星屑ひとつ

ゆきの初期作品「先生は俺のモノ!」(ケータイ小説)を掲載中♪ 拙い作品ですがお楽しみ下さい。

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◆[杉田君の気持ち](8/12)
「私はまだ今は結婚とか考えられないの」


嘘はつけないし本気で考える必要が有ると思えば今はこれしか言えない。


そして、杉田君の気持ちに答えるために私もこれからは真剣に考えて悩もう。


「そうか、答えはNOなんだ」


杉田君は体の力が抜けたように、私から離れると座り込んでしまった。


「病み上がりに今のセリフは効けたな」


「私はイエスもノーも無いって言ったつもり。だって、教師になったばかりだし、杉田君の気持ちに精一杯答えたいから、真剣に考えたいの」


私は将来のことを真剣に考えようと思っただけなのに・・・


杉田君は頭を手で覆うと弱々しい声で言う。


「悩まなきゃいけないほどの相手と結婚しても幸せになれないよ」


「私は杉田君の事を真剣に考えようと思っただけよ」


「俺は直感で留美を失いたくなかった。それは、今だけじゃなくて、これから先もずっとだ。留美と離れているのが辛い」


こんな弱々しい杉田君を見たのは初めてかも知れない。


いつもはとても元気で悪戯っ子みたいで、それでいて自信家の何をさせても出来る子って思っていた。


あの傲慢さが逆に杉田君らしくて胸をドキドキさせていた。


なのに、今、目の前にいる杉田君はとても頼りなげで儚くてこのまま消えてなくなりそうな、そんな脆い杉田君を見るなんて・・・


「俺、帰るよ」


「でも、まだ体調が」


「留美のお陰でずいぶん良くなった、ありがとう」


悲しげな笑顔を向けながら杉田君は私の前から去っていった。


あっという間の事だった。


いつもならふざけて絡んで来そうなのに、何も言わずに私の腕からスルリと抜け去るように、杉田君は私の部屋から出ていってしまった。


あまりにも呆気ない去り方に私の胸にポツンと何かが空いた気がした。


部屋を見渡すと、さっきまでこの部屋にいた杉田君がいないことに、それがとても寂しく感じる。




◆[杉田君の気持ち](9/12)
その夜、結局私は眠れなかった。


杉田君が私の前から完全に居なくなりそうで、それが怖くて布団に入って目を閉じても眠れなかった。


羊を数えても、杉田君の格好をした羊が行列して、私の前を永遠と群れが続くと、私は何処にも動けなくて杉田君の名前ばかりを叫んでいて、泣いていた。


杉田君の言う直感てこんなことを意味するのだろうかと、そんなことを考えた。


きっと、私が中途半端な考えで、気持ちがフラフラしてるからプロポーズされても答えられないんだ。


真剣に考えていると言う私のセリフは現実逃避と同じで杉田君のプロポーズから逃げていただけ・・・


目尻に涙が溜まり手で拭いとる。その度に目尻を擦り赤く腫れ上がる。


翌朝、それがどんな顔を作るのかなど、そこまで考えたことは無かったし、そんな余裕もない。


私は泣き疲れたのかいつの間にか眠っていた。


それも、窓の外がうっすらと明るくなる頃に。



「おはようございます!」

「先生、おはよう!」

「おはよう!」


朝、いつもと同じく校舎内は登校した生徒や出勤してきた教師の挨拶で賑わっていた。


元気に登校した生徒達は朝からとても元気で、


「若いなぁ、お前ら」


流石に高校生は元気が良い。まだ悪戯っ子の子どものように弾ける様子に杉田君は溜め息を吐いていた。


「オッサン臭いこと言うなよ、杉田」


「いやぁ、俺にその若さがあればなぁ。もっと、強引にできたんだろうなぁ」


「は? 何言ってんだよ。第一、お前が強引じゃ無かったことあるのか?」


教室の男子生徒にそんなセリフを言われハッと気づく自分がいる。


そうだ、俺は俺なんだ。


何かを悟ったのか杉田君は急いで教室を出ようとした。


「おい、どこ行くんだよ。授業始まるぞ! 杉田!!」


「俺の人生の一大事に授業なんて受けていられるか!」


「なんだ?!」


病み上がりの体なのに杉田君は有り余る若いその体力で校舎内を走り抜けると、職員室めがけ急いだ。


杉田君がやって来ているとは知らず、私は職員室の自分の机で脱け殻かミイラのようになって座っていた。




◆[杉田君の気持ち](10/12)
「相川先生? どうしちゃったんですか? 相川先生?」


「坂田先生、放っておきなさい。さっきからそんな調子なんですよ。まるで抜け殻。これじゃあ授業なんて無理でしょ」


「じゃあ、授業はどうするんですか? 生島先生」


「自習にすれば生徒達喜ぶでしょうから、それでいきましょう」


「・・・それで良いんですか?」


「ああ、大丈夫でしょう。さあ、坂田先生は授業に遅れないようにお願いしますよ」


呑気なセリフを言う生島先生は私の顔にペタリと何かを貼り付けて職員室から出て行った。


私は本当に自分がミイラか抜け殻の様な状態になっていて、額に貼り紙を貼られていることすら自分でも良く分かっていなくて、ぼーっと座ったままだった。


生島先生が額に何かをペタリと貼ったのは何となく分かっているけど、今はそんな事を考える力もなくなっている。


授業だからと他の先生達も次々職員室を出て行くが、何故か皆クスッと笑って出て行くのが分かる。


人の笑い声にだけは何故か敏感に反応してしまう私。


これから私は授業じゃなかったっけ?


違うんだろうか? ああ、もう、なんだかどうでも良くなった。




そして、職員室へ向かう杉田君は・・・・


「なあ、見たか? あの相川先生の顔」

「見た見た、凄い顔だったよな?」

「あれで良く学校へ来られたものだよな」


職員室から出て来た先生らの話し声が聞こえた杉田君は足を止めてその会話を聞くと妙な胸騒ぎがした。


すると、再び職員室へと急ぐ。


「留美!! いるのか?!」


いきなり教師相手に「留美」呼ばわりする杉田君。


授業が始まるからと職員室は空っぽではないのだから、授業のない先生らは驚いて何事かと職員室へ入って来た杉田君へと視線を向けていた。


「留美!」


私の名前を呼んで駆けつけてくれた杉田君。だけど、私には杉田君の姿は見えない。目の前が真っ白で何も見えなかった。


あれ? 私、どうして目の前が真っ白なの?


「何してんだよ!!!」


「いったーーい!!」


生島先生の悪戯で額に貼られていたのはガムテープで貼られた貼り紙だ。



「なにすんのよ!!」


思わず貼り紙を外した杉田君に怒鳴ってしまった。


杉田君は私に剥がした張り紙を差し出し見せてくれたが、そこには、生島先生の字で『バカ』と一言なぐり書きされていた。


例え先輩教師とはいえ、これはあんまりだと思う・・・けど。


こんなことを書かれても文句は言えない。それだけ今の私はトンマでアホだと思う。


そう思うと急に悲しくなって泣きたくなってしまう。


「おい、立て」


私の目の前には杉田君がいて、何故か私に命令をしている。 今更何の話があると言うのか。


昨日、杉田君は私の答えを勝手に「NO」と決めつけて帰ってしまった。


だったら、もう私には用はないはずなのに・・・


「さっさと立て!」


「ひゃっ?!」


杉田君に腕を掴まれて椅子から無理矢理立たされると、今度は私を俵の様に担いだ。


職員室でこんな風に担がれるのって二度目? と、思った時は、「ちょっと相川先生を借りていきますから」と杉田君にさらわれてしまった。


「どこ行くの?!」


「保健室」


その言葉がどう言う意味なのか、心臓がドキドキして破裂しそうになる程に、私は何かを期待してしまっている。




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