小説・永遠では永過ぎる

恋はするものではない、落ちるものである

シナリオ

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全3ページ

[1] [2] [3]

[ 次のページ ]

コードネームはネズミ

イメージ 1

 正統派のヒーローもいいですが、アンチヒーローものも好きですね。
という訳で『コンスタンティン』見てきました。

『想像を絶する大胆なストーリー設定、徹底したリアリズムのもとに構築された息を呑む異空間、視覚的な衝撃、背を這うような恐怖、さらには謎に満ちた登場人物たち。フィルム・ノワール、ホラー、ファンタジー、そしてダイナミックなアクションの融合でありながら、それらすべてのジャンルを超越した『コンスタンティン』は、異形の者たちが跋扈する異世界と現実世界の境界をも取り去って、ここに初めて誕生する未体験の世界を創り出す。』

なんて謳われていますが、確かに映像的には目をそむけてしまう場面も多々あり(私はホラーもの苦手なので)、ドキドキハラハラさせてくれ、ストーリー展開も上手く出来てて、面白かったと思います。
聖書の世界が出てくるので馴染みのない日本人には判りにくいところもあったかもしれませんが、登場人物たちもキャラクター性に富んでいて、私的には結構好きな話でした。
まあでもキアヌはアンチといいながら、内面はどこか真面目でストイックな印象を受けたのですが。。
もう少し女刑事との絡みがあっても良かったのかな、と思いました。
ホモ(?)の悪魔とか、両性具有の天使とか、おっさんとかばっかりで、折角美人の女刑事が出てるんだし、アンチヒーローなら女好きでもっと軽い感じな方が私は好きなんだけどな〜。
 
                 △  △  △






コードネームはネズミ
            
           
  人  物
 加納恭之(32)運び屋
 リサ・グラナドフ(31)麻薬組織のボス
 黒崎郷子(27)女刑事
 ヘラルド
 ハビエル
 


○品川埠頭倉庫街・倉庫内の一室(夜)
   窓のない殺風景なコンクリートの部屋。
   手足を縛られ、気絶して床に転がって
   いる黒崎郷子(27)。所々服が破け、体中
   に鞭で叩かれたようなミミズ腫れの痕。
   鞭を手に、黒いサテンのワンピースに
   身を包んだナイスバディのリサ・グラ
   ナドフ(31)が郷子を見下ろしている。
   扉の両脇には、上半裸で金髪のマッチョ
   なヘラルドとハビエルが控えている。
リサ「ヘラルド、水を!」
   ヘラルド、バケツの水を持って来て郷
   子に浴びせ無理やり起こす。呻く郷子。
郷子「うう…」
リサ「強情な女ね。そうやってだんまりを決
 めこんだところで、お前がサツの雌犬だっ
 て事はもうこっちには判っているのよ」
   郷子、必死に痛みを堪えながらリサを
   睨んでいる。冷笑を浴びせるリサ。
リサ「いつまでその抵抗が続くかしら?あの
 男は死んだわ。頼みの綱の相棒がいない今、
 どうやって反撃するって言うの?」
郷子「あんたの望みは何、ボスの女が情夫と
 組んで組織を乗っ取ろうって訳?」
   リサ、郷子をキッと睨みつける。
リサ「勘違いしないで、4年前、崩壊寸前だっ
 たこの組織をここまで再建したのは私よ。
 あの男を名目上ボスにしたのもね」
   郷子、憎々しげにリサを見ている。
   勝ち誇ったような笑みを浮かべるリサ。
リサ「さあ、命乞いでもしてみたら?床に這
 いつくばって許しを乞うなら命だけは助け
 てあげるかもよ。それとも奇跡を信じるの?
 まさかね、そうゆう性格じゃないでしょ?」
郷子「殺すならさっさと殺せばいい、誰があ
 んたに命乞いなんてするもんか!」
   唾を吐き捨てる郷子。リサ、むしろ嬉
   しそうな表情で。
リサ「あくまで反抗するのなら仕方ないわね。
 命まで取るとは言わないわ、ただ注射を打っ
 てもらうけど。すぐに楽しくなるわよ。ハ
 ビエル、ブラックストーンを持って来て」
   ハビエル、部屋を出て行く。ヘラルド
   は郷子の身体を押さえ、腕をまくる。
   そのままの姿勢でハビエルを待つヘラ
   ルドとリサ。リサ、少しイライラした
   様子で声をかける。
リサ「何をぐずぐずしているの、ハビエル」  
   ハビエル、注射器を持って郷子の前に
   戻り、ニッと笑う。腕に近づく注射針
   を蒼白な顔で食い入るように見つめる
   郷子。ハビエル、突然、その針を横の
   ヘラルドの腕に刺す。ヘラルド、意識
   を失いその場に倒れ込む。
リサ「ハビエル、気でも違ったの?!」
   驚いてハビエルをまじまじと見るリサ。
   鬘を外し、ゴム製のマスクを取ると、
   ハビエルの顔の下から加納恭之(32)の顔
   が現われる。唖然とするリサ。
加納「まったく、後は機動隊に任せてずらか
 ろうって言ったのに一人で突っ走りやがっ
 て。俺はただの運び屋だっつーの、余計な
 仕事増やしてんじゃねーよ。料金は倍額だ
 からな」
   郷子、加納を一瞬嬉しそうに見上げて。
郷子「ネズミ!あなた…、生きてたの?!」
加納「そう簡単に死んでたまるか。まだあん
 たから成功報酬も貰ってないのに」
リサ「どうしてお前が…、それじゃあの時死
 んだのは、まさか…!」
   不安そうな顔で加納を見るリサ。
加納「残念だがそのまさかだ、あんたが俺と
 思って殺させたのはあんたの腹心の部下の
 武石さ」
リサ「そんな…、嘘よ」
加納「嘘じゃない。奴が倉庫に連れ込んだ時、
 俺は奴を倒して入れ替わったんだ」
   一筋、涙を流すリサ。不思議そうにリ
   サを見つめる加納。
加納「あんたでも惚れた男のために涙を流す
 んだな。4年前、俺が麻薬Gメンだと知っ
 た時は容赦なく俺を殺そうとした癖に」
   はっとして加納をじっと見つめるリサ、
   首を振りながら。
リサ「私をからかってるの?いいえ、そんな
 筈ないわ。だって私は確かに…」
加納「そう、あんたは致死量の睡眠薬が入っ
 たワインを俺に飲ませようとした。飲むふ
 りだけのつもりが、うっかり一口飲んだお
 かげで俺は朝までぐっすりお休みさ。目が
 覚めたらすべては終わり、雑魚ばかりが逮
 捕されてあんたは高飛びした後だった…。
 その後俺は責任を取って厚生省を辞め、フ
 リーの運び屋になった、って訳だ」
   加納、遠くを見るような表情。郷子、
   複雑な表情で加納とリサを見比べる。
リサ「フッ、そう、あなたがネズミだったの」
   リサ、懐かしそうに微笑しながら加納
   に近づく。手には銀色に光る拳銃。
加納「…久しぶりだな、リサ」
リサ「そうね、もう一度あなたに会いたかっ
 たわ、ずっと。また逢えて嬉しいわ」
   恋人同士のように目と目を見つめあう
   加納とリサ。加納、苦笑しながら。
加納「そういうセリフは、その物騒なものを
 しまってから言ってくれ」
リサ「そうはいかないわ。さすがはネズミね、
 よくここまで1人で来たわ。でもこの場で
 誰が1番優位なのか、あなたも判るでしょ」
加納「フン、何が望みなんだ?」
リサ「この女を殺して私と手を組むか、ここ
 で仲良くこの女と一緒に死ぬか、二つに一
 つ。でもあなたは殺すには惜しい男だわ。
 ねえ、2人で世界を手に入れましょう」
   銃口はしっかり加納に向けたまま、嫣
   然と微笑むリサ。
加納「つまり俺に麻薬組織の手先になれと?」
リサ「フリーの運び屋なんて危険なばかりで
 稼げるのは多寡がしれてるわ。それより、
 その頭脳と力をもっと有効に使ってみよう
 とは思わない?報酬ならその女の10倍払う
 わ。いいえ、いずれは組織の中心として、
 あなたにすべてを任せてもいいのよ」
加納「なるほど、そうすれば世界中の冨や権
 力が思いのままって訳か。確かに悪くない
 話だ…、もう俺は麻薬Gメンじゃないしな」
   加納、リサを意味ありげに見つめる。
   勝ち誇った笑みを浮かべるリサ。汗を
   浮かべて苦しげな表情の郷子。
加納「…なーんて俺が思うと思ったら大間違
 いだぜ、リサ。生憎俺はそんな事にこれっ
 ぽっちも興味はない。こう見えても根は小
 心者でシャイでまじめな堅物なんでね。今
 はどうやってこのお堅い女刑事を口説いて
 一晩お相手してもらえるかでいっぱいいっ
 ぱいなんだ」
   へラヘラ笑う加納、嫌そうに顔をそむ
   ける郷子、呆れて首を振るリサ。
リサ「冗談でしょ?!金も女も思いのままの人
 生が待っているって言うのに、そんな女一
 人のために今の薄汚いドブネズミのような
 生活を選ぶって言うの?この女にそこまで
 義理立てする理由はないはずよ。命が惜し
 くないの、私は欲しくないの?」
加納「確かにあんたはスタイル、容姿、どれ
 も素晴らしく魅力的だ。だが腹の底で何を
 考えてるか判らないような女はお断りだ、
 いつ寝首をかかれるか判ったもんじゃない
 からな」
   リサ、冷めた表情で加納を見つめる。
リサ「残念ね、頭の固い男に用はないわ。死
 んで頂だい」
   リサ、銃口を加納のこめかみに向け、
   引き金を引く。
   カチッ、カチッと空砲の音。焦るリサ。
加納「弾なら先刻抜いておいた。何の準備も
 なしに俺がのこのこ出て来る訳ないだろ。
 ついでにあんたの悪趣味なボディガード達
 も1人残らず片づけておいた。で?どっち
 が今有利なんだって?俺は、俺をコケにす
 る奴は女でも容赦しないぜ」
   しばらく加納の顔を睨むように息を詰
   めて見ているリサ、ふいに銃を捨てる。
リサ「完璧ね、私の負けよ。後はあなたの好
 きにするといいわ」
加納「良い覚悟だな、リサ。あんたも殺すに
 は惜しい女だ」
   ニヒルな笑みを浮かべ、楽しそうにリ
   サを見下ろす加納。
リサ「殺す前に一つだけ、…ネズミ、最後に
 私にお別れのキスをしてくれない?」
加納「いいだろう、キスだけと言わず、抱い
 てやる。来いよ」
   加納、リサを抱き寄せ、肩紐を外して
   するりとリサのワンピースを床に滑ら
   せる。そのままリサと唇を重ね、右手
   はリサの内腿へと差し込む。
郷子「こんな時に何やってるの、バカ、変態」
   呆れて罵る郷子に、加納、顔を向けて。
加納「バカとは何だ、武器を隠し持ってない
 かどうか確認しただけだ。案の定ナイフを
 足に隠していたぞ」
   加納、リサを離し、ペッと何かを吐き
   出す。手にはナイフを掴んでいる。
加納「大方、歯にも睡眠薬か何かを仕込んで
 いたんだろうが、二度も同じ手に乗るか。
 今度こそ観念するんだな」
リサ「…初めに正体を隠して近づいて私を騙
 したのはあなたの方よ。あの時私の手であ
 なたを確実に殺しておかなかった事、今、
 とても後悔しているわ」
   リサ、少し哀しげな表情で目を伏せる。
   加納、片手でリサの手首をつかんでロー
   プで縛り上げ、郷子の縄を解く。
加納「俺もあの時あんたをこうして捕まえて
 おかなかった事がずっと心残りだったよ。
 …それじゃ俺は先に帰るとするか。後で報

開く トラックバック(24)

きんぴか

イメージ 1

浅田次郎さんの『きんぴか』は笑えてちょっぴり泣かせる悪漢小説です。
元やくざの鉄砲玉、通称ピスケン、湾岸派兵に断固反対し、単身クーデターを起こして自殺未遂した軍曹、収賄事件の罪を被り大物議員に捨てられた元政治家秘書のヒデさんなど、個性的で価値観もバラバラな3人組が大活躍します。
シリーズ3作目の中にある一遍、『一杯のうどんかけ』はラストのオチもひねりが利いていて面白かったですね。
キャラクターが立っているのでドラマ化しやすいんじゃないかと思います。
こういう肩肘張らない、気軽に楽しめるエンターティメントもたまにはいいんじゃないかと思うのでおススメです。

で、やくざつながりということで。。
こちらは最初イタリアのマフィアのボスという設定で女の子を主人公とした一人称の小説を書いたんですけど、シナリオスクールの課題用に、設定を変えてクライマックスの所だけを抜粋してシナリオに書き下ろしました。
もしドラマ化されるとしたら(そんな予定はないですが)、怜志役は唐沢寿明さんにやってもらいたいな〜。
   
『怜志』            

           
  人  物
 青木怜志(31)竜神会若頭
 水沢ひな(19)看護大学の学生
 原田雅人 (33)竜神会若頭補佐
 緋堂カイ(26)怜志の異母弟。緋堂組若頭
 コールガール(23)
 
○新宿・ホテルのスイートルーム
   シャツの前をはだけ、ベルトを外した
   青木怜志(31)がベッドに腰掛けている。
   腕にはダイヤ入りのカルティエの時計。
   スリップ姿のコールガール(23)が中腰で、
   青木の腰の辺りに顔をうずめている。
   汗をかき、激しい息遣いの女。突然、
   醒めた表情で青木が立ち上がる。
青木「もういい、お前じゃダメだ。金はやる
 から帰ってくれ」
女「何よ、そっちが呼んだくせに」
   青木、札束を女に向かって放り投げる。
   女、金を拾うと途端に媚びた笑顔で、
女「…まあ、またいつでも呼んでよ」
   女、部屋を出て行く。
衣服を直し、ネクタイを締める青木。
   窓際に立ち、黙って窓の外を眺める。
外は今にも雪が降りそうな灰色の空。
   ノックの音がして、原田雅人 (33)が入っ
   て来る。原田、恭しく青木に礼をする。
原田「今の女は気に入りませんでしたか?」
青木「原田、もう女は呼ばなくていい」
原田「…まだあの娘の事が忘れられないんで
 すか?かしら若頭はいずれ竜神会七代目の跡目を
 継がれる身、しょせん堅気の娘とは…」
青木「黙れ。俺は何も言っていない」
原田「はッ、申し訳ございません」
   畏まって平伏する原田。
   ピピピ、ピピピ、と青木の携帯が鳴る。
   不機嫌そうに電話に出る青木。
青木「カイか。何の用だ」
緋堂の声「やあ、兄貴、調子はどうだい?
 兄貴に見せたいものがあるんだ、これから
 ちょっと来てくれないか。まあ、聞けよ、
 兄貴の可愛い子猫ちゃんに替るから」
   雑音が入り、緋堂カイ(26)がぼそぼそと
   何か言う声が聞こえてくる。
青木「どーいうことだ、カイ」
   少し遠くから水沢ひな(19)の声が聞こえ、
青木の顔がさっと緊張する。
ひなの声「…怜志さん。ごめんなさい、私…」
青木「ひな!奴と一緒か。何かされたのか?」
ひなの声「ううん、大丈夫…」
   途中でひなの声が途切れ、緋堂に替る。
緋堂の声「今の所はな。だが、兄貴が来ない
 と大変なことになるぜ。こっちは雪だ、氷
 の張った川で泳いだら10分ともたないだろ」
青木「くそッ、ひなは関係ない」
緋堂の声「どうかな。さあ、お嬢さん、兄貴
 に言ってくれ、早く助けに来てくれって」
青木「ひな、待ってろ、今すぐ…」
ひなの声「ダメよ。あなたみたいなシスコン
 で女タラシのロクデナシなんて顔も見たく
 ないわ。だから来ないで」
緋堂の声「こんなこと言ってるが、先刻兄貴
 が重症だと言って誘い出したら血相変えて
 たぜ、彼女。とにかく奥多摩の倉沢渓谷ま
 で今すぐ一人で来い、武器は持たずに丸腰
 でだ。妙な真似をすれば女の命は無い」
   プツッと携帯が切れる。携帯を握りし
   め、蒼白になる青木。
青木「…あの腐れ外道が。原田、今すぐ車を
 回せ。奥多摩の倉沢渓谷だ」
原田「はい、ただ今」
   さっと部屋を飛び出す原田。青木、白
   いアルマーニのジャケットを羽織り、
   グラサンをつけて、外に出て行く。
   服の襟に光る、ダイヤ入の金バッチ。

○奥多摩・倉沢渓谷沿いの山荘内
   窓の外はちらちらと雪が降っている。
   粗末な木の椅子に手足を縛られたひな
   がいる。緋堂は横で、ワイングラスを
   片手に、面白そうにひなを眺めている。
緋堂「しかし、あの兄貴にあんなタンカを切
 る女がいるとはな。男を来させないための
 精一杯の虚勢って奴か。健気でいじらしく
 て涙が出るね。君は実に可愛いよ、ひな」
   ひなの髪を弄ぶ緋堂。顔を背けるひな。
緋堂「それに、いつもクールで何事も動じな
 い兄貴の焦った声も初めて聞いたよ。どう
 やら、あの女たらしが堅気の娘に入れあげ
 てるって噂は本当だったようだ」
   ひな、きっと顔を上げ、緋堂を睨む。
ひな「あなたは何故こんなことを…、どうし
 て兄貴分のあの人を付け狙うの?」
緋堂「あいつがいると邪魔だからさ。奴を倒
 して俺がナンバー1になる。強者が弱者を
 支配し君臨する、それが極道の世界だ」
   端正な顔に薄笑いを浮かべて冷たくひ
   なを見下ろす緋堂。

○同・倉沢渓谷登山道入り口前
   『倉沢渓谷登山道入口』という立看板。
   黒のベンツが停まり、降り立つ青木。
   ドア越しに運転席の原田に指示を出す。
青木「俺はここから一人でひなを迎えに行く。
 後は指示通り頼む。いいな?」
青木「若頭、せめてチャカ拳銃は持ってって下さい。
 緋堂組の連中が手ぐすね引いて待っている
 に違いありません。若頭にもしもの事があっ
 たら、親父さんに合わせる顔がありません」
青木「馬鹿野郎、あんな三下連中にこの俺の
 タマをと殺る度胸があると思うか?良いから
 てめえは云われた通りにしやがれッ」
   青木を一喝し、肩を怒らせて去って行
   く青木。その背中を消えるまで、じっ
   と見つめている原田。
 
○同・倉沢渓谷沿いの遊歩道(夕)
   しんしんと降り続く雪。
川にせり出した崖っぷちの岩に吊るさ
   れているひな。緋堂、嘲るように。
緋堂「もうじきここに奴が現れる。そうした
 ら二人一緒にあの世に送ってやるよ」
   ひな、何か言おうとするが、唇が震え
   て言葉にならない。
   遠くから銃声が聞こえてくる。
   緋堂、どこかに姿を消す。
   ひな、祈るようにぎゅっと目をつむる。
   閉じた瞳の端から、一筋涙が頬を伝っ
   て流れ落ちる。

○同・倉沢渓谷沿いの遊歩道(夕)
   茂みの影から遊歩道に姿を現す青木。
   白いジャケットは所々破れ、血と泥に
   まみれている。ひなの側に近づき、気
   絶したように動かないひなを岩から抱
   き下ろし、軽く頬を掌で叩く青木。
青木「ひな、おい、ひな、大丈夫か?」
   ひな、身じろぎして瞼を開ける。
ひな「…怜志、さん?」
青木「良かった、間に合った」
   青木、ぎゅっとひなを抱きしめる。
ひな「怜志さん、怪我してるの?」
青木「平気だ、こんなのはかすり傷だ。お前
 こそ、ひどい格好だな」
   笑う青木、その唇の端が少し引きつる。
   ひな、青木の左肩にある銃創に気づく。
ひな「嘘よ、ひどい怪我だわ。罠と判ってて
 来るなんて、あなたバカよ。大バカ」
   青木、ひなの体からロープを外して、
青木「バカじゃない、それが男ってもんだ。
 自分の大切な女一人守れなくてどうする。
 俺は姉貴の命日にお前まで失ってたまるか」
緋堂の声「さすがは兄貴だな、こんな時にま
 で女を口説いてるとは。だがそこまでだ、
 今日が貴様の命日になるんだ」
   遊歩道の少し先から、ぴったりと銃を
   構えた緋堂が現れる。続いて左右をと
   り囲むように、機関銃を手にした黒ず
   くめの男たちが姿を現す。
緋堂「貴様の男意気に免じて、女の命だけは
 助けてやろう。両手を上げて、ゆっくり女
 から離れるんだ」
   ひな、青木の腕にしがみついたまま、
ひな「嫌、行かないで、怜志さん」
   青木、そっとひなの手を放して、両手
   をゆっくり上げながら緋堂を見る。
青木「本当にひなは助けてくれるんだな?」
緋堂「約束しよう」
青木「その前に一つだけ、最後にひなにお別
 れを言わせてくれ」
緋堂「良いだろう、一分だけだ」
   緋堂、鷹揚に笑ってみせる。ひなを振
   り返り、ニヒルな笑みを浮かべる青木。
青木「俺は世界で一番タフでクールなやくざ
 のボスだ。俺に何か言いたい事はあるか?」
ひな「何言ってるのよ、こんな時に。私を残
 して死んだりしたら絶対許さない。死ぬな
 ら一緒よ」
青木「それを言うなら一緒に生きよう、だろ?
 それじゃ二人で地獄に落ちよう。行くぞ、
 ひな」
   突然ひなを抱き寄せ、下を流れる川の
   中へ身を躍らせる青木。
   続いて響く轟音。飛び散る火花と砂礫。
   崖が崩れ、緋堂たちの上にガレキの山
   が落ちてくる。その向こうに、グレネー
   ドランチャーを手にした原田がいる。

○同・遊歩道のあったガレキの山(夕)
   大きな岩に足を挟まれ、身動きの取れ
   ない緋堂。その頭に銃を突きつける、
   全身ずぶ濡れの青木。横には、ひなを
   毛布でくるみ、抱きかかえている原田。
青木「形勢逆転だな、カイ。観念しろ」
緋堂「…くそッ。早く殺せ」
青木「当然だ。お前の汚い裏切りは、血と絆
 の掟に従って死で償わなければなるまい。
 これでお前もお前の組も終わりだ、カイ」
   冷酷非情に緋堂を見下ろし、引き金を
   絞る青木。咄嗟に手で目を塞ぐひな。
   轟と響く銃声。緋堂の右手が鮮血で染
   まり、腕を押さえてうめく緋堂。
青木「お前の罪は確かに死に値する。だが、
 人は死よりも、時にその罪を背負って生き
 て行く方が辛いものだ。お前もこれからの
 人生、良く考えて生きて行くんだな」
   ひな、そっと目を開けて青木に微笑む。
   青木、銃を懐にしまい、歩き出す。

牌の魔術師

イメージ 1

うちの親父さんが麻雀好きで、私や妹は幼少の頃から麻雀仕込まれましたね。
年末年始は家族でコタツで麻雀大会、というのが毎年恒例でした。
阿佐田哲也さんの小説もそろってました、ハイ。
積み込みとかモーパイとか天和とか、やってみたくて。
妹なんてバカの一つ覚えみたく、本一とか大三元狙いばっかりで勝てなくて。弱かったですね〜。
私はダマテンか変則待ち、バレバレのときはリーチで、と戦略を練って、
大勝しない代わりに手堅くコツコツ、勝ってました♪
あ、でもちゃんと?役マン上がったことありますよぉ、インチキなしで。



 『牌の魔術師』
          
             
   人  物
 真宮紗貴(19)女子大生
 真宮晶紀(18)紗貴の妹、フリーター
九頭竜雅人(31)銀竜会の若頭
 中川 哲(26)銀竜会のチンピラ
 藤浪絢子(33)クラブ『華』のママ
 正木容子(48)主婦・紗貴の母方の親戚
 

○真宮家・居間(夜)
   中央に祭壇、慰問客が次々やって来る
   喪服を来た真宮紗貴(19)と真宮晶紀(18)が
   祭壇の脇に座っている。
   祭壇の上に真宮慎一の遺影。
   正木容子(48)、焼香して2人に向く。
容子「この度はご愁傷様だったわね。ええと、
 どちらがお姉ちゃんだったかしら。ほら、
 聡子さんのお葬式以来でしょ、会うの」
紗貴「私が姉の紗貴です」
晶紀「妹の晶紀です」
容子「そうそう、紗貴ちゃんに晶紀ちゃん。
 でもこれから大変ねえ、お父様が亡くなら
 れて、二人だけになっちゃって。困った事
 があったら何でもおばさんに相談してね」
紗貴「ありがとうございます。姉妹2人、力
 を合わせて頑張っていくつもりです」
容子「でも慎一さんにも困ったものよね、嫁
 入り前の娘さんが二人もいるのに、借金残
 して逝っちゃって。だから聡子さんが結婚
 する時にも私反対したのよ、ちゃんと堅気
 の定職についた人を旦那にしないと苦労す
 るわよって。まあ、ウチの旦那みたいに万
 年係長でも給料少なくてやってられないけ
 どね。ウチの子達も来年は高校と中学に上
 がるでしょ、ホント、お金がいくらあって
 も足りないって言うか…」
   早口で際限なく続けようとする容子を
   紗貴、慌てて遮る。
紗貴「あ、ちょっとお坊さんにご挨拶しない
 と…。まだゆっくりしていって下さいね」
容子「あら、ごめんなさい。これで失礼する
 けど、おばさん、遠くからあなた達の事見
 守ってるからね。頑張ってちょうだい」
   容子がいなくなると、晶紀、ぼそっと
晶紀「おしゃべり婆あ。どうせお金の事とか
 相談したら真っ先に知らん顔するくせに。
 口はいいから金を出せって感じだよね」
紗貴「そういう事言わないの。遠い所からお
 通夜に来てくれたんだから」
晶紀「そうやってすぐお姉ちゃんはいい子ぶ
 るんだから。心ん中じゃ舌出してたくせに」
紗貴「例え思ってても、そんな事仏様の前で
 口に出す事じゃないでしょ」
   と、そこへ中川哲(26)他チンピラ数人が
   ドカドカと上がりこんでくる。
中川「おい、姉ちゃん、酒持ってこいや!」
紗貴「な、何なんですか、あなた達」
中川「お前らの父ちゃんな、ウチの店に麻雀
 のツケがあるんだよ。耳そろえて返して貰
 おうか」
紗貴「ツケって…、一体いくらですか?」
中川「二千万、借用証書もちゃんとあるぜ。
 返済期限はあと一週間だ」
   真宮慎一とサインのある借用証書を見
せる中川。
紗貴「そ、そんな大金、一週間でなんて無理
 だわ」
中川「だったらウチの店で働いて貰おうか。
 二人いたら1年も働けば返せるだろ」
   下卑た笑いを浮かべ、紗貴と晶紀を代
   わる代わる見る中川。カッとする晶紀
晶紀「ふざけんなッ!何でうちらがあのロク
 デナシのクソ親父の借金を返さなきゃいけ
 ないのよ。冗談じゃない」
中川「てめえらの父親だったら、娘が責任取
 んのは当然だろーが。ガタガタ抜かすと、
 首根っこ引っつかんで表に放り投げるぞ」
   晶紀の胸倉を掴み、睨みを利かす中川。
   そこへスーツをスマートに着こなした
九頭竜雅人(31)が現れ、制止する。
九頭竜「やめないか、テツ」
中川「若頭…」
   九頭竜、紗貴と晶紀に向かって。
九頭竜「突然すまない。だが俺達も慈善事業
 ではないのでね、親父さんという担保が無
 くなった今、資金の回収をさせて貰うのは
 当然の事だ。まあ覚悟はしておいてくれ」
   そのまま出て行く九頭竜、慌てて追い
   かける中川達。呆然とする紗貴と晶紀。

○同・子供部屋(夜)
   紗貴、頬杖をついてぼうっとしている。
   晶紀はカバンの中に洋服を詰めている。
紗貴「…あんた、先刻から何やってんの?」
晶紀「決まってんでしょ、夜逃げすんのよ」
紗貴「バカね、逃げたってあいつらが見逃し
 てくれる訳ないでしょ。地の果てまで追い
 かけてくるわよ」
晶紀「だからってこのまま、ソープに売り飛
 ばされるのを黙って待ってろって言うの?
 まったく、生きてる時もちっとも親父らし
 い事しなかったけど、死んでからも娘に迷
 惑かけるのやめろっての、あのバカ親父」
紗貴「自分の親をそんな風に言うのやめなよ、
 晶紀。パパのおかげで私達ちゃんと学校に
 も行けたし、楽しい事もあったでしょ」
晶紀「お姉ちゃんは親父に可愛がられてたか
 らね。じゃあ、どーすんの?借金。返せる
 当てあるの?」
紗貴「私に…、少し考えがあるわ」

○クラブ『華』・フロント(夜)
   紗貴はドレス、晶紀は特攻服で乗り込
   む。紗貴、手に小型のアタッシュケー
   スを持っている。
   和服を来た藤浪絢子(33)が出迎える。
絢子「あら、慎さんとこのお嬢さん達ね、い
 らっしゃい。すっかり大きくなって…」
紗貴「九頭竜さんはいますか?」
絢子「いるわよ。ちょっと待っててね」
   絢子、奥へ行く。
紗貴「絢子さん、相変わらず綺麗ねぇ」
晶紀「知ってた?あの人と親父、昔つきあっ
 てた事あるんだよ」
紗貴「嘘ッ、マジで?聞いてないよ、私」
晶紀「7〜8年前、まだママじゃなくて普通
 のホステスだった頃に2年位。親父、あた
 しには自慢気に話してたよ。お姉ちゃんは
 優等生のいい子ちゃんだから、親父もそー
 ゆーとこ見せたくなかったんじゃないの?」
   紗貴、不満気に何か言いかけるが、そ
   こへ絢子が九頭竜と戻って来る。
   紗貴のアタッシュケースを見て、
九頭竜「金が用意できたのか?」
紗貴「違うわ、これは軍資金よ。麻雀のツケ
 は麻雀で返すのが筋ってもんでしょ」
   紗貴、アタッシュケースを開く。
   中には翡翠と水晶で出来た麻雀牌一式
九頭竜「そいつは…!」
紗貴「パパが2年前の王座決定戦で四天王を
 破った時に張大老から頂いた貴重な品よ。
 私達にとっては唯一のパパの形見でもある
 し。あなたはこれにいくらつけてくれる?」
九頭竜「フン、面白い。麻雀で勝負しに来たっ
てのか。さすがは稀代の勝負師、真宮慎一
の娘だ。だがな、勝負の世界はそう甘くは
無いぜ、お嬢ちゃん」
紗貴「フフン、そんなの、やってみなくちゃ
 判らないでしょう?」
晶紀「そうよ。博打三昧のロクデナシ親父か
 ら唯一教わった麻雀の技は伊達じゃないよ」
 紗貴と晶紀の真剣な眼差しに、すっと
 顎を引く九頭竜。
九頭竜「いいだろう。絢子姐さん、椿の間を
 用意して、テツと天人(ティエンレン)を呼んで来てくれ」
絢子「判ったわ、雅人さん」
   フッと微笑む絢子、奥へ消える。
 
○同・椿の間内(夜)
   座敷の中央。黒檀で出来た卓を囲んで
   紗貴と晶紀、中川、張天人(13)、九頭竜
   の5人がいる。
九頭竜「ルールは至って簡単、半チャン一回、
 青天井、オールあり、チョンボは満貫払い
とする。お嬢ちゃん達は2人で一組という
ことでいいか」
中川「マジでこんなガキと勝負するんすか?」
九頭竜「天人だってまだ13だがお前より断然
 巧い。そうやって見た目や年齢でなめてか
 かるのはお前の悪い癖だ、テツ」
紗貴「それでレートは?条件はどうするの」
九頭竜「トップ百万の千点十万、これがいつ
 も親父さんと勝負する時のレートだ。だが
 希望があれば変えてもいい」
   紗貴、晶紀の方を見る。少し不安気な
   表情の晶紀に、紗貴は笑顔を見せる。
紗貴「モーマンタイ、それで行きましょう」
九頭竜「これが翡翠の麻雀牌の買取料だ。こ
 こから場所代を引かせて貰う」
   九頭竜、百万円の束を十個紗貴の前に
   積み、そこから一束抜き取る。
晶紀「うちらの出親ね。まずはあたしが相手
 よ」
   サイコロを振る晶紀、8の目が出る。
   次々手牌を取り、ゲームを始める4人
   3順目の中川の捨て配を見てにんまり
   と笑う晶紀、パタッと手配を倒して。
晶紀「ロン。大三元よ、ありがとさん」
中川「ざけんなッ!てめえ、やりやがったな
んな簡単に役満なんか作れるはずがねえ。
しかも手牌のほとんどはてめえの山からじゃ
 ねえか。いかさまに決まってんだろ」
晶紀「失礼な、どこにそんな証拠があんのよ
 実力よ、実力」
中川「嘘つけ、てめえの親父はな、『牌の魔
 術師』と呼ばれる有名ないかさま師だった
 んだ、その娘もいかさましねえ訳がねえ」
   紗貴、中川と晶紀の間に割って入る。
紗貴「言いがかりはやめてくれない?万一い
 かさまだったとしても、その場で見破れな
 きゃ文句は言えないのがセオリーでしょ。
 それに私と違って晶紀はそんなに器用じゃ
 ないわ。パパの積込の技は一流の芸術よ、
 一緒にしないでくれる?」
晶紀「お姉ちゃん…、それフォローになって
 ないって」
九頭竜「なるほど、その一流の芸術とやらを
  ぜひ見せてもらいたいものだな」
   鋭い眼差しで紗貴を見据える九頭竜。
紗貴「御託はいいからさっさと続けましょ」
   負けずに強い表情で見返す紗貴。

イメージ 1

サラサーテのツィゴイネルワイゼンは前から知っていましたが、
ルクセンブルクの市庁舎前広場で本物のジプシーの人が演奏して、
マジャール人の女性が曲に合わせて民族衣装で踊るのを見たことがあります。
ヴァイオリンの音色と、少し秋の始まりの美しい青空が何だか切ない気持ちになりました。
フィギュアスケートなどでは良く使われている曲なので、ご存知の方も多いと思います。


『赤い屋根』より
『情熱と絶望のサラサーテ』

         
           
  人  物
 北見貴之(38)刑事
 吉村祥司(27)北見の部下
 戸倉正樹(10)小学4年生
 風間 潤(33) 音楽プロデューサー
 白石光雄(46)沙織の父親
 藤崎昇一(43)病院の医師
 主婦A
 主婦B


○高台にある公園・展望台前
   ヴァイオリンの音色が聞こえている。
   曲は『ツィゴイネルワイゼン』。
   白いワンピースの白石沙織(19)が突然、
   展望台から両手を広げて落ちて来る。
   まるで空を飛んでいるかのよう。
   地面に落ちる沙織、その上にはらはら
   と枯葉が舞い落ちる。
   雲一つ無い青空。

○横浜・山手通り・住宅街の一角・全景
   赤い屋根と緑の屋根の家が二軒、隣あっ
   ている。赤い屋根の家の表札は『白石』
   緑の屋根の家の表札は『戸倉』とある。
   角の所で主婦が2人、赤い屋根の家を
   見ている。少し離れた電柱の影で、北
   見貴之(38)、タバコを吸っている。
主婦A「白石さんとこのお嬢さん、自殺ですっ
 て?」
主婦B「それがまだ判らないらしいわ。ほら、
 彼女足が不自由だったでしょ、一人で展望
 台の手すりを乗り越えるのは無理だから、
 誰かに殺されたんじゃないかって噂よ」
主婦A「恐いわね。大人しくてヴァイオリン
 の上手な可愛いお嬢さんだったのに」
主婦B「白石さんも奥様を7年前に事故で亡
 くして、今度はたった一人の娘さんまでこ
 んなことになってしまってお気の毒よね」
   携帯が鳴り、電話に出る北見。タバコ
   を消し、北見、歩き出す。

○病院・死体安置室
   北見、吉村祥司(27)、白衣を着た藤崎昇
一(43)が白いベッドの前に立っている。
ベッドの上には白い布がかかっている。
   北見、手帳にメモを書き付けながら。
北見「墜落のショックによる頭蓋骨骨折か。
 他に外傷は無いと?」
藤崎「ええ。ただ、直接の死因とは関係あり
 ませんが、ちょっと気になることが…」
   藤崎、白い布をめくり、沙織の死体の
 足を見せる。太腿の内側に無数のみみず腫
 れのような傷跡。中には新しいものも。
北見「こいつは…、ひどい」
藤崎「自分でつけた可能性もありますが、虐
 待にあっていたとも考えられますな」
吉村「まさか…、父親が?!」
北見「行くぞ、吉村」
   歩き出す北見。慌ててついて行く吉村。

○移動する車の中
   吉村、運転する。隣に北見。
吉村「白石沙織は7年前母親の運転する車で
 交通事故に遭い、母親は死亡、自分も腰椎
 損傷で半身不随となってます。それ以来父
 親の白石光雄と2人暮らしです。家事など
 は家政婦が通いで来てやっているそうです」
北見「白石は関内で貿易会社を経営している
 そうだな。羽振りはいいのか」
吉村「自社ビルを所有しており、経営状態も
 まずまずのようです。白石と沙織は傍目に
 は仲の良い親子だったらしいですが」
北見「激しすぎる愛情は時に憎悪に変わるこ
 ともあるからな」
吉村「虐待を苦にしての自殺ですかね?」
   答えず、前方をじっと見詰める北見。
   
○関内・警察署前
   建物正面入口上部に『加賀町警察署』
   の看板。制服の警官が立っている。

○同・第一取調室
   スチール製の机に北見と白石光雄(46)が
   対峙している。白石、不機嫌そうな顔。
白石「一体これはどういうことだね。何故私
 が取調べを受けなければならんのだ」
北見「いえ、形式上皆さんに事情をお伺いし
 ているだけでしてね。…で、娘さんが自殺
 する動機に心当たりはないと?」
白石「沙織が自殺などありえん。多少引っ込
 み思案なところはあるが、父親想いのいい
 子だった。この秋あの子のCDデビューも
 決まっており、これからプロのヴァイオリ
 ニストとして大活躍するはずだったのだ」
北見「では何故、彼女は亡くなったと…?」
白石「あの男が沙織を殺したのだ。あいつが
 沙織をそそのかし、甘言を弄して家を出る
 よう仕向け、そのくせいざとなったら沙織
 が邪魔になって…。風間を捕まえてくれッ」
   ふいに机に突っ伏し、声を押し殺して
   嗚咽する白石。
白石「何故だ、何故沙織が死ななければなら
 なかったんだ…」
   しばらく白石が落ち着くまで見守る北
   見。頃合を見計らい、声をかける。
北見「風間というのは何者です?」
白石「ポニーミュージックの音楽プロデュー
 サーだ。沙織の担当の。あの日、沙織はあ
 いつと共に家を出て行くつもりだった。あ
 いつが現れてから沙織は変わってしまった。
 何もかもが滅茶苦茶になったんだ…」
   泣き崩れる白石を北見、じっと見下ろ
   す。

○六本木・雑居ビル前
   3階に『ポニーミュージック』の看板。

○同・向かいの喫茶店
   奥のBOX席に座っている北見とラフ
   な服装の風間潤(33)。風間、ヘラヘラと
   薄笑いを浮かべ、少し軽薄な印象。
北見「単刀直入に伺いますが、あなたと沙織
 さんとはどのようなご関係だったんです?」
風間「嫌だなあ、刑事さん、関係だなんて…。
 アーティストの卵とプロデューサーってだ
 けですよ」
北見「だが、彼女の方は随分あなたにご執心
 だったようですが。男女の関係はまったく
 無かったとおっしゃるんですな?」
   風間、俯き、親指の爪を噛みながら。
風間「…正直言えば、一度だけ…。彼女、あ
 んまり一途だからほだされちゃった、って
 いうか。でも僕、奥さんいるし、家庭を壊
 す気はないですから」
北見「じゃあ、何で駆け落ちの約束なんてし
 たんです?彼女に家を出るように言って、
 あの日迎えに行く約束をしてたんでしょ?」
風間「駆け落ちは誤解です。確かに家を出る
 ようには言いましたよ。何しろ、彼女異常
 な位の箱入りでしょ、父親が溺愛して束縛
 して…。沙織ちゃん、かなり精神的に参っ
 てたようだし、すごく外の世界に憧れてい
 たから、僕も協力はしてあげようと思って、
 他の新人アーティストと同じ研修用のマン
 ションを一部屋用意したんですよ」
北見「じゃあ、彼女に恋愛感情はまったくな
 かったと言うんだね?」
   風間、口の端を吊り上げ、皮肉な表情。
風間「彼女の音楽の才能には惚れてましたよ。
 足の不自由なエキセントリックな美少女が
 奏でる情熱と絶望ののサラサーテ、絶対行
 けると思ったんだけどな〜」
北見「…判りました。今日はもう結構です」
   ジロリと風間を一瞥し、テーブルを離
   れて行く北見。

○高台にある公園・展望台前(夕)
   北見と吉村、落ち葉の舞い散るプロム
   ナードを歩いている。
吉村「白石も風間も事故当時完璧なアリバイ
 がありますね。沙織を殺すことは不可能で
 す」
北見「だが自殺だとすると、車椅子の沙織は
 どうやって一人であの防護柵を越えること
 が出来たんだ?」
吉村「誰か他に協力者がいないと無理ですね」
   展望台を見上げる北見と吉村。
   どこからともなく、物悲しげなヴァイ
   オリンのメロディが聞こえてくる。
吉村「サラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』
 だ。素晴らしい。誰が弾いているんだ?」
北見「展望台の上だ」
   走り出す北見、吉村も続く。

○同・展望台(夕)
   防護柵の前に腰を下ろして一心にヴァ
   イオリンを演奏する戸倉正樹(10)。北見
   たちが駆けつけると、顔を上げる。
北見「今の曲、君が弾いていたのか…?」
正樹「うん。この曲、いつもさーちゃんが弾
 いてて、それで僕、憶えたんだよ」
北見「さーちゃんて、もしかして白石沙織…
 ちゃんのことかな」
正樹「うん、僕、さーちゃんのお隣に住んで
 るんだ、よく一緒に遊んでたよ」
   正樹、胸に『4年2組・戸倉正樹』と
   書いた名札をつけている。
北見「じゃあ、正樹君、4日前もこの公園に
 来なかった?沙織ちゃんと一緒に」
正樹「さーちゃんは風間さんて人を待ってた。
 一緒に遠くに行くんだって、だからもう僕
 とは会えないって。あんまり嬉しそうに鍵
 を見せるから、僕意地悪しちゃったんだ」
北見「意地悪って?」
正樹「鍵を取り上げて、ここから下に投げ捨
 てようとしたんだ。そしたら、さーちゃん
 が鍵を取り返そうとして、僕の肩をつかん
 で立ち上がって…、まさか落ちちゃうとは
 思わなかったんだ」
   北見と吉村、驚いて顔を見合わせる。
   正樹、今にも泣きそうな顔で続ける。
正樹「ただ僕はさーちゃんと一緒にいたかっ
 ただけなのに。僕のせいでさーちゃんは…。
 ごめんね、ごめんね。もう意地悪しないか
 ら、もう一度戻ってきてくれないかな」
   木枯らしが音を立てて吹きぬける。
   ヴァイオリンを抱きかかえたまま、泣
   きじゃくる正樹。
   無言で立ち尽くし、正樹を見下ろす北
   見と吉村。

イメージ 1

え〜と、うちの妹が昔、大ファンだったんですよね、米米CLUBの。
で、何度も何度も聞いてるうちに私も好きになったんですけど。
シュールダンスとかシェイクヒップとか。。
で、アルバム『KOMEGUNY』の中の4番目の曲に『コレクション』っていうのがあって、
この曲を聴いてるうちに勝手にイメージ映像が浮かび上がり、色々ストーリーを想像(妄想)して・・
出来た作品が『恋人達のペルソナ』です。
けっこう、歌に触発されてストーリーが浮かぶこと多いんですよね。
いわゆるストーカーモノなんですけど、まあ、恋愛には色々な形があって、ある意味それだけ
人から熱愛を受けるってのは幸せなんじゃないかと、最初からストーカーだとダメだけど、
出会い方が一つ違えばハッピーエンドもありかな、と。。
(但しコレが許されるのは相手が少しでも好みのタイプだった場合ですね;)


『恋人達のペルソナ』 
            
           
  人  物
 杉原奈央(21)銀行員
 森 弘彰(22)大学生
 佐々木恵(22)奈央の友人
 矢野孝史(37)医師


○聖蹟桜ヶ丘病院・405号室内(夕)
   杉原奈央(21)、ベッドで目を覚ます。ぼ
   んやりとした表情。頭に包帯が巻かれ
   ている。
   心配そうに見つめる森弘彰(22)。白衣を 
   着た矢野孝史(37)が声をかける。
矢野「具合はどうですか?杉原さん」
奈央「あの、私、どうしてここに…」
   起き上がろうとして、頭を押える奈央。
森「君は階段から落ちて頭を打ったんだ」
矢野「怪我は大したことないですよ。ただ脳
 震盪を起こしていますので、吐き気などの
 症状が出ると危険ですから今日は泊まって
 いって下さい。明日脳の検査をしましょう」
奈央「頭が痛い、それに何も思い出せない…。
 あなたは誰?私は何をしていたの?」
   不安そうに森を見る奈央。森もはっと
   して奈央を見つめる。
森「僕は君の恋人だ。この週末、君は僕と過
 ごしていた。君…本当に憶えてないのか?」
   首を横に振る奈央。
奈央「ご免なさい、自分の事は憶えているけ
 ど、この数日間とあなたの事だけが、まる
 で霞がかかったように何も判らないの…」
   沈黙の中で見つめあう一同。

○ヒルサイドテラス301号室・リビング内
   小綺麗なLDK。テーブルの前で奈央
   と佐々木恵(22)が向かい合って座ってい
   る。奈央の足元には白いチワワの仔犬。
   キッチンから森がコーヒーを持って来
   てテーブルに置き、奈央の隣に座る。
森「どうぞ。熱いから気をつけて」
恵「ありがとうございます」
   恵、コーヒーを一口飲んで。
恵「…奈央が退院してからもう三ヶ月かぁ。
 事故の前後の記憶はまだ戻らないの?」
奈央「うん。お医者さんはいつ記憶が戻るか
 は不明で、一生戻らない可能性もあるって
 言ってたわ」
恵「そうか。色々大変ね」
森「さしたる支障はないよ。忘れたのは僕の
 事だけだし、僕等にとって過去は重要じゃ
 ない。大切なのはこれからだからね」
奈央「そうね。出来れば私は思い出したいけ
 ど…、弘彰さんの事は全部」
   上目遣いで森を見る奈央。恵、苦笑で。
恵「ご馳走様。あんまり見せつけないでよ。
 退院してすぐ同棲始めちゃうし。奥手の奈
 央に森さんみたいな素敵な彼氏がいた事も
 びっくりだったけど」
奈央「入院の時も色々彼が世話してくれて、
 すごく優しいし、頼れるし、この人がつい
 てくれていたら安心だなって思ったの」
恵「そもそも2人はどうやって知合ったの?
 森さんはまだ学生なんでしょ?」
森「うん、僕達の出会いは半年前、僕が奈央
 の働いてる銀行に行って、そこで窓口にい
 た奈央に一目惚れしたのが最初だ」
恵「それで…?」
森「初めは僕の片想いだった。何とか奈央と
 知合いになりたくて毎日銀行に通ったよ。
 その後、ペットショップで奈央と偶然会っ
 て、そう、ちょうどこの子の前でね」
   森に頭をなでられクゥ〜ンと鳴く仔犬。
森「僕はこの子を買い、奈央に名付けてもらっ
 た。それがきっかけで奈央と仲良くなり、
 つきあう事になったという訳さ」
   優しい笑顔で奈央を見つめる森。少し
恥ずかしそうに微笑む奈央。
恵「じゃあ、この仔犬が2人の愛のキューピッ
 ドだったのね。いいなぁ。私もそんな出会
 いがないかしら」
奈央「めぐは高遠さんのこと気にいってるん
 じゃなかったの?」
恵「そうだけど、たまには私も誰かにそんな
 風に片思いとかされてみたいのよ。自分ばっ
 かり好きでも時々空しくなるっつーか」
森「他の誰かじゃ替りになんてならないよ。
 片想いでもいいんじゃないかな、本当に好
 きならきっとその想いは通じるから」
恵「だといいんだけど。…じゃ、奈央、また
 ね。お邪魔しました」
奈央「うん、また遊びに来てね」
   奈央、恵を送りに行く。
   壁に飾ったパネルには、TDLや海を
   バックに楽しげに映る奈央と森。

○マンション近くの通り(夕)
   森と奈央、手をつないで歩いている。
   森、反対側の手にスーパーの袋。
森「それじゃ、今夜は僕が夕飯を作るから、
 奈央はちーちゃんの散歩に行ってくれよ」
奈央「うん。弘彰さんのビーフ―シチュー、
 楽しみだわ」
   夕焼けに染まる2人の笑顔。

○マンション裏の高台にある公園(夕)
   奈央、仔犬のリードを引きながら呟く。
奈央「料理上手で優しくて、本当に弘彰さん
 は理想の恋人だわ。どうして出会えたのか、
 どうして私だったのか、今でも不思議」
   ふいに仔犬が段差のある所で勢い良く
   走り出す。バランスを崩し、尻餅をつ
   いて倒れる奈央。
奈央「痛ッ〜」
   立ち上がろうとして、急に頭を抱え、
その場にうずくまる奈央。

○奈央の回想・駅裏の通り(夕)
   奈央が歩いている。突然脇の小道から
   白のブルーバードが現れ、奈央、よろ
   けて倒れる。車の中から森が出てきて
   奈央を助け起こす。
森「ごめん、僕の不注意だ。怪我はない?」
奈央「…ええ」
   立ち上がるが、足首を見て顔をしかめ
   る奈央。力が入らない様子。
森「足ひねったのか?家まで送るよ、乗って」
奈央「でも…」
   森、奈央の荷物を拾い、助手席のドア
を開け、先に荷物を乗せる。
森「さあ、早く」
   奈央、ためらいながらも乗り込む。
森「じゃあ、行こうか。僕らの家へ」
   驚いて森を見る奈央。謎めいた微笑を
浮かべて、楽しむように奈央を見る森。
   走り去る白い車。

○同・ヒルサイドテラス301号室・寝室内(夜)
   閉めきった防音壁の殺風景な部屋。
   手首を紐で縛られ、ベッドの柱に繋が
   れている奈央。涙を浮かべ恐怖の表情。
奈央「私をどうするつもりなの?」
森「君はこれから、ここで僕とずっと2人き
 りで過ごすんだ。永遠にね」
奈央「そんなの許されないわ。犯罪よ」
森「いや、違うね。それを決めるのは僕だ。
 それに、そうさせているのは君だよ」
奈央「やめて、私を帰して」
森「無理だよ、君はもう僕のものだ」
   森、奈央の足に手を伸ばす。びくっと
   身体を震わせる奈央。
森「震えないで、足の手当をするだけだから」
   そっと奈央の足に触れ、シップを貼り、
   包帯を巻きつける森。
森「手はきつくない?本当は縛りつけたりし
 たくはなかったけど、そうしないと君は逃
 げてしまうだろ?」
奈央「…あなたは、どうしてこんな事を?」
森「君は僕を知らないかもしれないけど、僕
 はもうずっと君を見てきた。君も僕だけを
 見てくれ」
   森、部屋を出て行く。
   奈央、逃げようとするが縄はきつく締
   まって解けない。その場に崩れる奈央。
   無邪気に足元を走り回る仔犬。

○同・301号室前廊下(深夜)
   裸足のまま急ぎ足でそっと階段の方に
   向かう奈央。手首に、引きちぎった縄
   の切れ端を巻きつけたまま。
   仔犬が奈央について来る。
奈央「(小声で)だめ、ついてこないで」
   仔犬、首をかしげて小さく鳴く。
奈央「だめなの。あの人に気づかれちゃう」
   怯えたようにドアの方を振り返る奈央。
   と、ドアが開いて森が飛び出してくる。
奈央「ああッ!」
   慌てて駆け出す奈央、足を滑らせて階
   段を頭から転げ落ちる。駆けつけた森
   に抱きかかえられ、意識を失う奈央。

○マンション裏の高台にある公園(夜)
   周囲はすっかり暗くなっている。奈央
   の足元で仔犬が走り回っている。
奈央「嘘よ、そんな、弘彰さんが…!」
   呆然と座り込んだままの奈央。

○ヒルサイドテラス301号室・リビング内(夜)
   テーブルには料理が並んでいる。
   森、本棚の奥に隠していたアルバムを
   取り出して、ソファで眺める。
   奈央だけが映っている莫大な数の写真。
   時折、心配そうに時計を見る森。
   仔犬の鳴き声が微かに聞こえ、アルバ
   ムをしまうと、ぱっと玄関に向かう森。

○同・玄関前(夜)
   飛び出した森の前に、奈央、仔犬を抱
いて立っている。ほっとする森。
森「遅いから、何かあったのかと思って心配
 したよ」
奈央「ううん、夜風が気持ち良かったから、
 ちょっと遠回りしちゃったの」
森「そうか。夕飯の支度、出来てるよ」
奈央「もう、お腹ぺこぺこよ、私」
森「ああ。ご飯にしよう、冷めないうちに」
   森、優しく奈央の背中に手を回す。
   屈託のない笑顔を浮かべて頷く奈央。

全3ページ

[1] [2] [3]

[ 次のページ ]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事