画像【あけぼの山農業公園】
7月に3才になったばかりの信くんは、生まれつき耳が聞こえません。
パパもママも心配して、信くんを毎日のように病院へ連れていきます。
ところが信くんは病院がキライです。
なぜなら病院は、信くんの鼻をつくようなイヤな臭いがするからです。
信くんは耳が聞こえない分だけ、お鼻がビンカンなのです。
ある日、ママが朝ごはんを作っているとき、玄関のチャイムが鳴りました。
それは隣のオバサンでした。
ママは玄関先で隣のオバサンとお話をしています。
お話は、いつまでもつづいています。
そのとき信くんはイヤ〜な臭いを感じました。
それは窓から吹き込んだ強い風が、ガスコンロの火を消して、ガスが漏れている臭いでした。
信くんはママのところへ駆け寄って、ママのお尻を何度も叩きました。
ママは信くんが、ふざけていると思って、オバサンとのお話を止めようとはしませんでした。
信くんは泣きました。
泣きながらママのエプロンを引っ張って、キッチンまでママを連れていきました。
そこでママは初めてガス漏れに気付いて、あわててガス栓を止めたのでした。
信くんはママを助けたのです。
信くんにとってママは、この世で一番に大切な人なのです。
ママは喜んで信くんを抱きかかえて、近くの公園へ信くんを連れていきました。
この公園には、色とりどりの美しい花が、たくさん咲いているのでした。
信くんは、この公園が大好きです。
赤色、黄色、紫色の花たちは、とってもよい香りを信くんにふりそそいでくれるからです。
お花たちも信くんが大好きで、いろいろな香りで信くんとお話をするのです。
その時の信くんの喜びは、ママの胸に抱かれた時と同じ喜びなのでした。
信くんの鼻は魔法の鼻。
大好きなママを助ける魔法の鼻。
大好きなお花たちと語り合う大切な鼻…。
信くんは耳が聞こえないことを、まだ知りません。
けれども信くんは、相手の心を香りによって聞き取ることが出来る、立派な鼻があるのです。
信くんは、それだけで、とっても幸せなのでした。
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