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晩春の陽にあたためられた大地から、豊潤な樹液を吸い上げて、山はみどり一面に染め上げられて多彩だ。
早朝から公園のあちらこちらで、グラウンド・ゴルフに興ずる人々の小高い声が聞こえる。山の稜線を越えて、いのちを育むやさしい風が吹いている。たんぽぽが咲きレンゲが咲き、草花という草花がすべて花開き、つじが満開に咲き乱れている。ひたすらに咲き、いのちが咲き満ちている。移り行く季節の彼方から、山に野に草原にいのちあふれる風が吹いている。
晩秋の陽にあたためられた公園のまん中に立って、思い切り両手を差し伸ばす。少年のように、瞳を上げて大空に向かって呼びかける。緑の風が体の中を駆けめぐる。今日生きてここにある確かな手ごたえ。
「あ〜あぁ〜、やんなっちゃった」でお馴染みの漫談家の牧伸二さんの投身自殺というニュースが入った。燃え尽きたのか。78歳だった。
警視庁の調べでは、高齢者の自殺がここのところ連続して毎年一万人を越えているという。未遂や途中で思いとどまった人の数を入れると、自らの手で死出の道を選んだお年よりは、おそらく4万人をはるかに越えるだろうと推測されている。弱肉強食の修羅の巷の中で、あたかも一個の廃品とみなされながら生き続ける老人のうめき声が、低くどよめきながら地を這うように聞こえてくる。
幾多の苦難と辛酸の道を歩み続けた老人の晩年がこれほどまでに暗くていいものだろうか。すがりつく一筋の光明をどこに求めたらいいのか。人生は重い荷物を背負って遠い道を往くものだと知り尽くした老人の自死にどう向き合っていったらいいのか。干天の大地にふりそそぐ一滴の雨水のような命の潤いは求むべくもないのか。
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