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◆[フランスからこんにちは](27/28) 「じゃあ・・・あの子は」 「俺の弟の湊って言うヤツの子どもなんだ。そして、あの女の子は湊の彼女。俺にとっては妹も同じ存在で家族と同じなんだ」 ああ、それであんなに杉田君にそっくりなんだ。やっと理解出来た。あの女の子が杉田君とあの子の血がつながっていると話したのは、「父親」という意味での血の繋がりではなく「伯父」としての繋がりだったんだ。 そして、弟の子どもの母親だから杉田君には妹の様な存在だった。だから、杉田君は家族として彼女の世話をしていたことになる。 でも、不可解なのは肝心な弟の湊という人物はいったいどこへ行ったのか。どうしてあの女の子は子どもの父親であり自分の彼を頼らなかったのか。 私には分からないことばかりだ。 でも、杉田君の子どもでも杉田君の元カノでもなくて良かった。 それだけ分かってしまうと私は体の力が抜けてしまって腰を抜かした様にベッドにへたりこんでしまった。 「留美、大丈夫か?」 「大丈夫じゃないわ!!」 「ごめん・・・・俺が何も話さなかったばかりに。留美を不安にさせて」 「もしかして、あの妊娠騒動の女子生徒って彼女のこと?」 杉田君が話そうとしなかったあの妊娠騒動の女子生徒。きっと自分の弟が起した問題だから他人には知られたくなかったのだろうと、今になってやっと理解出来た。 やっぱり身内の恥は誰にも知られたくないだろうと思う。生島先生は杉田君とイトコ同士なら家族も同然。だから、先生も私に本当の話が出来なかった。 でも、私は杉田君とはそんな薄っぺらい付き合いだとは思いたくなかった。 「・・・俺はこれまであまり良い行いはしてこなかったし、女遊びは適当にやって来たから、あの時留美にその事を咎められている様な気になってしまって・・・・ごめん。もっと早くに言うべきだった。」 ああ、そうか。杉田君は以前話した事あったんだ。杉田君はこれまで女性を誘って一緒に夜を過ごしたことがあると。それなりにそっちの経験があると聞かされたことがあった。 「・・・杉田君が女性関係あるのは知ってたし、知らなくてもそんな人がこれまでいなかったとは思わないけど、でも、それでも私を信じて話して欲しかった」 「ごめん、でも、俺も留美には信じて欲しかったんだ。今の俺は留美以外の女には興味ないってことを」 今の俺・・・・それは、今だけはってこと?未来永劫私のモノになる訳じゃない杉田君。 今、彼氏彼女でいる間だけの関係。その間の信頼関係というのはどこまで深みがあるのだろう。 もしかしたら杉田君は興味を持った今だけ私の事を考えてくれているのかも知れない。けれど、私にとって杉田君はそれ以上の存在になってしまっているのかも。 「うん、私も杉田君以外の男の人には興味ないよ」 「嘘ばっかり。あの近藤って奴と二人で旅行へ行ったと聞いて飛んで来たんだぞ」 そうだ・・・・いったいここをどうやって知ったのか。杉田君には何も知らせなかったというのに、どうやってこの場所を知ったのか。 「満に土下座してここを教えて貰ったんだ」 顔を赤らめて恥ずかしそうにして言う杉田君。そんな顔をした杉田君を見たのは初めてだった。
◆[フランスからこんにちは](28/28) 顔を真っ赤にして耳まで赤く染まった杉田君の顔なんて、なんて貴重な素顔なのだろうかと思わず写真に納めたくなった。そして、そんな杉田君の顔を見て私は嬉しくて涙が出そうな程感激していた。 だから、そんな杉田君に抱きついてしまった。こんな杉田君が愛しい。愛しい杉田君から離れてここへ旅行へ来たなんて信じられない程に自分を疑いたくなった。 「杉田君が好き」 「留美」 私の抱きつく手を離さなかった杉田君。逆にしっかり抱きしめられた。 杉田君の胸に顔を埋めてしっかり抱きしめられていた。杉田君の心臓の音だろうか。トクントクンと流れるような音が伝わってくる。その音を聞いているととても心が落ち着いてしまう。 さっきまでの不安まみれの自分が嘘みたいにとても安心して心が癒されていく。 杉田君に抱きしめられているだけでこんなに落ち着くとは思わなかった。こんなに杉田君が愛しいとは思わなかった。 なのに、何故、私は杉田君から離れようとしたのか、自分でも信じられない。 「あのさ・・・留美」 「なに?」 「その・・・少し離れようか。じゃないと俺我慢出来なくなるから」 そうだった。私達がいるのはここはホテルの一室でしかもそのベッドの上だった。しかも抱きしめあっている。こんな状態で杉田君にお預けさせている私ってなんて最低な彼女なんだろう。 かと言って、今、ここで杉田君と? ホテルの一室だし旅行先だし・・・・バージンを喪失するのには最適な場所だけど。この状況で流されてバージン捨てるのは・・・抵抗感じてしまう。 「そんな顔するよな。俺は今夜は手は出すつもりないよ。我慢するから、だから、少し休ませてくれないか。急いで追いかけて飛行機乗ってここまで来るのにバタバタで疲れたんだ」 そう言って杉田君は大きな欠伸をして見せた。本当はもっといろんなこと話したかったけど、ここまで追いかけて来てくれただけで私は十分幸せだ。 「留美、俺は愛しているからな」 そんな愛の告白を唇にキスで受けた私は顔が真っ赤になっていたけれど、そんな私を無視して杉田君は一人さっさとベッドへと入ってしまった。 ベッドへ入った瞬間早かった。杉田君は驚くほどにあっという間に眠ってしまった。 そんな杉田君の寝顔を私は暫く見つめていた。いつまでこんな風に杉田君の寝顔を見られる存在でいられるのだろうかと考えながら。 |
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