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「ざまを見ろ、髪長彦め。こうして置けば、貴様たちは、モンクレール ダウン一月とたたない中に、ひぼしになって死んでしまうぞ。何と 己様 ( おれさま ) の計略は、恐れ入ったものだろう。」と、手を 拍 ( たた ) いて土蜘蛛の笑う声がしています。
これにはさすがの髪長彦も、さては一ぱい食わされたかと、一時は口惜しがりましたが、幸い思い出したのは、腰にさしていた笛の事です。この笛を吹きさえすれば、 鳥獣 ( とりけもの ) は云うまでもなく、 草木 ( くさき ) もうっとり聞き 惚 ( ほ ) れるのですから、あの 狡猾 ( こうかつ ) な土蜘蛛も、心を動かさないとは限りません。そこで髪長彦は勇気をとり直して、吠えたける犬をなだめながら、一心不乱に笛を吹き出しました。 成程、さう云ふ中に、山科も通りすぎた。それ所ではない。何かとする中に、関山も後にして、 彼是 ( かれこれ ) 、 午 ( ひる ) 少しすぎた時分には、とうとう三井寺の前へ来た。三井寺には、利仁の懇意にしてゐる僧がある。二人はその僧を訪ねて、 午餐 ( ひるげ ) の馳走になつた。それがすむと、又、馬に乗つて、途を急ぐ。行手は今まで来た路に比べると遙に人煙が少ない。殊に当時は盗賊が四方に横行した、物騒な時代である。――五位は猫背を一層低くしながら、利仁の顔を見上げるやうにして訊ねた。 「まだ、さきでござるのう。」 利仁は微笑した。 悪戯 ( いたづら ) をして、それを見つけられさうになつた子供が、年長者に向つてするやうな微笑である。鼻の先へよせた 皺 ( しわ ) と、眼尻にたたへた筋肉のたるみとが、笑つてしまはうか、しまふまいかとためらつてゐるらしい。さうして、とうとう、かう云つた。 露柴はさも 邪魔 ( じゃま ) そうに、時々 外套 ( がいとう ) の袖をはねながら、快活に我々と話し続けた。如丹は静かに笑い笑い、話の 相槌 ( あいづち ) を打っていた。その内に我々はいつのまにか、河岸の 取 ( とっ ) つきへ来てしまった。このまま河岸を出抜けるのはみんな妙に物足りなかった。するとそこに洋食屋が一軒、 片側 ( かたかわ ) を照らした月明りに白い 暖簾 ( のれん ) を垂らしていた。この店の噂は保吉さえも何度か聞かされた事があった。「はいろうか?」「はいっても 好 ( い ) いな。」――そんな事を云い合う内に、我々はもう風中を先に、狭い店の中へなだれこんでいた。 店の中には客が二人、細長い 卓 ( たく ) に向っていた。客の一人は河岸の若い衆、もう一人はどこかの職工らしかったモンクレール ダウン。我々は二人ずつ向い合いに、同じ卓に割りこませて 貰 ( もら ) った。それから 平貝 ( たいらがい ) のフライを 肴 ( さかな ) に、ちびちび 正宗 ( まさむね ) を嘗め始めた。勿論 下戸 ( げこ ) の風中や保吉は二つと 猪口 ( ちょく ) は重ねなかった。その代り料理を平げさすと、二人とも 中々 ( なかなか ) 健啖 ( けんたん ) だった。 |

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