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結婚生活19年、子供を生んで12年。
特に母親になってからは24時間365日、常に「家族」に囲まれて過ごしてきて、しみじみと実感したこと。
家族とは一番近い他人である。
「機嫌悪そうだな」とか「何かいいことあったみたい」ぐらいは感じ取れるし、
毎日話はするけれど、心の奥底で本当に何を考えているのかなんて、
テレパシーみたいにピピピっと分かるものではありません。
(私が鈍感なせいもあるが)
連れ合いが会社でいじめにあっていた時も、
そのせいで重いウツになった時も、
反動でばーんと躁状態になった時も、
彼の心の中で何が起きているのか、
一緒に暮らしながら何ヶ月も分からなかった。
そして「ああ、そうだったんだ!」と思い当たってからは
「何でもっとはやく気づいてあげられなかったんだろう」と
自分を責めたり・・・。
でも『我が家の問題』を読んだら、心が軽くなりました。
専業主婦の妻があまりに完璧すぎて家に帰るのが怖い新婚夫。
実は夫って、仕事ができないお荷物社員?
両親が離婚するかも?
夫が突然「UFOと交信している」と言い出して・・・
結婚後初めてのお盆休み。実家まわりをしてみると・・・
ランニングにのめり込む妻におろおろする作家。
まあまあ平和に一緒に暮らしてきた家族が、突然理解不能な存在に。
6篇の主人公たちはおろおろします。
でも彼らが素晴らしいのは、エイリアンにも思える家族への接し方。
責めるわけでもなく、無理やり自分の価値観に引きずり込もうともせず、
ひたすら相手を理解し、寄り添おうと努力します。
夫や妻をストーカーしたりと、その奮闘ぶりは傍目には滑稽なんだけれど、
愛と情があふれているんだなあ。
家族は他人である。
それでも努力すれば理解できる。
大事なのは相手の心を尊重すること。
言葉にすれば単純だけれど、大事なことが詰まった1冊です。
家族問題で悩んでいるときに、この本を読んで笑って笑って最後に
ほろりと涙をこぼしたあとで、また明日からがんばる元気が
わいてきますよ。
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今日の1冊
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久々に良質のミステリーを堪能。
「チャイルド44」(トム・ロブ・スミス、2008年)
スターリンの圧政下にあるソ連。
主人公は、国家に忠誠を誓った男レオ。
正義のために「国家の敵」を逮捕し、あるいは抹殺することに
すべてを捧げてきた。
その彼がある連続殺人事件をきっかけに、真の正義とは何か、
真の愛情とは何かに目覚め、自らの正義を貫くために
命をかけて犯人を追及していく・・・
「犯罪など我が国にはありえない、あってはならない」という大前提に
阻まれ、進まない捜査。
部下の裏切り、密告。
妻との確執。
本当にすべきことは何か、常に己に問いかけながら茨の道を進む
レオの姿に、人の良心とはいかに強く尊いものかを教えられたような
気がします。
巨大な国家に脅えながら生きざるをえなかった当時の人々の
恐怖を知るという意味でも、貴重な読書体験でした。
いつもなら子供が犠牲になる話は絶対に読まないのだけれど、
本作は筆に気品が感じられ、表現も抑制されているので大丈夫。
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「犯罪」(2009年)。
ベルリンで刑事事件弁護士として活躍するシーラッハ氏の処女作。
なぜ彼らは犯罪に至ったのか?
その発端を、経緯を、犯罪者の心の闇を、無駄をそぎ落とした硬質な文章でつづる物語。
実際に氏が扱った事件がもとになっているとのこと。
事実を淡々と記しているようにみえながら、行間からかすかな慈愛のようなものが漂ってくるのは、弁護士として犯罪者に寄り添ってきた氏の心の顕れかもしれません。
愛ゆえの犯罪は哀しい。
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翻訳を納品し、オーディションもないこの半月。
「おおきなかぶ、むずかしいアボカド」「雑文集」に続き、片端から本棚の村上春樹を読み返し、心に栄養補給。
エッセイ等では、「村上ラジオ」「うずまき猫のみつけかた」「辺境・近堺」「日出る国の工場」「やがて哀しき外国語」。
健全な視点とまっとうな考え方、心に素直に響く簡潔な文。
本当に稀有な作家だと思います。
小説では、短編集の「夜のくもざる」(奇妙なテイスト、大好き!)「カンガルー日和」「神の子どもたちはみな踊る」。
そして時間のあるときにしか読めない長編として「海辺のカフカ」。
15歳のカフカ少年の心に寄り添って、遥かな旅へ。至福の読書時間。
フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーの翻訳本もそろえたし、さあ、次は何を読もう?
(「グレート・ギャツビー」の翻訳勉強は、1日3ページずつ、カタツムリの前進速度で進行中。1行ごとに学ぶことが多々あります)
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「あのこと」以来、初めて「くま」と散歩に出る
「わたし」。
ごく当たり前だったのどかな光景が、「あのこと」を堺に根本的に変わってしまった。
そのすべてを受け入れて、歩いていく
「くま」と「わたし」・・・
とても薄い本です。でも、とても重い本です。
前半に載っているのは、作者のデビュー作「神様」。
同盟の単行本にも掲載されているので、今回は再掲です。
人間になりきれない「くま」の悲哀、そのくまの存在を静かに受け入れる「わたし」。
この2人の会話や微妙な距離感が好きで何度も読んできた話。
ところが続けて掲載された「神様2011」では、彼らの世界のどこかが、
本質的に変わってしまっています。
2人が歩いているのは、あの「神様」の舞台になった川原であるはずなのに。
人々は防護服をつけている。
川に家族連れの姿はない。
魚は食べられない。
「神様」と「神様2011」を並べることで、今私たちが生きている世界は恒久ではないこと。
何かのきっかけで(村上春樹流に言うと)致死的に変わってしまうこと。
そのことが、どんな数値を突きつけられるよりもはっきりと、理解できます。
「あのこと」が日常に組み込まれてしまったように感じられるとき、ぜひこの本を
手にとってみてください。
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