愛と勇気vv

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(多分)去年ヒロシマの平和公園に行った時に、
朝鮮人被爆者の慰霊碑に供えてあった色紙です。

とっさに撮ったので小さくしか撮れなくて、字が読みづらいのですが、
有羽ちゃんが読む限りだと、こんなことが書いてある気がします。

私の願いは
世界中のすべての人が
気持ちのいい朝を
むかえて
爆撃や戦闘機の音を
聞かずに
安心して生活し
夜ねるときに
大切な人に
「おやすみ大好き」
っていって眠れること
難しいけどかなえたい



その日も朝から、じんじんと太陽が照りつけ気温が上昇していた。
1945年8月6日朝、広島――。

咲枝と友子は15歳の女学生だ。
今日も、疲れた足をひきずって勤労動員の工場に向っていた。

「友ちゃん、最近少し痩せたんじゃない?」

「うん、昨日からほとんど食べてないんだ。うちは小さい弟や妹がいるから、食べさせなきゃならないでしよ。だから、お母さんと私の分はどうしても少なくなっちゃう」

「だったら、お弁当、私のを一緒に食べよっ! 今日もたくさんごはんつめてきたよ。友ちゃんの分もあるよ」
「ありがとう、咲枝んちは一人っ子だし、農家に親戚もあるから大丈夫だね」
「困ったときはお互いさま。私たち友達でしょ」

咲枝が明るい笑顔で痩せた友子を励ます。
友子も弱々しく笑う。

女学生といっても学校の授業などとっくにない。
もう、半年も工場通いが続いているのだ。

本来なら未来の希望溢れる青春を楽しんでいるはずなのに、
若さにはちきれんばかりの時期を、戦争に捧げているのだ。

工場の門が見えてきた。
「ああ、今日も暑くなりそう」

「それにしても、この戦争いつまで続くんだろう」

「日本はどうなるのかしらね」

若い娘たちは大きなため息をつく。

「戦争が終わって平和になったら、友ちゃんは最初に何する?」

「私? う〜ん、とりあえずお風呂に入りたい。空襲の心配もなくゆっくりお風呂に入って、そしてお腹一杯食べたいな。咲枝は?」

「私は本を読みたいの。マーガレットミッチェルの『風とともに去りぬ』、日本には来なかったけど映画も観てみたい」

「敵国の映画や小説は禁じられてるから、早く読める日が来てほしいよね」

咲枝と友子は顔を見合わせて頷きあった。

「おはよう!」
「おはよう!」

二人を追い越して、もんぺ姿の女学生たちが朝の挨拶を交わして工場の門に入っていく。

午前8時――。

号令がかかり、整列した白鉢巻姿の生徒たちは、遥か東方に向って頭を下げる。
天皇のいる東京を遥拝するのだ。

やがて機械が回り、作業が始まって数分後――。

午前8時15分。

広島上空に達したアメリカ爆撃機B29から、原子爆弾が投下された。

リトルボーイと名づけられたその爆弾は、投下後、約1分で爆発地点に到達した。
それは、今日”原爆ドーム”と呼ばれている建物の上空580メートルに達した時爆発した。

閃光が走り、工場は爆風と轟音に包まれた!

一瞬にして、建物は崩れた。

「きゃ〜〜!」
作業中の女学生たちは、爆風で吹き飛ばされた。
強い熱線が辺りをたちまち焼いた。

一瞬のことだった。
そしてあたりは地獄絵と化した。

咲枝は足を、金属で挟まれていたがまだ息があった。
隣では友子が顔中血だらけで倒れていた。

「友ちゃん、友ちゃん!」

いくら呼んでもぴくりとも動かない。
殆どのものが死んでしまったのか。
無残に歪んだ顔、顔、顔……。

「うわ〜〜〜!」
咲枝は思わず号泣した。

さっきまで、生きていた友達。
さっきまで話をしていた友達。
みんな頭から血を流して息絶えていた――。

生き残った咲枝のすぐ近くまで炎が迫っていた。
足を挟んでいる金属は全く動かない。
(このまま私も死ぬんだ)

「おとうさん、おかあさん……」

(熱い、熱い、どうしてこんなに熱いの)

ようやく片方の手が自由になった。
その手を見て咲枝はぎょっとした。
皮膚が全部むけて真っ赤に爛れているではないか。

しかし、不思議に怖くはなかった。
幼い頃の平和な夏祭りの光景が目に浮かんだ。
浴衣を着せてもらって両親に手をひかれて夏祭りに行った5歳の夏。
走馬灯のように、それはぐるぐると回った。

やがて紅蓮の炎が咲枝を包んだ――。


その頃、市電に乗って出勤途中だった咲枝の父は、やはりこの悪魔の兵器で一瞬に黒こげ死体と化していた。
走行中の電車は、黒煙をあげながら、まだ惰性で線路の上を走っていた。
運転士は、ハンドルを握ったまま、座席に腰かけてる人はそのままの姿で、
そして、咲枝の父はつり革に掴まった立ち姿のままで死んでいた。
死者を乗せたまま、電車はまだ走っていた――。

爆心地から2キロ圏内にある咲枝の家も倒壊していた。
庭に、たらいを出して洗濯していた咲枝の母は、原爆投下の瞬間、思った。
(きらきら、太陽がもうひとつ光ってる……)
しかし、次の瞬間、無残に爆風と熱線でやられて地面に叩きつけられた。
仲の良い3人家族は、それぞれの場所で息絶えていた――。


終わり  作、はるか


(あとがき)
原子爆弾は、爆風と熱の形で凄まじいエネルギーを発生した。さらに、人体に悪影響を与える放射線(ガンマ線と中性子)を大量に発生した。

リトルボーイを見た人々はよく「爆発の時、空にもう一つの太陽が現れたようだった。」と言った。リトルボーイが生み出した熱と光は、今までの爆弾とは比べ物にならないくらい強力だった。熱線が地上に到達したとき、人間を含め全てのものが焼かれた。

原爆による爆風は半径2km以内の家と建築物のほとんどを破壊した。山によって反射された爆風が再び市の中心部にいた人たちを襲った。リトルボーイによる爆風は町と人々に最も深刻な被害を与えた。

原爆による放射線は人々に長期間にわたる問題を引き起こした。放射線にさらされた多くの人々は最初の数カ月あるいは数年で亡くなった。またある人は遺伝子に問題が起こり、障害を持つ赤ん坊が生まれたり、子どもを持てなくなったりした。

その年の終りまでに140,000人以上の人たちが亡くなったといわれている。それらの人々は一般市民であり、学生や兵隊、町の工場で働かされていた韓国人なども含まれている。原爆のために亡くなった人の総計は200,000人と推定されている。
(資料は、AーBomb WWW Museum)
(市電の写真は、撮影:中田佐都男)

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