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湘南ウォーキング

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寝室の壁には一枚カレンダーを貼ってあります。一枚カレンダーは先々の予定を練るには最適ですから。1枚カレンダーの製作は時宗青年会です。時宗の若手お坊さんの組織なのでしょう。
絵は国宝の「一遍上人絵巻」です。毎年同じ絵巻の様々な場面を使っていますので、上人の遊行の生涯を観る想いがします。
私は毎年初詣の折に新年のカレンダーを戴いて帰ります。カレンダーには時宗の年間行事も記されています。11月27日には○が書かれていて欄外に「一つ火」と案内されています。
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遊行寺の掲示板に貼られた「一つ火」のポスター。ポスターには「静寂の中火打ち石で明りが灯され、一遍上人の法灯が繋がる」の趣意が書かれています。私は「狐火」みたいな炎だなあ!直感しました。
私は「遊行の盆」には毎年参加(見物)しているのですが、「一つ火」には一度も参加した事はありませんでした。同日はワイフはお出かけ、私一人で「一つ火」を観に行く事にしました。午後3時遊行寺に入ると、本堂横にも寺務所にも「一つ火」のポスターが貼ってあります。真っ暗闇に「ボッ」と火が灯った写真です。
去年も大銀杏の黄葉を観に遊行寺に登って銀杏の実を拾って帰りました。遊行寺は大銀杏も素晴らしいし、菩提樹や白木蓮等銘木、古木が多く楽しみも多いのです。
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本堂前の大銀杏は落雷にも負けずに年々歳々春には若緑晩秋には黄葉して楽しませてくれます。
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重文の中雀門越しに観た大銀杏、寺務所前には春には牡丹秋には花茄子、初冬には写真の様に箒草が草紅葉になって楽しませてくれます。落葉掃除や庭木の手入れ草花の栽培は時宗青年会の仕事のようです。
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一遍上人像の周囲には紅葉が染まって上人を荘厳するようでした。
「一つ火」の始まるのは午後5時です。次々にお坊さんが登って来られます。屹度全国に散っている時宗のお寺のご住職が本山に集まって来ているのでしょう。良いお顔でご挨拶されています。屹度青年僧の頃に遊行寺で修行を積みこの日は久々に顔を揃える「同窓会」の様なモノなのでしょう。
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遠来の御坊様を迎える遊行寺のお坊様清々しくも爽やかな表情で居られました。
午後4時若いお坊さんが本堂に上がられ雨戸をあけて用意を始められました。
私は本堂前扉のガラス戸に顔を押し当てて本堂の中を窺がいました。
既に沢山の御坊様が集まっておいでで本堂外陣にはお檀家の方々が白い法被に絡子(らくす)を首にかけて打ち合わせをしていました。内陣と外陣の間には写真で視た注連縄が張られています。注連縄は横綱の化粧まわしの背中の様に姿で結ばれています。
私はお坊さんに訊いてみました。
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本堂の内陣と外陣の境に12本の灯心を用意し5時からの「一つ火」の開始を待つばかりになっていました。
「外陣と内陣の境に置かれているのは注連縄と考えて良いのですか?」
お坊さんは笑顔で教えてくださいました。
「あれは注連縄と云うよりは一つ火の灯心です。蝋燭の灯心と同じ役割を果たします」
私は自分の考えをぶつけてみます。
「灯心と云われても、私には横綱の化粧まわしの結び目のように見えます。土俵も注連縄で聖域と現世との境界を示すものと思えば。灯心の機能を果たしても注連縄と同じ意味と思った次第ですが・・・」
すると
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これは「一つ火」行事の写真(出典は遊行寺HP。中央の導師が本尊前の灯心に火打ち石で火を灯して。順次12本の灯心に火を移して行きます。参列者は明るくなった堂内で法悦に浸るのです。
「一つ火もお相撲も神聖な行事ですから”境界に注連縄を張る”のは自然な事です。処で今晩は冷えますから気を付けて下さいね!」
私を遊行寺の信徒と思われて、今日の宗教行事に最初から最後まで参加すると思われたのでしょう。
御坊様の期待を裏切るようですが、私は未だリハビリ中、遊行寺前から我が家に向かうバスが出ます。5時半私はバスに乗って帰路に着きました。
11月27日から今日まで3週間の間ズッと時宗に「一つ火」行事が伝わったか?考えて来ました。漸くおぼろげながらその意味も解って来たので今日ブログにアップして自分の考えを整理しておこうと思います。
【火炎土器の呪術】
今年の秋,火炎土器を観ました。観たのは糸魚川の「フォッサマグナ博物館」でした。博物館の隣が「長者ケ原遺跡」なのです。一見して長岡にある国宝の火炎土器と同じで糸魚川まで火炎土器文化圏は広がっていたのか?」思いました。一般に人類が火を使い始めたのは旧石器時代、野火を観て「焼け死んだ兎」でも食べて焼けた肉が美味しい事を知ったのでしょう。縄文時代には土器で煮焚きすれば食物の範囲が広がる事を知りました。人類が「火の利用」を始めてから、ヒトの社会文化的進化は急激に早まりました。人類は火を調理に使い、暖を取り、獣から身を守るのに使い、それにより個体数を増やし て行きました。火を使った調理は、ヒトがタンパク質や炭水化物を摂取するのを容易にしました。 火により寒い夜間にも行動ができるようになり、あるいは寒冷地にも住めるようになり、 ヒトを襲う獣から身を守れるようになった。 人類による単発的な火の使用の開始は、 20万年も前に始まるといった説が有力なようです。有名な北京原人にも火を使った痕跡が確認されているそうです。最初期は、火を起こす ことが 大変あった事から火は人間を集団生活するように促したと思われます。
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これはフォッサマグナ博物館に展示されていた糸魚川の「長者ケ原遺跡」の出土品火炎土器が出色です。
今年は先月末に亀ヶ岡遺跡や三内丸山遺跡にも行きました。どちらも縄文土器で著名ですが、火炎土器では無く縄文の名の謂れ通りで意匠は蛇でした。蛇は気持ち悪いし神秘的です。土器に蛇をデザインしたのは土器の機能(煮焚きや貯蔵)を果たしてくれるよう蛇の呪術に期待したのでしょう。
一方火炎土器はもっと直截的で、火そのものの神秘性に期待した呪術だったのでしょう。縄文時代の食糧は獣や団栗等を狩猟し採取していました。肉を食べるには火を通す事で柔らかくなるし食中毒にもならないで済みます。団栗や栃の実は茹でる事で毒や灰汁が抜けます。貝は茹でる事で死貝と生貝を区別できます。火を通せば消化もし易くなります。火の活用で食物の範囲は拡大しましたし、暗闇も火の灯りで恐怖感を消し去れます。
陸奥の「縄文土器」よりも越後の「火炎土器」の方が類感呪術としてもストレートで解り易いのです。
【火を分ける事の民俗的意味】
縄文人は竪穴住居に住まい中央に火を焚き家族は火の回りに集って食事をし暖を取り灯りとしていたでしょう。火の回りに集えば安全であり食事もとれたのです。近世の囲炉裏も縄文時代に始まったと思われます。縄文時代には囲炉裏の周りに集まっては食物は均等に分けて食べていたのでした(原始共産制)。だから日本民族は火を大事にしてきたのです。火を粗末に扱ったり火遊びする者は厳しく咎められてきたのでした。
火の伝統は宗教の世界では「法脈」として尊重されてきました。高野山の弘法大師を照らお灯明は絶対に一瞬たりとも消しません。
民俗の世界でも大切に扱われてきました。本家からは「分家」が出来る時には本家の火を分家に分けました。一般に「竃の火を分ける」と云いました。私の生家でも「火鉢の灰」でさえ、庭の焚火の残り火や灰では駄目で秋葉様のお札に守られた台所の火や灰を種火(灰)として使っていました。法事でも蝋燭や線香の火はを百円ライターで点けずに本尊前の蝋燭の火を種にして使い回ししていました。種火は本堂の須弥壇上に置いたマッチで点けました。マッチを擦る動作は火打ち石を打つ動作と似ています。
「同じ釜の飯を食う」とは絆を固める場合に良くする事ですが「正確には「同じ火で煮炊きしたモノを食べる」事で民俗的家族的団結を強くする意味です。
【時宗にだけ一つ火が続いた訳】
火を大切にする信仰や習俗は連綿と続いてきたのですが、現代では薄れて来ました。「秋葉様」や「愛宕様」と云えば火の神様ですが今ではすっかり忘れ去られてAKB48の方が馴染みです。
ガスや電気が普及して火の管理が楽になった事も一因でしょう。
でも、火の恩恵は旧石器時代も現代も基本的には変わりません。阪神大震災や糸魚川火災の時だけ「火の怖ろしさ」に気付くだけです。
でも焼け跡を観ると気付きます。人間の欲望の的の建築物も財産も跡形も無く灰になって消えてしまっています。仏教は因果律を大事にします。欲望があるから解脱出来ないと説きます。時宗では一切合切阿弥陀如来に託すこと教えにします。欲望を消滅し切って、阿弥陀に心身を委ねる事に通じるように思うのです。一遍上人は熊野に於いて宗教人としての確信を得ます。
熊野は火祭りで有名な聖地です。時宗が火を重んじるのは宗祖以来の伝統です。
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『一遍上人絵巻』一遍一行、「右から4人目右の3人は超一(奥様)超二(娘)は熊野の「中辺地」で熊野権現の化身であった僧に出会う。左の山から降りてきた一行が熊野権現(出典遊行寺発行一遍上人絵巻。
何時かは一つ火行事の始終を遊行寺の本堂で観たいものです。後ろ髪を引かれる思いでバスに乗り込んで家路に着きました。




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