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公園に、夜桜見物に行くと、すごい人出であった。
金曜日の夜だけに、役所関係の人や、サラリーマンらしき人ばかりで、さすがに子供の姿は少なく、出店は閑古鳥が鳴いていた。
花冷えとはよく言ったもので、夜風が冷たくて、我々ドライバーは、アルコールが飲めないので、ウーロン茶ばかりチビチビとやっても、場は盛り上がらないし、体は暖まらないし、つくづく石油ストーブを持って来るべきだった、と感じたものである。
そんな中で、心温まる光景と言えば、ばあちゃんやじいちゃんを、その息子や娘らしき人が、車椅子に乗せて、桜を見せてやっている姿である。
親孝行だなあ、と感心していると、もっと上を行く人達がいた。
何と言う名前かは知らないが、よくプールサイドで、水着の女性が寝そべっている、シートと言うのかベッドと言うのか、
分厚い布団をかけたじいちゃんを寝せたそれを、大人五、六人で運んできて、公園のど真ん中に置いた。
じいちゃんは、分かっているのかいないのか、ポカンと口を開けて、じっと桜を見上げているだけであった。
恐らく、このじいちゃんにとっては、最後の、いやずーっと長生きして、来年も是非来てほしいものである。
そんな中、横の方で、見覚えのあるオヤジが、酔っ払って大声を上げていたが、その話が、興味深いものだったので、そこら辺りのみんなが、会話をやめて聞き入った。
「この時期、桜の花の下でするのが、一番気持ちんよかぞ」
誰かが、手に持ったコップに酒をつぐと、それを飲み干してから続けた。
「女に桜の木に手を付かせて、立ったままバックから攻めるんたい。そしたら、腰を使うたびに、桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちて、そりゃあ風流なもんばい」
聞き手のみんなが、ヘラヘラと卑猥に笑うと、更に調子に乗って、こんな事をいった。
「去年なんか、一戦交じり終えた時には、花びらが全部舞い落ちて、一枚も残ってなかったぞ」
このオヤジに、そんなパワーがあるとは思えない、何の病気か知らないが、タクシーで病院通いをしているのに、花びらが全部舞い落ちるどころか、二、三枚舞い落ちた頃には、自分の命が舞い落ちているかも知れない。
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