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 入管法改正案をめぐって掟破りの国会運営を繰り広げて衆院で法案を強行採決したばかりの安倍政権が、またも暴走して重要な一線を越えた。今国会初となる衆院憲法審査会の開催を、野党の合意なく自民党・森英介会長の職権を濫用して強行したのだ。

 これは異例中の異例のことで、前代未聞と言っていいほどの暴挙だ。というのも、憲法審査会はその名の通り憲法という国の基礎となる最高法規を議論する場であるため、他の委員会とは違い与野党協調を重視し、与党と野党の合意の上で開催してきた。にもかかわらず、野党が出席を拒否するなかで一方的に与党は開催を決めたのだ。

 そもそも、11月17・18日に朝日新聞がおこなった世論調査でも、9条への自衛隊明記などの自民党改憲案を今国会で提示することについて、「急ぐ必要はない」と答えた人は70%にのぼり、「今の国会で提示するべきだ」と答えた人はわずか20%。国民の多くが「急ぐ必要なし」と言っているものを無理矢理議論する理由はないのである。

 だが、与党は憲法審査会の開催を強引に迫り、野党がこれを拒否したところ、自民党の憲法改正推進本部長であり憲法審査会の幹事に就任する予定だった下村博文・元文科相が「職場放棄だ」とテレビ番組で暴言を吐くという問題が勃発。これを受けて自民党は下村元文科相を幹事と委員から辞退させた。

 暴言を吐いた結果として自民党が幹事と委員から下村元文科相を外したのは当然の話だ。しかし、自民党はこの当たり前の処置を“これで問題は解決した”と言わんばかりに盾にして憲法審査会を開催しようと画策。先週も、与党は同審査会の幹事懇談会を勝手に開こうとした。幹事である立憲民主党の山花郁夫議員によると、与党が示した懇談会の開催時刻はちょうど幹事メンバーの国民民主党・階猛議員は法務委員会の質問に立つ時間と重なっており、この事実を与党側は把握しながら懇談会をセットしようとしたというのである。

 その上、この日、与党は野党欠席を理由に懇談会ではなく「打ち合わせ会」として開催したが、メディアにテレビカメラ入りの取材を許可し、“いかにも野党は出てきていない、といった演出をしたと報告があった”と山花議員は指摘している。

 ようするに、与党はこうして「野党が議論を拒否するから進まない」という“印象操作”をおこなうことに必死になっているのだ。

 そして、これこそが安倍首相の、憲法改正に向けた“作戦”であることは間違いない。
 
 すでに今国会の会期末まで10日ほどしか残されておらず、憲法審査会の定例日もあと1日だけ。そのため安倍自民党は今国会で改憲案を国会に提示するのを断念したと伝えられている。だが、これは何も野党の反発を謙虚に受け止め、慎重に議論を進めようとしているわけでもなんでもない。むしろその逆で、「議論しようとしない野党は職場放棄だ」「野党はまた対案を出さないでゴネている」という印象付けを広めることによって憲法審査会での議論が必要という大前提を空洞化させようとしているとしか思えないのだ。

 現に、通常国会閉会直前には、首相周辺から「憲法審で議論がまとまらない場合は、改憲案を独自に(国会に)提出してしまえばいい」という暴論が出始めたという(朝日新聞7月22日付)。安倍首相はこうした意見に乗り、憲法審査会での議論をすっとばす“強行論”を実行するために「議論しない野党が悪い」という空気をつくり出し、その上で来年の通常国会で改憲案を国会に提示しようとしているのではないか──。


「野党が悪い」の大合唱を盾に、改憲の国会発議強行を狙う恐怖シナリオ


 実際、すでに安倍応援団たちはこのプロットに沿った“煽動”をはじめている。たとえば、フジテレビ解説委員の平井文夫氏は、こんな主張を展開している。

〈そこ(憲法審査会)に出てこない野党は、職場放棄以外の何物でもない、と思う。
 職場放棄する国会議員に、なぜ我々の税金が、支払われなければならないのか〉
〈だから自民党は、最後は憲法審査会で、出席している議員だけで、憲法改正案を採決し、可決されれば本会議に送る。そして衆参で2/3で可決されれば、粛々と国民投票にかければいい、だけの話だ〉(FNN.jpプライムオンラインより)

 繰り返すが、憲法はこの国の最高法規だ。そして、国民から「改憲を急ぐべし」などという大きな声はまったく起こっていない。だというのに、平井解説委員は「野党は職場放棄しているのだから、強行採決してしまえ」と主張しているのである。憲法の重みも国会の存在意義も国民の意見も無視した暴論だ。

 だが、どうだろう。これまで法案が強行採決されるたびに、法案の問題点や国会審議をしっかり伝えることもなく安倍応援団たちが「野党は対案を出せ」とがなり立ててきた結果、すっかり国民にもその意見が浸透してしまった。一方、任期中の改憲にこだわる安倍首相にとっては、憲法審査会での与野党協議をすっ飛ばし、国会議員によって改憲案を国会に提出し強行採決を繰り返して国会発議にもっていくことが最短距離となるが、そこで国民から拙速だという反発が起こることは避けたい。そのためには「野党が悪い」論は必要不可欠なのだ。

 実際に、今日の衆院憲法審査会の強行開催についてのメディアの伝え方は、これが暴挙であるという説明もなく、「野党が出席拒否」という部分を強調していた。このままでは、野党バッシングを利用した改憲のための“恐怖のシナリオ”が現実化してもおかしくはないだろう。

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