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セイレーンは人間の感情のもつれを解きほぐすために、神様から二つの命を授かって生まれてきた妖精である。
人間と同じように赤ん坊として生まれ育ち、やがて精霊としての仕事をしていく半人間半妖精である。
人間と違うところは、生まれながらに前世の記憶を持っていること…。 そしてその姿は一般人には見えず、純粋な心を持った子供たちにしか見えない。
【ポポとピポ】
ポポとピポは10才になったばかりの双子の妖精です。
男の子のポポは、人間の子供たちの悲しみを救うために…。
女の子のピポは、人間の子供たちの優しさを取り戻すために…。
二人は今日も、子供たちの心の中を渡り歩きます。
夕暮れ時、お陽さまが顔を赤らめ、西の山に沈みながら言いました。
『ピポさん、また明日あおうね。 あなたの優しさにボクもなぐさめられたよ。 さようならー』
ピポも両手をふってこたえました。
『お陽さま、ありがとう。 明日の朝は東の海辺でお待ちしてます。 ごきげんよう…』
そこに突然ポポが現れました。 ポポは泣いています。
『ああ〜、ボクはもうダメだ〜。 いっそ死んでしまいたい』
泣きやまないポポを心配して、ピポは優しく問いかけました。
『ポポ、どうしたの? 何があったのー』
ポポは言葉にならない言葉で、とぎれとぎれに話しました。
『ピポ…。 ピポも知ってるだろう。 駅前の病院に…。 女の子…。 可哀そう…。 うぇ〜〜〜ん』
ピポにはまったく、わけがわかりませんでした。
やっとの思いでポポが言うには…
セイレーン(妖精)として、駅前の病院に、長い長い入院生活をしている女の子の悲しみを和らげるために、毎日毎日、女の子に寄りそって、はげましたり、なぐさめたりしていたのです。
ポポは少しづつ女の子に心ひかれて、いつしか恋をするようになったのでした。
ところが、その女の子の顔色が少しづつ青白くなり、熱が下がりません。
もういつ死んでしまうかわからない状態になったそうです。
ポポには、もうどうすることも出来ないのです。
ポポは思い出したように泣きじゃくります。
『ボクは、どうしたらいいんだ〜。 あの子を助けてあげたいよ〜。
神様どうすればいいのですか? ボクは、もうダメだ〜。 あの子の変わりに死んでしまいたい。
どうせボクたちセイレーンは2つ命があるんだから、1つぐらいなくなってもいいやー』
ポポの嘆きを聞いて、ピポはオドロキました。
そして長い長い時間がたちました。
ポポもピポも黙ったままです。
やがて東の空が薄らいできて、少しづつ明るくなってきました。
ピポは、もともとの優しさを取りもどして、静かにポポに言いました。
『ねぇ、ポポ…。 入院している女の子のことが、そんなに大切なら、ポポがあきらめちゃだめよ。
その女の子だって、いっしょうけんめいにガンバって、病気とたたかってるんだからね…。
それに、わたしたちセイレーンは神様から2つの命を授かっているけど、ポポが言ったように、
1つぐらい〜なくなってもいい…なんて思っちゃいけないのよ。
2つも命がある…んじゃなくって、2つしかないのよ。
ましてや人間たちは1つしかない命を、せいいっぱい生きているんだから。
2つの命を持ってる、わたしたちが人間の心を助けてあげなくっちゃね。
ポポ…、よく聞いて。
子供たちの悲しみを和らげるのが、あなたの仕事でしょ。
最後まで、あきらめちゃダメよ…。
もともとセイレーンは、恐ろしい最後の最後すら予想してはいけないんだから…』
ポポは、やっと泣きやみました。
そしてポポの胸の中に、何かあたたかな灯火(ともしび)が、ともったようです。
『ピポ、ありがとう。 ボク、またガンバってみるよ』
その時、東の空から、今日の始まりを告げる太陽が顔をのぞかせ、『オハヨー』と光の言葉を投げかけました。
ポポもピポも、心の中まで、あたたかくなりました。
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