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「キサトア」 小路幸也・作 文春文庫
この方のファンタジーは、全編を通して穏やかに温かい空気が流れていると思います。
その雰囲気が凝縮されているのが、このお話ではないでしょうか?
主人公は小学生だけれど造型では世界的に有名なアーティストのアーチ。
幼い頃はまだ色を識別する事ができましたが、今は色盲状態です。
お母さんは亡くなっていて、お父さんと双子の妹との4人家族。
お父さんは風のエキスパートとして、風等から自然を読み解くエキスパートですが、双子の妹達の為に仕事をちょっと変えています。
というのも、双子のキサとトアは同じ時間に起床していられないのです。
キサは太陽が出ている間しか起きていられず、トアは太陽が沈んでいる間しか起きていられません。
2人をそれぞれ一人っきりにしておくわけにもいきませんから、アーチとお父さんは交代で起きていなければいけません。
元々、今住んでいる町で風のエキスパートとして素晴らしい仕事をしたお父さんが、キサとトアのためにいいのではないか、とこの町に越してきたのですが、物語の始まりでは、その仕事の所為で別の所に弊害ができているのではないか、風のエキスパートが自然を読み間違えたのではないか、という疑いをかけられてしまっていたのです。
それを調べる為に水のエキスパートがやってきます。
エキスパートは世界でもとても少ないので、お互いを尊敬しあっています。
水のエキスパートのお兄さんもアーチの周りの人たちと同じ様にキサとトアを大事にしてくれます。
お父さんの仕事は間違ってないよね?
キサとトアとお父さんと4人で、いつか一緒の時間を過ごせるよね?
そんなアーチの気持ちは伝わるのでしょうか?
本当に温かく、優しいお話です。
お父さんの仕事の事で町の一部の人がお父さんを疑っている、という時の描写も、決してきつすぎず、かといって迫力がちゃんと伝わってくる素敵な文章で表現されています。
今の日本人が大事にしなくちゃいけない感性が描かれているお話だと思います。
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