小説・永遠では永過ぎる

恋はするものではない、落ちるものである

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牌の魔術師

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うちの親父さんが麻雀好きで、私や妹は幼少の頃から麻雀仕込まれましたね。
年末年始は家族でコタツで麻雀大会、というのが毎年恒例でした。
阿佐田哲也さんの小説もそろってました、ハイ。
積み込みとかモーパイとか天和とか、やってみたくて。
妹なんてバカの一つ覚えみたく、本一とか大三元狙いばっかりで勝てなくて。弱かったですね〜。
私はダマテンか変則待ち、バレバレのときはリーチで、と戦略を練って、
大勝しない代わりに手堅くコツコツ、勝ってました♪
あ、でもちゃんと?役マン上がったことありますよぉ、インチキなしで。



 『牌の魔術師』
          
             
   人  物
 真宮紗貴(19)女子大生
 真宮晶紀(18)紗貴の妹、フリーター
九頭竜雅人(31)銀竜会の若頭
 中川 哲(26)銀竜会のチンピラ
 藤浪絢子(33)クラブ『華』のママ
 正木容子(48)主婦・紗貴の母方の親戚
 

○真宮家・居間(夜)
   中央に祭壇、慰問客が次々やって来る
   喪服を来た真宮紗貴(19)と真宮晶紀(18)が
   祭壇の脇に座っている。
   祭壇の上に真宮慎一の遺影。
   正木容子(48)、焼香して2人に向く。
容子「この度はご愁傷様だったわね。ええと、
 どちらがお姉ちゃんだったかしら。ほら、
 聡子さんのお葬式以来でしょ、会うの」
紗貴「私が姉の紗貴です」
晶紀「妹の晶紀です」
容子「そうそう、紗貴ちゃんに晶紀ちゃん。
 でもこれから大変ねえ、お父様が亡くなら
 れて、二人だけになっちゃって。困った事
 があったら何でもおばさんに相談してね」
紗貴「ありがとうございます。姉妹2人、力
 を合わせて頑張っていくつもりです」
容子「でも慎一さんにも困ったものよね、嫁
 入り前の娘さんが二人もいるのに、借金残
 して逝っちゃって。だから聡子さんが結婚
 する時にも私反対したのよ、ちゃんと堅気
 の定職についた人を旦那にしないと苦労す
 るわよって。まあ、ウチの旦那みたいに万
 年係長でも給料少なくてやってられないけ
 どね。ウチの子達も来年は高校と中学に上
 がるでしょ、ホント、お金がいくらあって
 も足りないって言うか…」
   早口で際限なく続けようとする容子を
   紗貴、慌てて遮る。
紗貴「あ、ちょっとお坊さんにご挨拶しない
 と…。まだゆっくりしていって下さいね」
容子「あら、ごめんなさい。これで失礼する
 けど、おばさん、遠くからあなた達の事見
 守ってるからね。頑張ってちょうだい」
   容子がいなくなると、晶紀、ぼそっと
晶紀「おしゃべり婆あ。どうせお金の事とか
 相談したら真っ先に知らん顔するくせに。
 口はいいから金を出せって感じだよね」
紗貴「そういう事言わないの。遠い所からお
 通夜に来てくれたんだから」
晶紀「そうやってすぐお姉ちゃんはいい子ぶ
 るんだから。心ん中じゃ舌出してたくせに」
紗貴「例え思ってても、そんな事仏様の前で
 口に出す事じゃないでしょ」
   と、そこへ中川哲(26)他チンピラ数人が
   ドカドカと上がりこんでくる。
中川「おい、姉ちゃん、酒持ってこいや!」
紗貴「な、何なんですか、あなた達」
中川「お前らの父ちゃんな、ウチの店に麻雀
 のツケがあるんだよ。耳そろえて返して貰
 おうか」
紗貴「ツケって…、一体いくらですか?」
中川「二千万、借用証書もちゃんとあるぜ。
 返済期限はあと一週間だ」
   真宮慎一とサインのある借用証書を見
せる中川。
紗貴「そ、そんな大金、一週間でなんて無理
 だわ」
中川「だったらウチの店で働いて貰おうか。
 二人いたら1年も働けば返せるだろ」
   下卑た笑いを浮かべ、紗貴と晶紀を代
   わる代わる見る中川。カッとする晶紀
晶紀「ふざけんなッ!何でうちらがあのロク
 デナシのクソ親父の借金を返さなきゃいけ
 ないのよ。冗談じゃない」
中川「てめえらの父親だったら、娘が責任取
 んのは当然だろーが。ガタガタ抜かすと、
 首根っこ引っつかんで表に放り投げるぞ」
   晶紀の胸倉を掴み、睨みを利かす中川。
   そこへスーツをスマートに着こなした
九頭竜雅人(31)が現れ、制止する。
九頭竜「やめないか、テツ」
中川「若頭…」
   九頭竜、紗貴と晶紀に向かって。
九頭竜「突然すまない。だが俺達も慈善事業
 ではないのでね、親父さんという担保が無
 くなった今、資金の回収をさせて貰うのは
 当然の事だ。まあ覚悟はしておいてくれ」
   そのまま出て行く九頭竜、慌てて追い
   かける中川達。呆然とする紗貴と晶紀。

○同・子供部屋(夜)
   紗貴、頬杖をついてぼうっとしている。
   晶紀はカバンの中に洋服を詰めている。
紗貴「…あんた、先刻から何やってんの?」
晶紀「決まってんでしょ、夜逃げすんのよ」
紗貴「バカね、逃げたってあいつらが見逃し
 てくれる訳ないでしょ。地の果てまで追い
 かけてくるわよ」
晶紀「だからってこのまま、ソープに売り飛
 ばされるのを黙って待ってろって言うの?
 まったく、生きてる時もちっとも親父らし
 い事しなかったけど、死んでからも娘に迷
 惑かけるのやめろっての、あのバカ親父」
紗貴「自分の親をそんな風に言うのやめなよ、
 晶紀。パパのおかげで私達ちゃんと学校に
 も行けたし、楽しい事もあったでしょ」
晶紀「お姉ちゃんは親父に可愛がられてたか
 らね。じゃあ、どーすんの?借金。返せる
 当てあるの?」
紗貴「私に…、少し考えがあるわ」

○クラブ『華』・フロント(夜)
   紗貴はドレス、晶紀は特攻服で乗り込
   む。紗貴、手に小型のアタッシュケー
   スを持っている。
   和服を来た藤浪絢子(33)が出迎える。
絢子「あら、慎さんとこのお嬢さん達ね、い
 らっしゃい。すっかり大きくなって…」
紗貴「九頭竜さんはいますか?」
絢子「いるわよ。ちょっと待っててね」
   絢子、奥へ行く。
紗貴「絢子さん、相変わらず綺麗ねぇ」
晶紀「知ってた?あの人と親父、昔つきあっ
 てた事あるんだよ」
紗貴「嘘ッ、マジで?聞いてないよ、私」
晶紀「7〜8年前、まだママじゃなくて普通
 のホステスだった頃に2年位。親父、あた
 しには自慢気に話してたよ。お姉ちゃんは
 優等生のいい子ちゃんだから、親父もそー
 ゆーとこ見せたくなかったんじゃないの?」
   紗貴、不満気に何か言いかけるが、そ
   こへ絢子が九頭竜と戻って来る。
   紗貴のアタッシュケースを見て、
九頭竜「金が用意できたのか?」
紗貴「違うわ、これは軍資金よ。麻雀のツケ
 は麻雀で返すのが筋ってもんでしょ」
   紗貴、アタッシュケースを開く。
   中には翡翠と水晶で出来た麻雀牌一式
九頭竜「そいつは…!」
紗貴「パパが2年前の王座決定戦で四天王を
 破った時に張大老から頂いた貴重な品よ。
 私達にとっては唯一のパパの形見でもある
 し。あなたはこれにいくらつけてくれる?」
九頭竜「フン、面白い。麻雀で勝負しに来たっ
てのか。さすがは稀代の勝負師、真宮慎一
の娘だ。だがな、勝負の世界はそう甘くは
無いぜ、お嬢ちゃん」
紗貴「フフン、そんなの、やってみなくちゃ
 判らないでしょう?」
晶紀「そうよ。博打三昧のロクデナシ親父か
 ら唯一教わった麻雀の技は伊達じゃないよ」
 紗貴と晶紀の真剣な眼差しに、すっと
 顎を引く九頭竜。
九頭竜「いいだろう。絢子姐さん、椿の間を
 用意して、テツと天人(ティエンレン)を呼んで来てくれ」
絢子「判ったわ、雅人さん」
   フッと微笑む絢子、奥へ消える。
 
○同・椿の間内(夜)
   座敷の中央。黒檀で出来た卓を囲んで
   紗貴と晶紀、中川、張天人(13)、九頭竜
   の5人がいる。
九頭竜「ルールは至って簡単、半チャン一回、
 青天井、オールあり、チョンボは満貫払い
とする。お嬢ちゃん達は2人で一組という
ことでいいか」
中川「マジでこんなガキと勝負するんすか?」
九頭竜「天人だってまだ13だがお前より断然
 巧い。そうやって見た目や年齢でなめてか
 かるのはお前の悪い癖だ、テツ」
紗貴「それでレートは?条件はどうするの」
九頭竜「トップ百万の千点十万、これがいつ
 も親父さんと勝負する時のレートだ。だが
 希望があれば変えてもいい」
   紗貴、晶紀の方を見る。少し不安気な
   表情の晶紀に、紗貴は笑顔を見せる。
紗貴「モーマンタイ、それで行きましょう」
九頭竜「これが翡翠の麻雀牌の買取料だ。こ
 こから場所代を引かせて貰う」
   九頭竜、百万円の束を十個紗貴の前に
   積み、そこから一束抜き取る。
晶紀「うちらの出親ね。まずはあたしが相手
 よ」
   サイコロを振る晶紀、8の目が出る。
   次々手牌を取り、ゲームを始める4人
   3順目の中川の捨て配を見てにんまり
   と笑う晶紀、パタッと手配を倒して。
晶紀「ロン。大三元よ、ありがとさん」
中川「ざけんなッ!てめえ、やりやがったな
んな簡単に役満なんか作れるはずがねえ。
しかも手牌のほとんどはてめえの山からじゃ
 ねえか。いかさまに決まってんだろ」
晶紀「失礼な、どこにそんな証拠があんのよ
 実力よ、実力」
中川「嘘つけ、てめえの親父はな、『牌の魔
 術師』と呼ばれる有名ないかさま師だった
 んだ、その娘もいかさましねえ訳がねえ」
   紗貴、中川と晶紀の間に割って入る。
紗貴「言いがかりはやめてくれない?万一い
 かさまだったとしても、その場で見破れな
 きゃ文句は言えないのがセオリーでしょ。
 それに私と違って晶紀はそんなに器用じゃ
 ないわ。パパの積込の技は一流の芸術よ、
 一緒にしないでくれる?」
晶紀「お姉ちゃん…、それフォローになって
 ないって」
九頭竜「なるほど、その一流の芸術とやらを
  ぜひ見せてもらいたいものだな」
   鋭い眼差しで紗貴を見据える九頭竜。
紗貴「御託はいいからさっさと続けましょ」
   負けずに強い表情で見返す紗貴。


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