夕闇千鳥のお勉強日記

生物学、心理学などを中心に・・・

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入試問題にほえろ!

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図はヒトのある遺伝子的疾患に関して調査された家系図である。問題の遺伝子は非常にまれなものであるとして、次の問に答えよ。

問1 この遺伝子は(1)常染色体、(2)X染色体、(3)Y染色体のうち、どの染色体上にあると考えられるか。

問2 この遺伝子的疾患の遺伝子は正常な対立遺伝子に対して(1)優性、(2)劣性、(3)不完全優性、のどれであるか。

問3 家系図の世代Iの両親a,b,c,dの考えられる遺伝子型を書け。

問4 eの男性が近縁関係に無い正常な女性と結婚した時、第一子が発病する確率を求めよ。

問5 fの女性が近縁関係に無い正常な男性と結婚した時、第一子が発病する確率を求めよ。

問6 この例と同様な遺伝的疾患を1つあげよ。


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メンデル遺伝をする遺伝病の家系図の読み方だな・・・

メンデル遺伝をする遺伝病には、(1)常染色体優性遺伝 autosomal dominant、(2)常染色体劣性遺伝 autosomal recessive、(3)伴性劣性遺伝 X-linked recessiveがある。
(X-linked dominant伴性優性遺伝の疾患はすごく少ない。「ビタミンD抵抗性くる病」という遺伝病くらいなんだ・・・)

常染色体優性遺伝だと、変異を起こした遺伝子を持っていることで、病気が出てしまう。
(もっとも、現実の世界では、変異遺伝子を持っている事で必ず100%病気が出るとはいえないんだ。 つまり、変異遺伝子を持っている場合、何%が「病気」が出てくるかというのを浸透度 penetranceといって、これが100%の病気もあれば、50%くらいのものもあるんだ。 ただ、高校生物学のレベルでは、そこまで考えると面倒くさくなるので、浸透度は100%だと考えて良い。)
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変異遺伝子を持っていると「病気」が出ることから、たいていは片親が変異遺伝子を持っていて、発病している。 (実際、常染色体優性遺伝のほとんどは、このパターンで、残りは両親とも健常なのに、トンビがタカを産むように突然変異で子どもが遺伝子変異を生じていることもある。)

すると、子どもは男女同率で50%の確率で、変異遺伝子を持ち、かつ発病することになる。

常染色体優性遺伝の病気は、ほとんどが発病が遅い(大人になって、結婚して、子どもを産んでからであることが少なくない)ために、親は知らずに自分の変異遺伝子を50%の確率で子どもに受け渡してしまうことになるんだ。

こうした病気には、マルファン症候群、ハンチントン病、フォンウィルブランド病、などがある。



これに対して常染色体劣性遺伝の場合は、たいていは近親結婚(あるいは非常に閉鎖的な地域であるために共通した変異遺伝子を少なからぬ確率で持っている場合の結婚)で生じる。 つまり両親ともに発病はしていないけれども、変異遺伝子を持っている状態=キャリアである場合がほとんどだ。
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その場合、子どもが「健常」である確率、キャリアである確率、発病してしまう確率が、それぞれ25%、50%、25%となる。

常染色体劣性遺伝は、そのほとんどが小児期に発病するし、結構重症であることが多いから、片親が発病していて、結婚して子どもをつくる可能性は低いのだけれども、一応、計算すると図のようになる。
つまり、片親が発病していて、もう片親が健常である場合は、子どもはみんな100%の確率でキャリアになる。
片親が発病していて、もう片親がキャリアである場合は、50%がキャリアで、50%が発病ということになる。 しかし、このようなことは確率的にはそうそうないから、現実世界ではあまり考えなくて良い。
一応、両親とも発病している場合、当たり前だが100%の確率で子どもも発病することになるが、これもほぼあり得ない組み合わせだ。

こうした病気には鎌状赤血球症、サラセミア、ウィルソン病などがある。


性染色体に変異遺伝子がある場合、そのほとんどはX遺伝子なんだ。 なぜかというと、男性のY遺伝子に変異があると、ほとんど必ず精子形成に問題を生じて男性不妊になるので、子どもができないからだ。

このため性染色体に変異遺伝子があるというのは、基本的にX-linked
であり、そのほとんどが劣性遺伝をする。 つまり、基本的にXが2つそろうことがなく、XYの組み合わせである男性に発病する。 女性の場合、たまたまものすごい運の悪い確率で変異遺伝子を持つXが2つそろってしまうことで理屈的には発病するのだが、こんなに運の悪い可能性は低いから、いわゆる伴性劣性遺伝は基本的に女性がキャリアであり、男性が発病する、というパターンをとる。
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伴性劣性遺伝のその他の特徴として、(1)発病した男性の子どもは、男の子であれば必ず健常であるし、女の子であれば必ずキャリアになる、(2)キャリアの女性の子どもは、男の子であれば50%の確率で発病、50%の確率で健常であり、女の子であれば50%の確率でキャリア、50%の確率で健常ということになる。

父親が発病している上に、母親がキャリアである可能性は、現実世界ではまず起こらない。 しかし、理屈的には可能であって、その場合に男の子であっても50%:50%、女の子であっても50%:50%の確率で発病することになる。 そして、この組み合わせでしか女性の発病(X遺伝子が超運悪く2つとも変異している)はないわけだから、現実世界では伴性劣性遺伝はまず男性だけに発病し、女性はキャリア、ということになるんだ。

こうした病気には血友病A,B、筋ジストロフィー症のデュシェンヌ型、リーシュナイハン病などがある。



さて、問題にあがっている家系図を見ると、・・・・困ったね、これは。 さっそく「現実世界ではまずない」ことが起こっている。

世代IIに注目してみよう。 ここで、極めて珍しい遺伝子変異による疾患のハズなのに「たまたま運悪く」、この疾患の家系の女性と、同じ疾患を持った男性が結婚している。

なんだよ、これ。 たまたま家族の通院につきそいっていったときに病院で知り合ったのかよ、ありえないよ、こんなの。

と、つっこみたくなるが、やめておこう。

一見すると、結構な確率で発病している人がいるから、常染色体優性遺伝のようにも見える。 しかし、それにしては、世代Iの左側の家族からはは4人の子どものうち1人しか発病していないのがへんだ。 この発病した子どもだけ、両親に何の遺伝的問題も無い中で突然変異として生じた可能性はあるが・・・

それに世代IVを見ると、発病した男性の子どもは、50%の確率で発病するはずなのに、1人も発病していない。 これも常染色体優性遺伝だとするとヘン過ぎる。

では常染色体劣性遺伝か? 世代Iの左側の家族は、両親ともキャリアだとすると、4人の子どものうち1人だけ発病しているのはいかにもだ。 右側の家族は、お母さんが発病しているのだが、もしそうなら、子どもはみんなキャリアになるはずで、そうなると、4人の子どものうち2人も発病している事実と合わなくなる。 もっとも、お母さんが発病していて、お父さんが実はキャリアだったという可能性がないわけでもない。 そうだとすると、子どもは50%の確率で発病し、50%の確率でキャリアになるわけで、この図に合っている。
しかし、もしそうだとすると、世代IIにおいても「たまたま超運悪く」発病した親とキャリアの親がまたしても結婚していることになる。 そして、その場合、やはり50%の確率で発病し、残り50%はキャリアだということになる。
もしそうだとすると、さすがに3代続いて「たまたま超運悪く」、この発病した人がキャリアの異性と結婚することは無いだろうから、世代IIIの奧さんは健常だとして、世代IIIの夫婦の子どもはみんなキャリアだということになる。

ただ、そこまで「たまたま超運悪く」が続くことは考えにくいし、わざわざ問題には「問題の遺伝子は非常にまれなもの」と言っているのでオカシイ、ということになる。


じゃあ、伴性劣性遺伝ならどうか? 基本的に伴性劣性遺伝で「たまたま超運悪く」女性が発病するなんてことは、現実世界ではまずないのだ。 だから、世代Iの右側の家系で、発病している女性がいること自体、もうオカシイ。
この女性が「たまたま超運悪く」変異遺伝子を2つ持っているX'X'だとする。 その場合、女の子はみんなキャリアになるし、男の子は全員発病するはずだ。 これは世代IIの右側の家族の図には合っている。 しかし、ここでキャリアであろう女の子がまたしても「たまたま超運悪く」同じ変異遺伝子を持つ男の子と結婚していることになる。 (この男の子は、この子だけ突然変異したのでなければ、お母さんがキャリアで、お父さんが健常ということになる。もしそうなら、この図に合っている。)
さて、発病しているお父さんと、キャリアのお母さんの組み合わせだとすると、その子はどうなるか? 男の子も女の子も50%の確率で発病し、発病していない女の子もキャリアということになる。 これは、世代IIIの図に合っている。
そして、世代IIIで発病した男の子が健常な女性と結婚したとすると、男の子なら100%健常であり、女の子なら100%キャリアになる。 いずれにしろ、発病する子はいない。 これも図の世代IVに合っている。


こうしてみると、現実世界ではまず起こらないことだが、「たまたま超運悪く」が起こったとして、伴性劣性遺伝であると考えるのが、まだマシだということになる。

そう考えると、もう問題はすべて瞬時に解けるよな。

問1は、X染色体上にある遺伝子と答えることになる。

問2は、劣性と答えることになる。(X-linked recessiveということだ。)

問3は、世代Iのお母さんはキャリアでありXX'、お父さんは健常であり、XY、世代IVの子どもたちは、男の子なら100%健常だからXY、女の子なら100%キャリアだからXX'となる。

問4は、100%健常な男の子が健常な女性と結婚するわけだから、100%健常な子どもができるはずだ。

問5は、100%キャリアの女の子が健常な男性と結婚するわけだから、子どもは男の子であれば50%の確率で発病し、女の子であれば五分五分で健常かキャリアだ。 だから男女問わず第1子が発病する悪率は25%だ。

問6は、伴性劣性遺伝する疾患をあげればいいわけだから、血友病A、血友病B、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症、などから1つあげておおけばいい。

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灰泥『でも、なんだか不適切問題ね・・・現実世界ではまず起こらないことが起こりすぎているもの・・・・』

千鳥先生『まあ、たまたますごく閉鎖的な地域で、この地域の中ではこの遺伝子変異を持つことがすくなくなかった、ということなら、まあありえなくもないのだがな・・・』

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