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ホーエンハイムは、疲労困憊でぐったりとしたエドワードを抱き上げるとタオルで全身を丁寧に拭いて、自室に連れて行き、広いベッドの上にそっと寝かせた。
ベッドの横にあるサイドテーブルから、大きなドライヤーを取り出すと、エドワードの体に風を当てて機械の部分から乾かしていく。
柔らかい温風を感じてエドワードは視線を動かした。
「気持ちいい・・・何だコレ?」
「見て判らないのか?ドライヤーだよ。濡れたままじゃ風邪を引くから。乾かしているんだ」
「ドライヤーってのは、見ていれば判るけど。何だか、ずいぶんと仰々しいなぁ」
「確かにそうだな。今年アメリカで発売になる新商品のミニチュアなのだが。設計図が手に入ったから、試しに作ってみたんだ・・・でもこの大きさで実物の三分の一してみたんだが、やっぱり大きいか」
「三分の一で、この大きさか・・・随分デカイんだな。機構部全体が大きいのか?モーターは?」
「モーター部分も大きい」
ホーエンハイムが手で示した大きさにエドワードは驚いて目を見開いた。
「そんなに大きいんだ」
「どうやら向こうの世界とは色々な意味で技術の進み方が違うようだな」
「あぁ。じゃぁ、この世界じゃ機械鎧はまだ出来ないな」
エドワードは遠い目をして力なく笑った。
「でも、お前の機械鎧はもうボロボロだ。修理にも限界があるし、早めに替わりを考えないといけないな」
「ま・クヨクヨ考えても仕方ないさ」
「お前の事だ。なに他人事のように言っているんだ」
「だって仕方無いもんは仕方ないって」
真剣に言うホーエンハイム。エドワードは諦めた笑顔を浮かべ、肩を竦める。
「では、これからは出来るだけ乱暴に使わないように、気をつけてもらわないと」
ホーエンハイムが含んだ笑いをすると、エドワードの視線が鋭くなる。
「あ・・もしかして・・・嫌味か?」
「そんな事はないよ。エドワード。何度壊してきても快く修理を引き受けているだろう?」
「やっぱり嫌味か」
「そう思うんだったら大事に使うんだな」
エドワードは不機嫌を顔に露わにした。
「ふん」
膨れっ面のまま顔を背ける。ホーエンハイムの姿が見えないように、寝返りを打つ。
そのままジッとして動かなくなった。
しばらく苦笑したまま、エドワードの体をを背後から乾かしていたホーエンハイムだったが、身じろぎもせず反応が無い事に心配になる。
「まだ、怒っているのか?」
心配になって顔を覗き込むと、エドワードは寝息を立てて眠っていた。
起きていると、口の悪い生意気な表情か、情交の際の妖艶な表情の、いずれかの表情をしているエドワードは、寝ている時だけあどけない顔になる。
幾つもの顔を持つエドワード。見ていて飽きない。ホーエンハイムはエドワードを見て微笑んだ。
そして考え込む。
「やっぱり。俺が作ってやらないとな」
エドワードの髪に触れ、まだ湿っていることを確認すると、ドライヤーで再度乾かし始める。
やれやれ面倒な事になったと思いつつ、自分だけしか出来ない、エドワードにしてあげられる事が判って、ホーエンハイムは内心喜んでいた。
---------------------------------------- 終
2005夏発行:同人誌より再録
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