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◆[フランスからこんにちは](7/28) その日の視察は何事もなく無事終了し、宿泊先のホテルへと移動してもらうことになった。 坂田先生は一先ずは一日無事に切り抜けることが出来たと、見送った玄関先に座り込んでしまった。 「坂田先生大丈夫ですか?」 「生島先生!!大丈夫じゃないですよぉ!あんなフェロモンむんむんさせたら、もう〜体が反応して頭も変になっちゃいます!」 流石、坂田先生だ。 視察団の対応に緊張しているかと思いきや、視察団のフェロモンに緊張するとは。 呆れて開いた口が塞がらないとはこの事だ。溜め息が出てしまう。でも、素直にそんな台詞が言える坂田先生が羨ましいのかも。 私はその半分も杉田君に本当のこと話せてるのだろうか。 杉田君にしても、肝心な所で話は止まってしまう。いつもそうだ。私を信用していないから言えないのか、本当に誰にも口外出来ない秘密があるのか。 どちらにしても、私には一言も話せないのは杉田君からの信頼がまだ得られていないから。 そう思と悲しい。 いつも私の心の中に入り込んでは乱され、杉田君の顔色一つ窺ってはビクビクしている。いつまでこんな生活を続ければいいのだろう。 「やけに嬉しそうだな」 あまり機嫌の良さそうな表情をしていない杉田君が私の傍へとやって来ては腕を組んで偉そうな態度で私を見ていた。 ちょっぴりその高慢ちきなところが気に障るけれど、それでも、これが杉田君で強引な所は何故か嫌いじゃない。 「何が?」 「飯食いに行くぞ」 と、そんなことを言っては杉田君の手に捕まってしまった。握り締められたその手に私がドキドキしているのは気付かないのだろうか? 平然とした顔をして私の手を握る杉田君がとても憎らしい。もう少しは嬉しそうな顔を見せてくれてもいいのに。 「生島センセ、コイツは俺が連れていくからな。」 「飯なら俺も」 「お前は来るな。飯が不味くなる。」 杉田君と生島先生はイトコ同士らしいが、学校では一応教師と生徒なのだからお前発言はどうかと思うけど・・・ と、そんな事を考えていると怪訝な顔をしてたからか、私を見て杉田君が「不細工」とボソッと言った。 何だか自分だけが杉田君の事を考えてドキドキもハラハラもしているなんて不公平な気がした。 「杉田君、ごめんね。ちょっと今日は予定があるのよ。だから、また誘ってね!」 本当は何も予定はないし誰とも会う約束もしてない。だから、杉田君に捉まる前にと私はひたすら走って駐車場へと向かった。 「おい!!留美、待てよ!!」 後ろで怒鳴り声が聞こえているのは分かっているが、杉田君に振り回される私の気持ちも少しは分かってよ!
◆[フランスからこんにちは](8/28) 本当は杉田君ともっと一緒に居たいしもっとキスだってしていたい。 だけど、杉田君にとって私ってただの性的な女でいればそれで良いのだろうかと思わせる時がある。 それって、体を許し合える超便利で気楽な関係を求められているんじゃないかって。 何故こんな気持ちにさせられるのかと自分でも不思議なくらいそう思う。だけど、それには理由がある。 杉田君は今もまだ私を信じていない。だから、杉田君は何もかも隠し事をしてそれを私に話すことをしない。 なのに、好きって気持ちだけで流されて後で泣きを見るのは嫌だ。きっと私がこんなこと考えているなんて思っていないのだと思う。 何とか杉田君を巻いてアパートへ帰って来たものの、杉田君はこのアパートを知っているのだからあまり意味はなかったかも? きっと、今頃怒って玄関のベルを鳴らしては言うのよ。『勝手に帰るな!』ってね。 すると、実にタイミング良く玄関のベルが鳴り響いた。アパートに似合いの昔ながらのベル音だ。 ビービービーと、煩く響くその音にイラッとするけれど、きっと杉田君が追いかけて来てくれた? そう思うとそのベルの音も嫌じゃなくなる。結局、私は杉田君に惹かれてしまったんだ。惚れた弱味って奴なんだろうね。 「はーい、ちょっと待って!」 ガチャガチャとドアを開けると勢いよくそのドアが開き杉田君の顔が見えると、私を抱きしめてキスするんだろうね。さっさと帰ったお仕置きするずって言いながら。 でも、そんな杉田君を期待している私はどこか変。こんなのを喜んでいるなんて。 「今までどこにいたの?」 私はてっきり杉田君だと思ってドアを開けた。すると目の前にいたのは杉田君ではなくて近藤先輩だった。 フランス視察団の他の人達と一緒にホテルへ戻ったはずなのに何故先輩がここに? しかも、私がこのアパートに住んでいることを何故知っているのだろうか? 「先輩、どうしたんですか?」 「どうしても相川に会いたくて来たんだ。迷惑だったかな?」 「そんなことないですよ。狭い所ですけど、どうぞ。」 「入ってもいいのか?」 「積もる話もあるでしょうし、今日はご馳走しますからゆっくりしていって下さい。」 高校時代の先輩の話を聞きたいのは本当の話。私の憧れの先輩なだけにその後どうやっていたのか何故フランスへ行くことになったのか聞きたいことは山の様にあった。 だから、私は学校の先輩後輩として近藤先輩を家に上げた。 「へー相川も女の子らしい生活しているんだな」 「あまり見ないで下さいよ、先輩。恥ずかしいですから。」 先輩にはお茶を出してゆっくりくつろいでもらっていた。久しぶりの日本だから日本のこの和室の畳の匂いを満喫して貰えると嬉しいと思った。 そして、その間に私はカレーライスを作る。これまた懐かしい匂いじゃないかなと思って作るのに力が入ってしまう。 ただ、それだけの事だった。そんな軽い気持ちでしたことだったのに・・・ |
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