アルエド短編

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 再会して二人きりで、二人とも口づけに溺れながら早く体を繋げ合わせたい欲求に駆られる。
「あ・・・アル・・アルッッ」
「にいさん・・・」
 唇を離した合間に漏れる、荒い息とお互いを確認し欲する気持ち。
 エドワードは自分の口腔内を荒らされて、舌を引きずり出されてアルフォンスの口腔に誘われる。
 誘われたまま舌を絡めると、エドワードの舌の奥に緩く歯を立てられる。
 堪らない、とエドワードは思った。
 エドワード自身の欲望は既に形になっていた。エドワードの中心で更なる刺激を求めている。
 服を着たままの、布を隔てたまま抱きあうだけでは物足りない。
 だけど、久しぶりの口づけは、まだまだ足りない。
 エドワードは口づけを続けながら、アルフォンスの体に腰を摺り寄せる。
 布を隔てた刺激。
 直接欲望を擦られただけで、このまま刺激を続けたら一人で達してしまいそうだとエドワードは思った。    
 一人で気持ち良くなるのでなくて、アルフォンスと二人で気持ち良くなりたい。
 それがエドワードの気持ちだった。
 困ったなとエドワードが思っていると、背中を彷徨って体の輪郭を確認していたアルフォンス手が前に伸びてくる。
 エドワードの欲望の形をやんわりと握る。
「あっっ・・アル!」
 いきなりの刺激にエドワードは驚く。
 快感がビリビリと電気のように全身を走り、体が弓なりになった。
「にいさん・・・硬くなってる」
 ため息と共にアルフォンスがエドワードの耳元で囁く。
 色っぽく艶っぽいアルフォンスの掠れ声。
 どんな表情でアルフォンスが声を出しているのか知りたくなってエドワードは閉じていた目を開けた。
 開いた途端アルフォンスの瞳に目が合ってしまう。エドワードを見つめる熱い瞳。
 エドワードはアルフォンスの視線を受けて、視線にも抱かれている気がして恥ずかしくなる。
 頬が上気して熱くなった。
「ほら」
 抱き合い絡まっていた体をアルフォンスは少し離す。
 そして、形の変わったエドワードの欲望の輪郭を撫でる。
 アルフォンスにエドワードの変化を見るように促され、促されるままにエドワードはその場所を見た。
 張り詰めて形の変わったエドワードの欲望。
 見なくても変化している事は判っていたが、見るとそれが再確認される。
「んな恥ずかしいこと言うな!」
「恥ずかしくないよ・・・にいさん。ボクがいて、にいさんがいてお互い欲しいと思っている。その証拠だから。ボクは嬉しいんだ」
「そう・・か・・・じゃ、お前の証拠もオレに感じさせてくれ」
「うん」
 アルフォンスはエドワードの手を自分の欲望へと導いた。
 それはエドワードのと同じく張り詰めている。
 今二人がここにいて、二人の気持ちはひとつ。
 エドワードはそれが堪らなく嬉しく気恥ずかしかった。





----------------------------------- おわり
20041207初稿

 涙に濡れたエドワードの頬を温かい湿ったアルフォンスの舌が涙ごと舐める。

 再会の後。

 二人きりになった途端にまた感情が溢れる。

 感激は胸の奥深くから込み上げてきて、止まらない。

 お互いに違う世界で努力した。

 思いつく限りの学問を渡り、試した。試行錯誤を果てしなく繰り返した。

 幾つもの出会いと別れを経験して、そしてまた再び逢う事が出来たのだ。

 絶対にもう一度出会うんだという硬い意志の元の行動だったが、確信があった訳ではない。

 生きているうちに再会出来ない可能性もあった。

 だが、二人は再び再会した。

 そしてそれは二人ともお互いに強く望み続けた結果だった。

「兄さん。兄さん」

 ため息と一緒にアルフォンスがエドワードの耳元で何度も囁く。

「アル・・・アルフォンス・・っ」

 アルフォンスが自分を呼ぶ声に答えるように。

 エドワードもアルフォンスの名前を涙で滲んだ掠れ声で呼ぶ。

 アルフォンスが涙を辿って、瞼から目じりを舌先で舐める。

 その感触がくすぐったくて、エドワードは少し身を捩った。

 くすっとエドワードが笑う。

 笑うと溢れていた涙が止まった。

 エドワードの頬をアルフォンスの両手が包む。

 頬を撫で、顔の輪郭を確かめるように指は彷徨った。

「綺麗だ・・・」
 
 うっとりとアルフォンスが呟く。

 正直な気持ちからの言葉だったが、エドワードは羞恥で背中の焼け付く思いをした。

 だが、心の裏側では舞い上がるほど嬉しかった。

 愛している人から愛されている事を告げられているのだ。

 視線で、表情でもそれは感じていたが、言葉に出されると更に実感する。

 いつも二人一緒だった当たり前の時代を過ぎ。

 離れ離れになっていた数年間でエドワードは自分の気持ちをしっかり自覚していたから。     

 やっと出会えて気持ちを確かめる事が出来て、良かったと思う。

 だけどその思いとは裏腹で、エドワードの方は自分から態度に出す事が出来なかった。

・・・オレからも何か言うか行動を起こさなきゃ

 エドワードは思ったが、何も出来なかった。

 全身に急速に血が巡る気がする。

 体温が上がる。

 顔を真っ赤に火照らせる。

「ばっ・・か・・何言ってんだ」

 アルフォンスの視線から目を逸らす。

 見詰め合っている事が恥ずかしかった。

 アルフォンスの熱い視線に炙られる心。

 視線は外してもエドワードは全身にその熱を感じていた。

 アルフォンスはエドワードの逸らされた視線を残念に思う。

 アルフォンスの告白に顔を真っ赤に染め、潤んだ瞳で見つめたエドワードの表情。

 恥ずかしそうにだけど嬉しそうに告白を受け入れた表情を、エドワードは自分では自覚していない。

 アルフォンスはエドワードのどんな表情でも見つめたくて口を開く。

「何って本当のことだよ。兄さん相変わらず自分のこと判っていないんだから」

 揶揄するようにアルフォンスが言うと、エドワードはからかいの言葉にカッとした。

 プライドが強く負けん気の強いエドワードは、アルフォンスの挑発に易々と乗る。

「何だと」

 エドワードは怒気を滲ませて、アルフォンスの両手を自分の頬から引き剥がす。

 涙で濡れた頬を自分の手で乱暴に拭った。

「何するんだよ。兄さん」

「何でお前から見下げられたままなんだよ」

 喧嘩腰に目を吊り上げるエドワードの輝く瞳。

 座りこんだ二人。

 アルフォンスの現時点の身長は低いが、膝立てでエドワードよりも頭が高くなっている。

 夢中になっていてアルフォンス自身も気がつかなかった。

 以前の身長の高い時の記憶が残っているから、その記憶を辿るような体勢になってしまったのか?

 情熱が勝り、そんな体勢になってしまったのか?

 それは判らない。

 だけど、感動の再会でこんな事にムキになるのは高まった熱い思いに水をかけられたような気がする。

 エドワードの態度にムッとしたアルフォンスは言い返した。

「別にいいでしょ。兄さんは身長のことになるとムキになるんだから・・あわわ」

 アルフォンスの言葉を聞いてエドワードの表情が剣呑な色を帯びる。

 喧嘩への臨戦態度が整いそうになる。

 喧嘩早いエドワード勝気な姿もアルフォンスの愛するエドワードの一部だが。

 今は喧嘩をして再会の喜びを台無しにはしたくなかった。

 アルフォンスはエドワードの激怒する地雷だけは避けようとした。

「オレが何だって?」

「兄さん落ち着いて」

 エドワードの背中に手を回し、軽く抱き締める。宥めるように背中を擦る。

「アル!」

 咎めるエドワードの声に、アルフォンスはギュっと強くエドワードを抱き締める。

 そして腕を緩め床に膝をついた。

 アルフォンスは腰を軽く抱いたまま、エドワードを見上げる

「ね。こうしたらいいでしょ?」

 身長の差が反転して、エドワードの方が高くなった。

「ぅ・・・いい・・けど・・」

 アルフォンスが甘えるように、腰を抱く。

「ったく仕方ねぇな」

 エドワードは微笑むとゆっくりと屈む。エドワードもアルフォンスと同じで喧嘩をしたい訳じゃない。

 再会した喜びを二人で確かめ合いたかっただけだ。

 二人でしか出来ない方法で。

「アル。腕離せ」

 エドワードは淡々とした声でアルフォンスの耳元で命令する。

 さっきのような怒った様子はない。

 何か思いついたようで、薄く微笑みすら浮かべている。

 アルフォンスはエドワードの声に従った。

「そのまま、オレの膝の上に座って」

 言われるままアルフォンスはエドワードの膝の上に腰を下ろす。

 お互いの顔が丁度いい高さに揃った。

「これで高さが丁度いいな」

 にっとエドワードは笑う。アルフォンスもつられて微笑んだ。

 アルフォンスの首に両腕を回すと、アルフォンスの舌を自分の舌でべろリと舐めた。

 緊張が解けて、素直な気持ちのまま行動に起こせそうだとエドワードは思った。

 アルフォンスの唇をエドワードが軽く噛む。

 上唇と下唇を何度も噛む。

 繰り返す口づけ。

 刺激は足りない。エドワードはアルフォンスの性感を煽りながら自分も煽られていた。

 悪戯しながら、誘う。

 焦れたアルフォンスが唇の隙間からエドワードの舌を捕らえた。

 自分の口腔に誘い込みお互いの舌を絡めた。

「ぁ・・・んっ・・・んん・・・」

 舌を強く吸われて、緩く噛まれる。

 甘い刺激に全身が震える。

 唾液を交換して、口の周りを唾液で濡らす。

 エドワードは強すぎる感覚に眩暈を感じる。

 座っていたから良かったが、足の力は抜けていくのを感じている。

 しかし口づけは止まらない止めたくない。

 口づけの先の行為を期待する自分自身をエドワードは感じていた。

 官能を受けて張り詰めて行くのを感じる。


「兄さんの舌。甘い・・・初めてのキスが一番甘いって思っていたけど・・・」

 アルフォンスもそれは同じだった。

 だけど、今は口づけを続けていたい。

 久しぶりの感覚に夢中になる。

 二人は甘い口づけを重ねる。

「違う。今が一番・・・もっともっと味わせて」

「オレもお前の事、もっと感じたい」

 エドワードは照れながらもアルフォンスをしっかり見つめ気持ちを告げた。

 熱い視線をアルフォンスは嬉しそうに受け止めた。

 二人は見つめあい口づける。

 深い口づけを繰り返す。

 そしてその合間に唇と体をほんの少し離す。

 度し難い磁力が二人の間に発生したかのように、離れた途端すぐに引き寄せられて重なっていく。

 二人は繰り返し甘い口づけに溺れ続けた。
 



---------------------------------------------- おわり

20041207初稿

 息を詰めて、エドワードは自分の唇で触れた。

 温かく柔らかい愛しい人の唇の感触。

 過去の記憶はあまりにも遠すぎて、エドには夢のように淡く儚い思い出だった。

 思い出す度に胸を切ない痛みが走っていた。

 だけど、今日は夢ではなくて現実だ。

 肉体を取り戻して、弟のアルフォンスがエドワードの前に存在している。

 二人は遠い幼い頃にお互いの存在を深く知りたくて、ぎこちなく触れ合った。

 恋がその間に存在しているのか問い正す間も無く行為を重ねた。

 そして深く考える間も無く、その後アルフォンスの肉体が失われたのだった。

 ゆっくりと口づけるだけで、全身を緊張が駆け巡る。

 軽く触れ合わせただけで、離れる。

 もっとすごい口づけも知っているはずなのに、今は触れるだけで眩暈がしそうになる。

 口づけの間の息継ぎなんて忘れた。触れるだけの口づけだけで精一杯だった。

・・・次はどうすれば良いんだチクショウ!

 緊張して赤面した表情を見られるのが恥ずかしくてエドワードは俯く。

 これから、触れるだけじゃなくて、もっと深く感じ合いたいと強く望むのに。

 再び触れるための一歩が踏み出せない。

「・・・兄さん」

 アルフォンスの口からため息と共にエドワードを呼ぶ声が紡ぎ出された。

「アル」

 緊張した声でエドワードもアルフォンスを呼ぶとエドワード頭上で笑うの気配がした。

「緊張している?」

 笑われたと思い、ムッとする。

・・・オレはこんなに緊張しているのに、お前は余裕があるのかよ。

 アルフォンスに対して対抗意識が芽生え、勢いよく顔を上げた。

「あぁ・・・」

 だが、予想に反してエドワードの視線に飛び込んで来たのは。

 引きつった笑顔を張り付かせた緊張した瞳のアルフォンスだった。

「お前もな」

 緊張したアルフォンスの表情でエドワードは我に返る。

 エドワードは自分の両手でアルフォンスの頬を包み込んだ。

「温かい」

 アルフォンスは自分の頬にあるエドワードの手に自分の手を重ねた。

 その感触を味わうようにギュっと握る。

「うん・・・兄さんも温かい」

 目を細めて笑うアルフォンスの顔が歪む。瞳が潤んで水分を蓄えた。

「この温かさが・・・お前なんだな」

 泣き出しそうなアルフォンスを揶揄しようと思ったエドワードだった。

 だが、その表情を見ているとウッカリ自分の視界も霞んで来るのだった。

 込み上げてくる感情を止められない。

 弟のアルフォンスに泣いている姿を見られるは恥ずかしいという思いが頭の片隅で過ぎる。

 だが、今のアルフォンスの姿を見つめていたい思いが上回った。

「そうだよ。ボクも思い出した・・・そして今も感じている。兄さんの温かさ。もう離さない」

「オレだって、離さないさ」

 流れる雫を拭う事もせず、二人はその温かさに酔った。



---------------------------------- おわり

 師匠の元で修行に励んでいた頃の話。



 体の成長と共にアルはエドの事を意識するようになっていた。
 厳密には母親が亡くなった時の崩れ落ちそうなエドの姿に庇護欲を掻き立てられ気持ちは少しづつ変性していったのだった。

「おーい。・・・アル。」
 ある日の夕方、エドは錬金術の本を読みふけり書庫に座るアルに声をかけた。
「なぁに・・・兄さん。」
「一緒に風呂入ろうぜ。」
「え・・・ボク・・・あの、後で入るから。今、本が佳境だから。」
「お前この前もこの前もそう言って、オレ一人で入ったじゃないか?・・・今日はお前が区切りがつくまで待ってるから。・・・一人で入ったら師匠に怒られるのはオレなんだゼ。居候なんだし、お湯は節約して使えって。オレが我慢できなくて先に入ったって思われてるみたいだからさ。」
「え・・・そ・・・そうなの?じゃぁ・・・入るよ。」
「・・・いいから、ココで待ってるから。・・・でも最近アル変なんだよなぁ・・・一緒にいる時間極端に短くなったし、何か言いたげにオレを見ているかと思う事もあれば、不自然に視線を逸らされる事もあるし・・・何か気になるよなぁ・・・アルお前、何かオレに隠し事してないか?」
「ううぅん。・・・そんな隠し事なんてしてないよ。・・・勉強が難しくなってきたから、ちょっと疲れているかも知れないけど・・・」
「そうか?・・・疲れかぁ・・・ヨッシャ・・オレ様が背中流して、肩でも揉んでやるから。」
「えっっ・・・い・・い・イイよ・・・そんな事しないで。」
「遠慮すんなって・・・そら、行くぞ。疲れたまま勉強したって頭に何か入るもんか。さっぱりしてからにすればいいさ。」
 アルの腕を引っ張って立ち上がらせると、「用意しに先、行ってっから」とエドは叫んで部屋を後にした。
「兄さん・・・んっ・・もう強引なんだから。・・・まぁ、でもそれが兄さんだし・・・仕方無いか。」
 後に残されたアルはいつものエドの様子に微笑ましさを感じていた。


 精神の鍛錬もしているから、ちょっとだったら大丈夫かもと思っていたアルだったが、エドの細い強靭なバネのような筋肉をまとった肢体を見ただけでドキドキして体が勝手に変化して、認識の甘さを実感する事になった。
・・・や・・ヤバイ。知られたら・・・ボク、兄さんに嫌われてしまう。
 兄弟に恋情を抱く事は間違った事だという知識はあるアルは、体の変化をエドに知られない様におさめようと少し離れて斜め横を向いて座る。
 さり気無くわざとらしく見えない様に太ももにタオルをおく。
・・・こんな時には、頭が冷静になるものを思い返さなくちゃ。
 アルはさっき読んでいた本の内容を懸命に思い返そうとしていた。
「あれ?アル何でそんな方向を向いているんだ?・・・シャワーはコッチだぞ。」
「う・・ん・・・そうだね。」
 エドに指摘され慌ててアルは向きをずらした。
 タオルが落ちない様に細心の注意をして。
「お前・・・なんだか、また大きくなってきたな。腕も太くなったし、鍛えられて全身に筋肉ついてきたし・・・」
「兄さんだって筋肉ついてきてるじゃない?」
 エドの会話に何気なくアルは応える。だが、頭の中はそれどころでは無かった。
 アルが意識しないように一生懸命になっているのにエドの方から意識を向けさせるのだ。
「以前に比べたらお互い逞しくなったけどな・・・お前に比べてオレは筋肉っが太くなんないだよなぁ〜別に筋肉ムキムキになりたい訳じゃないけど・・・体の事全部負けてるってのは、悔しいなぁ。・・・あ・・・一個比べ忘れていた。」
「・・・・何?」
 嫌な予感がして、アルはエドの言葉を待った。
「何ってアレしかないだろう・・・お前、タオルなんかで隠してないで見せろ。」
 エドはいきなり、アルの太ももにあるタオルを外そうと手を伸ばした。
「えっっ・・ヤだよ・・・」
 急なエドの行動を防ごうとアルは動く。
 タオルを取ろうとするエドの手を掴もうとするが、予想出来ない反応に一瞬行動が遅れる。
「兄さん止めて!」
 中止を求めて叫ぶアルの言葉は届かず、タオルはエドの手に渡った。
 そしてその下から現れたのは、懸命の努力にやや沈静化した少し上を向いた変化したアルの下半身だった。
「・・・・・・・負けた。」
「だから止めてって言ったじゃない。」
・・・兄さんに見られた。
 決定的な瞬間を見られて、アルは大きな衝撃を受けた。
 そのために会話が成り立っていない事に気づかない。
 兄を見て欲を掻き立てられる自分自身を知られてしまったとアルは思った。
・・・こんなボクを兄さんはどう思うだろう。
・・・やっぱり、一緒にお風呂になんて入るんじゃなかった。
 アルは後悔しても仕切れない程の後悔をした。
「何かオレのと形も違う・・・」
 エドはそんなアルの気持ちに気づく事なく、アルの下半身をジッと凝視していた。


 沈黙が二人をの間を過ぎる。


 アルはいつ兄の裁きの言葉が降って来るのかと怯え、力を持っていた下半身が元気を無くしていった。
「・・・この事で悩んでいたのか。」
 エドはぽつりと呟くと、項垂れたアルには冷水をかけた。
「ひゃっっ。」
 アルは驚き、変化した体も完全に元に戻る。
「ショゲて無い!!・・・アルよく聞け・・・それは病気じゃないから大丈夫だ。」
「・・・・・・・え?」
「ココは形が変わったからといって病気とかじゃなくて成長するとそうなるんだ。お前はオレより発育いいからな。立派な大人のオスになったって証なんだから。そう悩むな。」
「えぇ・・と。兄さん?」
「そうそう、アル・・おしべとめしべの話は知っているよな。・・・」
 全然判っていないエドにアルはホッとする。
・・・良かった。
 エドはアルの悩みや体の変化に気づく事なく、話をはじめた。




 その日、浴室の長話で長湯になっていしまい、この後結局二人とも師匠に怒られてしまったのだった。






-------------------------------------------- fin

2003.11.18.初稿

 一仕事終えて帰り道。
 最寄駅に向ったエドワードとアルフォンスの二人は、鬱蒼と繁る草むらからやっと抜けた。
「兄さん」
「あぁ?・・・何だ?」
「髪の毛ぐしゃぐしゃ・・・スッゴイ乱れているよ。」
 エドワードの服は小枝や枯草、雑草にまみれ、髪は乱れていた。
「・・・そうか?・・・結構シンドイ道のりだったからなぁ〜仕方無いか。野を越え山を越えやっと辿りついたからな。」
「そうだね・・・方向は間違っていなかったんだけどね。あのオジサン直線距離で教えてくれたみたいだったね。」
 崖と言ってもおかしくない急な坂を降りた場所に駅が見える。
 二人は目指す駅へと足取りも軽く砂埃を巻き上げて駆け下りていく。 
「ホントは知らなかったんじゃねーか?オレが駅の道を聞いたら、驚いていたもんな。」
「あれは、人の足で行ける距離と思っていなかったからじゃない?」
「まぁ・・・そうかもな。」
 エドワードはほんの少し息を乱しながら、坂を降りていく。
 常人には大変な道のりも二人には大した事は無かった。
 だが仕事を終えての道のりと考えれば少々無謀な道のりだったかも知れない。 
「でも、オジサンに逢うまで人一人通らなかったし、ボクたち道に迷っていた訳だし。兄さんは来た道を戻りたくないって言い張ったもんね。」
 エドワードの無茶な選択をアルフォンスが揶揄すると、エドワードはムッとした顔をした。
「オレだけのせいかよ。だって、ホントにそろそろだと思ったんだし。・・・戻ったからって、馬車の時間は午前で終わって翌日にしか無かったからな。オレは早く帰りたかったんだ。それにお前だって、『そうかも知れない』って言って、オレが進むって言ったら強くは反対しなかっただろ。」
 怒った口調でエドワードが反論しているうちに二人は駅に到着した。
 山を背にして荒野に抜ける線路の駅は無人の駅だった。
 周囲には店どころか家1軒ない。荒れ果てた荒野にポツンと駅があるだけだ。
 アルフォンスは辺りを見回し、地平線に消える線路の先を仰ぎ見た。
「まぁね。今日中に駅に着こうと思ったらあの選択しか無かったけどね。・・・でも思ったより、 ズイブンと遠くだったね。この駅。」
「直線距離では確かに近かったんだけどな。」
 エドワードは駅に入ると時刻表を確認する。
 駅に汽車の来る時間は三時間後だ。
 エドワードはホッと胸を撫で下ろした。苦労した挙句に汽車が明日まで来ない可能性もあったのだ。
 山道を行く途中にその可能性も頭を過ぎったが、エドワードが言い出した提案を自分自ら撤回する事は嫌で進んで来た道のりだった。
 もし休憩出来る集落もなく、汽車も来ないなんて事になったら、避けていたアルフォンスの嫌味を唯々諾々と聞かなくてはならなかっただろう。疲れたエドワードはそれは避けたかった。
「山一つ越えちゃたもんね。・・・ボク達。」
 アルは思い出し含み笑いをした。
「駅に着いて見れば無人だし、付近には何も無い。まぁ、後3時間も待っていればセントラル行きの汽車が来るって判って良かったけどな。」
 勉めて明るくエドワードは答える。
 今日中に汽車に乗り、明日遅くには街に着くだろう。そうなれば美味い飯とゆっくり休める宿に泊まる事も出来る。楽しい想像にエドワードの頬が緩んだ。
「コレで、汽車が明日しか来なかったら、どうするつもりだったの?また山を越えて戻るつもりだった?いっつも後の事まで考えないんだから。」
「まぁまぁそう怒るなって、戻るなんて、そりゃ勘弁。・・・オレはあの辺に一秒でも長く居たく無かったんだよ。お前だって判るだろう。嫌な任務だったんだ。」
 アルフォンスの小言も現実に起こった事ではないので、エドワードにはヘッチャラだ。「それは判るけど・・・関係者ばかりが住んでいるわけじゃないし。」
「それでも嫌だったの!・・・そんで、居たくなかったら、取りあえず進むししかないだろう?・・・まぁ、汽車が来なかったら、この辺で野宿だな。人の住まなくなった村もある事だし、野宿よりは楽に過ごせそうだしな。」
 疲労の溜まった心と体では野宿は避けたいとエドワードは思っていたが、現実に起こった事でなければ何とでも言える。
 そんな強がりにアルフォンスは気付かなかった。
「そうだね・・・でも良かったよ。今日中にセントラルに戻る汽車に乗れるんだからね。・・・そうそう、まだまだ待つ時間あるんだから・・・兄さん・・・髪の毛梳かしたら?」
「そうだな・・・」
 乱れた髪を梳かそうとエドワードは鞄から櫛を取り出す。
 櫛は使い込まれて歯の部分が広がっていた。
「結構年季入ってきたなぁ。」
「そろそろ錬成しなおす?」
 この櫛は木片とエドワードの髪の毛を元にアルフォンスが錬成したものだ。
 材料になるものがあれば日常生活に必要なモノは大抵錬成出来る。
 だから材料だけ持ち歩いてもいいのだが、材料がかさ張るモノは錬成済みにして持ち歩いている。櫛もその一つだった。
「ん?・・・そうだな。お前に頼むか。オレの前髪も伸びてきたし、丁度いいそろそろ切るか。」
「じゃぁ・・ボク、櫛、分解するね。」
 アルフォンスは錬成陣を書き、櫛を元の木片と髪の毛に分解する。
 その横でエドワードは前髪を一掴みにして携帯ナイフでバッサリ切り落とした。
「コノくらいかな?」
「相変わらず、大雑把だね。」
 いつもながらなエドワードの豪快な散髪にアルフォンスは呆れる。
「別に良いだろ!綺麗に整えたって、どうせどっかで立ち回りしているうちに先っぽがあちこち切れて、揃わなくなってくるんだからさ。」
「ボクは兄さんにはあんまり危険な事してもらいたくないんだけど・・・」
「軍の仕事に絶対の安全なんてないさ。これでもマスタング大佐も色々考えて仕事回してくれているみたいだから。」
「そう危険でもない仕事をとっても危険にするのは兄さんの得意だもんね。」
「んーな事ねーよ。」
「ほら・・・こん位でいいか?」
 エドワードは手の中にある髪の毛をアルフォンスに渡した。
「うん・・・じゃぁちょっと待ってね。」
 アルフォンスは木片と渡されたエドワードの髪の毛を置くと、錬成陣を書き櫛に錬成する。
 蒼い光が輝く。
 新品同様の櫛が陣の中に現れた。
「はい。できた。どうかな。」
「サンキュー。ありがとな。やっぱアルは細かいモノ得意だよな。今回はまた力入ってんな。」
「兄さんが大事に使ってくれるの知ってるから。ボクも作りがいがあるよ。」
 誉められてアルフォンスは照れた。
「じゃぁ、さ・・アル・・・オレの髪、梳いて。時間はいっぱいあるだろ。」
 甘えるようにエドワードが言う。駅の入り口の階段に座り頭をアルフォンスに傾けた。
「別に良いけど。」
 アルフォンスはエドワードに甘えられてくすぐったい気持ちになりながら、エドワードの隣に座った。 優しく髪を梳かす。エドワードの髪は太陽の光を浴びて黄金色に輝いている。
 素直にされるがままになっているエドワードの頭がゆっくりと揺れる。
「気持ちイイ?」
「まぁな・・・すまん。アル・・・オレ眠くなってきた。」
 エドワードは呟くとアルフォンスの膝に顔を埋めた。
「どうしたの?甘えちゃって。」
「・・・ぅう・・・ん?・・・ちょっと無理しすぎた。疲労困憊。もうダメ。・・・アル膝貸してな。後ヨロシク。」
「・・・兄さん・・・兄さんってば・・・もう。」
 エドワードの髪が風に揺れる。黄金色を放つ髪がアルフォンスの膝に広がった。
 アルフォンスは愛しい者にする手つきでエドワードの髪を梳かし続けた。
 
 


---------------------------------------- おわり


 
20050313初稿

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