星屑ひとつ

ゆきの初期作品「先生は俺のモノ!」(ケータイ小説)を掲載中♪ 拙い作品ですがお楽しみ下さい。

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◆[フランスからこんにちは](23/28)
空港から先輩の案内でタクシーに乗っては一先ず市内へと向かった。そして、観光ガイドを手に宿泊場所のホテルの確認をした。


「ああ、ここで間違いない」


それほど大きなホテルではないが取り敢えずその夜は普通にホテルに泊まることに。部屋は勿論別々のシングルの部屋に。


ここはキッチリ間違いのないようにと離れた部屋をお願いした。


部屋が近くて妙な気を起こさないように・・・


先輩は手を出さないと約束してくれたけれど、先輩だって男なのだ。万が一、杉田君みたいに魔が差してって事も考えられるわけだし・・・


たから、部屋だけは別だし距離も離した方が絶対に安心だから。


杉田君・・・私が先輩と二人だけで旅行したなんて知ったら、怒ってくれるかな?それとも、知らん顔されるのかな?


結局、杉田君に元カノが現れて子供までいて私なんて遊びの対象だったと思い知るばかりで、この旅行の意味って何なんだろうって・・・




私がホテルの一室で悩んでいる時、杉田君のアパートを意外な人が訪問していた。


「は?!何だよ、それ」


「だから、坂田先生と俺が近藤ってヤツから聞いた話を考えればそうなるってことだ」


「じゃあ、留美のヤツ、あの視察団の男と二人で旅行に行ったと言うのか?!」


「そう言うことだ」


杉田君の怒りは見る見るうちに沸き上がり今すぐ飛び出して行きそうな雰囲気だ。


そして、杉田君のアパートを訪問した生島先生は部屋にいる元女子生徒とその子供を見て溜め息を吐いていた。


「なあ、お前が彼女らを庇って世話するのは筋違いだろ?何故、本当の事を相川先生に言わないんだ?」


「言うも言わないも俺を信じてくれたら」


「分かるわけないだろ。言葉に出して言わなきゃ伝わるものも伝わらない。現にそうじゃないか。お前が事の真相を隠すから余計に噂はお前の意図しない方へと広がっている。それを聞かされる相川先生の気持ちを考えたことあるか?」


杉田君のセリフを否定するように間髪いれずに生島先生の厳しい声が杉田君を襲った。


そして、杉田君のアパートを訪ねた生島先生は玄関先から元女子生徒を見ては大きく溜息を吐いた。そして、呆れた様な顔をして杉田君を見ては説教染みた言葉を続けた。


「この件は確かにお前にも落ち度はあるが、そもそもお前の子供でもお前の元カノでもないだろ」


「だけど、俺は彼女に生んで欲しかったし大事な家族だと思っている。子供は俺の甥なんだ。」


「それで、肝心の父親はまだ逃げ回っているのか?」


杉田君は沈んだ表情で首を横に振った。




◆[フランスからこんにちは](24/28)
「湊(みなと)はもう自分でも分かっているんだ。ただ、これまで逃げ回っていたから切っ掛けが欲しいんだと思うんだ」


湊という人物・・・杉田君の口から出たこの名前が一体誰なのか、そして、その人と杉田君がどう関わっているのか。そして、何故、ここまで杉田君はこの母子を庇うのか。


私は知らないことばかりで、この後、杉田君の口から直接説明を聞くまで本当に私は杉田君のことなど何も知らないのだと思った。


そして、気持ちばかり好きで、結局、子どもを連れた女の子が現れただけで私は逃げだしてしまった。


杉田君を信じることもしなかったし、頭から疑ってかかった。


でも、杉田君にあんな態度を取られたらそうなってしまうのは当然だと思うと自分の取った行動が一方的に悪いとは思っていなかった。


ただ、杉田君を疑うのではなく本当は連絡を取るべきだった。もし、杉田君を信じていれば追いかけて真実を話して欲しいと頼むべきだった。


それをしなかった私は、本当に杉田君を好きなのだろうかとさえ思えてしまう。


初めて足を踏み入れた土地で一人で過ごす夜・・・・


それがこんなにも心寂しく感じるとは思わなかった。


杉田君への感情が本物かどうかも今の私には分からなくなっていた。


だけど、言えることは今は何も考えたくないという事。私の頭の中はもう何もかも分からなくなっていた。


それでも、明日からの旅行の為にこれからお風呂に入りしっかり疲れた心と体を癒さなくては・・・


折角、ここまで連れてきてくれた先輩の為にもこんなやつれた顔は見せられないし、何時までも凹んだままの状態でいたくない。


室内のシャワーで汗を流した。やはり、シャワーだけでは心身共に癒すのは難しそうだ。


窮屈な浴室ではゆっくりとお湯を張って体を浸からせられない。折角、九州という温泉の多いところへやって来たのだから明日の夜はどこか温泉へ行きたい。


そして、ゆっくりと体を癒し疲れた心を元通りにしたい。


けれど、杉田君のいないこの九州で体の疲れは取れても心を癒すことなど出来るのだろうか。


なんだかんだと言いながらも、結局は杉田君ばかり考えている自分がいる。そんなにあの母子が気になるのなら素直に杉田君に泣き叫んででも追いすがってでも真実を問い質せば良かった。


もう・・・今となっては遅すぎる・・・・


ここには杉田君はいないのだから。


シャワーを浴びた私は夜も遅くなったことで、そろそろ休もうかとベッドへ入ろうとした。


その時だった。



「トントントン」


ホテルの部屋のドアが叩かれる。けれど、先輩とは約束した。夜にお互いの部屋を行き来することはしないと。


なのに、こんな時間に部屋のドアを叩くのはどう言うつもりなのだろうかと。


旅先の開放感なのかそれとも私の心を癒そうと考えたのか、先輩は私との約束を破るつもりなのだろうか。



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