ってしまうから、お前は喋るんじゃねえ」


「けど・・・私の気持ちも聞いて欲しいの」


「訊かなくても分かっているよ。お前のその顔が物語っているだろう」


そんな事を言われてしまうと、私は何も言えなくなる。と言うか、私の顔ってどんな顔をしているのだろう?


私の顔が物語っているとは、何をどう物語っているのか・・・


それが自分では分からないからどう判断して良いのか、杉田君の言葉をどう解釈すればいいのかが私には分からない。


だから、やっぱり、聞いて欲しい・・・


「でも!」


「煩いな、お前は俺がいなきゃ本当にダメな女で、俺にはお前がいなきゃ幸せになれないんだ。だから、結論としては俺たちは一生一緒に居なきゃいけないんだよ」


「・・・」


「分かったか?」


「うん、分かった」


思わず納得してしまった。


だって、杉田君に振られてしまったと思っていたから、完全な抜け殻になってしまっていた。


杉田君がいないと仕事だって出来ない。こんな情けない私になってしまう。


今は何も考えずに杉田君との未来を考えていきたいって・・・まだ、プロポーズされて、NOと結論付けられてから数時間しか時間は過ぎていないはず。


まる一日だって過ぎていないのに、もう、私はこんな調子だ。


だから、杉田君との未来を本気で考えることに決めた。


だって・・・私は、



「玲人が好き」


「ちゃんと人の顔を見て告白してくれよな」


そう言うと、杉田君は私を肩から下ろして今度は膝からグイッと抱え上げられお姫様抱っこをされてしまう。


まだ、ここは廊下のど真ん中で保健室へ行く途中なのに。



「人が見るわ」


「もう、授業が始まるだろう、誰も見ちゃいないよ」



そう言う杉田君は嬉しそうな顔を見せて私の顔に近づくと優しく唇を重ねた。


「好きだよ、留美」



そう言ってとても甘いキスをしてくれた。キスをしながら杉田君はしっかり前方を見ながら保健室まで辿り着くとは・・・私には考えられないことで驚きで一杯になっていると、


「さて、そんな酷い顔をして一体どうしたのか、ちょっと身体検査でもしてみようか?」


と、とっても意地悪な表情をする杉田君の指先はとても厭らしくて私の服のボタンを次々と外していく。




◆[杉田君の気持ち](12/12)


「まってここ保健室よ」


「鍵かけたし大丈夫だろう?」


「でも!」


「ベッドもあるし、留美のおっぱいは相変わらず柔らかそうだし美味しそうにしてるじゃん」


そう言って、あっという間に杉田君に倒された私は幸せの中を彷徨うことに。


結局、それから杉田君の腕の中で幸せな時間を繰り返すことに。



私は、とうとう杉田君に捉まってしまった。



もう、逃げることは出来ないし、逃げだせないと分かると、何だか肝が据わってきそうだ。


人間不思議なもので一度肝が据わると何も怖くないって思える。


だから、杉田君との未来を共に過ごしたいと思えば、きっとそんな未来が待っているのだろうと思う。




「で、俺の祖父と留美の両親への挨拶は早い方が良いだろうなぁ」


「え? どうして?」


「しっかり子種仕込んだから」


確かに、今の私達は、保健室のベッドだと言うのに、二人して裸で抱き合っている。


だからと、そんなセリフはこの場には相応しくない。


そんな恥ずかしいセリフを平気な顔をして言う杉田君が信じられなくて私は戸惑うばかり。


もしかしてこの先ずっと私は杉田君に振り回されっ放しになるんじゃないの?と、この先がとても心配になってきた。



「大丈夫、俺がついているから。安心して俺についてこいよ」



そんな嬉しいセリフを言ってくれる杉田君。


でも、私達にはまだまだこの先いろんな障害が待っている様な気がしなくもないけれど、今はこの幸せを大事にしたいと思う。


だから、



「これからもよろしくね、玲人」




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◆[杉田君の気持ち](8/12)
「私はまだ今は結婚とか考えられないの」


嘘はつけないし本気で考える必要が有ると思えば今はこれしか言えない。


そして、杉田君の気持ちに答えるために私もこれからは真剣に考えて悩もう。


「そうか、答えはNOなんだ」


杉田君は体の力が抜けたように、私から離れると座り込んでしまった。


「病み上がりに今のセリフは効けたな」


「私はイエスもノーも無いって言ったつもり。だって、教師になったばかりだし、杉田君の気持ちに精一杯答えたいから、真剣に考えたいの」


私は将来のことを真剣に考えようと思っただけなのに・・・


杉田君は頭を手で覆うと弱々しい声で言う。


「悩まなきゃいけないほどの相手と結婚しても幸せになれないよ」


「私は杉田君の事を真剣に考えようと思っただけよ」


「俺は直感で留美を失いたくなかった。それは、今だけじゃなくて、これから先もずっとだ。留美と離れているのが辛い」


こんな弱々しい杉田君を見たのは初めてかも知れない。


いつもはとても元気で悪戯っ子みたいで、それでいて自信家の何をさせても出来る子って思っていた。


あの傲慢さが逆に杉田君らしくて胸をドキドキさせていた。


なのに、今、目の前にいる杉田君はとても頼りなげで儚くてこのまま消えてなくなりそうな、そんな脆い杉田君を見るなんて・・・


「俺、帰るよ」


「でも、まだ体調が」


「留美のお陰でずいぶん良くなった、ありがとう」


悲しげな笑顔を向けながら杉田君は私の前から去っていった。


あっという間の事だった。


いつもならふざけて絡んで来そうなのに、何も言わずに私の腕からスルリと抜け去るように、杉田君は私の部屋から出ていってしまった。


あまりにも呆気ない去り方に私の胸にポツンと何かが空いた気がした。


部屋を見渡すと、さっきまでこの部屋にいた杉田君がいないことに、それがとても寂しく感じる。




◆[杉田君の気持ち](9/12)
その夜、結局私は眠れなかった。


杉田君が私の前から完全に居なくなりそうで、それが怖くて布団に入って目を閉じても眠れなかった。


羊を数えても、杉田君の格好をした羊が行列して、私の前を永遠と群れが続くと、私は何処にも動けなくて杉田君の名前ばかりを叫んでいて、泣いていた。


杉田君の言う直感てこんなことを意味するのだろうかと、そんなことを考えた。


きっと、私が中途半端な考えで、気持ちがフラフラしてるからプロポーズされても答えられないんだ。


真剣に考えていると言う私のセリフは現実逃避と同じで杉田君のプロポーズから逃げていただけ・・・


目尻に涙が溜まり手で拭いとる。その度に目尻を擦り赤く腫れ上がる。


翌朝、それがどんな顔を作るのかなど、そこまで考えたことは無かったし、そんな余裕もない。


私は泣き疲れたのかいつの間にか眠っていた。


それも、窓の外がうっすらと明るくなる頃に。



「おはようございます!」

「先生、おはよう!」

「おはよう!」


朝、いつもと同じく校舎内は登校した生徒や出勤してきた教師の挨拶で賑わっていた。


元気に登校した生徒達は朝からとても元気で、


「若いなぁ、お前ら」


流石に高校生は元気が良い。まだ悪戯っ子の子どものように弾ける様子に杉田君は溜め息を吐いていた。


「オッサン臭いこと言うなよ、杉田」


「いやぁ、俺にその若さがあればなぁ。もっと、強引にできたんだろうなぁ」


「は? 何言ってんだよ。第一、お前が強引じゃ無かったことあるのか?」


教室の男子生徒にそんなセリフを言われハッと気づく自分がいる。


そうだ、俺は俺なんだ。


何かを悟ったのか杉田君は急いで教室を出ようとした。


「おい、どこ行くんだよ。授業始まるぞ! 杉田!!」


「俺の人生の一大事に授業なんて受けていられるか!」


「なんだ?!」


病み上がりの体なのに杉田君は有り余る若いその体力で校舎内を走り抜けると、職員室めがけ急いだ。


杉田君がやって来ているとは知らず、私は職員室の自分の机で脱け殻かミイラのようになって座っていた。




◆[杉田君の気持ち](10/12)
「相川先生? どうしちゃったんですか? 相川先生?」


「坂田先生、放っておきなさい。さっきからそんな調子なんですよ。まるで抜け殻。これじゃあ授業なんて無理でしょ」


「じゃあ、授業はどうするんですか? 生島先生」


「自習にすれば生徒達喜ぶでしょうから、それでいきましょう」


「・・・それで良いんですか?」


「ああ、大丈夫でしょう。さあ、坂田先生は授業に遅れないようにお願いしますよ」


呑気なセリフを言う生島先生は私の顔にペタリと何かを貼り付けて職員室から出て行った。


私は本当に自分がミイラか抜け殻の様な状態になっていて、額に貼り紙を貼られていることすら自分でも良く分かっていなくて、ぼーっと座ったままだった。


生島先生が額に何かをペタリと貼ったのは何となく分かっているけど、今はそんな事を考える力もなくなっている。


授業だからと他の先生達も次々職員室を出て行くが、何故か皆クスッと笑って出て行くのが分かる。


人の笑い声にだけは何故か敏感に反応してしまう私。


これから私は授業じゃなかったっけ?


違うんだろうか? ああ、もう、なんだかどうでも良くなった。




そして、職員室へ向かう杉田君は・・・・


「なあ、見たか? あの相川先生の顔」

「見た見た、凄い顔だったよな?」

「あれで良く学校へ来られたものだよな」


職員室から出て来た先生らの話し声が聞こえた杉田君は足を止めてその会話を聞くと妙な胸騒ぎがした。


すると、再び職員室へと急ぐ。


「留美!! いるのか?!」


いきなり教師相手に「留美」呼ばわりする杉田君。


授業が始まるからと職員室は空っぽではないのだから、授業のない先生らは驚いて何事かと職員室へ入って来た杉田君へと視線を向けていた。


「留美!」


私の名前を呼んで駆けつけてくれた杉田君。だけど、私には杉田君の姿は見えない。目の前が真っ白で何も見えなかった。


あれ? 私、どうして目の前が真っ白なの?


「何してんだよ!!!」


「いったーーい!!」


生島先生の悪戯で額に貼られていたのはガムテープで貼られた貼り紙だ。



「なにすんのよ!!」


思わず貼り紙を外した杉田君に怒鳴ってしまった。


杉田君は私に剥がした張り紙を差し出し見せてくれたが、そこには、生島先生の字で『バカ』と一言なぐり書きされていた。


例え先輩教師とはいえ、これはあんまりだと思う・・・けど。


こんなことを書かれても文句は言えない。それだけ今の私はトンマでアホだと思う。


そう思うと急に悲しくなって泣きたくなってしまう。


「おい、立て」


私の目の前には杉田君がいて、何故か私に命令をしている。 今更何の話があると言うのか。


昨日、杉田君は私の答えを勝手に「NO」と決めつけて帰ってしまった。


だったら、もう私には用はないはずなのに・・・


「さっさと立て!」


「ひゃっ?!」


杉田君に腕を掴まれて椅子から無理矢理立たされると、今度は私を俵の様に担いだ。


職員室でこんな風に担がれるのって二度目? と、思った時は、「ちょっと相川先生を借りていきますから」と杉田君にさらわれてしまった。


「どこ行くの?!」


「保健室」


その言葉がどう言う意味なのか、心臓がドキドキして破裂しそうになる程に、私は何かを期待してしまっている。




◆[杉田君の気持ち](5/12)
一人暮らしをしている杉田君にこんな温かい食事を作ってくれる人は誰もいない。


そしてその役割を果たすのは彼女になった私だけなのだろうか?


実家へ帰れば家族が待っていると思うのだけど・・・そう言えば、私は杉田君の家族について聞いたことがないように思う。


うーん・・・生島先生がイトコという話は聞いた。でも、苗字が違うからもしかしたらお嫁に行った伯母さん?それとも叔母さんだろうか? そのおばの子どもが多分生島先生になるのだろう。


その逆も考えられる?・・・ どちらにしても私は杉田君の事は何一つ知らないのだと改めて思い知ることになる。


「ねえ、杉田君」


「二人の時は玲人だろ?」


「・・・・えっと」


いきなりそう言われても困る。それに授業中も玲人って呼びそうで。だから私としては日頃から杉田君と呼びたいが・・・かなり杉田君の表情は怖い。


「コホン・・・あのね、その・・ね、」


「で、その杉田君に何を聞きたいのかな? 相川センセ?」


私が杉田君と呼ぼうとするとそうやって私を苛めようとするなんて・・・ズルいと思うのだけど。


これじゃ私が杉田君と呼べなくなる。


「なぁ、時期に同じ苗字になるんだから杉田は不味いんじゃないの?」


「・・・は?」


今、変なセリフを聞いたような気がするが・・・聞き間違いだろうか?


それとも、私の耳が少し変になっているのだろうか? 耳鼻科へ行く?


「なんて顔してるんだよ」


「え? どんな顔?」


「狐につままれた様な顔。そんなに俺って好かれていなかったんだ」


「は?」


その前の言葉で杉田君が言ったのはどう言う意味? 確か、同じ苗字になるって聞こえた様な気がしたが。それは聞き間違いだったのだろうか?


私はやっぱり杉田君の言う通りに狐につままれた様な顔をしていた。


そんな私の顔を見て杉田君はフッと笑うと「冗談だよ」と言って食事を続けたが・・・・私にはそのセリフが冗談には思えなかった。


という事は・・・同じ苗字とは、私と杉田君が同じ苗字になるって意味?!


「もしかして私が杉田って苗字になるってこと?」


「嫌なんだろう?」


嫌とかそう言う問題ではなく、それって私に杉田という苗字を名乗れということ?


それって私が杉田君と????  そう言う意味じゃないの?


「あの・・・恐れ入りますが、その言葉の意味を教えてくれませんか?」


つい緊張で正座して姿勢を正した私はそんなセリフを言っていた。


すると杉田君は食べていた箸を止め、お皿に箸を置くと、私と同じ様に正座をするかと思えばテーブルの横へと移動し、正座をし直したかと思うと、いきなり土下座を始めた。



「すぎ・・・た・・く・・ん?」


「俺の嫁になって下さい」


「なんだ、そんなこと、いいわよ、それくらいなら・・・って・・・え?・・・ええ?!!!」


頭を上げた杉田君はニヤリと笑うとまた元の位置に戻って食事の続きを始めた。


まるで何事もなかったかのように・・・・


今のセリフって、もしかして、プロポーズということなのだろうか?


私は杉田君にプロポーズされた?


なのに、杉田君は平然として煮魚をパクパク食べている。


いったい今何が起こっているのか、自分でもいったいどうなっているのか、さっぱり分からなくて頭が変になりそうだ。




◆[杉田君の気持ち](6/12)
「あの〜、恐れ入りますが・・・」


「・・・言いたいことあるならハッキリ言え。それとも、早く子供欲しいとかのお願いなら、まだ留美と二人だけでエッチ三昧な生活したいから却下だ」


「そうじゃなくてですね!」


「あぁ、結婚式やハネムーンは無しだ。俺、一応学生だからさ。学生結婚になるだろう、だから入籍だけしよう」


「・・・そうじゃなくてですね」


ああ、何をしどろもどろになっているのか・・・


第一、杉田君相手になんて喋り方をしているのだろう。絶対に変に思われている。


黙ってご飯を食べてはいるけれど、その様子を見る限りはかなり機嫌は宜しくない。たぶん・・・


けれど、本気でプロポーズしたのだろうか?おふざけでしたのかが区別がつかない。


だから、本気になって答えて良いのか、どう反応して良いのかを悩んでしまう。だけど、こんな風に悩むなんてそれこそ変だ。


相手はまだ学生の身分で、私達が出会ってまだ間もないし、そこまでお互いを知っている訳では無い。なのに、何故、そんな私と杉田君が結婚したいと思うのか。


それに、もし、万が一、杉田君が私と結婚したいと思ったとしても、それは一時的な感情で、多分、病気になった杉田君を看病して手作りご飯を食べさせたから?


「なあ、留美って家族は? 一人暮らしってことは今は実家から離れているんだろう? 実家ってどこ? 両親に連絡はつくんだろう?」


「え、あ、実家は隣の市で両親がいるわ・・・って、挨拶にでも行くつもりなの?!」


ご飯を食べ終わった杉田君はあくまでもその態度は冷静で、食器を重ねると台所へと運んでいる。その立ち振る舞いを見ている限りでは、とても姿勢が良くて礼儀正しい。


きっと、杉田君は育ちが良くてお坊ちゃん育ちなのだろう。


そもそも本格的な海外留学の経験ある杉田君が私の様な一般庶民の出であるはずがないのだから。


そんな私を相手に本気でプロポーズ? 信じられない・・・・と思うのだけど。


「さっきから何考えているんだよ? あ、どっちのアパートで暮らすとか寝室をどうしようかとかエッチなこと考えてた?」


「ち・・・違います!! 杉田君が突拍子もない事言うから驚いて。そんな冗談は」


「冗談じゃないよ、俺、本気で留美にプロポーズしているんだけど」


台所から私を見つめる杉田君の表情は紛れもなく真剣な表情だ。とても熱い瞳をしている。


やはり杉田君は本気で私にプロポーズしているんだ。





◆[杉田君の気持ち](7/12)
杉田君のプロポーズを本気にしていなかった私を見て杉田君は少し怒った顔をしている?


食器を流し台へと置いた杉田君はゆっくりと茶の間にいる私の方へと歩いてやってくる。


その足取りがとても重々しく感じて目を逸らしてしまう。


「なあ、留美」


「・・・その」


こんな風にプロポーズされた事ないからどう考えて言いのか頭が回らない。


って言うか、プロポーズなんて生まれて初めてされたからもう頭の中が滅茶苦茶で殆どパニック状態なのに・・・


「おいで」


目の前に立っている杉田君は座っている私に手を差し伸べる。そして、その手を取る私は杉田君に引き上げられ立たされる。


何をしようと言うのか身長の高い杉田君を見上げると、杉田君にすっぽり抱きしめられ頭を撫でられた。


「杉田君?」


「・・・俺、幼い頃に両親を亡くして以来、弟と二人で親父の実家の祖父の家で暮らしていたんだ」


思いがけない杉田君の告白に少しドキッとしたけれど、その昔話をしてくれたことより杉田君が幼い頃に両親を亡くしたという事実に私は戸惑った。


「亡くしたって、両親一緒に?」


「交通事故だったんだ。二人は慈善団体のパーティに招待されていてそこへ行く途中に交通事故に遭ってそのままいなくなった。俺の幼い頃の話だよ。弟なんて親の顔も思いだせない程に小さい頃でね」


「それからお父さんのお祖父ちゃんの家で暮らしてたの?」


抱きしめていた杉田君はコクンと頷いただけ。何も言わずにいたけれど、抱きしめるその腕がとても悲しそうに感じてしまった。


幼い頃に突然両親を亡くしその悲しみの深さは私には想像も出来ない程のものだろうと思う。


「だから、俺は家族には憧れがあるんだ。弟の彼女が産んだ甥っ子がどれほど可愛いか留美には分かるか? 俺にも自分の血の繋がった家族が欲しいんだ」


両親の愛情に飢えて育った分、それだけその愛情を新しい自分の家族に求めるその気持ちは十分に分かる。


だけど、だからって、付き合い始めたばかりの私が相手なのは、きっと、弟に子どもが生まれたのが影響している様に思える。


もし、杉田君が今違う女性と交際していても、きっとその女性に結婚しようとプロポーズをするのかも・・・きっと、そうだ。


「杉田君の気持ちは分かるよ。家族が欲しいっていうのは、でも・・・焦り過ぎじゃないの? まだ杉田君は結婚するには若いしそれに相手は誰でもいいってことにはならないでしょ?」


「そうだよ、俺は留美だから良いと思ったんだ」


何故私なのかよく分からない。でも、本当にそう思ってくれている?


浮ついた考えではなくて真剣に考えた末の結論なのか。もし、本気で私と夫婦になって家族を築きたいのであれば、私も真剣に考えて返事をする必要がある。


「俺の心をここまで惑わせた女は留美が初めてだし、留美が他の男のものになるなんて絶対に許せないし・・・」


もしかして、私が先輩と九州旅行へ行ったあの時、杉田君を相当不安にさせたのだろうか?


その反動からプロポーズをしている?



◆[杉田君の気持ち](3/12)
熱に浮かされ始めたのか杉田君が布団の中に入っても私の手を握り締めては何かをブツブツと呟いている。


「どうしたの? 苦しいの? 頭冷やそうか?」


額を触れるとやはり熱い。冷たいタオルで冷やした方が良いと思ったけれど、握り締めた手を離そうとしない杉田君。


「冷たいタオルを持ってくるからね、待っててくれる?」


声を掛けても反応がない所をみるとやはり眠っているのだろう。呟いていた様に感じたのは熱に浮かされたから。ならば早く額を冷やさないと・・・


急いで浴室へと行き洗面器を持ってきては台所へと走る。冷凍庫に僅かだが氷がある。その氷と水を洗面器へと入れたらタオルを持って杉田君の所へと行く。


少し汗ばんだ様子の杉田君の顔はかなり赤くなってきた。このまま様子を見るだけで良いのだろうかと少し不安になるも、兎に角、額を冷やすのが先だと氷水に濡らしたタオルを額に乗せた。


余分に持ってきたタオルで首筋を拭いては背中や胸辺りに汗を掻いていないか確認した。


体はかなり熱くなっているがまだ汗を掻いている様には感じなかった。



「杉田君、苦しくない?」


「・・・」


返事のないところを見ると、やはり眠ってしまったのだろう。


遠くに聞こえていた雷鳴が少しずつ近づいていると感じると、窓のカーテンを捲って少し外の景色を窺った。


かなり稲光が走っているのが分かるが、あの雷がどの方向へ行くのか。こちらへは来ません様にと祈るしかない。


だって・・・私は雷が大嫌いなのだ。今、ここで雷が来てしまうと私は杉田君を押し退け布団の中に潜ってしまいそうだ。


病人の杉田君を布団から追い出すなんて出来ないし、かと言って、雷がやってきたら逃げ場のない私はどうしたらいいのか・・・


それから暫くは遠くに聞こえていた雷が少しずつ近づいて来た。その頃には杉田君の息が荒かったのが少し落ち着いて来たようだ。


でも、額のタオルを交換する時に触れてみると、やはりまだ額は熱い。


「旅行で無理させちゃったのかな?」


追いかけて来てくれた旅行先で杉田君とは甘い時間をいっぱい過ごしたけど、それが良くなかったのだろうかと、そんな事を考えてしまう。


或いは、引き取っていった弟の彼女とその子どもの世話で大変な目にあったのか・・・


どちらにしても杉田君は誰にも頼ろうとせずに自分一人でしょい込むつもりなのだろうか?


そもそも、あの子達をどうしたのだろう? 杉田君のアパートで暮らしているんだろうか?


だとしたら、今頃は・・・杉田君を待っている?


それって弟の彼女とその子どもの三人で暮らしているって事?


・・・・杉田君は家族って話したけど、本当に年頃の血縁関係のない男女が一緒に暮らして何もないのだろうか?


もうー! 疑えばキリがない。それよりは、今は杉田君の体調が良くなるように看病すること!


ピカッ!  ドーーーン!!!!



「きゃっ!!」


「今のは落ちたな」


「す・・・杉田君?」


思わず今の落雷に私は杉田君が眠る布団に飛びついたけれど・・・それで目を覚ましたのか杉田君が布団から起き上がった。


「留美、震えている、おいで」


両手を広げている杉田君を見ると、やっぱりここは杉田君の胸の中へ飛び込みたい。


雷鳴が怖いからじゃなくて、心細いとかでもなくて・・・・やっぱり、私は、



「杉田君、好きだからね!」




◆[杉田君の気持ち](4/12)
思わずそんなセリフを言ってしまった。だって、本心だから・・・杉田君には私の気持ちをしっかり伝えたかったから。


「黙って抱かれてろ」


そう言う杉田君の体はとても熱かったけど、雷鳴と落雷で私の心臓はもっとヒートアップしそうだ。


バクバク言う心臓と雷に震える私をしっかり杉田君は抱きしめ乍ら眠ってくれた。


杉田君が病人なのに私がこんな風に甘えちゃいけないって分かっているのに、どうしても雷が怖くて杉田君の胸に縋ってしまった。


私の方が年上なのに、すっかり甘えていた。


翌朝、目を覚ました私が起き上がろうとすると、湯たんぽを抱きしめているのかと思えてハッと昨夜の事を思いだした。


杉田君は熱があるにもかかわらず、雷に怯える私を抱きしめながら眠ってくれた。


私は急いで救急箱から体温計を取ると杉田君の脇に挿し込んで体温を測った。


ピピッという電子音が計測の終わりを知らせると、液晶画面から見えるその数字に目を丸くした。


「38.5度」


「あ、やっぱ、熱下がってないんだ。ダルイはずだ・・・」


少し辛そうな顔をして私を見上げる杉田君の顔はまだ赤い。昨夜、雷を怖がった私を抱きしめた所為できっと悪化したんじゃないかって思う。


杉田君が好きって言いながら、好きな人に無理させた私は最低の彼女だ。


「ごめんね、杉田君が辛そうにしてるのに、熱があったのに、無理させちゃって」


「留美が元気ならそれでいい」


高熱で辛いはずなのににっこり笑ってそんなセリフを言う杉田君が憎らしい程に良い男にみえてしまう。これ以上私を惚れさせるなって言いたくなる。


「ごめんね」


杉田君に思わず抱きついてしまった。愛しくて愛しくて抱きしめたかったから。


「お・・・重い。俺、病人だからさ・・・」


「ご・・・ごめんなさい!! えと、おかゆ作ってくるね!!」



この日は、杉田君は高熱の為に学校はお休み。勿論、私も理由付けて学校を休んだ。こんな杉田君を一人にしてはおけない。


やっぱり、好きな人には健康で居て欲しいし大事にしたい。


そして、病院へ行って診察をして貰った結果、インフルエンザではなく単なる風邪とのことだった。2-3日もすれば大丈夫だろうとお医者様の言葉通りに杉田君は貰って来た薬のお蔭もアリその日の夜には熱も下がりかなり元気になっていた。


「若者は早いわね」


「年寄り臭いこと言うなよ」


「だって、年下には変わりないでしょ? はい、ご飯食べれる?」


夜には普通のご飯が食べれる様になった杉田君には体に優しい煮物と煮魚。テーブルに並んだお皿を見て杉田君は無言で魚を見つめている。


「あ、嫌いだった?」


「いや、こんな食事毎日したいなぁって思っただけ」


微笑む杉田君の表情の裏には少し陰りが見えた気がした。




◆[杉田君の気持ち](1/12)
突然の同棲生活の話をすれば、今度は突然部屋を出ていって、エッチ姿の私を置き去りにした。


杉田君の展開の早さに私の頭はついていけない。


何故私が同棲生活にうんと言わないのか、その理由を聞こうともしないで、実にせっかちな杉田君を知ることになる。


それにしてもこの数日で杉田君の色々な面が見えて、面白いと言っていいのか、不思議なところもあると言っていいのか、随分と知らなかった杉田君を見ることが出来た。


それはずっと一緒に過ごしていたから知れたことで、もし、旅行にも行かず一緒の時を過ごさなかったら知らなかったことばかりだろう。




「相川先生? 授業に遅れますよ?」


「あ、今、行きます」


あの後、普通に学校にやって来た私。杉田君も楽しそうに友達と話をしている姿を教室で見かけた。


怒って帰ったのかと思えたけれど、教室にいる杉田君は何時もと同じ明るくてクラスのムードメーカー的な雰囲気でいる。


「授業を始めますよ。席について」


授業時間になり教室へとやって来た私はいつも通りに授業を始めようとした。


ところが、教室の生徒達は皆変な顔して私の方を一斉に見た。


一体何事か?と、少し不安になりながらも教室の異変に戸惑いながら授業を始めようとした。


「ねぇ、相川センセ、エッチしようよ」


「え? 何言っているの? 杉田君?!」


いつの間にか教室の生徒達に囲まれていた。そして、女子なのに男子生徒並みの馬鹿力で手足を捕まれ身動きが取れなくなっていた。いったいいつの間にこんなに生徒に囲まれたのか・・・


「杉田君?! どういうつもりなの?!」


「センセが俺の言うこと聞かないから悪いんだよ。俺だってセンセの言葉聞く耳持たないよ? それより、皆と一緒に気持ちよくなろうよ? ね、相川センセ」


「だめっ! 杉田君?! 止めて!!!」


なのに、ジタバタする私は何故か裸の格好をしていた。そして、いるはずもない先輩が表れて「俺も仲間に入れてよ」と、薄気味悪い笑みを見せて私に近づく。


「やだっ!!! 杉田君!!」



「やだっ! 杉田君てば、杉田君!」




パッと目を覚ました私は、自分の部屋のアパートに寝そべっていた。あれ?私は今、学校に行って授業をしようとして、杉田君に犯されそうに・・・


辺りを見渡すと杉田君が何故か壁に寄りかかって座っていた。そして、体操座りをしたままの格好で眠っていた。


時計の針を確認すると12時辺りを指していた。窓の外を見るとまだ真っ暗で、今が深夜の12時だと分かった。


そして、怒って帰ったと思った杉田君は戻ってきてくれていた。



「杉田君」


私は杉田君が帰った後、学校へ行って授業をしている夢を見ていたんだ。


残酷な杉田君は本当の杉田君でなくてよかった。夢の中の出来事で良かった。



「こんな所で寝てたらダメだよ」



遠くでゴロゴロと雷の音が聞こえる。窓から外を眺めると遠くに雷鳴が響き渡るのを感じる。


その雷鳴がまるで自分の心の中の叫び声の様で落ち着かない。




◆[杉田君の気持ち](2/12)
床の上に座って眠る杉田君を布団まで運ぼうと必死に担ごうとするも、非力な女の腕ではどうにもできない。杉田君は軽々と私を抱きかかえるけれど、私は抱えるどころか体を横にすることさえ大変だ。


「杉田君、布団で寝よう」


何とか揺り起こして起こそうとしたけれど、杉田君は起きてくれない。というか、本当は起きているんじゃないかって思えるくらい、体が強張っている様に感じる。



「ねえ、どうして戻って来たの?」


「・・・・」


「怒ってるんでしょう? 私が同棲すると言わないから」


何度話しかけても杉田君は体操座りのまま動かない。仕方ないからとタオルケットを押し入れから出して杉田君の体に掛けた。


すると、ピクリと動いた体から杉田君は目を覚ましているのだと分かった。でも、杉田君は顔を上げて私を見ようとしない。


今は、放っておけばいいのだろうと思ったけど、私の気持ちを聞いて欲しくて杉田君の隣に同じ様に体操座りをして話しかけた。


「私ね、これまで男の人と交際だってまともにしたことないし、キスだってエッチだって・・・・全部杉田君に教えて貰って、今はねとても幸せよ」


全く動かない杉田君は黙って私の話を聞いてくれている様だ。だからそのまま話しを続けた。


「杉田君とはもっと沢山話をしたいし一緒に過ごしたい。だけど、好きだけで流されて一緒に暮らすのはどうかって思えてしまうの。杉田君はこれから教員免許を取るんでしょう? だったらこれから勉強が忙しくなるのに、私が一緒にいても邪魔になるわ」


「・・・なんで邪魔なんだよ?」


「だって、一緒に暮らしていたら期待するよ? もっとキスして欲しいって思うし、もっと抱きしめて欲しいって。他の人と話をしている杉田君見ると気分悪いし、他の女の子ともこんなことしてたかって思うと怒りがこみ上げてくるしで・・・私・・・・みっともないから」


何話ししているんだろう。私は、杉田君の勉強の邪魔をしてはいけないと話をしたかったはずなのに。教師である私がこれから教師になろうとする杉田君の人生の邪魔になってはいけないと、そう言いたいのに・・・


「みっともなくない! 俺は・・・俺は、留美がいてくれるだけで頑張れるし、もう一人は嫌なんだ」


思いがけないセリフに私は戸惑った。


杉田君は私に抱きつくと、とても悲しい鳴き声のような声が聞こえてきた。


もしかして、泣いてる? そんな様子にも取れる杉田君だが、荒い呼吸をする杉田君の体がとても熱く感じる。


「待って、熱があるの?」


抱きしめる杉田君の体がとても熱く感じた私は、すぐさま杉田君の体を引き剥がし額に手を当てた。 私の予感通り、杉田君の額からはもの凄い熱を感じる。


「何時からなの?」


「分からない・・・でも、何となく気分悪いって感じたのはさっきから」


辛そうな表情をしている杉田君を支え乍ら布団へと運んで行った。


「いい? 大人しく寝るのよ。そして明日病院へ行きましょう」


「留美も一緒に来てくれる?」


「ええ、行くわ」


まるで小さな子どもの様な不安そうな表情で私を見る杉田君。いつもは大人っぽい顔をしているのに、病気の杉田君はまるで幼い子供のようだ。


そして、あの杉田君のセリフ、『もう一人は嫌なんだ』これはどう言う意味なのだろう。




◆[愛の蜜月](15/16)
「おい、人の話聞いているのか? アホ面してんじゃねえよ」


杉田君は思いっきり私の頬を抓っては引っ張った。それも容赦なく皮膚が剥がれるんじゃないかって思うほどに。


「いひゃい!!」


「相変わらず不細工な面。そんな顔して俺を誘惑しようなんざ百年早いんだよ」


そう言って私の驚いている顔を覗きこんだ杉田君は私の唇に親指を当てて、ゆっくり指の腹で唇の淵を撫でている。


その指の柔らかくて生温かい熱が唇から伝わってくると、顔がもの凄く熱くなって自分でも頬がリンゴの様に真っ赤に染まっているのだろうと思えた。


「それで? 一緒に暮らしたくないの?」


そんなこと今まで考えたこともなかった。男の人と一緒に住みたいとか同じ部屋で眠りたいとか考えたことなかったから、どう返事して良いのか迷ってしまった。


「俺と一緒にいたくないんだ」


さっきまで優しく触れていた指がグイッと力が入って唇を押した。そして、その指は私の口内へと入って行くと私の舌を掴む様に押さえた。



「ん?! にゃ・・・に?」


「イエスかノーか早く返事しないと涎まみれになってもいいの?」


舌がざらざらする変な感触と何か妙な味がしてくると頭の中がぼんやりして考えなんてまとまらない。


「俺と暮らすのを決めるのがそんなに悩むこと?」


「・・・・」


こんなセリフ生まれて初めて言われて自分でも戸惑っている。確かに杉田君とはずっと一緒に居たいと思う。思うけど、簡単に一緒に暮らしても良いものなのか自分では判断できない。


悩む表情を見せたのがいけなかったのか、杉田君は指を口内から抜くと今度は自らの舌を入れては私の口内を再び犯しはじめた。


「ま・・・って」


「俺、完全に怒った」


「ま・・・」


待って欲しかったし、私の気持ちを聞いて欲しかったのに、杉田君はそんな時間を与えることはしなかった。


私が想像する以上に杉田君の独占欲が強くて、こんなにも杉田君が嫉妬深い人だとも思わなかった。



「あの先輩をここへ泊めたお仕置きしなきゃな」


何故か杉田君はあの時、杉田君が子どもを連れた彼女を連れ帰ったあの日、悲しむ私を慰めようとここへ先輩が泊まったことを知っていた。


そして、その怒りと私が一緒に暮らしたいという言葉を中々云わなかったからと「俺無しでいられない体にしてやる」と言われ、旅行から戻ったその日はずっと杉田君の腕の中で過ごすことに。


杉田君はこれまで付き合ってきた女の子にもこんなことしてたのだろうか?


一夜限りの相手にもここまで尽くしてたんだろうか?


そんなバカげたことばかりを気にしてしまう。


けれど、もし、杉田君が他の女の人とこんなことをすると思うと胸が締め付けられそうになる。きっと相手の女を罵っては叩いて追いだしてしまいたくなる。


私は、杉田君に完全に溺れてしまっているんだなぁって、完全に身も心も杉田君のものになったんだと思い知った夜だった。




◆[愛の蜜月](16/16)
ぐったりして布団のなかで意識朦朧としていると、おでこに何か冷たいものを感じた。


何が当たってるのだろうかと目を向けると、目の前には私の大好きなスイカの形をしたアイスがぶら下がっていた!


「きゃあ! これ、どうしたの?!」


「どうしたのって、買ったんだろ?」


「私の大好きなアイスを杉田君がどうして知ってるの?! でも、嬉しい」


「嬉しいもなにも冷凍室に入ってたんだよ、こんな子供っぽいのが好きなんだな」


そう言って杉田君の口にもスイカのアイスが一つ。それって、私がお風呂上がりに食べようと思って買い置きしたアイスなの?!


それを、私に無断で食べてるの?!


「ダメよ、こんなの」


「何だよ、アイスの一つくらい」


「人のものを勝手に食べるなんて信じらんない。そんな人と一緒になんて暮らせない」


杉田君は私が思っているよりずっと自由奔放で自分中心に世界が回っている。何処へ行っても女性にチヤホヤされていて、それが当たり前となって日頃の生活を送っている。


だけど、私はそうじゃない。


自分には自分の生活があるし杉田君に振り回される生活はしたくない。


確かに好きな人との暮らしは充実感あるだろうし身も心も満たされるだろう。


だけど、それが杉田君とでは本当に満たされる生活が送れるのか。私には分からない。


「それ、俺と同棲はしたくないってこと?」


「そうよ。なにも一緒に暮らす必要なんてないでしょ? こんな風に会えればいいのだから」


今だって一緒に同じ時を過ごしているのだから。このままで十分なのだと思える。


あまりにも時を同じくすると、きっと、杉田君の周りにいる女性達が目障りになるし、今まで以上に気になってしまう。


「私は一人で暮らしたいの。自分の好きな様に生活していたいの。自分の生活を誰かに振り回されるのは真っ平なの」


「俺は邪魔ってこと? 留美の生活には俺は必要ないんだ?」


邪魔なんて思ったことは一度もない。それに杉田君のいない生活は考えられない。少しでも一緒にいたい。居たいのに・・・・何故か、拒否反応が出てしまう。


「杉田君はまだ学生なんだから、同棲する暇があったら勉強しなきゃ。そうでしょ?」


「そこで教師面に戻るんだ。」


決してそんなつもりはない。杉田君が高校生ではなかったという事実と、既に飛び級でアメリカの大学も卒業していたことにはかなり驚いたけど。


でも、やっぱり、今はまだ大学の教育課程を勉強中なら学生が現役教師と同棲することは認められない気がして・・・


「俺の前まで教師でいるつもり? 俺、教育実習受けたらその後は同じ対等の教師なんだ。それでも、俺を生徒扱いする?」


私は首を縦にも横にも触れなかった。ここで認めたら同棲まで受け入れている様で返事は出来なかった。


「あんなに大事にしていた処女を俺にくれたから、てっきり留美にとって俺は特別な存在だと思ったけど・・・・そう思っていたのは俺だけだったんだ」


悲しそうな表情を見せる杉田君はその後何も私に話そうとはせず、服を着て身なりを整えると何も言わずに私のアパートから出て行った。


これで良かったのだと心の中ではそう思いながら、私はその夜、一人布団に潜って泣いていた。




◆[愛の蜜月](13/16)
けれど、考えてみれば普通は予約日以外の宿泊って無断で出来るはずはないし、それに勝手に宿泊した人数増やしてはいけないはず・・・


そう考えるとミスも何も私が手続きを完全に忘れていたけれど、杉田君がもしかしたら受付をしてくれていたから?


高校生と思っていても、やはり実年齢は高校生ではないんだと思ってしまう。そして、今、こうやってフロントで手続きをしてくれている杉田君は立派な大人の男性と見えてしまう。


実際、杉田君は未成年の高校生ではなく立派な大人だった。免許証を見せてくれたから分かったけれど。


「じゃ、どうも」


「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております」


え? 考え事をしていたらいつの間にか杉田君が受付を終わらせてしまった。


それってもう一泊した分の宿泊費用も杉田君が支払ったという事になる。それは絶対にダメ。自分の分は自分で支払わないと。



「杉田君、領収書を見せてくれる?」


「いいよ」


「良くないわ」


「俺が勝手に延長したんだから、俺が払うに決まってるだろ」


本当はここで支払うべきだけど、周囲の目があるから今は黙って杉田君の言葉に従う。だけど、一旦、ホテルを出て人目の付かない場所へと移動したらお金は支払う。


「こういうのは割り勘にすべきよ。でも、ホテルを出てからにしましょう」


「こういう時は男が払うものだろう」


「ダメよ、私は働いているんだから」


「俺もアルバイトならしてる」


杉田君がアルバイトを? それは初耳だ。いったい何時からアルバイトをしているのか、これまで聞いたことはなかったように思う。


第一、朝から夕方まで学校に居る杉田君がどこでバイトをしているのだろうか。


普通の高校生だって下校後からアルバイトは出来るのだから杉田君が出来ても不思議じゃないけれど、でも、放課後は・・・バイトへ行っている様子はこれまで微塵もなかった。


いったい何時どこでどんなアルバイトをしているのか訊いてもいいのだろうか。


これまでの杉田君を考えると教えてくれない様な気がして・・・


「そっか・・・そうだよね。杉田君だって普通に高校生してるのね」


こんなセリフで誤魔化してるけれど、本当は胸が痛くて締め付けられそうだ。いつだって私だけが何も教えて貰えない。杉田君は私を心底信用していないから?


もしそうなら・・・・私はどうしたらいい?


「あのさ、帰ろうか」


「え? どこへ?」


「俺達、一緒に暮らさないか?」


真剣な表情の杉田君。これまで見せたことのない杉田君の照れた顔。


夜のベッドで見せたあの蕩けるような顔とは違う、とても恥ずかしそうにしながらも決意の塊の様なそんな顔を初めて私に見せてくれた。



「俺、実は、高校生じゃないんだ」


「え…と、一旦退学してまた復学したんだよね?」


生島先生かそんな話しを聞かされた記憶がある。私の記憶違いでなければ。それとも生島先生言い間違った?


「俺、高校中退してアメリカへ渡って、あっちの高校と大学はもう卒業したんだ」


「へー凄いね……え?」


杉田君は私より年下のはずで、新卒の私は今年大学を卒業したばかり。なのに、年下の杉田君が既に大学卒業?!




◆[愛の蜜月](14/16)
明日からは通常通りの学校生活が始まってしまう。だから、私も杉田君も観光することなく飛行機に乗ってそのまま戻ることに・・・


いったい九州へ何しに行ったのか。本当ならば、阿蘇の大自然の中で雄大な景色を眺めていたはずなのに。


そんな愚痴をこぼすと、「今度はゆっくり計画を立ててから行こう」と言われてしまった。そんなセリフを言われて嫌と言える彼女はいない。


渋々頷くしかなかった私はどこか納得していない。


それは・・・きっと、杉田君が高校生ではないという爆弾発言をしたから。


そして帰りの飛行機の中で杉田君の昔話を聞くことになるとは、私は思いがけないことに驚きの連続だった。


それも、私が予想だにしない話に思わず言葉が失った。


『俺、日本の高校を出ていないから一度体験したくて祖父に頼んで形だけの高校生をしているんだ』


少し辛そうな表情をしながら言う杉田君は、まるで高校の男子生徒の様な甘えた表情を見せた。それがとても愛しくて守ってやりたくなるようなそんな杉田君の表情に思わず私は抱きしめていた。


私の腕を払われるかと思ったけど、杉田君は抱きしめる私をグイッと更に力を入れて抱きしめ返してくれた。


『生徒達の学園生活が乱れることなく秩序ある生活を送れているのか、監視目的じゃないけど、生徒の安全が守られているかとか、それを俺の目でチェックするのが条件で生徒に潜りこんで授業を受けているんだ』


『え・・・それって、杉田君は教師側ってことなの?』


『教師というより経営者側の目線と言ったらいいのかな・・・その、また詳しい話はいつかするけど、俺は今はこっちの通信制大学で教育課程を勉強中なんだ』


『向こうで就職しようと思わなかったの? だって、もう卒業してるってことは飛び級なんでしょう? そんな頭脳持っていて勿体ないよ』


そうだ、アメリカの高校と大学を飛び級で進級した杉田君は素晴らしい頭脳の持ち主だ。私のような凡人はどう足掻いても自分の学年の勉強を決められた授業時間で勉強するのがやっと。


なのに杉田君はそうではないのだから、その頭脳を活かすのが世の為人の為に繋がるものだと凡人の私はそう考える。


けれど、杉田君は違うのだろうか?


飛行機の中でそんな会話をした私たちだが、それ以上の話にはならなかった。きっと、杉田君は私にはまだそこまで心を許していないのだろうと思うと、少し・・・いや、かなり寂しい気がしてならない。


そして、私のアパートまで送ってくれた杉田君はその夜はここへ泊ると言い張った。


「でも・・・その、いいの? 例の彼女と子どもは」


「ああ、大丈夫。それより、自分の身を心配したら?」


部屋へ入るなりいきなり抱きしめられた私の心臓は、見つめられる杉田君の熱い眼差しにどれだけ耐えられるのだろうか?


「なあ、一緒に暮らさないか?」


突然の杉田君の言葉に私は目を丸くしては呆然としてしまった。



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