illusion〜残像と幻影と〜

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 何度も何度も軽いキスをして徐々に深くなっていく。
 エドワードはくちづけに溺れながら、夢中で腰を蠢かせていた。ホーエンハイムがエドワードの奥にある感じる場所を抉るように擦ると、生理的な涙が目に溜まる。
 エドワードの口が動いた。
 音は発せられず、口元だけで形を作る。
 単語を綴っているようだった。
 何度も何度も。
 声こそ出さなかったが、それがエドワードの愛し恋する人の名前だとホーエンハイムは気づいていた。
 「アル」と。
 アルフォンスの名前を呼んでいるのだった。
 繰り返し、繰り返しその名前をエドワードの唇は綴る。
 声に出さないのはエドワードがホーエンハイムに配慮しているからだろう。
 お互いに面影を見つけて指摘する事があっても、残像を重ねても、行為の最中にその名前を呼ぶことはほとんど無かった。
 ホーエンハイムはエドワードの事が哀しく愛しくなり、胸に抱きしめる。
・・・幻影を見ているのは。お前も一緒なのか?
・・・いやお前の方がもっと切実なのかも知れない。
 想い合い結ばれて家庭を持った。
 完全な幸福の時をホーエンハイムは知っている。
 だがエドワードはいつも欠けた状態だったのだ。
 満たされない想いが燻っているだろう。
 薄々判っていても、お互いになかなか訊くことの出来ない問い。二人とも恋し愛する人の存在を知っている。
 それを話題にする事もある。
 だけど心の奥底まで曝け出して話をする事は出来なかった。このように関係を結んでしまったら特に。
 淋しくて哀しくて慰めの行為として、手を取り合って、身を寄せ合い、時に縋り付く。
 そう解釈したいと思っていた。身代わりとして抱き合っているのではないのだと思いたがっている素振りがエドワードにはある。
 だから、今日のように、スレスレの部分で話す事はあっても、抱き合っている時は今抱き合っているお互いの名前を呼ぶ。だが本心では手の届かない愛しい人へ手を伸ばしつづけているのだろう。
 エドワードはホーエンハイムに思い人のアルフォンスの姿を見ている。切実に。そしてエドワードはそれをホーエンハイムにはっきりと悟られたくないのだ。
・・・今はそれでもいい。
 ホーエンハイムはせめて心地よい快楽でエドワードを満たそうと思った。
「一緒にイこう」
 耳元で囁くと、夢を見ているような瞳のエドワードが軽くうなずいた。ゆっくりと追い上げていく。
 エドワードが頂点を極めた所でホーエンハイムも情熱の証をエドワードに注いだ。

「・・・あぁ・・・あんたもヨカッタ?」
 満足気に吐息をついてエドワードはホーエンハイムに問う。ホーエンハイムはエドワードの体を濡れた布で清めながら、淋しい笑いを浮かべてエドワードに囁いた。
「気持ち良かったよ・・・さぁ、少し休みなさい。疲れただろう」
 新しく換えたシーツの上で、エドワードは眠そうにあくびをした。
「う・・・ん・・、そぅかも」
 エドワードは疲れた笑いを浮かべると目を閉じる。エドワードの吐息はすぐに寝息に変わっていった。
「ゆっくり、おやすみ。エドワード」
 慈しむホーエンハイムの声は、眠りの国に落ちていったエドワードには届かなかった。

      ◇     ◇

 ホーエンハイムが目を開くと、部屋の中は薄暗かった。 
 月の光が窓から入り、辺りを照らしている。
 情交の果てに二人は眠ってしまったのだ。
 ホーエンハイムの隣でエドワードの安らかな寝息を立てている。月明かりが、エドワードの細い体の輪郭を照らし出していた。
 彩度を欠いた夜の世界は、昼間見えている色とりどりの世界からかけ離れている。色の無い世界。
 エドワードの寝息が止まったかと思うと、「うぅん」と寝言を言いながら、寝返りをうった。
 肩甲骨付近まで伸びた髪がエドワードの顔にまとわりつき絡まって、ベッドの上に、広がる。
 既視感。
 いつか同じような光景を見た。
 ホーエンハイムにはそう思えてならなかった。
 隣に寝ている人はエドワードのはずでそれ以外は考えられないのだが、似ているという事ではなく、違う人物に見えてホーエンハイムは目を凝らす。
 理解しているはずなのに一瞬目を疑った。
 幸福な時の思い出が残像となって脳裏に蘇る。
・・・トリシャ?
 自分の横にいるのは息子のエドワードで、最愛の妻トリシャではない。視線の先で幻覚が現実に戻る。
 ホーエンハイムはエドワードの存在を確認して、ため息をついた。判っているはずなのに、一瞬でもそう見えてしまった自分自身に自分で呆れてしまう。
 その愛は愛する存在を失ってしまっても、今なおホーエンハイムの心を捕らえ続けているのだろうか。
・・・残像と幻覚に囚われ過ぎているのは俺の方か?
・・・だけど今はこの思いに身を任せたい。
 湧き上がり、溢れ出すトリシャへの愛。
 尽きることはない。
 解いた髪を指に絡めて、ホーエンハイムはエドワードの髪に唇でそっと触れた。
 さっき目にしていたのが幻覚であっても、そうホーエンハイム自身が判っていても、トリシャへの思いを止める事は無理なのだ。
「愛しているよ・・・トリィ」
 ホーエンハイムは静寂の中、小さな声で呟いた。
 自分の他には誰にも聞かれていないと信じて。溢れた思いを口に出した。
 夜の静寂にホーエンハイムの声が溶ける。
 ベッドに横たわるエドワードの口元が、微かに寂しそうに微笑んだ事に、ホーエンハイムは気づかなかった。


                    終 

 ホーエンハイムにぐったりと寄りかかってエドワードは荒い息を繰り返す。
 エドワードはホーエンハイムを見つめると、何かを言いたげな表情をした。
「まだ足りないか?」
 ホーエンハイムが静かに聞くと、エドワードは目元を赤く染めてうなずいた。
「じゃあ今度は口でしてあげよう」
 ホーエンハイムが提案すると、エドワードは首を強く横に振った。
「いや!そうじゃなくて・・・しよう?・・・オヤジはオレとするの、嫌なのか?」
 いつになく真面目な顔でエドワードが問い掛ける。
「そんな事はないさ」
「じゃあ・・しよう・・・今度は二人で・・・」
 エドワードの瞳が蜜を含み、飴色に光る。
「そのまま・・来て・・・」
 ため息混じりにエドワードは誘いの言葉を口にする。
 今のエドワードは快感に身を任せて周囲の事は全く見えていない。
 だが、まだ冷静さを持っているホーエンハイムには机の周囲の状況の方が気になってしょうがなかった。
 やりたいのは山々だが、本気でここでする気のかと、エドワードの問いただしたい気分だ。
 このままでは絶妙のバランスで積み上がった資料を全て床にぶちまけて、机の上で交わろうとしそうだった。
 エドワードが持っている資料の中にはホーエンハイムの部屋から持ってきた、他では見つからない貴重な本も入っている。それがホーエンハイムには気が気でなかった。
 ホーエンハイムはエドワードを優しく胸に抱きしめて、あやすように背中をさする。
「こう散らかってたら出来る事も出来ないだろう?」
「いい・・・から・・・来て・・すぐ」
 エドワードはホーエンハイムの提案を子供のように嫌々と首を振って退けた。
「そう急かすんじゃない」
 ホーエンハイムはエドワードに諭すように言うと考え込んだ。
 困ったな。
 求められるのは嫌な気分ではないが、如何せん場所が悪い。
 エドワードはホーエンハイムの腕を抜け出すと、覚束ない動作でのろのろと後ろを向く。
 資料に触れないよう注意しつつ机の脇に手をついて、ホーエンハイムの方に細い腰を突き出した。
 さっきまでオーエンハイムの指が入っていた場所が濡れたままで、蕾がホーエンハイムを誘うように緩み収縮する。
「立ったままで、入れて・・くれ・・・」
「判った」
 エドワードの勢いに押されるように、ホーエンハイムはこの場で交わることを了解する。
 ため息をつきつつ、ゆっくりとエドワードの中に埋めていく。エドワードの痴態を見ているだけで猛ったホーエンハイム自身を。
 久しぶりの交わりで力の抜き方を忘れたのか、エドワードの孔は狭くきつかった。
「痛くないか?・・・ゆっくり入れるから、力を抜いて」
 ホーエンハイムが体を進めると、エドワードの体が揺れて、ギシギシ音を立てる。
 エドワードの壊れかけた義手・義足である機械鎧の音だったが、他の音も混ざっていた。
 資料の積みあがった机が揺れながら悲鳴をあげていた。
 部屋の奥にあるベッドに移動した方が良さそうだと、ホーエンハイムは思う。
 たかだか数歩の距離だ。途中障害物があったとしても。
 ホーエンハイムは気になってしまって、集中出来ない。
 ゆっくりとした動きにエドワードは焦れていた。
「っ焦らさないで・・・くれ・・・はぁ・・・早く」
 動きが鈍くなったホーエンハイムをエドワードが催促する。
 焦らしているつもりは無いんだが、とホーエンハイムは思った。
「向こうへ行こう。エドワード」
「・・ヤダッ・・・我慢出来ないっ」
 時間をかけ過ぎたせいか、エドワードは恐慌状態を起こしていた。
 夢中で首を振り駄々をこねる。
 机から数歩の距離にベッドはあるのに、移動する間も待ちきれないとエドワードは訴えた。
「あっ・・・そこ、いいっ・・・」
 ホーエンハイムが的確な刺激を与えるとエドワードは快感に打ち震えた。
 ぎしぎしと机が音を立てて、上の資料が揺れる。
 体が揺れる度に軋むエドワードの機械鎧もやはり気になる。どうにも集中出来なくて、ホーエンハイムは動きを止めた。
「やっぱりベッドへ行こう」
 背中から覆い被さり抱きしめる。
 ホーエンハイムが繋がりを解くと、エドワードは恨めしそうな顔でホーエンハイムを見つめた。
「もう少しでイキそうだったのに」
 ホーエンハイムはエドワードの体を抱き上げて、障害物を越え、ベッドに辿り着く。
 ベッドの上にエドワードを軽く放り投げると、機械鎧の間接が軋んだ音を立てた。
 すぐにホーエンハイムはエドワードの体に覆い被さる。
「このままじゃ、この機械鎧は、もう持たないな。そろそろ、何か考えないと・・・」
「そうしたいのは山々なんだけど。今この世界にある義手や義足は使えない代物ばっかりだし。使える限りこれを使うしかないから」
 愛撫の合間に無粋な事をいうホーエンハイムを嫌そうな目で見つつ、エドワードは答える。
 ホーエンハイムは今度はお喋りを止めて行為に集中した。ホーエンハイムは機械鎧に負担のかかる体位はしない。
エドワードは夢中になったら壊すような動きもし兼ねなかったが、情交だけに関わらず、日常生活でも出来るだけ気を配っていた。ホーエンハイムはエドワードの中にまた再び、ゆっくりと自身を埋めていった。
「あっっ・・・もぅ・・イイ・・・もっと」
 髪を振り乱し、咽喉を体を仰け反らせてエドワードは快感を表現した。
 繋がった場所が燃えるように熱い。
 エドワードは夢中で快感を追っていた。
 腰を激しく動かし続ける。
 ホーエンハイムも期せずして焦らしてしまった償いに、焦らすことなくエドワードの感じる場所を内側から暴いていく。
 遅すぎず早すぎず。
 エドワードの動きに合わせてホーエンハイムは自身で刺激する。
 エドワードの狭い器官に包まれ絞られて、ホーエンハイム自身も背中から這い上がる快感を感じていた。
 熱い息を吐き抑えても抑えきれない獣じみた低い声が、つい漏れてしまう。
 エドワードはホーエンハイムの変化に気づいて薄く瞳を開いて、嬉しそうに微笑んだ。
 その表情が何処かしらトリシャに似ている気がして、ホーエンハイムはドキリとした。
 エドワードとトリシャは目の色も髪の色も違う。
 母親だから顔型や造作が似ているのは確かだが、そっくりという訳ではなく。違う。間違いようは無かった。
 だが、官能に漂う表情が驚く程似ていた。
・・・トリシャの欠片がそこにあるのだろうか?
 ホーエンハイムの心の中で生きていて、消えることのない恋しく愛しい存在。
 常に心の中にその存在を描きつづけていたから、少しでも似ている形にその姿を見てしまうのかも知れない。
・・・幻影か残像?
 ホーエンハイムは考え込み、動きを止める。エドワードはそんなホーエンハイムに左手を伸ばし、引き寄せる。
 瞳を見つめたまま、口づけた。



-------------------------------------------- つづく
2005夏:同人誌より

「・・・なぁ・・・もっと・・・」
 ねだる声がエドワードから漏れる。
 ホーエンハイムは胸から唇を離して顔を上げた。
 伏せたエドワードの顏を見つめて、感情をこめず淡々と言う。
「もう形が変わっている。触られたいのか?」
 ホーエンハイムは右手をエドワードの股間に移動して、変化を見せたその場所の輪郭を確認するように撫でた。
 エドワードは潤んだ瞳をホーエンハイムに向けて、真っ赤な顔をして頷いた。
 ホーエンハイムの手の動きに合わせて、全身がびくっと震える。
「ん・・・も・・と。触って・・・」 
 口の中が粘ついて、明瞭な発音が出来ない。
 必死になったエドワードには、自分の発した言葉が舌足らずの発音になってしまった事に気づかなかった。
「はしたないな」
 ホーエンハイムはやや嘲る口調で、エドワードを揶揄した。
 言われた途端にエドワードの体が羞恥で赤くなる。
「あんたが、いやらしい事・・・するからだろう!」
 恥ずかしさを怒りに換えてエドワードはホーエンハイムに噛み付いた。
「じゃあ、止めておこうか」
 意地悪な提案をホーエンハイムがすると、エドワードは焦って困った表情をする。
「ま・・・待って・・・なぁ・・・もっと」
 ホーエンハイムに縋りつき懇願しながら、うっとりと囁く。
 エドワードの顔に官能の陰が色濃く落ちる。
「言ってごらん。どうして欲しいのか。言わなければ判らないだろう?言えたらしてちゃんとしてあげるから」
 ホーエンハイムは優しく微笑みながらも有無を言わさぬ強い調子でエドワードに告げる。
「人に何かして欲しい時はどう言えばいいのか。憶えているだろう?エドワード。言いなさい」
 諭すようにホーエンハイムは言う。人に物を頼む時に言葉使いを正すのは理にかなっている事だ。
 だが、エドワードがホーエンハイムに生意気な口をきくのは今に始まった事では無い。
 今の状況はそんな教育的な見地からこの言葉を言っているわけでは無かった。
 ホーエンハイムは一時期二人で耽った戯れの遊びを始めているのだ。
 直接的な刺激を減らして、言葉と行動で焦らし、簡単には極めなくする。
 イマジネーションで体の欲求を、性的感覚を鋭敏にさせて高めていくのだ。
 そして高まりきった時に堰き止めた快感を開放して、普通では感じる事の出来ない快感を手にする。  言葉遊びのようなやり取りは、そのための準備だ。
「お・・・お願・・っ・・だから。触って・・・」
 そこまで言うとエドワードは息を切らし、荒い呼吸を何度も繰り返した。
 呼吸が整うのを待ってホーエンハイムは先を促す。
「触って?」
 エドワードの目が潤む。高まって刺激を求める体を抱えて、だけど欲しい刺激がすぐには与えられなくて、もどかしくて辛い。
 本当は喋っているのもやっとなのだ。
 繰り返された行為の記憶がエドワードの頭を過ぎる。
 快感に対して更に一層期待する気持ちが膨れ上がってくる。
 快感を高めるためには、このステップが必要だとエドワードも判っているが、辛いものは辛い。
 エドワードは恨めしそうにホーエンハイムを見ると切なそうに眉をひそめた。
「・・・っ・・・触って・・下さ・・ぃ」
 エドワードは呂律の回らない舌足らずな声で、必死になって刺激をねだる。
「いいだろう」
 ホーエンハイムはニッコリと笑うと、子供を誉めるように頭を撫でた。エドワードの望み通り直接刺激を与えるために、ズボンの前をくつろがせ、そのまま床に落とす。
 エドワードの中心にある快感の証が露わになる。
 それは硬く上を向いて立ち上がっていた。
 下着をずらすと、しなって揺れた。若木の幹か青い植物の茎のような初々しさを残している。
 先端の鈴口からは透明な雫が滲んでいた。
 ホーエンハイムは指の腹で、濡れた先端を引っかかないように細心の注意をしつつ、ゆっくりと丸く円を描くように撫でた。
 くびれを滑り、握りこむとエドワードは息を詰めた。
 強弱をつけて握り擦っていく。
「あっ・・・ぅ・・んっ・・・」
 ホーエンハイムの頭を抱えていたエドワードの腕に力が入る。ホーエンハイムの指の動きと連動してエドワードの腰が揺らめいた。
「いいか?」
 ホーエンハイムが優しく尋ねると。
 エドワードは快感で煙り定まらない視線を、ホーエンハイムに移して、懸命にうなずく。
「イイ・・・気持ち・・・い・・ぃ」
 ホーエンハイムは片手で前を刺激しながら、もう片方の手の指をエドワードの口の前に差し出す。
「これがエドワードの中に入って気持ちよくするんだよ。よく舐めて濡らすんだ」
「・・・ん・・・」
 目の前のホーエンハイムの指を情欲で濡れた瞳で見つめると、ためらい無く素直に口の中に入れる。
 唾液を絡め、無心に舐める。
 エドワードの唾液をたっぷりと含ませて、指を後ろに移動させる。
 細くしっかりと筋肉のついた臀部を揉み、中央の窄まりに指を這わせた。
「力を抜いて」
 ホーエンハイムが囁くと、いつもはキツク閉じている蕾が綻んで誘うように緩む。
 指先をそっと忍ばせた。
 指先を入れて指を回すと、先を促すようにエドワードの腰が揺れた。
「後ろが緩んでいる」
 指を動かそうとすると、入り口がキツク絞まった。
 もう離さないというかのように。
 強い力。
 さらに先、エドワードの奥へ進もうとしていたホーエンハイムの指先は止められたまま動かせなかった。
「もう少し力を抜いて」
 ホーエンハイムの言葉にエドワードは従えない。
 体が快感を求めて暴走を始めたのだ。
 制御出来ない。
 エドワードはその事を素直に口にした。
「出来ない・・・お・・願い・・」
 エドワードは首を横に振った。
「・・・焦らさ・・ない・・・で・・・」
 愛撫の手を止めているのが自分自身だという事に、本人には自覚が無いのだろう。
 すすり泣き、エドワードは懇願した。
「少し足を開いて」
 ホーエンハイムは強く命令する。
 エドワードは考えることも出来ないまま、ホーエンハイムの声に従って閉じていた足を開く。
 入っていた力が少し抜ける。
 緊張が僅かに抜けたのを見計らって、ホーエンハイムは指を奥へと進めた。
 記憶するエドワードの感じる場所めがけて。真っ直ぐ進む。
 感じる場所を直接触れられて、刺激に体を弾ませる。
「ぃやだ・・・もっ・・・ヤメテ・・・」
 いきなりの強い刺激に驚いて、エドワードは涙声で訴えた。
 ホーエンハイムに握られたエドワードの中心の茎も、これ以上ないくらい硬度を増して、震えている。
 あとほんの少しで弾けそうだ。
 頂点に向けてカウントダウンが始まる。
 徐々に上っていた快感への階段を、急に一気に駆け上げらされたようなものだ。
 後ろから、小さく脹らんだエドワードの感じる場所を何度も押した。
 体が何度も跳ねて、前から先走りの雫が溢れて止まらない。
「っ・・・イキそう・・・」
 叫ぶようにエドワードが訴えるも、ホーエンハイムは刺激を続ける。
「いいからイキなさい」
 静かにエドワードに告げると、定まらない視線のままエドワードは難色を示した。
「だってあんたは、全然まだ」
「イイんだ。俺の事はいいんだよ。エドワード」
 ホーエンハイムは優しく囁きながらエドワードを追い上げていく。ホーエンハイムはエドワードの体の事を他の誰より理解していたから、明確な意思を持って刺激すればエドワード自身といえどひとたまりも無い。
「あっ・・・もう、ダメ・・・も・・・イクッ・・・・」
 エドワードは引き攣れた悲鳴を上げて、ホーエンハイムの手の中に吐精した。




------------------------------------- つづく
2005夏:同人誌より再録

 エドワードの中心が固く変化して、ホーエンハイムはズボンの布越しにそれに触れる。
 二人の唇が離れる。
 ホーエンハイムは体を起こし、エドワードは力なく椅子の背もたれにくったりと体を預けた。
 潤んだ瞳でホーエンハイムを見つめる。
 上気した頬を官能で紅く染めて、エドワードは満足そうに微笑んだ。
 さっきのキスを反芻するように遠くを見つめる。
「ふふっ」
「・・・どうした?」
 エドワードの笑みを見て、ホーエンハイムは不思議に思う。
 いつもであれば快楽に身を任せて先を急ぐか、気が乗らなければすぐに普段の表情に戻っている。
 こんな風に味わうような反応は今までのエドワードから考えると珍しい。
 体が充分に猛っている事は確認済みだから、普段であれば直接の愛撫か行為をねだっているはず。
 ホーエンハイムの疑問は深まるばかりだった。
「瞳の色」
 エドワードはうっとりと囁いた。
「あんまりマジマジと見てなかったから、今まで気づかなかったけど・・・やっぱり・・・同じ・・・だ・・・」
 小さな赤ん坊の頃のアルフォンスを脳裏に描きつつホーエンハイムは納得した。
「あぁ・・・アルフォンスと一緒だったな」
 ホーエンハイムは、エドワードが自分の瞳に最愛のアルフォンスを重ねていたと知って納得する。
「憶えているのか?」
 意外な事のようにエドワードは尋ねる。
 無理はないとホーエンハイム自身もエドワードの感想に対して感じていた。
 ホーエンハイムはアルフォンスが赤ん坊の時に家族の元を去った。
 その後に会ったアルフォンスは肉体を失って鎧の体に魂を定着した存在だ。
 だからエドワードはアルフォンスが生身の体を持っていた時の姿を憶えているとは思わなかったのだった。
「勿論。憶えているさ。アルフォンスも俺の大事な息子だ・・・忘れる筈はない」
 大事だと言いながら、同じ大事な息子と情交を重ねる自分を嘲る笑いが浮かんでくる。
 過ちを繰り返す自分自身。滑稽だった。
「ダメな父親だな、俺は・・すまない。父親失格だ・・」
 ホーエンハイムはエドワードの頬に手を当てて、謝罪する。エドワードはホーエンハイムの言葉を聞き、きょとんとした目をすると、次の瞬間噴出して笑った。
「オヤジ・・・何言ってんだ、今更」
 ホーエンハイムの気弱な言葉を一笑に付す。
「だからって、やった事は無かった事にはできないんだから・・・でも・・まぁ・・やっぱ、止めとく?」
 苦笑しつつ、夢から覚めたような表情をしてエドワードはホーエンハイムを気づかうように訊いた。
 情事の気配は微塵も無く。表情からは消え失せている。
「エドワード・・・お前はどうしたいんだ?」
「その質問も今更な感じだけど。やっぱりコレってさ」
 ホーエンハイムが逆に尋ねると、エドワードは眉間にしわを寄せて歪んだ微笑を浮かべた。
「罪・・・なのかな?」
 エドワードは言いながら、さっきホーエンハイムの言葉を一笑に付した表情とは打って変わって、辛そうに瞳を曇らせる。
 ホーエンハイムとの情交を罪だと言うのなら、アルフォンスとの関係も罪なのだろう。
 エドワードがホーエンハイムとの事は気にしていない事は、さっきの反応で明白だ。
 だとすると、ホーエンハイム自身が気にしている質問の答えで、エドワードはアルフォンスとの事を当てはめて考えの参考にしようと思っているようにも思える。
 何と絡まった関係だろうか。
 だが、この事はホーエンハイムが家族の元を去ってしまった事も一因している。
 ホーエンハイムは自分の悩みよりもエドワードの苦しみを取り除く事を優先しようと決めた。
「快楽は罪ではないよエドワード。自分自身の心や体や他人を傷つけない限りは・・・だから俺は心配なんだ。本来ならば俺はおまえを庇護し導くはずの存在でべきなのに」
 つい悩んでいる事が口をついて出るホーエンハイムに向かって、エドワードは苦笑する。
「慰めあっているんだろ?オレ達」
 立ち上がってホーエンハイムの首に両手を回す。
「なぁ・・・しよう。その目でオレを見て・・・」
 ホーエンハイムはエドワードに恭しく、くちづけた。
「見つめてくれ」
「いいだろう。見つめるだけでいいのか?本当に?」
 茶化した様にホーエンハイムが言う。
 エドワードもおどけて、ホーエンハイムの唇に軽く歯を立て噛み付いた。
「それは、ちょっと嫌かも」
 ホーエンハイムはエドワードの返事を笑いながら聞く。
 エドワードのシャツの裾ををズボンから出し、ボタンを外して、素肌を空気に晒す。掌で味わうように撫でさすった。胸の小さな飾りを指の腹で撫でると、久しぶりの刺劇に全身が歓喜する。
 エドワードの足がガクガクと振るえた。
「もっ・・・立ってられないっ・・・」
「まだ我慢しなさい。イイコだから」
 エドワードを立たせたまま、ホーエンハイムは床に膝で立つ。シャツの前をはだけたエドワードの色ずく紅い胸のしこりに舌を這わせた。
「少し撫でただけなのに、芯が通って硬くなっている。まるで、舐められるのを待っていたみたいだ」
 ホーエンハイムが告げると、エドワードは全身を真っ赤に染めた。
 ホーエンハイムが乳首を舌先で突くと、エドワードの背中が跳ねる。
 足から力が抜けてまともに立っていられないせいか、エドワードはホーエンハイムの頭を抱え寄りかかった。
「あっ・・・イイッ・・・あっ・・・あぁ・・・」
 乳首を舐められ、吸われて。エドワードの喘ぐ声が止まらなくなった。
 唇が乾く。舌で唇を潤すが荒い息を繰り返しているため、直ぐにまた乾いてしまう。
 ホーエンハイムは胸を唇で愛撫しながら、両手は全身をくまなく弄った。
 味わうようにゆっくりと撫でていく。
 ホーエンハイムの与える緩やかな愛撫にエドワードの体は溶かされていった。
 緩やかな愛撫に身を任せていたエドワードは、与えられる愛撫を味わい震えていたが、段々と物足りなく思うようになっていった。
 もっと直接的な刺激が欲しくなって、エドワードは身悶えた。まだ殆ど刺激を加えられていない腰が揺れ始める。
 無意識に形が変わって立ち上がった中心を、ホーエンハイムの体に押し付けていた。



--------------------------------- つづく
2005夏:同人誌より再録

 ホーエンハイムは空いた左手でもう一度エドワードの頭を撫でると、自分の体に引き寄せる。
 エドワードはさっきの怒りを解いて、無言でホーエンハイムの体にもたれかかった。
 嗅ぎ慣れた仄かな香りがエドワードの鼻をくすぐる。
 ホーエンハイム愛用の香水の香り。
 久しぶりに嗅いだ香りに触発されて、エドワード体が変化する。しばらく忙しくて忘れていた感覚を思い出した。
 ホーエンハイムはこの世界に来る前からつけていた香水に似た香りの香水を、自ら作り出して使用している。
 理由はお洒落や好みではなくて、400年以上生きているホーエンハイム自らが放つ異臭を隠すためだった。
 そして向こうの世界で体の一部が徐々に変化していたのだった。ホーエンハイムは腐敗した体だと表現するが、本当に腐敗している訳ではない。
 人の肉体の持つ物質とは別のものに変性してしまっていたのだ。その体はこの世界に来て変性が止まった。だが変化した肉体が元に戻る訳ではなかった。変質した肉体が放つ匂いは生けるものにとって異質な臭いである事は確かなのだった。
 異質なものに対しては敏感な人々の中で平和に生活する為には、それを隠す技術が必要だったのだ。
 他人にとって異質でも、エドワードは違和感は無い。
 勿論始めは違和感を感じていたが、異質だからと言って排しようと思う心の動きは無い。
 一緒に暮らすうちに徐々に馴染んで、ホーエンハイムの持つ香りだと思うだけだ。香水の香りもホーエンハイムの一部として認識している。
 エドワードはもたれかかったホーエンハイムに軽く頭を擦りつけ、更に擦り寄る。
 常ならぬ甘えた態度に、ホーエンハイムは無茶をしがちなエドワードの疲労の蓄積が心配になった。
「エドワード。やっぱり・・・お前も息抜きをした方がいいんじゃないか?」
 ホーエンハイムが心配そうに囁き、擦り寄せた頭を愛しそうに、ゆっくりと撫でる。
「そうかも知れない」
 エドワードは少し掠れた小さな声で返した。
 緊張を含んだ声。ホーエンハイムは不思議に思ったが、気にせず部屋を入るときに考えていた提案をした。
「じゃあ、お茶にでもするか・・・丁度いい。昨日頂いた焼き菓子がある」
「お茶じゃなくて」
 真面目な心配がおかしい。くすくすとエドワードは笑って、座ったままホーエンハイムを上目使いに見つめた。
 理知的な色を湛えていた瞳に蜜が注ぎ込まれている。
 いつもの清潔で鋭いエドワードの瞳の光と色が、蜂蜜や飴のように甘く変化したと、ホーエンハイムには思えた。
「・・・他の事がいい・・・」
 ため息交じりにエドワードは囁く。
 それは、あからさまな情交の誘いの言葉。 
 実はこれは、二人にとって始めての事ではない。
 お互い手の届かない場所にいる思い人を忘れられないまま、関係は続いている。
 何度も何度も行為を重ねてられていた。
 昼間に行う事は珍しいのだが。
 はじめは失意のエドワードを救う為にしてしまった事だった。過ちを犯したとホーエンハイムは自分の選択を後悔した事もあるが、エドワードは慰めだと認識して二人の行為は繰り返された。
 何度も何度も繰り返すそのうちに悔やむ気持ちは薄れていった。二人の間では情交自体は特別な事ではなく、たまにある日常の出来事のひとつになっていた。
「・・・エドワード」
 瞳の色に引き寄せられるようにホーエンハイムは近づくと、腰を曲げて屈む。
 座るエドワードの顏の高さに自分顏を合わせて、軽く目を閉じ、ゆっくりと近づくと、ホーエンハイムは自分の唇をエドワードの唇にそっと触れるように重ね合わせた。
 すぐに唇を離し、ホーエンハイムは目を開く。
 薄く目を開いたホーエンハイムの視線がエドワードの瞳にぶつかった。
 くちづけの間、エドワードは瞳を開いたままだったのだろう。ホーエンハイムの瞳に視線が合うとエドワードは艶っぽく微笑んだ。
・・・いつもと違う。
 エドワードの視線にホーエンハイムは違和感を感じた。
 だがエドワードの誘う瞳に惹きつけられるのも確かだった。更にくちづけを求められている気がして、ホーエンハイムは軽いキスを何度も繰り返す。
 そうするうちにエドワードの瞳の違和感の正体に気づいた。見つめあっているはずなのに視線が絡み合っていかない。何処か遠くを見るようなのだ。
  ホーエンハイムの瞳を見つめるエドワードは、くちづけを素直に受けながら、幸せそうに微笑んでいる。
 ホーエンハイムは右手に持った資料を僅かに空いた机の上、ついさっきまでエドワードが覚書を書いていた紙の上に置いた。
 ホーエンハイムはエドワードの頬を両手で包み、唇を塞ぐ。強く押し付ける。
 頬にざらりとした髯の感触を受けて、エドワードは瞳をホーエンハイムに戻したが、すぐにまた近くて遠い場所に視線を送る。
 エドワードの唇の輪郭をなぞるように舌先で舐めると、エドワードの閉じられていた唇が緩んだ。
 緩んだ口元から自分の舌を滑り込ませて、ホーエンハイムはエドワードの舌を捕らえる。舌先で形をなぞり、絡ませる。深くくちづけた。
「・・・ぁあ・・・っ・・・んっ・・・」
 くちづけの合間にエドワードの口元から抑えられない声が漏れ始めた。ホーエンハイムの首にエドワードの左腕が回されて、縋り付く。
 右腕も金属の軋む音を立てながら、それに続いた。
 エドワードの舌を開放すると、二人分の唾液がエドワード口元から零れた。
 濡れて色づいた唇が艶かしい。
 荒い息をつきながら、エドワードは潤んだ瞳でホーエンハイムを見つめる。
 エドワードは離れていこうとするホーエンハイムの唇を追いかけた。自分の唇を押し付けて、口元の隙間から自分の舌を滑りこませた。
 今度はエドワードの方からホーエンハイムに深いくちづけを仕掛ける。
 夢中でホーエンハイムの口腔を舌先で探った。エドワードの方から積極的に舌を絡めると、ホーエンハイムに舌を吸われる。エドワード背中が快感で細かく震えた。
 ホーエンハイムは薄く笑いながら、エドワードの舌に軽く歯を立てた。同時にエドワードの体を服越しに撫でる。
 背もたれから浮かせた。
 背中。胸。腰。
 深いキスを続けながら、ゆっくりと撫で回す。
「・・・あっ・・・」
 エドワードは背中を仰け反らせて、縋り付いた両腕に力を入れた。




--------------------------------------- つづく
2005夏同人誌より再録

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