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愛情55
はじめて抱き寄せられて、女の存在がふわりと浮いて、
なにもかも、男のなかに崩れ込むあの瞬間。
五年、十年、三十年たっても、あの瞬間はいつも色揚げしたやうで、
あとのであひの退屈なくり返しを、償ってまだあまりがある。
あの瞬間だけのために、男たちは。なんべんでも恋をする。
あの瞬間だけのために、わざわざこの世に生まれ,めしを食ひ、生きて来たかのやうに。
男の舌が女の唇を割ったそのあとで、おんなのはうから、おづおづと、
男の口に舌をさしいれてくるあの瞬間のおもひのために。
これらの春画は、金子光春の義弟、河野密氏が所蔵していた
大きさはタテ18cm、ヨコ12cmの画帳で12枚つづり。
制昨年は不明だが、敗戦前後と考えらている。
女への辧
女のいふことばは、
いかなることもゆるすべし。
女のしでかしたあやまちに
さまで心をさゆるなかれ。
女のうそ、女の気まぐれ、放埒は
女のきものの花どりのやうに
それはみな、女のあやなれば、
ほめはやしつつながむべきもの。
盗むとも、欺くとも、とがめるな。
人目をぬすんで、女たちが
他の男としのびあふとも、妬んだり
面子を振り廻したりすることなかれ。
いつ、いかなる場合にも寛容なれ。
心ゆたかなれ。女こそは花の花。
だが、愛のすべしらぬ偽りの女、
その女だけは蔑め。それは女であって女でないものだ。
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古い書棚より
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