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◆[フランスからこんにちは](9/28) 小さなテーブルに向かい合わせに座って近藤先輩とカレーライスを食べている私。 高校時代にこんなことは考えられなかった。まさか、私が憧れの先輩にご飯を作ってあげて一緒に食べるなんて、こんなこと想像出来たことだろうか。 そんな高校時代に戻った気分になってしまった。 あの当時は、他の生徒と並んだ時の先輩の頭が一つ飛び出しているその背の高さにドキドキしたものだ。とてもスラッとしていてスタイルが良く、かと言って引き締まった腕や足の筋肉に友達と一緒に萌えていた。 一目先輩の姿を見ようと追いかけたりもしていたと思うとあの当時の自分の幼さに笑ってしまう。 あの頃の自分に教えてあげたくなる。近藤先輩はとても素敵になってとても大人っぽくなっているんだと。 艶やかな雰囲気だけでなく洗練された身のこなしがとても先輩を大人な男性だと思い知ってしまう。以前の格好良いだけの見かけだけの先輩ではない。 きっと、先輩なりにいろんな経験をして積み上げて来た過去があるから今の先輩の姿があるのだろう。 そう思ってつい先輩の顔をマジマジと見てしまった。 「なに?俺の顔に何か付いている?」 「え・・・ち、違います。先輩って随分雰囲気が変わったなぁって思って。」 「そりゃあ、あれから何年経っていると思っているんだよ。それに俺だけじゃないだろ、相川だって随分大人になったじゃないか。」 そんな事言われると何だか嬉しいやら恥ずかしいやらで先輩の顔が見れなくなる。 「相川がカレーライスを作れるとは知らなかったよ」 それって、絶対褒めるところが違うと思うんですけど? でも、そう言ってにっこり微笑んでくれる先輩の表情はやはりあの当時と同じでとても優しい顔をしている。私が大好きだった時の先輩の顔だ。 「あんまり見つめられると食べにくいんだけど?」 「あっ、ご、ごめんなさい!」 別に見惚れていたわけじゃないけれど、つい昔を懐かしんでしまっていたから。あの頃を思い出してしまうから。 懐かしい人に会うと心までほっかりと和んでしまうものなんだと気付いた。だから、卒業して何年経っても同窓会と言うのは行われるのだろうなと思った。 年数が過ぎれば過ぎるほど、懐かしい昔を思い出して楽しかった頃を皆で語り合っては懐かしむ。それがどれほど癒されるのか思い知った気がした。 「ねえ、先輩は視察が終わったらみんなと一緒にフランスへ帰るんですか?」 「よくぞ聞いてくれました。実は、視察団を空港へ送り届けるまでが俺の仕事で、その後は休暇を取っているんだ。」 「休暇ですか?」 「2週間程度の休暇なんだ。久しぶりの帰国だからってあちらの理事長からお許しを貰ってね。いろんな所を回りたいなぁって思っているんだ。よかったら、相川にその手伝いをして貰いたいな。」 2週間の休暇の手伝いを私がする? それって一体どう言う意味なのだろうか? 頭を捻って考えていると、近藤先輩がポケットから何やら差し出した。目の前に出されたカードの様なものを見ると一瞬ドキッとした。 それは航空チケットで二人分が用意されていたのだ。 「俺と一緒にここへ行って欲しいんだ。2週間一緒にとは言わないよ。相川だって仕事しているんだから。良ければ今週末の土日にどうだろう?」 それは一緒に旅行へ行って欲しいと言うものだろうかとそのチケットを見ていた。 どう考えても日帰りで帰れる距離ではなかった。 だって、行き先は九州だったから。
◆[フランスからこんにちは](10/28) 「金曜日の夜に出発して到着したらあちらのビジネスホテルへ泊まって翌朝一番に観光始めようと思って。どうだろうか?」 当たり前の様にどうだろうかと問われても恋人同士でも親戚でも家族でもない近藤先輩と二人だけで泊りの旅行に行けるはずない。 そう言えば、旅行と言えばまだ杉田君と両想いなる前にアチコチ連れ回されたんだ。教会行ったりスポーツ観戦したり終いには・・・二人で泊まって。 それは相手が杉田君だから泊りもしたけど、先輩となると意味が違ってくるしそもそも憧れの先輩と二人だけで旅行に行くなんてとてもじゃないけれど私には無理だ。 「あの、他に行く人はいないんですか?」 「皆に急に連絡したから時間の合うヤツがいなくてね。でも、相川なら視察先の学校勤務だしその延長で観光の手伝いもお願い出来るかなって、ちょっと図々しかったかな?」 先輩は時間の都合が合う人なら誰でも良かったようなものの言い方だった。 ならば、必ずしも私を選んだということではなさそうだ。偶然視察先の学校に私がいたから誘っただけ。 だったら気にせずに一緒に行っても良いのだろうか? でも、これを知ったら杉田君怒りそう。でも、視察の延長でお手伝いなら問題ない? もしかして・・・・私、先輩と九州へ旅行へ行きたがっている? それとも、ただ杉田君ばかりに心惹かれて少し距離を置いてみたいだけ? 自分の心が分からないなんて最低だと思うけど、でも、杉田君は謎が多すぎて両想いになっても全然心の余裕なんてない。 こんな風に少しでも離れると杉田君は他の女の子と楽しくやっている様に思えて・・・ 「相川?」 「え、ああ。ごめんなさい」 「一緒に行ってくれるかな?」 「え・・・と。その、行きたいけど・・・」 私は何を迷っているのだろう。私には杉田君がいるのだから断らなきゃダメに決まっている。 なのに、もう一人の私が言う。杉田君は他にも可愛い子が一杯いる。留美は暇つぶしの相手に遊ばれているだけだよと。 それが証拠に留美には何も教えようとしない。秘密は秘密のままだろう?って。心の中で二人の私が叫んでいる。 「あの、」 するとそこへ坂田先生から電話がかかって来た。珍しくこんな勤務時間過ぎて電話が入ることはまずないのにと思って携帯電話の画面を眺めていたが取りあえず通話ボタンを押した。 すると坂田先生からとんでもないセリフを聞かされた。 『今すぐ学校へ来てくれないかしら? 訳ありの元女子生徒が杉田君を訪ねて来たんだけど。その女子生徒が杉田君そっくりの赤ちゃん連れているのよ』 私は思わず携帯電話を落としてしまった。 |
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