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「仮想儀礼」 篠田節子・作 新潮文庫
さすが篠田節子さんですね。
途中でもう嫌だ、続きを読むのが怖いというか、苦しい、って思うのに、つい先が気になってしまって、最後まで一気に読みきってしまいました。
現代を生きる日本人と新興宗教の関わりの描き方が、本当にありそうだと思えるくらいの迫力で迫ってきます。
東京都の公務員だった主人公の男性は、実はゲームの原作を書くなど、副業をしていました。
本当は公務員の副業は許されていないので、プロとしてやっていこうと編集者に持ちかけられて、妻にも相談せずに公務員を辞めてしまいます。挙句、プロ第1弾になるはずだった作品がほぼできた時、プロダクションが倒産。編集者との口約束だけだった為、何の保証もされず、彼はいきなり無一文になり、その状況を知った妻に離婚されてしまいます。
ある夜、逃げた編集者を街で見かけ、無理矢理自宅に引きずり込んで文句を言おうとしたら、彼もある意味被害者で、ホームレスになっていました。
仕事のない者同士がぐちゃぐちゃ呟き合って、自分のできる事をつき合わせていったら、「宗教を立ち上げよう」ということになってしまいました。
教祖は主人公、もう1人は最初は雑務を引き受けていました。ちょうど書き上げかけていたお話がチベット密教をベースにしたものだった為、頭の中に色んな呪文やら仏教の言葉が主人公の中に残っていたのです。
HPや仏像制作はもう1人が担当しました。すると、HPのアクセスが増え始め、マンションの1階を買い取って道場らしき物を作ると、信者が集まってくるようになりました。
主人公は時に気味悪がったり、せせら笑ったりしながらも、続々と集まってくるその状況に飲み込まれていきます。
そして、中小企業のオーナー社長がスポンサーとなって、建前は中小企業の持ち物ですが、実際は道場という場所を掴み、関西にまで進出するようになりました。
その絶頂期から、突然転がり落ち始めます。
主人公は新興宗教に嵌る人達を内心では馬鹿にしていました。
馬鹿にしていないまでも、ここで自分達の宗教に染まりすぎるのを嫌がっていました。
だから、出家はさせない、なるべく家族に理解してもらって通うように、辞める者は追いかけない、棋譜もできる範囲で構わない、強要しない、という方針でした。それが余計に信者を増やしたところであり、嵌っていく人達にとっての不満で、時に内部対立を起こします。
ですが、彼の意向とは別に、本当に嵌っていく信者達がいて、親族が奪還しようと周りを煽り立てます。
読めば読むほど、現代の日本にありそうな話です。
本当は教祖に当たる人達はこういう冷静な計算をしているのではないだろうか、とも思います。
それ以外の「嵌っている人」、「嵌めた人」の怖さが赤裸々に描かれていて、気持ち悪くて読んでいられない瞬間も何度もありました。
でも、それ以上の力でぐいぐいと話に引き込まれて、読み終えた時、物凄くほっとしました。
余りのパワーの強さに、正直、しばらくあの本は手に取りたくありません。
色んな意味で強くて、怖くて、素晴らしい作品です。
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