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原作とは関係のない妄想です。
「この革命は失敗だった。」
夫ベルナールの最近の口癖。
あんなにもロベス・ピエールに懸想していたのに。
たしかに、最近のロベス・ピエールは、かつてオスカルさまと懇意にしていた頃とは違う。
祖国のために、純粋に燃えていた、あのロベス・ピエールは何処へ行ってしまったのか。
そして、ベルナールの遠縁のフロレルも。
フランス中を騒がせた発禁書「オルガン」を認めた彼は、今や氷の微笑みと恐れられ、常にロベス・ピエールの傍らに控えている。
彼の演説後、たった一票の差で処刑された国王陛下。
後を追うように断頭台に登られた、かつてロココの女王とも呼ばれた美しい王妃さま。
革命は、たくさんの人の運命を狂わせた。
わたしの引き出しには、今も大切なリボンがしまってある。
コンシェルジュリーで毎日、王妃さまの髪を結ってさしあげた、あのリボン。
牢番のおかみさんも見張りの憲兵さんたちも、みんな王妃さまにやさしかった。
王妃さまに薔薇の花をプレゼントした憲兵さんもいた。
さすがフランス紳士だと思った。
でも、彼らは全員投獄された。
王妃さまにやさしくしたから。
どうしてなの。
死を目前にした女性に、なぜやさしくしてはいけないの。
人として、あたりまえの事をしただけなのに。
「パンがなければお菓子を食べればいいのに。」
王妃さまは、そんなこと仰ってない。
誰かが勝手に流した戯れ言。
宮廷でお会いした王妃さまは、女神にようにおやさしかった。
困っている人を、常に助けようとなさった。
そのやさしさにつけ込まれて騙され、散財してしまった。
本当に困っているのは誰なのかを、王妃さまはご存知なかった。
ご自分の使われるお金がどこから入ってくるのかを、まったくご存知なかった。
無知が悲劇を招いた。
王妃さまを陥れた一人が、わたしの生みの親である事は、心に深く突き刺さっている。
明日、フロレルの従姉妹であるマルグリット・サンジュストと、彼女の恋人でありオスカルさまのお友達でもあるパーシー・ブレイクニーさまとお会いする事になっている。
ブレイクニーさまは、王妃さまのことをお聞きしたいと仰られた。
きっと、英国のオスカルさまに教えてさしあげたいのだろう。
わたしの知っている事は、すべてオスカルさまにも知っていただきたい。
同席する夫はまた、口癖をくり返すだろう。
「この革命は失敗だった。」
わたしもそれに頷くだろう。
ブレイクニーさまもマルグリットも、きっと同じ思いでおられるはず。
原作とはまったく関係ありません。
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