草花が語らい
鳥たちが歌い
虫たちが戯れ
樹立ちは微笑み
透明な風が
優しく吹き抜ける
八幡平は
神々が集う
地上の高天原なり
(旅の記念樹…一人旅回想録)
【八幡平高原】
(地上の高天原)
秋田と岩手の県境に、八幡平(はちまんたい)という高原地帯が広がっています。
この高原にはオオシラビソの原生林が立ち並び、冬季には美しい樹氷が人々の瞳を楽しませているそうです。
ここに僕が訪れた時刻は夕暮れ時で、樹木の影が無邪気に背い比べをしている最中でした。
季節は八月の中頃だったので深緑は目映く美しく感じました。
可憐に咲く草花たちは、まるで生きている人間のように語り合っているかのようでした。
ところで八幡平の南西には、瑠璃色をした日本一深い水深を有する湖(田沢湖)がありますが、
その湖の西岸に金色の銅像『辰子姫像』が佇んでいます。
この辰子姫には有名な伝説があるのですが、この伝説はまた機会があれば紹介します。
この辰子姫を巡って龍神の八朗太郎と、修験僧の南祖坊が争いました。
八朗太郎は法力を扱う南祖坊に幾度となく敗退しました。
しかし辰子姫の助力を得て最後には南祖坊に打ち勝つという物語(伝説)があるのです。
そして八朗太郎は辰子姫に迎えられて永遠に結ばれることになりました。
最後の敗退を強いられた南祖坊は、身体中に火傷をして逃げ帰ったそうです。
そうして敗走途中に火傷の痛みで、のたうち廻って苦しんだ所が焼山となって残りました。
そこが今でも八幡平の連峰にハゲ山となって残っている…と伝えられています。
この伝説からすると八幡平は戦場跡のイメージも浮かびますね…。
平安期の武将『征夷大将軍・坂上田村麻呂』は、蝦夷の平定途上で八幡平を訪れたそうです。
その時に八幡平の美しく麗しき景観に心から感銘して、しばらく兵を休めた…といいます。
それほど八幡平高原は、人の心を魅了する何かが潜んでいるのでしょうね。
人間は都会の雑踏の中で近代的な流行を追っている間に、大切な何かを忘れてしまったのでしょうか…。
仮初めの平安の中で、都会人は自然界に息づく生命の語りかけを理解できなくなってしまいました。
微風のささやきや小川のせせらぎ、草花の微笑みや樹木の胎動など…。
自然に触れる機会が少なくなった現代人には、自然界には語り合う意思表示が存在する事実さえ、
感じられなくなりつつあります。
八幡平高原は精霊たちが舞い遊ぶ地上の聖地でもあります。
そして人間たちが本来の自分の本当の姿を想い出すためのキーポイントの一つではないでしょうか…。
【 夕映えに ほほ染められし 精霊の 樹霊(こだま)の歌が 高原(やま)を行き来す 】
【画像は『えすけっとくらぶ』イラスト・カット素材集より】
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