出来心

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「続き・・・してもいい?」
 今までと違った緊張がアルフォンスの中を駆け抜ける。
 アルフォンスの言葉にエドワードはハッと顔を上げて、アルフォンスを見つめる。アルフォンスはエドワードの驚く表情を前に恥ずかしそうに頬を染めて笑った。
「ボクの事、笑わないでね」
「そんな事しない。」
 これ以上ないくらいの真剣な表情でエドワードはきっぱりと告げた。
「兄さん手伝ってくれる?」
「あぁ。」
 アルフォンスはエドワードの指を導いて、中心にゆっくりと指を絡めた。形を確かめるように、指を滑らせて、なぞる。
 エドワードはアルフォンスの指の動きを追って、ぎこちなく指を動かした。
 指の刺激に徐々にアルフォンスの項垂れた部分が力を持ち始める。
「お・・・何かスゴイぜ・・・アル・・・」
 目を輝かせて興奮気味にしゃべるエドワードの顔を直視できなくて、アルフォンスは視線を逸らす。
 始めの想像とは異なったが、望んだ形でエドワードが触れてくれている。
 腰から背中に這い上がる背徳の快感が、アルフォンスを支配し始めていた。
「兄さん・・・お願いだから、しゃべらないで。」
 顔全体を真っ赤にしてアルフォンスはエドワードの言葉に答えた。
 時に力の加減を失敗してエドが強く刺激してしまう事もあったが、それすらもアルフォンスの官能を刺激した。強い快感で、眩暈がする。
 アルフォンスは薄く目を閉じると、目指す頂点へと自身を導いた。




 「へぇ・・・こうなんだ。・・・この体液ってどんな構造になってるんだろう。ああっっ。顕微鏡借りてくれば良かったなぁ。」

  青い匂いの中、エドワードは感心した声を上げた。
 アルフォンスの手の平に出された、体液に興味深々だ。夢中で観察する。
 眺めて、匂いをかいで、指で触れてみる。
「兄さん、恥ずかしいから止めてよ。」
「判ったから・・・恥ずかしついでに、もうちょっとな。」
 聞いているのかいないのか、アルフォンスの抗議をいなすように軽くかわして、エドワードは熱心に観察を続けた。
 白濁した粘液をアルフォンスの手の平の中で指で広げる。
「う・・・ん。成程・・・そうか、そうか。・・・判った事から書いておくか。」
 独り言を呟いたかと思うと、エドワードは急にベットから這い出し、自分のバインダーを取り出して、ページをめくり始めた。「あった、あった」と呟きつつペンで書き込みを始める。
 ベッドのアルフォンスの隣にはエドの抜けた穴が開いていた。
 勉学熱心で探究心旺盛のエドワードをアルフォンスは呆れながらも感心しつつ眺める。
 下着すら着けないで、下半身裸のままバインダーの前で固まったエドワードに、アルフォンスはふと思い出し、声をかける。
「・・・・・・兄さんもするんでしょ?」
「・・・あ?」
 アルフォンスの言葉にエドワードはバインダーから顔を上げて、アルフォンスを不思議そうに見つめた。
「・・・そうだったな・・・。」
 ニッと笑うとペンを置く。
「オレもヤッてみたい。」
 合点がいって、エドワードはバインダーを置くとベットに戻っていく。
 エドワードはアルフォンスの隣のポッカリあいた穴に体を収めると、嬉しそうにアルフォンスに声をかけた。
「で?どうするって?」
「ボクがさっきやったみたいに・・・」
「ふむ、ふむ。」
 アルフォンスはエドワードの指に自分の指を重ねて、エドワードの股間に這わせる。
・・・兄さんのに触れる。
 想像していたシチュエーションとは違っていたが、望んだ状況にアルフォンスは一度治まった熱がこみ上げそうになる。好きな人の体に触れる事が出来る。
 それは、嬉しくて、天にも昇る気分だった。
 出来るだけ長い時間触れていたかったから、アルフォンスは今の自分の体の変化を今のエドワードには知られたくなくて、アルフォンスは腰をずらして、硬く反応しそうな場所と、エドワードとの体の間に距離をとる。
「ちょっと痛いかもだけど、我慢してね。」
 エドワードの中心に手を触れると、包皮を軽く握って押し、先を出す。エドワードはうっと息を詰まらせたが、アルフォンスの指は動きを止めると、小さくため息をついた。
「大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ。ちょっと痛かったけど、我慢出来ない程じゃないさ。」
 苦笑しながら、エドワードはアルフォンスに視線で先を促す。
 アルフォンスがゆっくりと先からくびれを撫でるように刺激すると、エドワードの背中が反り返った。
「う・・・んっ・・・何だか変な感じが・・する・・・」
「気持ち良くない?」
 アルフォンスはエドワードの反応に心配そうに、声をかけた。
 エドワードはアルフォンスをチラっと見ると、微かに微笑む。薄く目を閉じると、心地良さそうな表情をした。
「・・・・気持ちいいよ。」
 指の動きに合わせて、体を細かく震わせる。
「もうすこし、続ける?」
「・・・続・・けて・・く・れ。」
 切れ切れの吐息交じりの言葉に、アルフォンスの体が反応する。
 頬を紅潮させて、薄っすらと汗ばんだ肌に、潤んだ瞳。
 緩く綻びた唇に口づけたい衝動と、もっと思いのままに色々なエドワードの場所に触れたい衝動に駆られるが、それは憚られた。理性の力で踏みとどまる。
・・・今日は兄さんが触れてくれて、ボクが触れる。
・・・それだけでいい。
 さっき体の距離を置いて良かったと本心からアルフォンスは思った。
「オレ・・・出る・・かな?」
 濡れた舌を覗かせながら、エドワードがアルフォンスに問いかける。艶かしいエドワードの姿にアルフォンスの心は煽られる。
 アルフォンスは顔を背けて、ぎゅっと固く目を閉じると、震える声を落ち着かせようとした。
「それは、判んないよ。体が準備出来ていなかったら、気持ち良くても出ないだろうし。」
「そう・・・か・・」
 アルフォンスの答えた通り、刺激したからといって準備の出来ていない体では体液の放出は無く、アルフォンスはエドワードがもういいと言うまで刺激は続けられたのだった。




 行為の後、二人は何となく離れがたくて、そのまま同じベットで休む事にした。
 お互いの温もりがお互いを安心させる。
「どうだった?兄さん。」
 暗闇にアルフォンスの声が落ちる。
「背中から、気持ちイイ感じが這い上がってきて・・・病みつきになりそうだな・・・これ・・・」
「そう?」
「今はもういいけど、またしたくなるかも知れないなぁ。」
 素直なエドワードの感想に、アルフォンスは思いついた言葉を繋ぐ。
 また、もしかして、ひょっとしたらの希望を込めて。
「次したくなったら・・・ボクまた手伝うよ。」
「そうだなぁ・・・お前のもまた見せて。今度は出たものもっと観察したいし。」
 エドワードから頼まれてアルフォンスが断れるはずなかった。
 アルフォンスはエドワードを目の前に更なる我慢を強いられる事になる予感がしたがあえて考えないようにした。
「うん・・・判った。」
 アルフォンスの返事が闇に落ちて、二人の間に沈黙が過ぎる。アルフォンスはどきどきしてエドの言葉を待っていたが、期待に反して聞こえてきたのは、安らかなエドワードの寝息だった。
 すぐ隣にある温もりに、繰り返される静かな呼吸。
 深くなるエドワードの眠りに反して、アルフォンスは眠れない夜を過ごす事になりそうだった。



--------------------------------------- おわり
(20031126〜20040128サイト掲載より:再録)

 エドワードはベットの上方の小さなテーブルの上に置いてあるランプに火を入れると、暗闇の部屋を仄かに照らした。
 興味深々と目を輝かせるエドワードの瞳と目が合う。
 次の瞬間。
 ついっとアルフォンスは目を背けた。

・・・兄さんの目を直視出来ない。

  アルフォンスの心臓は早鐘の様に打ち、鼓動が耳元で聞こえた。咽喉から湿気が奪い取られて、乾燥で息が詰まる。
 アルフォンスは逸らした眼差しを伏せると、不自然にならない様にゆっくりと深呼吸をした。
 自分が誘って、エドワードが承諾したとしても、その行為の意味や思いの深さでは、エドワードとアルフォンスは比べようもない場所にいる。
 期待と緊張でアルフォンスは眩暈を覚えた。
 妄想の中では幾度となくアルフォンスはエドワードに触れて、拓き、組み敷いて重なっていても、それは所詮妄想以外のモノでは無かった。
 すぐ傍に好きな人が居て、好きな人を思う気持ちの呼び起こす体の反応をその人が見てくれる。それは、今まで想像もつかない快感をアルフォンスに与えてくれるだろう。
 そしてもしかしたら、エドワードはアルフォンスに少し位は触れるを許してくれるかも知れない。
 普段は触れる事の出来ない場所に。
 例えそれが興味本位の結果だったとしても。
 アルフォンスは今から自分が行おうとしている事に緊張しつつ、隙間から入り込んでくる下心と葛藤しながら、気を静めようと深呼吸を繰り返した。

「・・・どうした?・・・アル?」
 アルフォンスのベッドの端が軋み、エドワードが俯くアルフォンスの顔を覗き込んだ。
「・・・・・・・・・・」
 深呼吸で落ち着かせていたはずの鼓動が瞬時に跳ね上がる。
 思わず声が出そうになって、アルフォンスは自分の口を手で押さえた。
 エドワードはそんなアルフォンスの様子を珍しそうに眺めると、布団の端を捲ってアルフォンスの隣に滑り込んだ。
 エドワードはアルフォンスの隣に肩を並べると、肩に軽く手を置いて耳元で囁いた。
「・・・アル・・・緊張しているのか?」
「・・・・・・・・・・・・・ぅん。」
 か細い声でアルフォンスは返事をする。
「そりゃ・・そうか。普通は他の人に見せたりしないかも知れないもんなぁ。」
 緊張感の欠片も見えない声で、エドワードは囁く。
「ゴメンな・・・アル・・・恥ずかしいんだろう。・・・何だかオレ。オレの好奇心でアルの嫌な事させようとしているみたいだゼ。気になるのは確かだし、今は物凄く見たい気持ちになっているんだけどさ。・・・オレだってそのうち出来る様になるだろうし。出るようになるだろうし、あんま無理しなくていいんだからな。アル。・・・ホントに恥ずかしくて嫌だったら断ってもいいんだゼ。・・・オレのこと遠慮しなくていいんだからさ。」
 優しい口調でエドワードはアルフォンスの耳元で囁いた。
 エドワードは自分よりほんの僅かに高い肩に腕を回し、軽く抱き寄せと、背中をゆっくりと撫でた。
 どうやらエドワードは兄の強い好奇心に負けて自分の恥部を見せようとしている健気な弟として理解されているようだった。
 引き寄せられるままエドワードのうなじに顔を埋めたアルフォンスは、石鹸の香りに混ざったエドワードの愛しい馴染みのある体臭を嗅ぐ。
 安心しながらも、胸のざわめきでその安心感に見を任せられない。
 アルフォンスは子供ではいられない自分を実感していた。  
 アルフォンスはエドワードの抱擁に大事にされているという実感と共に、このままでは今回の提案は無しにされそうだと気づく。
 エドワードから言い出した、エドワードにアルフォンスが触れる事の出来る折角の口実を逃してしまいそうになっている事に気づいた。
 アルフォンスはそんなエドワードの様子に気づき、内心少し慌てた。
 慌てた頭で混乱しながらも、この機会を逃すものかと思う。 
 懸命に考えるアルフォンスの脳裏を、ひとつの考えが浮かんだ。考え込むとまた失敗しそうに思いアルフォンスは思い浮かんだそのままの事を告げた。
「え・・・っと。・・・ボクは大丈夫だよ。・・・だけどね・・・ボクばっかり先に見せるのって不公平だと思わない?」
「・・・うーん。そうか・・・そうだな。確かに。オレが言い出した事だし、お前からじゃ、不公平か。・・・」
 明るい声でエドワードは返すと、アルフォンスに回された腕を解いて、ガバッと布団をめくる。
「んじゃ、オレはすぐ脱ぐからな。・・・お前も等価交換な。」
 ちょっと寒いなと呟きつつ、エドワードはズボンと下着をあっと言う間に脱いで、布団の中に足で押し込む。大きくめくった布団の間にほんの少しの隙間を残して自分の周りにかぶせた。
「ほらほら。アル・・・お前も、お前も。」
 楽しい事を我慢できない子供のように、エドワードはアルフォンスに先を急がせた。

「・・・やっぱ。違うなぁ・・・ほら・・こうやって近くで比べると違いが判るもんだよなぁ。」
 戸惑うアルフォンスのズボンとパンツを、エドワードがせかっちな言葉で促されるまま脱がせた。
 エドワードは布団の隙間からお互いの下半身が見えるようにして、マジマジと見つめながら呟く。
 アルフォンスの中心に力なく下がるモノとエドワードのモノ。
 大きさも違えば形状も異なっている。
 エドワードは小さい頃から大きさしか変わらない馴染んだ形状だったが、アルフォンスのモノはオトナの形に近い。
 エドワードに比べて骨格も大柄で身長も少し高いアルフォンスだったから、体の変化は弟とはいえひとつしか違わないのだから、アルフォンスの方が先に起こってもおかしくは無かったのだが、兄としての矜持が邪魔してエドワードはアルフォンスの事を純粋に成長したと喜べない。
 アルフォンスはそんなエドワードの事は良く判っていた。
 普段でも目に見えて違いの判る身長の差で心良く思っていない事は明白だったから、成長に関する事はいつの間にか二人の間で禁句になっていた感は否めない。
 エドワードはいつも一緒に入浴して、アルフォンスの局部の変化とその違いは自覚していたて何度か見た事はあったが。その変化をつぶさに観察させてくれとは言えず、アルフォンスに遠慮して真近で観察した訳では無かった。
 だから、観察の機会を得て、エドワードは好奇心溢れる真剣な視線で写し撮るように見つめた。
「形が違うもんなぁ・・・ほら、アルっっ。オレのも見せてやるから・・・もっと良く見せろって。」 


「・・・・・うん。」
  

  兄のエドワードに言われるがまま、アルフォンスは布団を少し大きくずらした。


・・・・・・・何か違う気がする・・・

 感心した声のエドワードをボンヤリ見ながらアルフォンスは思う。
 自分の想像していたのは、思いを寄せる兄のエドワードともうちょっとムードのある展開だった。
 お互い恥ずかしがりつつ、少しづつ薄皮を剥くように一枚づつ服を脱いでいく展開で、決して自分から脱がなければ無理やり剥ぎ取られてしまうかも知れないと思って慌てて脱ぐハメに陥るとは考えていなかった。
 それから、その後の状況も想像を越えている。
 アルフォンスはなかなか直視の出来ないエドワードの局部をチラチラと見ながら、エドワードの真剣な観察者の視線を確認する。
 こんな風に解剖の実験のような視線に晒されるとは予想だにしていなかった。
・・・まな板の鯉の気分ってこんな感じ?
 情けなさに涙が出そうだった。
 比べて観察しているエドワードは一生懸命なのだろうけれど、それ故にアルフォンスの気持ちは萎える一方だった。
「それでどうするんだ?」
 無邪気に弾んだ声でにエドワードが訊ねる。
「え・・・っと。・・・あの・・・」
「オレが手伝ってやったっていいんだゼ。」
「あ・・・・う・・・うん・・・・」
 エドワードの勢いのに押されるように、アルフォンスは口を開くが、口元から発した音は言葉にならなかった。
 沈黙が二人を包む。
 しどろもどろのアルフォンスをエドワードは見つめると、目を少し細めて顔を綻ばせる。 
「ゴメンな・・・アル。ついジロジロ見ちまって・・・こんなに凝視していたら、これまで緊張しなくても緊張させちまうよなぁ。」
 ニッと笑うと、エドワードは顔をやや俯かせ、アルフォンスに肩を寄せる。
 軽く肩が触れた。
「な・・・何っっ。兄さん・・・」
 服の上からの体温でも、緊張は上昇する。
 アルフォンスはビクリと体を震わせ、指に触れたシーツをぎゅっと握り締めた。
 エドワードの凝視する視線から外されたものの、落ち着かない気持ちは同じだった。
・・・こんなんじゃ出来ないよ。
 アルフォンスは自分から言い出した事に後悔し始めた。
「・・・教えろよ。アル・・・」
 声を落とした小さな声で、エドワードはアルフォンスの耳元に囁く。
 近づいた距離の分肩が押されて密着した肩から、エドワードの暖かい体温が浸透してくる。
 緊張したアルフォンスの隣でエドワードの笑いの空気を運んでくる。
 シーツの上で握られたアルフォンスの指にエドワードは自分の右手をそっと重ねた。
「・・・どうすればいい?」
 ひそめた声にアルフォンスの心が刺激される。
「兄さん・・・」
「緊張しなくてイイから。」
 エドワードは静かに言いながら、アルフォンスに重ねた指に力を込めた。エドワードの左腕はアルフォンスの肩に回されて、引き寄せられる。エドワードにやや寄りかかり、肩を寄せ合わせた状態でアルフォンスは小さなため息をついた。
 さっきまでのまな板の鯉の緊張は解けて、少し落ち着いてくる。
 エドワードの温かさがじんわりと染み込んできて、アルフォンスはエドワードから大事にされている自分自身を実感する。気持ちが、心が、ほんのり熱くなる。
 緊張が解けるとアルフォンスは冷静な判断を取り戻し始めていた。さっきまでの意識しすぎた緊張や裏切られた下心が自分でおかしくってくる。
「なんだか、ボク緊張しすぎたみたいだね。」
 くすくす笑いながら、アルフォンスは言った。
「・・・もう止めよう・・・スマン・・・オレが遠慮なさすぎたんだ。」
 ぽつりと呟くようにエドワードが言う。
「いくら興味があるっていったって、やり過ぎだった。・・・お前の気持ちも考えないで。悪かった。」
 少しぶっきらぼうな声の調子でエドワードはアルフォンスに言った。行過ぎた行動を恥じるエドワードの心を察して、アルフォンスは自分の心も恥じた。
 アルフォンス自身も下心あったから声かけてノッて来たのだ。エドワードは学術的興味からだが、アルフォンスの下心は他にあったけど。
 方向は違っても、自分のしたい事に相手を利用した行為は同じ気がしてくる。一方的にどちらかが悪いんじゃないアルフォンスはそう思った。
・・・それなら、兄さんの好きにして、知りたい事を教えてあげたい。
 アルフォンスの中で湧き上がってくる思い。
「そんな事ないよ。」
 重ねられた指を解いて反転させると、アルフォンスはエドワードの指を握った。

------------------------------------ つづく

 一日が終り、夜もふけた。
 並んだベットに入って二人は「おやすみ」と、いつもの様に言い合い布団に入る。
 布団に入るとすぐに寝息を立てるエドワードの寝息を聞きながら睡眠に入っていた。
 アルフォンスは、なかなか聞こえてこない寝息に不自然さを感じていた。

・・・また何か考え事をしているのかなぁ。
 母が亡くなってからしばらくの間エドワードは浅い眠りを繰り返して、うなされたと思うと夜中に突然起き出したり不安定な事も多く、そんな時アルフォンスは何度も駆け寄っていた。
 最近ではそんな事は無くなって、エドワードが寝つかれない時は、もっぱら考え事がまとまらない時位になっていたが。
 その一方アルフォンスが気持ちの不安定な時にはアルフォンスはエドワードの布団の中に潜り込んで、寝ぼけたエドワードが抱き寄せて一緒に寝てくれた事もあった。
 だが最近はアルフォンスにとって事情が変わってしまっていた。
 心細かったりでなく・・・別の意味でエドワードの近くに居たくて、エドワードに触れたくて堪らなくなってきたのだ。そうなってからアルフォンスは極力エドワードに触れない様に気をつけていた。 
 一旦走り出したら止まらない行動に出そうで怖かったのだ。

・・・ボクの思うままに触れたら兄さんはボクを嫌いになるだろう。

 思うがままに触れたら二人の関係が終わってしまいそうな予感に震えながらアルフォンスは気持ちを封印していた。
「・・・アル。寝てるか?」
 おずおずと小さな声でエドワードがアルフォンスに声をかける。
「寝てないいよ・・・兄さん。」

・・・やっぱり考え事か。
 アルフォンスは返事をしつつ自分の考えていた事が正しかった事を確認した。

・・・昼に読んでいた本で話したい事があるのかなぁ。

 アルフォンスはエドワードの読んでいた本の背表紙を思い出す。
 同じ本を読んでいる二人だったから一度読んだ本のことは判るアルフォンスだった。
 順番通りに前から読むアルフォンスとは異なり、エドワードは興味のある項目を拾って読み飛ばして、色々な本を読み漁ったりする。
 読まなければ判らない部分を読まなかったりして見当違いな答えを導き出す事もあったが、殆どの場合はそれで事の本質を掴んでいることが多い。
 だから、錬金術のことで考え込んでいる時には、基本的な事の読み忘れた部分の補足をアルフォンスがするだけで答えが導き出せる事も多いのだった。

・・・最近読んでいるのは、錬金術と医学書だったけど、どの辺の事なかぁ?
・・・ボクが読んだ所かなぁ?知ってる事かなぁ?
「あのさ・・・・・・」
 言い難そうにエドは口篭もり、沈黙する。
「・・・・・何?」
 いつもとは違うエドワードの様子にアルフォンスは不思議に思い返事をする。
 少しの沈黙を破ってエドワードは言葉を繋げた。
「お前・・・さ・・・、夢精ってした事あるか?」




「・・・・・・・・・・・・・えっ。」


 突然の言葉にアルフォンスは息を詰まらせる。
 不安と疑念が沸き起こり、アルフォンスは暗闇の天井を凝視したまま言葉を失った。
「・・・・何言ってんの?兄さん。」
 一瞬の間があり、アルフォンスが答える。本当はアルフォンスは緊張していただったが、何気無い振りをして答える。
「いや・・・ちょっと・・・興味があって・・・さ。」
 エドワードはそんなアルフォンスの気持ちを知ってか知らないのか、何気無い口調でアルフォンスの質問に返答した。
 静かで穏やかな夜が、緊張を孕んだ獰猛なモノに変わりそうな予感がして、アルフォンスは大きく寝返りを打つ。
 出来れば、さっきの答えで納得して寝てしまったらいいとアルフォンスは思った。
 思うだけの夜は何度も過ごして、エドワードに触れたい欲を押さえる方法は判っているアルフォンスだった。
 エドワードの方から寝た子を起こすような事さえければ、いい弟としてずっと傍に居たいと願う望みの方が大きくてアルフォンスを自制へと向かわせるのだ。
 まだ体も心も発育途中の幼いアルフォンスだったから、体の変化に戸惑っていて一瞬の衝動以上の行動は出来なかった事も事実だった。
 触れたいと思いつつも、実際には触れる事は怖かった。
 肉親の情としてジャレ合ったり抱き合ったりは日常でも当たり前にしている。
 それは心を暖めると同時に、エドワードを意識させて、アルフォンスを緊張させ期待と戸惑いと妄想と欲望を連れてくる。
 アルフォンスは告白して、今の関係を壊してしまう事は考えていなかった。
 兄弟に恋愛感情を持つなんて、常識ならば許されない事だ。
 禁じられた人体錬成をしようとしている。常識を守らなくてはならない重要な事と理解してはいない二人だった。だからもしアルフォンスが告白したらエドワードが受け入れてくれるかも知れないが、その一方でアルフォンスの気持ちを全く理解出来ない可能性もある。
 告白した事でエドワードがアルフォンスを疎ましく思う可能性もある。
 そんなキッカケを作ってしまうかも知れないとアルフォンスは思う。
 それだけは怖かった。離れてしまう事だけは避けたかった。
 どんな事をしても。
 そのためならば、自分の気持ちも欲望も押さえつけて、表に出さない様にしなければならない。
「や・・・別にさ・・無きゃいいんだよ。無けりゃ・・・オレだってそうだからさ。・・・アルはさっ、オレと違って体も大きいし、もしかしたらって思ってさ。・・・ほら、精子がどんなモノか興味あるだろう。お前も。なんたって、命の元になるモノだもんなぁ。どんなモノだか文献では調べてしっているけど、ホンモノをみたくなるじゃないか。百聞は一見にしかずって言うしさ。・・・単なる興味だけなんだけどな。」
 エドワードの言葉を聞いて、アルフォンスの押さえていた気持ちが。そしてそれに対する言い訳も閃いた。
・・・兄さんが触りたいって思っているなら。
・・・知識欲と興味本位でなら・・・
・・・兄さんを触っても・・・ボクが触れてもイイかも知れない。
「・・・・したこと・・・有るよ・・・にいさん」
「そ・・・そうなのか?ホントに?・・・それってどんなモノでどんな感じだったんだ?」
 ガバっっと被っていた布団を剥ぎ、アルフォンスの隣のベットでエドワードが起き上がった。
 エドワードの言葉にアルフォンスの欲が膨れ上がる。
 それは、エドワードが純粋に興味を持って見てみたいと自分の欲を出したことで、触れる理由をエドワードから与えられたと考えたからだった。
「どんなって。・・・ウズウズのモヤモヤのグルグルで・・・」
 自分でも変な表現と思いつつも上手い言葉が見つからずアルフォンスは返事をした。
 だが、エドワードの質問に返事をしつつも、アルフォンスの頭の中ではこれからどんな言葉でエドワードを誘導するべきかでいっぱいだった。
「気持ちイイモノなのか?」
「うん・・・あのさ・・・兄さんは自慰は知ってるの。」
 緊張で咽喉がカラカラになりながら、アルフォンスはエドワードに質問する。
 それはこれから先の行動への誘導だった。
「本の上ではな・・・」
「・・・・やってみる?」
 緊張で声が掠れるのを感じながら、アルフォンスはエドワードに提案した。
「お前・・・知ってるのか?」
「うん・・・最近ね・・・ボクのも見せてあげるから兄さんも一緒にしない。」
 明るく不自然にならない様に声色に気をつけたが、少し声が上ずってしまった。
 アルフォンスは不信に思われてエドワードから拒否される事も念頭に置きつつエドワードの返事を待った。




 沈黙が二人を包む。




 アルフォンスには長い時間に感じられて、エドワードに気づかれない様に、胸を押さえつつ何度もそっと深呼吸を繰り返した。



「・・・・・・・・・・判った。」
 エドワードは少し考えると、簡単な事を決める時の声色で緊張の様子の微塵も感じられない声で、アルフォンスに返事を返した。



----------------------------------------- つづく
(20031106〜20040128サイト連載:再録)

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