恋を識る

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    ◇   ◇



 目標のある日々は明るく、遅々とした動きでも前進する事に新しい喜びがある。
 時に躓き、時に悩みながらもエドワードは自分の進むべき道を歩き始めた。
 ホーエンハイムもエドワードも、お互いが自分の道を歩き、前ほど一緒に居る時間は短い。
 だけど以前よりもホーエンハイムの事を近くに感じていた。
 生活する時間がずれ、すれ違う日も多くなってきた最近だが、繋いだ絆は深く固くなっている実感がある。
 早朝の清々しい空気の中でエドワードは思う。
 充実した日々。自分の進歩を手にする実感。
 この世界に落ちて来たときには考えられない事だった。ここまでエドワードが来れたのはホーエンハイムの存在がある。
 日々に疲れ、悩む度にホーエンハイムの腕を求めた。彼は温かく抱き、力強く包んでくれる。
 慰められる度、抱きしめられる度に、エドワードの心の中で言葉にでは出来ない思いが湧きあがる。
 そしてまたエドワードは歩く事が出来る。
・・・これは何と説明するべき気持ちなんだろうか?
・・・愛なのか。恋なのか。それとももっと違う表現にするべき違う思いなのか。
 頭で考えれば考えるほど判らなくなる自分の気持ち。
 ホーエンハイムを思う時に広がる暖かく優しく・・そしてジッとしている事の出来ない弾む気持ち。
 エドワードはそんな気持ちを抱いた日々の中で、自分の気持ちを持て余しながら、ホーエンハイムに言っておかなければならない事がある事を実感していた。
・・・オレはオヤジに何も言っていないから。
 自分を取り戻した事をエドワードは自分の言葉でホーエンハイムに告げていなかった。これまで、支えてくれた感謝の言葉も言っていない。
 ホーエンハイムはエドワード自身が言わなくても気持ちの変化には気がついているかも知れないが。
 だが、以前起こしたホーエンハイムの行動をホーエンハイムが後悔している事も判っていた。
 エドワードの為を思い、自分を殺して悪者になったその行動。慰めの意味も持つ今、一人が悪い訳ではない。だがホーエンハイムはずっと悔い心を痛めているかも知れないと思うと悪いなと思う。
 一度はキチンと自分の言葉を告げておかなければ次の段階に進めない気がエドワードにはしていた。
・・・自分のこの判らない気持ちを確かめるのはそれからだ。

    ◇   ◇

 ホーエンハイムと二人の朝食。
 紅茶にパン、ソーセージと卵にピクルス。
 いつもの朝食のメニューを前にして、エドワードは体を硬くした。
 朝思っていた事を言うなら今だという思いでエドワードは緊張していたのだった。カップを持つ手も力が入る。
 ホーエンハイムはエドワードのいつもと違った様子に気がつき、不思議そうに首を傾げた。
「あの・・・オヤジ・・・」
 エドワードが緊張した声を出すと、ホーエンハイムは持っていたカップを置き居住まいを正す。真面目な話をしようとした姿を察したのだろう。エドワードはホーエンハイムのその姿を見て、心を決めた。
「ごめん・・・オレ。ずーっと世話かけっぱなしで、甘えてて・・・」
 思っている言葉をエドワードが告げ頭を下げる。感謝と謝罪。それとなくしか言えなかった言葉をハッキリと告げる。
 ホーエンハイムはそんなエドワードの姿を見て少し驚いた表情をした。
 何だか馴れない事をしている自覚のあるエドワードは顔を赤くして、体から緊張を解き苦笑いをする。頭を掻いた。
 ホーエンハイムは寂しそうな笑顔をすると口を開いた。
「お前にはてっきり憎まれると思っていたよ」
「憎む・・・何で?」
 思いもかけない言葉聞いてエドワードはつい問い返した。
「俺はお前に何度も何度もあんな事・・・」
 ホーエンハイムの言葉は苦しげで、エドワードはやっぱり思った通りずっと心を痛めていたのだと実感した。
 今までの痛みは取る事は出来ないが、これからは気にしないで欲しい。エドワードは思いを込めて口を開いた。
「だって慰めてくれたんだろう?オヤジは。自分の体で」
 唖然とした表情でホーエンハイムは見つめる。
 そのホーエンハイムの表情が可笑しい。
 こう言うと変だが、エドワードには何だかホーエンハイムが可愛らしく思えて、いつもの意地悪な気持ちが出てきた。
 さっきとは真逆の揶揄したい気持ちが湧き上がる。
「何だ・・・オヤジは自覚なかったのか。あんな辛そうな、泣きそうな顔してたのに。全部オレの為だったんだろう」
「まぁ・・・それは・・・」
 たじろぐホーエンハイムの姿をエドワードが笑う。何だかとてもいい気分だった。
 朝の気持ちを思い出してエドワードは気を取り直して口にする。
「あの頃のオレは、おかしかったんだ。上手く言えないけど、ここに穴が開いているみたいだった」
 世界に落ちて来た後の事を思い返して、エドワードは遠く思い返す。時間的にはそんなに遠い過去ではないが、気持ちが変化した今、遠い出来事のように思える。
「開いた穴からオレの全てが流れ出して空っぽになっているみたいだった・・・怒りも哀しみも愛しさも全ての感情がなくなっちまったみたいだったんだ。オヤジが苦しんでいる事も判っていたけど、知らん振りしてた。生きる事も死ぬ事も何も出来なかった。なんにも選べなかったんだ」
 エドワードが真っ直ぐホーエンハイムを見つめると、ホーエンハイムも瞳を捕らえて見つめ返してくれる。暖かな色と光。包み込み守ろうとするホーエンハイムの瞳。
・・・その瞳に支えられたんだ。
 エドワードは確認して、微笑む。
「オヤジが何かするかと思っていたけど、あんな事されるとは思わなかった。はじめはビックリしたけどな・・・あの後オレも気持ち良くなったし。お互い様だろ」
 口にした言葉の数々が照れくさくなり、エドワードはおどけた表情をすると馴れ馴れしく「なっ」とホーエンハイムに言う。
 ホーエンハイムは緊張していた表情を解き、ちょっと困ったような苦笑をしてエドワードの言葉を受け流した。
「自分でもして無かったし・・・やっぱ溜まっていたのかな」
「ぶっ」
 エドワードが思いついた言葉を漏らすと、ホーエンハイムが紅茶を噴出した。
 前に座るエドワードを直撃する。
「汚ったねぇ。吹き出すなよ」
「あぁ・・・すまん。すまん」
 ホーエンハイムは謝りながら慌てて汚したテーブルを拭き始める。
 エドワードは紅茶に濡れた服を拭きながら、心に抱いた決意を口にした。真剣な思いだから真面目に言うのは恥ずかしかった。
「オレさ・・・アルの元に帰る。いつになるか判らないけど・・・その方法を探す事に決めたんだ」
 エドワードの声を聞いてホーエンハイムは動かしていた手を止める。
「そうか・・・早く見つかると良いな」
 嬉しそうにホーエンハイムは微笑んだ。
明るい笑顔でエドワードの思いを応援する。
・・・あんたへの気持ち。オレは逃げないで考えて確かめるよ。
・・・もしかしてこれが恋だとして、オレはオレの気持ちから逃げないから。
・・・どんな道を選んだとしても、オレはオレの道を歩きたい。どんな気持ちも想いからも逃げないで進んでいく。
・・・それがオレが生きて行くって事だから。
 エドワードは決意し真っ直ぐな瞳で、ホーエンハイムに照れた笑顔を返した。





------------------------------------------------- おわり

十四 心の扉の向こう側

 体を暖かい布で拭かれている感覚がした。
 気持ち良さを感じつつ、エドワードは目を開いた。
 体に広がる気だるさ。
 ほんの少し体を動かすのも嫌になるほどの強い疲労感を感じながら、体の芯は満たされている気分だった。
 相反する二つの感覚を心の中で噛みしめる。
 目を開いても周囲の景色はボンヤリしている。
 窓から零れる日差しが斜めで午後になった事を示していた。
・・・あぁ。もう午後か。
 エドワードはそれだけを思った。
「目が覚めたのか」
 穏やかで落ち着いた声がエドワードに降って来る。
 聴きなれた声。
 声を聴いただけで、エドワードは安心感に包まれる。
 声の方向に視線を向ける。
 エドワードの視線の先に、眉にしわを寄せ少し困った心配そうな表情をしたホーエンハイムがいた。
・・・あ・・そっか。
 ボンヤリとエドワードがホーエンハイムを見つめる。
 ホーエンハイムはエドワードの記憶にある姿とは違って、サッパリとした格好をしていた。 
 気を失う前のよれよれの格好ではなく、いつもの知的な紳士の姿だ。
 顔の輪郭を包むように伸ばされた髯も揃えられて、乱れた髪も整えられていた。
 エドワードが意識を失っている間に身だしなみを整えたのだろう。
 ホーエンハイムは眼鏡の奥の心配そうな瞳。
 その中には以前見た暗く闇に落ちそうな色はなく、いつもの見慣れた暖かい光が灯っている。
 二人の視線が絡みついた。
 少しして視線はホーエンハイムの方からぎこちなく逸らされた。
「オレ・・気を失っていた?」
「あぁ。そうだ」
 返事をするホーエンハイムの声にも戸惑いが滲んでいる。
 エドワードの変化した体を弄り、嫌だと言っても聞かなかった。
 今回は快感を共に分かち合ったが、その前は死地を救うため憎しみを自らに向けようとしての行動だった。
 その大胆な行動を起こしたとは思えないホーエンハイムのたじろいだ姿は、エドワードには微笑ましかった。
 エドワードが良い方向に向った事でホーエンハイムは正気に戻ったようだ。そんな、自分の事を何よりも思っている事を示してくれる態度が嬉しい。
 ホーエンハイムの本心は判っていたが、この事を聞かれたら、ホーエンハイムはどう答えるだろう考えた。
 ちょっとした悪戯心が湧き上がる。
 返答に困る事が判っていても訊いてみたい。
 エドワードは好奇心を止められなかった。
「どうしてオレにこんな事をしたんだ?」
「どうしてって・・・それは・・・俺の腐敗する肉体にも欲があるって事だよ。相手は誰でもって訳には行かないから・・・つい・・・な・・・」
 切なそうな顔でホーエンハイムは告げる。
 本心を言わず、自分が悪者になる事は想像出来たが、想像通りの返答を聞いてエドワードは何だかくすぐったく嬉しくなった。
 エドワードの顔に無意識に笑みが零れる。
・・・悪くない気分だ。
 意地悪な事を質問した自覚はエドワードにはあったが、それはエドワード自身が元に戻った事の証拠であることも自覚していた。
 以前の、この世界に来る前のエドワードに。

    ◇   ◇

 あの日からエドワードの生活は変わっていった。
 ホーエンハイムの部屋で寝食を共にする。
 体力が戻らない間はベッドの中で過ごす時間が長かったが、体力が戻るにつれ日中までも横になっている生活に飽きてきた。
 昼間はホーエンハイムの持つ膨大な量の本を読んだり、食後の片付けをしたり、掃除や洗濯など、ホーエンハイムが一人で行っていた事を手伝うようになっていった。
 手伝うという言葉は適当ではないかも知れない。
 エドワードが「もー寝てるのに飽きた・・・ひまだ・・・なぁ。何かする事ないはない?」と暇つぶしの提案をホーエンハイムに振ったのがきっかけだった。
 ホーエンハイムは返答に困った末、黙った。もっと休んで欲しいとホーエンハイムが心配そうにエドワードを見つめ、どう話をしようかと悩んでいる時。
 ホーエンハイムは休養を受け入れさせる言葉を選んでいると、それを察した気の短いエドワードが無理矢理出来そうな家事をホーエンハイムから横取りするように取り上げ、手伝い始めたのだった。
 故障個所も多く、動きの悪い機械鎧でエドワードは何度も失敗しながら家事をしていく。
 上手く出来た事は誉め、失敗した時には困った顔をするのが常だ。
 逆に「何で怒らないんだよ」と険のある事で咎めるように、自分の起こした失敗を棚上げしてエドワードが言う。
 苦笑しつつも本当に危険な事をしない以上、ホーエンハイムはそんなエドワードを黙って見守っていた。
 そのうちに、エドワードは昼間の時間を自分なりに使うようになっていった。
 そして、そんなエドワードの前向きな態度に安心したのか、ホーエンハイムはまた外出するようになっていった。
 そして夜。
 眠れる夜は二人の間に何も無いが。
 眠れない夜、エドワードはホーエンハイムと情を重ねている。
 エドワードから誘う方が多いくらいだ。
・・・今までも何度も肌を重ねている。
・・・今更回数が増えたからと言って、何も変わらない。
 そうエドワードは思っているが、今の状態は自分でも少しおかしいと思っているのだった。
 正直自分でもどうかしてしまったみたいに、つい瞳でねだり、指を伸ばしてしまうのだった。
 はじめてみると、今までの経験と違った方向にも世界が広がり、こうと思っていた自分自身ではない自分を引き出されている。
 ホーエンハイムという導師の繊細で慎重な行為が今まで知らない世界にエドワードを運んでいるのは確かな事だった。
・・・何っていうか・・凝っているって感じかな。
・・・オレの進むべき、次の一歩が見えないから、現実逃避に・・つい、そうしちまうのかなぁ?
 悶々と悩む事の出来ないエドワードは、内容の濃い気分転換にも思える。
 だけど、それだけだとも言えない気持ちが渦巻いている事をエドワード自身、自覚していた。
 ホーエンハイムと熱く抱擁を交わし、瞳で語って、お互いの欲望を曝け出している時間は、思い出す度にエドワードの心も体も熱くする。
 時には何でもない時間にホーエンハイムのふとした視線や仕草に鼓動が踊るのを自覚する。
・・・最近のオレ・・変だよなぁ。
 自分自身の変化をエドワードは判断出来ないでいた。
 ただ、不安は解消されず展望は暗いはずなのに、毎日が穏やかで楽しいと思える時間が増えてきた事だけが確かだった。



--------------------------------------------- つづく

 エドワードの頬を包んだ両手を解くと、ホーエンハイムはエドワードの腰に手を滑らせた。
 しっかりと掴み、緩く円を描くように動く。
 ホーエンハイムはエドワードの動きに合わせて、強く弱く、緩急をつけ動かした。
 エドワードの口から嬌声が止まらなくなった。
「んっ・・はぁ・・・いい・・」
 エドワードの快感で意識が遠くなりそうだった。
 アルフォンスとの交わりでここまで乱れた事があっただろうかと、エドワードは霞みがかる意識の中で思う。
 アルフォンスとの交わりはどちらかといえば求め合う心が中心だった。
 疲れた心で交わる時、辛い任務の後、行為が激しさを増し体を酷使する事はあっても、求め合う心が一番でその他は二番目以降だった。
 だが今は違う。
 体の中の叫び声が他の全てを押し流していく。
 官能を引き出し、快感を高め、現実を曖昧にさせていく。
 体の求めるままに動いて、意思の力は弱くなっていく。
 止められない。
・・・怖い。
 今まで経験した事のない感覚にエドワードの心が怯える。
 判らないけど、判らないから、怖かった。
 自分が変わってしまう気がした。
 望んでもいないのに、全てが変わってしまいそうな予感に震える。
 無意識に心の中でアルフォンスの名前を呼んでいた。
・・・アル・・そばにいてくれ・・
・・・どうにかなってしまいそうなんだ。
・・・アル・・アル・・アルフォンス!
 発声しない声にならない声でエドワードは愛しい人の名前を、何度も何度も繰り返し呼んだ。
「アルフォンスとの事を思い出しても良いんだよ」
 優しい聞きなれたホーエンハイムの声がエドワードの耳に届いた。
「・・・アル・・・」
 ホーエンハイムの言葉に促されるように、声を出してエドワードは愛しい人の名前を呼んだ。 
 心の声と違って、声を出すと曖昧な意識が鮮明になり、現実感を帯びる。
 ボンヤリとした意識の中でエドワードはアルフォンスとの行為も思い出す。
 鎧の体のアルフォンスと交わった時の事を。
 抱きしめる体は大きくてホーエンハイムより大きい。
 だけど硬く冷たい鋼の体はエドワードの体温が移らなければ温まらなかった。
 一度温まったとしても、すぐに冷えて熱を移しても移しても完全に温まる事はない。
 でも、エドワードの体を求めるアルフォンスに心を乱された。  
 求める心を写すように体も乱れる。
 がらんどうの鎧の中の魂がエドワードを求めてくれる、それだけで感じる事が出来た。
 だが今は違う。
  エドワードを包む体は温かく力強い。
 体の熱を移してあげる必要が無いほどにホーエンハイムの体も熱を帯びていた。
 一緒に発熱しているようだった。
・・・もし、母さんを錬成しなかったら。
・・・アルフォンスに肉体があったら。
・・・オレと一緒に育ったアルフォンスだったら。
 鎧ではないアルフォンスとの行為だったらどうなったのだろうと、エドワードは考えてしまった。
 ホーエンハイムと同じだとは言えなくても、エドワードより体格の良かったアルフォンスはエドワードを包み、その体を拓いて怖くなるくらい深い快感を分け合ったのだろうかと思う。
 起こった事を無かった事にした仮定でしかないが、そう思う気持ちも止められない。
 体は快感を求め続けるが、そんな時でも心は快楽だけを追求するのではない。
想いはアルフォンスへも向かう。
「そうだ。アルはどうしていたんだ」
 優しい声がエドワードに質問する。
 エドワードの中をかき乱す行為はそのままに。アルフォンスの代わりにとホーエンハイムは提案しているのだと、判った。
 ホーエンハイムの囁く声がエドワードの心に染みる。
 エドワードの心も体も全て受け止めてくれるとホーエンハイムは告げているのだ。
 何度も交わった体。
 その時には勝手にリハビリをされているようにしか思えなかった行為。     
 それが性的な意味を思い出し、アルフォンスとの行為を思い出す事でエドワードの中で意味が更に変容する。
 さっきまで怖かった官能がアルフォンスの代行を意味すると思っただけで、エドワードの中で輝く喜びへと変わった。
 今まで感じた事のない高みへアルフォンスとイきたかった。望む気持ちは膨れていく。
・・・今は違うけど・・でもいつか。
 そう思う事をホーエンハイムは肯定し望んでいる気もした。
 エドワードの想いをホーエンハイムが後押しする。
 言葉ではなく行為で示されていると判った。
 その選択は間違っているのかもしれない。
 多分、間違っているのだろう。
 だけど、この方法しか選べなかったホーエンハイムをエドワードは感謝し、受け入れていた。
・・・これまで無様な姿を晒していて、今更オヤジに何を隠す必要があるんだろう?
 そこまで考え、エドワードの気持ちがスッと楽になった。
 エドワードは改めて、ホーエンハイムを見つめた。
 ホーエンハイムの熱い瞳の奥にアルフォンスの幻影が見える。
 もしかしたら、向こうの世界で生きているかも知れないアルフォンスの姿が見えた気がした。
 ホーエンハイムの瞳の中にアルフォンスの熱い瞳を見出した気がして、エドワードの熱が更に上がる。
 心を満たす恋情と愛しさを思い出した。
全身の熱が上がる。
 上気して真っ赤になっているのがエドワード自身、自分でも判った。
 自覚した途端に何故だか恥ずかしくなって、エドワードは目を逸らして俯いた。
 アルフォンスに対する愛しさがエドワードの胸で溢れる。
 体の感じる快感も絡まりあって、官能は広がり深化していく。
 体中で沸き起こる快楽の調べは甘く切なく激しかった。
 エドワードは目を開けていられなくて、眉間にしわを寄せギュッと目を瞑った。
 体が熱い。
 自然と呼吸が荒くなる。
 荒い呼吸を繰り返してしていると、ホーエンハイムが覆い被さり深くくちづけて来た。
 歯列をなぞり、口腔を内側から撫でる。
 柔らかく弾力のある、感触が不思議で。
 だけどその感触はたまらなく気持ち良い。
 ゆっくりとホーエンハイムの舌がエドワードの舌を捕らえる。ねっとりと絡めた。
 緩やかな動きで舌の付け根から先端を舐める。
 絡めては解き、少し動きが止まる。
 ホーエンハイムの手がエドワードの腕や背中や腰を味わうように後を引く動きで撫でた。
「・・・んっ・・はぁ・・」
 開放されたエドワードの口元から甘い吐息が放たれる。
 色のついた呼吸はすぐにまたホーエンハイムに絡め取られた。
 同じように深く深く、くちづけられ、開放される。
 何度となく同じ動きをされて、エドワードは体の中で上がっていく熱を持て余した。
 上からも下からも刺激されて、エドワードの意識が朦朧となる。
 体がとろけて意識もとけてしまいそうだった。
 エドワードはホーエンハイムのくちづけに応えながら、鋼の鎧のアルフォンスがエドワードの内部を愛撫する際に痛くならないように、硬い金属の指を口腔で濡らした事を思い出した。
 差出した指を夢中になって舐めた。
 あの時の刺激と似ているようだがまるで違う。
・・・だけど、それでもいいんだ。
・・・アルを思っていても・・
・・・あぁ、これが慰められるって事か。
 エドワードはホーエンハイムが初めて無理矢理に行為を強いた時の言葉を思い出した。
 多分本人自身も欺瞞と思っていたであろう言葉をエドワードは思い出す。
 『慰めてあげる』とホーエンハイムは言った。
 ホーエンハイム本人自身は自覚していなくても、これはやはり慰めというのに相応しい行為のような気がした。
 エドワードは心の中でほんの少し残っていた、躊躇していた気持ちを開放した。
 素直な心の声を口にする。
「来てくれ・・・もっと奥まで・・・」
 ホーエンハイムに向かってエドワードは甘く囁いた。
 エドワードの変化を見てホーエンハイムは温度の上がった瞳で見つめた。
 エドワードの意識がアルフォンスと交わっていた時の行為を思い出しなぞるようにしていたが、やっぱり違うと実感する。
 肉体をもっていたアルフォンスと体を繋いだ時は二人ともまだ幼く、好奇心と自分の体の反応が面白く興味深かった。体を弄る時に、どうなっていくのか探求するのが楽しかった。
 自分の反応もアルフォンスの反応も新鮮で興味深かった事を思い出す。
 だが、今はそうではない。
 求めて求められていると実感する。
 全てを知り、全てを理解しているホーエンハイムが今この一瞬だとしてもエドワードを求めている。
 ホーエンハイムの瞳がその事実を告げ続けていた。エドワードの中で衝動が突き動かされる。
 欲せられている事実がエドワードの体にもフフィードバックしていく。
 心が騒ぐ。
 ドキドキとして、大きく打つ鼓動の音。
 求められて与える事の意味が体を通して教えられる。
 肉体だけではない、心だけでもない。その両方が満たされる。
 傷ついた心を慰められている。そして、自分の傷を修復する行為で、ホーエンハイムも慰めてあげられる。言葉ではなく、体で理解した。
 二人はどちらからともなく深くくちづけて、離れる。
「・・・ぁあ・・イイ・・・」
 熱に浮されながら、ホーエンハイムの瞳に微笑みかける。そうすると、ホーエンハイムもとけそうな微笑みを返してきた。
 アルフォンスとの交わりを思い出しながら、エドワードは求めて与える行為を実感していた。
一人ではない事が嬉しい。求められる事が嬉しい。
 与えてあげて与えられる。
 慰められ、慰めてあげられる。
 今この時の時間。
 全てを忘れて、二人でお互いの心の傷を舐めあっている気もした。
 癒されて癒してあげられる。
 エドワードは癒しの時間に二人で沈んでいくような気がした。




------------------------------------------------  つづく

 エドワードの頬を包んだ両手を解くと、ホーエンハイムはエドワードの腰に手を滑らせた。
 しっかりと掴み、緩く円を描くように動く。
 ホーエンハイムはエドワードの動きに合わせて、強く弱く、緩急をつけ動かした。
 エドワードの口から嬌声が止まらなくなった。
「んっ・・はぁ・・・いい・・」
 エドワードの快感で意識が遠くなりそうだった。
 アルフォンスとの交わりでここまで乱れた事があっただろうかと、エドワードは霞みがかる意識の中で思う。
 アルフォンスとの交わりはどちらかといえば求め合う心が中心だった。
 疲れた心で交わる時、辛い任務の後、行為が激しさを増し体を酷使する事はあっても、求め合う心が一番でその他は二番目以降だった。
 だが今は違う。
 体の中の叫び声が他の全てを押し流していく。
 官能を引き出し、快感を高め、現実を曖昧にさせていく。
 体の求めるままに動いて、意思の力は弱くなっていく。
 止められない。
・・・怖い。
 今まで経験した事のない感覚にエドワードの心が怯える。
 判らないけど、判らないから、怖かった。
 自分が変わってしまう気がした。
 望んでもいないのに、全てが変わってしまいそうな予感に震える。
 無意識に心の中でアルフォンスの名前を呼んでいた。
・・・アル・・そばにいてくれ・・
・・・どうにかなってしまいそうなんだ。
・・・アル・・アル・・アルフォンス!
 発声しない声にならない声でエドワードは愛しい人の名前を、何度も何度も繰り返し呼んだ。
「アルフォンスとの事を思い出しても良いんだよ」
 優しい聞きなれたホーエンハイムの声がエドワードの耳に届いた。
「・・・アル・・・」
 ホーエンハイムの言葉に促されるように、声を出してエドワードは愛しい人の名前を呼んだ。 
 心の声と違って、声を出すと曖昧な意識が鮮明になり、現実感を帯びる。
 ボンヤリとした意識の中でエドワードはアルフォンスとの行為も思い出す。
 鎧の体のアルフォンスと交わった時の事を。
 抱きしめる体は大きくてホーエンハイムより大きい。
 だけど硬く冷たい鋼の体はエドワードの体温が移らなければ温まらなかった。
 一度温まったとしても、すぐに冷えて熱を移しても移しても完全に温まる事はない。
 でも、エドワードの体を求めるアルフォンスに心を乱された。  
 求める心を写すように体も乱れる。
 がらんどうの鎧の中の魂がエドワードを求めてくれる、それだけで感じる事が出来た。
 だが今は違う。
  エドワードを包む体は温かく力強い。
 体の熱を移してあげる必要が無いほどにホーエンハイムの体も熱を帯びていた。
 一緒に発熱しているようだった。
・・・もし、母さんを錬成しなかったら。
・・・アルフォンスに肉体があったら。
・・・オレと一緒に育ったアルフォンスだったら。
 鎧ではないアルフォンスとの行為だったらどうなったのだろうと、エドワードは考えてしまった。
 ホーエンハイムと同じだとは言えなくても、エドワードより体格の良かったアルフォンスはエドワードを包み、その体を拓いて怖くなるくらい深い快感を分け合ったのだろうかと思う。
 起こった事を無かった事にした仮定でしかないが、そう思う気持ちも止められない。
 体は快感を求め続けるが、そんな時でも心は快楽だけを追求するのではない。
想いはアルフォンスへも向かう。
「そうだ。アルはどうしていたんだ」
 優しい声がエドワードに質問する。
 エドワードの中をかき乱す行為はそのままに。アルフォンスの代わりにとホーエンハイムは提案しているのだと、判った。
 ホーエンハイムの囁く声がエドワードの心に染みる。
 エドワードの心も体も全て受け止めてくれるとホーエンハイムは告げているのだ。
 何度も交わった体。
 その時には勝手にリハビリをされているようにしか思えなかった行為。     
 それが性的な意味を思い出し、アルフォンスとの行為を思い出す事でエドワードの中で意味が更に変容する。
 さっきまで怖かった官能がアルフォンスの代行を意味すると思っただけで、エドワードの中で輝く喜びへと変わった。
 今まで感じた事のない高みへアルフォンスとイきたかった。望む気持ちは膨れていく。
・・・今は違うけど・・でもいつか。
 そう思う事をホーエンハイムは肯定し望んでいる気もした。
 エドワードの想いをホーエンハイムが後押しする。
 言葉ではなく行為で示されていると判った。
 その選択は間違っているのかもしれない。
 多分、間違っているのだろう。
 だけど、この方法しか選べなかったホーエンハイムをエドワードは感謝し、受け入れていた。
・・・これまで無様な姿を晒していて、今更オヤジに何を隠す必要があるんだろう?
 そこまで考え、エドワードの気持ちがスッと楽になった。
 エドワードは改めて、ホーエンハイムを見つめた。
 ホーエンハイムの熱い瞳の奥にアルフォンスの幻影が見える。
 もしかしたら、向こうの世界で生きているかも知れないアルフォンスの姿が見えた気がした。
 ホーエンハイムの瞳の中にアルフォンスの熱い瞳を見出した気がして、エドワードの熱が更に上がる。
 心を満たす恋情と愛しさを思い出した。
全身の熱が上がる。
 上気して真っ赤になっているのがエドワード自身、自分でも判った。
 自覚した途端に何故だか恥ずかしくなって、エドワードは目を逸らして俯いた。
 アルフォンスに対する愛しさがエドワードの胸で溢れる。
 体の感じる快感も絡まりあって、官能は広がり深化していく。
 体中で沸き起こる快楽の調べは甘く切なく激しかった。
 エドワードは目を開けていられなくて、眉間にしわを寄せギュッと目を瞑った。
 体が熱い。
 自然と呼吸が荒くなる。
 荒い呼吸を繰り返してしていると、ホーエンハイムが覆い被さり深くくちづけて来た。
 歯列をなぞり、口腔を内側から撫でる。
 柔らかく弾力のある、感触が不思議で。
 だけどその感触はたまらなく気持ち良い。
 ゆっくりとホーエンハイムの舌がエドワードの舌を捕らえる。ねっとりと絡めた。
 緩やかな動きで舌の付け根から先端を舐める。
 絡めては解き、少し動きが止まる。
 ホーエンハイムの手がエドワードの腕や背中や腰を味わうように後を引く動きで撫でた。
「・・・んっ・・はぁ・・」
 開放されたエドワードの口元から甘い吐息が放たれる。
 色のついた呼吸はすぐにまたホーエンハイムに絡め取られた。
 同じように深く深く、くちづけられ、開放される。
 何度となく同じ動きをされて、エドワードは体の中で上がっていく熱を持て余した。
 上からも下からも刺激されて、エドワードの意識が朦朧となる。
 体がとろけて意識もとけてしまいそうだった。
 エドワードはホーエンハイムのくちづけに応えながら、鋼の鎧のアルフォンスがエドワードの内部を愛撫する際に痛くならないように、硬い金属の指を口腔で濡らした事を思い出した。
 差出した指を夢中になって舐めた。
 あの時の刺激と似ているようだがまるで違う。
・・・だけど、それでもいいんだ。
・・・アルを思っていても・・
・・・あぁ、これが慰められるって事か。
 エドワードはホーエンハイムが初めて無理矢理に行為を強いた時の言葉を思い出した。
 多分本人自身も欺瞞と思っていたであろう言葉をエドワードは思い出す。
 『慰めてあげる』とホーエンハイムは言った。
 ホーエンハイム本人自身は自覚していなくても、これはやはり慰めというのに相応しい行為のような気がした。
 エドワードは心の中でほんの少し残っていた、躊躇していた気持ちを開放した。
 素直な心の声を口にする。
「来てくれ・・・もっと奥まで・・・」
 ホーエンハイムに向かってエドワードは甘く囁いた。
 エドワードの変化を見てホーエンハイムは温度の上がった瞳で見つめた。
 エドワードの意識がアルフォンスと交わっていた時の行為を思い出しなぞるようにしていたが、やっぱり違うと実感する。
 肉体をもっていたアルフォンスと体を繋いだ時は二人ともまだ幼く、好奇心と自分の体の反応が面白く興味深かった。体を弄る時に、どうなっていくのか探求するのが楽しかった。
 自分の反応もアルフォンスの反応も新鮮で興味深かった事を思い出す。
 だが、今はそうではない。
 求めて求められていると実感する。
 全てを知り、全てを理解しているホーエンハイムが今この一瞬だとしてもエドワードを求めている。
 ホーエンハイムの瞳がその事実を告げ続けていた。エドワードの中で衝動が突き動かされる。
 欲せられている事実がエドワードの体にもフフィードバックしていく。
 心が騒ぐ。
 ドキドキとして、大きく打つ鼓動の音。
 求められて与える事の意味が体を通して教えられる。
 肉体だけではない、心だけでもない。その両方が満たされる。
 傷ついた心を慰められている。そして、自分の傷を修復する行為で、ホーエンハイムも慰めてあげられる。言葉ではなく、体で理解した。
 二人はどちらからともなく深くくちづけて、離れる。
「・・・ぁあ・・イイ・・・」
 熱に浮されながら、ホーエンハイムの瞳に微笑みかける。そうすると、ホーエンハイムもとけそうな微笑みを返してきた。
 アルフォンスとの交わりを思い出しながら、エドワードは求めて与える行為を実感していた。
一人ではない事が嬉しい。求められる事が嬉しい。
 与えてあげて与えられる。
 慰められ、慰めてあげられる。
 今この時の時間。
 全てを忘れて、二人でお互いの心の傷を舐めあっている気もした。
 癒されて癒してあげられる。
 エドワードは癒しの時間に二人で沈んでいくような気がした。



-------------------------------------------- つづく

「ここはそうは言っていないよ」
 ホーエンハイムが淡々とした口調で、まるで報告するように言う。
 その声が嬉しそうで、体の暴走を止められないエドワードは、耳を塞ぎたい気持ちになった。
・・・判っている。そんな風に言うな。
 意識して感じないようにしようと思えば思うほど感覚は鋭敏になり、体は過敏に反応した。
 愛しく恋しいアルフォンスと触れ合った時を忘れようとすればするほど、心はあの時をなぞっていく。
 感じる場所を的確に触れてきて、エドワードの体が跳ねた。
 狭い場所を広げて、ホーエンハイムの指が増やされる。
 指はエドワードの内側をもどかしい程ゆっくりとした動きで撫で擦る。
 奥まで押し込むと入り口ギリギリまで引き抜く。
 たまらないほどの切なさを体の内に生み出す。
 何度も何度も繰り返され、耐えられずにエドワードは声を殺して啜り泣いた。
「うっ・・・んん・・・ぃや・・・」
 ホーエンハイムの指を食むようにエドワードは収縮と弛緩を繰り返した。
 意思に反するように腰は蠢き、快楽をより多く感じようとする。
 止まらない体の暴走。
 止められない暴走をそれでも止めたくて、息を詰め歯を噛みしめるが無駄だった。
 シーツを握ったエドワードの指は力を入れすぎて痺れてくる。
 ホーエンハイムの指が、入れられた時と同じように、ゆっくりと慎重に引き抜かれる。
 刺激された時は嫌だったが、刺激が無くなると不思議な寂しさがエドワードの中で生まれる。
 取り縋っても生み出された空虚を埋めて欲しくなる。
 エドワードは固く閉じていた瞳を開いた。
 潤んだ瞳でホーエンハイムを見つめる。
 ホーエンハイムは温度の上がった瞳をしていた。
 初めて見る熱い眼差し。
 これまで見た事のある家族に対する深い愛情だけではない。違った色の瞳。
 ホーエンハイムの瞳が熱を帯びている。
 いつもの哀しげで優しいホーエンハイムの顔ではない。
 初めてみる目だった。
・・・求められている。
 そうエドワードは感じた。
 父親としてではなく雄の顔をした彼に驚く。
 新鮮だった。
 彼もまた欲望を持つひとりの人間で、ひとりの男である事を感じる。
 ホーエンハイムの生々しい一面を見て驚いたのと同時に、何となく安心した。
 これまでのエドワードだったら嫌だと感じたかも知れない。
 だが今はそうではない。
 自分の気持ちを殺し、人を超越した存在であろうとした、彼の姿を知ってしまったから。
 息子の前では父親だけの顔をして、献身的な愛情を注ぎ、自分の事は置き去りにしていた事を知っていたから。
 欲望を持つ、ひとりの人間である姿を見せてくれた事に、エドワードは喜びを感じていた。
 エドワードの瞳に気がつくと、ホーエンハイムはエドワードの見たことの無い瞳で笑んだ。
 その瞳に惹き付けられる。
 狭い場所をいっぱいに拓いてホーエンハイムの逞しさが、圧倒的な質量を伴って入ってくる。
 エドワードは無意識に体の力を抜いていた。
 アルフォンスとの交わりで習い性になっている行動を無意識に行っていたのだった。
 敏感な場所を撫で上げながら、エドワードの空虚を埋めていく。
 エドワードはたまらなくなって、自分を乱れさせる質量を締め上げた。
 憶えのある硬いだけの感触ではない、硬さの中に弾力があり、ぴったりと重なる感じが気持ち良かった。
 鋼の無機質な存在と違い、肉体の交わりはこんなに気持ちのいいことだったのか。
 新しく発見した気持ちになる。
 エドワードが肉体を持ったアルフォンスとも体を重ねていたが、あの時はあまりにも時間が経ちすぎて記憶は遠い。
 だが、体の大きさと呼応する部分との交わりだったので、こんな風に満たされた事は無かったように憶えている。
 エドワードが締め上げると、ホーエンハイムの息が詰まる。
 その声が不思議でエドワードがホーエンハイムを見上げる。
 眉間にしわをよせ、少し苦しそうにしたホーエンハイムが熱い息を吐いていた。
 自分の反応がホーエンハイムにも影響を与えている。
 それを知ってエドワードの心が更に熱くなった。
 じれったい程ゆっくりとホーエンハイムはエドワードの中を進んでいく。
 ホーエンハイムの指で充分に解された部分は広がり、味わうようにホーエンハイムを包む。
 刺激で立ち上がったエドワード自身は先端から歓喜の雫を滴らせて、更なる刺激を待っていた。
 ホーエンハイムはエドワードの最奥に到達すると、安心したため息を吐いた。
 細心の注意でエドワードを拓いているのだろう。
 真剣な瞳が柔らかくなる。
 ホーエンハイムはエドワードに覆い被さり、抱きしめた。
 優しく髪を撫で、肩から背中、腰にかけてのラインを大きな手で確認するように撫でる。
 ホーエンハイムの額に汗がにじむ。
 乱れた髪に感じた事のない色気を感じて、エドワードはドキリとした。心が乱される。
 狭い場所をいっぱいに広げたためか、ホーエンハイムは息の整うまでじっとして動かずにいた。
 エドワード自身がその大きさに馴染むまで待っているのか。
 そうだとしても、刺激するだけ刺激して猛った時に刺激を止められて、エドワードは苦しくなった。
 肩を撫でる手の刺激すら切なさを生み出す。
 ホーエンハイムの胸にエドワードはすがりついた。
 ユルユルとぎこちなく腰を揺らし、蠢かせる。
 さっき放った時のように、一気に駆け上がる快感ではない。
 夢中になって何も見えなくなる衝動ではない。
 甘い毒が全身に回っているようで、官能に痺れた体が更なる快感を求めて勝手に動いている。
 何も考えられないのではなく、考える事が出来るから辛かった。
 止めたくても、止められない。
 止めようと思えば思うほど腰は動き、ホーエンハイムを美味しそうに銜えて味わっていくのだ。
「うっ・・・いや・・・」
 心と体がバラバラでエドワードは苦しくなり声を出す。
 コントロールの出来ない体に悲しくなり、目が潤む。
 頭を乱暴に振ると、ホーエンハイムの両手が優しく包み込む。
 潤んで視界のぼやけたままホーエンハイムを見ると、ホーエンハイムは熱い眼差しのまま、エドワードに微笑みかけた。
「良くてたまらないんだろう」  
 熱を含む声にも感じてしまい、エドワードは体を震わせた。




------------------------------------------------- つづく

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