|
いきのをに おもへるわれを やまぢさの はなにかきみが うつろひぬらむ
(万葉集巻7-1360)
上は好きな万葉集の中でも特に好きな歌です。作者は解らず、凡人男性が強い恋心を抑えられず、季節的に咲いていた「やまぢさ」にかこつけて恋情を伝えたのでしょう。「山ぢさ」については諸説あって万葉文学者の矢富巌夫氏は「いわたばこ」を主張されています。「エゴノキ」「チサ」等の説もあるようです恋の悩む心は何時の時代も抒情歌のテーマでした。何の花が恋する心情を吐露するのに相応しいかで判断するのが良いでしょう。私は断然「岩煙草」派です。毎年梅雨に入ると鎌倉に「やまぢさ」を観に出かけます。最高のポイントは建長寺から半増坊に抜ける正統院の石積みに咲くやまぢさであり、長谷寺の石垣に自生した花です。今年も「やまぢさ」を観たいと東慶寺に6/8日/金に出かけました。
これは矢富巌夫氏の著「万葉花/日本リプロ社」の「山ぢさ」のページです。
北鎌倉駅周辺は紫陽花見物の観光客でごった返しでした。東慶寺の裏山は総じて「鎌倉石」という名の砂岩でできています。砂岩とは名の通り海岸に堆積した砂が地底に沈んで地圧で巨大な一枚岩になったモノです。私の生家の竃も鎌倉石で出来ていました。加工が容易で、火に強いのが長所です。東慶寺裏山の西端には鎌倉石の石切り場も残っています。(鎌倉市台)この特徴が「山ぢさ」の生育には最適なのです。「山ぢさ」の根は鎌倉石の隙間に張って水を吸い上げ、他の陽日性植物が生育出来ない事を良い事に鎌倉石の表面に群生します。
東慶寺の裏山の巨大な一枚岩の表面を覆った「岩煙草」の群生
場所は墓地の入口ですからお地蔵様が祀られています。岩煙草が向背です。
古代の万葉人は「山ぢさ」と呼んだのに対し現代人は巨大な葉に眼を奪われて「岩煙草」と呼びました。煙草と云っても葉にニコチンが含まれている訳ではありません。葉が大きくて形が扁平で煙草の葉に似ているだけです。私は葉よりも花が五弁でお星さまの形なので「織姫花」なんて言うのが相応しいと思うのですが。
岩煙草の花は星形です。下から見上げると可愛らしさが強調されます。
今年は咲き始めが早かったようでもう散り始めました。散ると道路に金平糖が散ったように綺麗です。
墓地に入れば岩煙草の見所が数多くあります。開基「覚山尼」の墓所を始め歴代住職の墓は岩煙草が群生した櫓に在ります。
東慶寺開基の「覚山尼」の墓所の櫓の岩肌にも山ぢさが群生しています。
東慶寺歴代住職墓地の大岩にも岩煙草が群生しています。
岩煙草の花を愛でてから本堂裏の「いわがらみ」の花を観に廻りました。
東慶寺本堂裏の岩がらみの花、開花中は特別に本堂の回廊を公開してくれるので観る事が出来ます
岩がらみは額紫陽花に似た花です。東慶寺本堂裏と松ヶ丘文庫石段の脇に自生しています。
以前岩がらみを此処に植えた経緯を訊きました。何でも昭和の初めにお檀家の方がこの大岩には「岩がらみ」が適当だ、と判断して一株植えられたのだそうです。東慶寺のお檀家になれる人は特別な人です。インテリだったり芸術家であったり一流企業の創業者であったりしなければお檀家になれません。植物の性質にも明るい人が植えられたのでしょう。そう想うと箱根強羅白雲洞茶室の縁先の巨岩にも岩がらみが自生しています。
箱根白雲堂茶室の岩は真っ黒い安山岩ですから、此処東慶寺の鎌倉石の方が岩がらみの花も美しく見栄えも良い様に思えます。茶人・鈍翁も東慶寺の岩がらみを観たら「負けた!」言って悔しがることでしょう。
ブログランキングに参加しています。
応援クリックお願いします。 ↓
|
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2018年06月14日
全1ページ
[1]
全1ページ
[1]




