怪獣ビルダーマンの正体は、いまだに謎に包まれています。
……父親の名も母親の名もわかりません。生まれて3ヶ月後、
父は放浪の旅に出かけ、母は年若のインテリジェント・ビルと仲良くなって駆け落ちした
といいます。幼いビルダーマンは、自らの体を広告塔にし
その広告収入で、なんとかその日その日をやり過ごすことが
できたということは、いまでは誰もが知っているエピソードの一つです。
さて、そんなビルダーマンは、生活苦にさいなまれている多くのビルたちに
ささやかな愛の手をさしのべてきました………
たとえば、耐震基準に満たないビルがあれば、自らの骨格を提供したり
あるいは光ケーブル設備のない老朽化ビルと出会えば
自らのケーブルを提供し、かつまた、主要な先端設備を分かち与えてきました………
一部マスコミの報道によれば、ビルダーマンのことを
《偽善者》であるとか、《革新派の仮面をかぶった守旧派》《ひとあしらい、いや、ビルあしらいに長(た)けた
なまけもの》といった影のイメージも定着していることもまた、ビルダーマンの肖像を把握するときには
見逃せない指摘だとも申せましょうか。
……最近のビルダーマンは、若いときに失った骨格、つまり無償で提供してしまった
おのれの骨格不足のために
慢性的骨そしょう症に悩まされ、かつまた、腰痛のために屈まないと
立つこともできず、おかげで広告収入も激減し、まだ三十半ばという若さにもかかわらず
見た目には築後百年ほどの姿になっているようです。
いわば落ちぶれたビルダーマンは、軽いウツになって
いまでは、ぶつぶつと独り言らしきギィギィ音をたてながら
ふらりふらりとさまよっているとのことです。
そこで、この告知を見た皆様にお願いがあります………
どうか、ビルダーマンの姿をみても失笑しないであげてください!
といっても、気安く近づいてはいけません。ビルダーマンは、犯罪予備者の可能性も高く
当局から準危険人物、いや、準危険ビルに指定されている事実を
思い出してください。
当局の許可なく、補修したり、鉄骨やコンクリート、その他の
資材をみだらに提供してはいけません。
願わくば、かれの独り言をそっと胸の中で反芻(はんすう)し、
かれの生きざまについて、ほんの少しだけ思いを馳せてあげてみてください。
それだけで十分です。
われらがビルダーマンは、しょせん滅びゆく種族なのですから。
ただ、最近、こんな都市伝説のようなものが囁かれています。
……それは、ビルダーマンの姿を見かけたものには、やがて、なにかしらの幸運が訪れると
いいます。その事実は検証中ですが、
もし、いつかどこかで憐れなビルダーマンの姿をみることができたなら
あなたはきっとこう思うにちがいありません。
ビルダーマンに栄光あれ!と。
あっ、ほら、あなたの部屋の窓の外に
噂のビルダーマンらしき影が!
あれれ、気のせいかもしれませんが……いやまてよ、よくよく考えてみれば
いま、あなたが住んでいるところこそ、ビルダーマンのなかの
小さな部屋なのかもしれません………
☆