朝日元青森総支局の長野剛記者の取材方法について、朝日新聞記者行動基準に照らしてみようと思う。【 】内は記者行動基準に明記されたもの。その結果は、ひどいものだった。まず、「取材方法」から。
(1)「取材方法」
【当事者に直接会って取材することを基本とする。特に、記事で批判の対象とする可能性がある当事者に対しては、極力、直接会って取材する】。
評価は、行動基準に反するので「×」
※長野記者は、批判する比嘉氏に反論の余地を与えず、取材をしていない。申し込みすらした形跡がないのだ。それで比嘉氏の「コメント」を記事の都合のよいようにでっち上げる卑劣さだ。こんなことが許されていいはずがない。朝日新聞本社は、謝罪を口にするが、紙面での訂正はしていない。加えて、記者本人は「注意」されているのにもかかわらず、まったく反省の色すら見せていないうえ、問題を指摘されてからもEM批判の特定グループの討論会などに複数回登壇してEM批判記事を話題にしていた。
(2)「インターネットからの取材」
【その際、情報が古くなっていないかを確認する。ホームページから引用する場合は、記事にその旨を明記することを原則とする】
評価は、これも行動基準に反するので「×」
※長野記者が使った、比嘉氏のコメントは、記事する5年前のネットから引用したものだった、という。「引用に伴って出典元を記載していない」のは致命的なミスで、新聞業界ではそれを剽窃といって厳しく咎められている。引用したのは比嘉氏の著作物から、1行ちょっとの16文字で、それを捉えて「独自理論」と決めつけていた。それを仲間の科学者に、「原理は物理的にナンセンス、非科学的」と言わせ、それをそのまま見出しに仕立てて、世間や一般読者に「EMは非科学的」という誤った認識をふりまいた。それを仲間らが一斉にネットで拡散したのである。その文節の冒頭にある「関英雄先生が確認した」という、そのよってきたる根拠についてはバッサリ削っていた。これはEMを貶める罠のように思えてくる。
(3)「記事内容の事前開示」
【取材先であっても、原稿や記事を掲載前に開示しない。編集への介入を招いたり、他の取材先の信頼を損なったりする恐れがある】
評価は、行動基準に反するので「×」
※長野記者は、ツイッターでEM批判の記事を掲載することを事前に流していたことが判明している。記事になったのが2012年7月3日付朝刊の青森版だが、長野記者はその1ケ月前の6月7日には「昔は県庁でEMにはまりかけた例があったらしいけど、未然で治まったそうです。(これは良かったですが。)なにか、県内にとっかかりはないものか)」とツイートした。
6月19日には「先日、このEM検証シンポをリードした土壌肥料学会の先生とお話した。EMが諸外国にも輸出される中、日本としてきちんと検証しておかないと、外国から信頼を失う、と思われたそうです。近く、記事化します」と取材の手の内を明かしていた。
7月1日、記事になる2日前には、「だいぶ前に近く載せます、とツイートして久しいEM記事。やっと載せてもらえる目処が立ってきて、私もホッとしているところです」とツイートすると、ハンドルネームの「呼吸発電」が「お知らせありがとうございます。東京EMサミットと全国一斉投入の日が迫っています。EMの暴走に釘を刺したいですね」と応じた。この辺からEM批判に伴うデマ情報がにわかに拡散されてくのである。
(4)「公正な報道」その1
【原稿はもちろん、取材メモなど報道に関わる一切の記録・報告にも虚偽や捏造、誇張があってはならない】
評価は、これは記者行動基準に疑問符なので「▲」
※長野記者からの電話取材で、違うことが書かれた、と、青森県庁の担当者が証言した。記事では、沖館川の実地調査の結果が「改善確認されず」と誇張された。県の担当者は、「明瞭な傾向が確認されなかった」と言った。むしろEM投入によってヘドロが一時的にも全地点で減少し、悪臭も緩和されたのだ。が、夏場にはその数値が増加に転じる傾向もあったため、(EMによってヘドロが減少するという)明瞭な傾向が確認できない、と説明しているのであって、ヘドロの減少がEMの効果なのか、どうかについて県の担当者は慎重な構えを崩していない。この年は、台風の当たり年で、その影響もあったのかもしれない。
いずれにしてもEMの効果を否定するものではないことは確かだ。取材は、電話だったらしい。国内外のEMによる河川浄化の事例や業績には目もくれず、青森県のそれも河川のヘドロ調査の断片をほんのひとつまみして、「EM菌効果『疑問』」というトップの見出しに仕立てた。7月11日付続報では、「科学的効果疑問のEM菌」とエスカレートし、過度に追い打ちをかけるような記事になっていた。それ以来、ネットで盛んに「EMは非科学的で、効果なし」というデマが執拗に喧伝される事態になった。
(5)「公正な報道」その2
【記事が特定の個人や法人などを批判したり、意に沿わない内容になったりすると想定される場合、その当事者の主張や反論も十分、取材したうえで、掲載すると時は、読者にもその主張や反論が明確に伝わるように努める】
評価は、記者行動基準に反するので「×」
※長野記者は、そもそも批判相手の比嘉氏に取材をしていないのだから、批判する比嘉照夫氏の反論を載せられるわけがない。極めて公正を欠いた記事だった。長野記者は、7月3日に記事が出たあとになって、沖縄のEM研究機構の当時係長に対し、以下の3つの質問に本日中に答えてください、とメールした。その質問はあまりに抽象的で担当者は、回答に苦慮した。しかし、またそれがまた歪められる懸念があるので取材の目的を確認したが、回答がないので、長野氏への回答はためらった、という。その質問もどこか、ぼんやりして意味がつかみにくい。たぶん、植物に触れたことがないのであろう。
質問の1は、貴機構は、EMぼかしなど、EMによる農業資材により作物の成長はどのように改善するとお考えですか?
その2は、それはどのようにご確認されましたか?
その3は、貴機構の主張にもかかわらず、土壌肥料学会の報告のような結果がでるのは、なぜだとお考えですか?
さて、土壌肥料学会の報告では、として長野記者は、1996年の土壌肥料学会のシンポジウムの資料を引き合いに、タイ政府がEM菌の検証研究をした結果、EM菌以外による肥料と変化がないことが示されている、というのだ。つまりEM菌の効果を検証したところ、その効果が明確ではなかった、という指摘だ。長野氏が取り上げたものは20年前の古い情報だ。現在のタイ政府のEM活用の状況をまったく知らないのだ。国を挙げてEM活用を徹底しているタイ政府の現状を知らずして、よくもまあ、こんな愚問を投げかけるものだ、とEM関係者は、あきれている。取材姿勢とか記者の能力がどうかというより、この記者の人間性に疑問を抱いてしまう人は多いだろう。
(※参考:国策的にEMを活用するようになったタイ国)
そもそもEMによる作物の成長はどのように改善するのか、という質問もどこかおかしい。具体的に何を指しているのかさっぱりわからない。作物って、いったいどんな作物を言うのだろうか。トマト、玉ねぎ、いちご、梨、アスパラ、ニラ、キュウリ、ニンニク、シイタケ、ナス、ホウレンソウ…作物といっても何百種類とあり、地域差もある。作物の成長はどう改善するのか? 相手の事情を考えずにメール一本で、無理難題をおしつける。次から次にと相手を困らせるような質問攻めをする。少しは事前に、自分で調べたらどうなのだろうか。
そもそもこのような質問は記事を出す前に取材をしておくべきだ。その挙句、続報の7月11日の記事では、その末尾に「EM菌の効果を認めない多数の報告について、朝日新聞はEM研究機構に見解を求めたが、回答はなかった」と、自らの不始末を棚に上げて、その責任をEM側に擦り付けるのである。
(6)「著作と引用」
【記事の素材として、著作物から文章、発言、数字等を引用する場合は、出典を明記し、適切な範囲内で趣旨を曲げずに正確に引用し、引用部分は明示する。盗用、盗作は許されない】
評価は、記者行動基準に反するので「×」
※繰り返しになるが、長野記者は、引用のコメントをについて出典を明記していないうえ、引用した文章の冒頭にあった『関英雄先生が確認した』の部分を削除しており、全体としても1行半の引用では意味がよくわからない記事になっている。まず、正確な引用とはいえない。このネットからの引用も現物からの引用ではなく、EMを批判している当時、長崎大学准教授(現文教大)、長島雅裕氏の資料を参考にしたとの疑いがもたれている。(長野記者は、否定)。直接面談して、このコメントは、どこから引用したのか、と質問したら、DNDサイトとか、なんとか、意味不明な答えだった。
(7) 「独立と公正」
今回の記事の問題点の中でも特徴的なのは、取材記者とEM批判グループの関係である。
【特定の個人や勢力のために取材・報道してはならならず、独立性や中立性に疑問を持たれるような行動をとらない】
これは記者行動基準の基本姿勢にある「独立と公正」の項で示しているものだ。朝日新聞本社が「取材姿勢が不適切だった」と問題視しているのにも関わらず、その後もEM批判グループの討論会に登壇していたことは前に書いた通りだ。特定のグループ、つまりEMをニセ科学として貶めるグループの考えを代弁したような内容なのだ。
EM批判グループの中心的存在の阪大教授、菊池誠氏を疑似科学に詳しい科学者として、この記事の中でEM批判をさせている。記事は、菊池氏の発言をうけて、EMは「非科学的」とレッテル貼りをやった。そもそも、「重力波と想定される波動によるもの」という取材なしで仕組まれたEMの効果に関するコメントだった。水質の浄化に関するEM効果について、比嘉氏は、「重力波」という言葉は使うことはない。長野記者は、それを「独自理論」と決めつけ、菊池氏が「原理的にナンセンス」と一蹴してみせているのだ。
EM批判が記事になったことについて、国立天文台の准教授、大石雅寿氏は、「菊池さんと長野さんの成果だね」とツイートした。大石氏はEM批判記事が出たその日に青森県庁にメールしたり、またEMから手を引けという意味の電話をかけたりしていたことが判明している。
しかも、長野記者と菊池氏の関係は、これまでにもホメオパシー批判の取材でもタッグを組んだ〓功績“がある。菊池氏と長島氏の二人は、大阪大学大学院時代の師弟関係で、長島氏が教え子だ。長島氏は、「私がニセ科学の問題を単なる趣味以上のものにするきっかけになったのは、大阪大学教授の菊池誠さんのブログの影響が大きいです」と述べている。
長野記者と長島氏は、趣味の世界でも親しいと言われている。さらにEMを批判する国立天文台の大石氏と長野氏も”友達“で、長島氏は、かつて国立天文台に在籍していた。知人のジャーナリストは、菊池氏をトップに仲間の面々がこぞって仕掛けたEM潰し、集団リンチの様相で、組織的な威力妨害の臭いがする、と言った。
特定の個人や勢力のために取材、報道してはならないと定めても、やろうと思えばなんでもできるのがメディアの怖さだ。新聞社には記者行動基準という“憲法”があるが、それを遵守しないとなると、そんな記者行動基準も虚妄に過ぎなくなる。