夕闇千鳥のお勉強日記

生物学、心理学などを中心に・・・

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腎臓の働き パートIII

腎臓の機能単位「ネフロン nephrone」の働きは、「濾過」と「再吸収」が基本でした。

今回はこの「再吸収 reabsorption」を見てみます。

すでにお話ししたように、腎臓には猛烈な量の血流が流れていき、毎日180Lくらいの濾過液が糸球体から出て行くことになります。 これをそのまま尿として失ってしまったら大変です。 そこで、その時点で身体にとって不用なものだけ「尿」として捨てて、あとは水も電解質も栄養分もすべて再吸収する・・・ということをしているわけです。

実際、糸球体から滲みだしてボーマン嚢にひろわれて尿細管に流れていく濾過液は、最初の段階ではアルブミンなどのたんぱく質がないだけで、あとの組成はほとんど血漿 plasmaと同じです(つまり、普通の組織にある間質液 interstitial fluidとほぼ同じです)。 糖やアミノ酸などの栄養分も含まれていますし、水や電解質の組成は血漿と同じです。 これらを失うわけにはいかないので、近位尿細管ヘンレのループ遠位尿細管集合管・・・とつづく尿細管 renal tubuleの中を濾過液が通過する間に、必要なものだけ再吸収していくのです。 と同時に、要らないものを分泌していくこともします。
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尿細管をつくる尿細管の上皮細胞たちは、どのようなメカニズムでこの再吸収+分泌を行っているのか?

その基本は細胞の「能動輸送 active transport」にあります。 その中でもNa/KポンプNa-K ATPアーゼという細胞膜に埋め込まれたたんぱく質が中心的な役割を果たしています。
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Na/Kポンプというたんぱく質は、以前に細胞膜の話をしたときに出てきました。 ATPによるエネルギーを使いながら、細胞内からNa+を3つかき出し、細胞外からK+を2つ取り入れるポンプです。 これによって、すべての細胞は、細胞膜の内側は外側に比較してNa+の濃度が低く、K+の濃度が高くなっているわけでした。
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腎臓の尿細管をつくる上皮細胞では、このNa/Kポンプが底面と側面に集中してあります。 これによって、尿細管というホースの外側面に向いてNa+をかき出すことになっているのです。 それと同時に、尿細管をつくる上皮細胞の内側はNa+の濃度が下がりますから、Na+の濃度の高い尿細管の内側から、濃度勾配に従って、上皮細胞の内側にNa+が入ってくることになります。

結果として、Na+の動きは、尿細管の内側(濾過液)→細胞内→尿細管の外側の細胞外液→・・・となります。

Na+が膜を通過して移動していくと、ここにNa+濃度の違いによる浸透圧差が生じます。 これによって水が引き込まれることになり、水はNa+と一緒に動くことになります。 結局、Na+は水と一緒になって最終的には傍尿細管毛細血管の周囲をとりかこむ間質液となり、この間質液は普通の毛細血管が間質液を吸い込むのと同じメカニズムで(つまり毛細血管の内側にだけある血漿たんぱく質・アルブミンによる浸透圧差によって)傍尿細管毛細血管に吸い取られていくことになります。

Na+以外のイオンはどうなのか? 

水はNa+と一緒になって動くために、水の正味の動きは、Na+と同じように、尿細管の内側(濾過液)→尿細管の外側の間質液、となります。 すると、尿細管の内側の水が少なくなった分だけ、Na+以外の電解質の濃度は上がってしまいます。 その結果、この濃度勾配に従う形で、つまり水にひっぱられっる形で、Na+以外の電解質も尿細管の内側から外側に移動していくことになります。

さらに、「二次的能動輸送 secondary active transport」というメカニズムがあります。
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例えば、濾過液中に含まれるアミノ酸糖(ブドウ糖 glucose)です。 尿細管の内側の濾過液に含まれるNa+が濃度勾配に従って上皮細胞の中に入っていこうとするときに、その流入するエネルギーを使って回るポンプがあり、これらがアミノ酸や糖を取り込んでいるのです。 これを(Na+の流入と同じ方向なので)コ・トランスポーター co-transporterと呼ぶのですが、つまりはNa+の細胞内への流れを原動力にして取り込んでいるのです。 (しかし、このポンプが回るためには、Na+の濃度勾配が必要ですし、この濃度勾配は元はと言えばATPを使ってNa/Kポンプが能動輸送によってつくったものです。 なので、このポンプはATPをADPに分解するときのエネルギーを間接的に使用している、二次利用している、という意味で「二次的能動輸送」と呼ばれるのです。)
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「二次的能動輸送」には、Na+の流入とは逆方向に動くものもあります。 例えばH+を細胞外、尿細管の内側に分泌するものです。 逆方向に運ぶので、これをカウンター・トランスポーター counter-transporterと呼びます。 Na+が入ってくるエネルギーを使って、ポンプを回してH+を出していくわけです。

どんな物質をどの程度「再吸収」したり「分泌」したりするか、どの程度「(受動的に)通り抜け」しやすいか、どのようなホルモンがどのように影響を与えるか、といったことは、尿細管の各部位(近位尿細管→ヘンレのループ→遠位尿細管→集合管)によって違います。 しかし、上記のような再吸収と分泌のメカニズムは基本的に同じなのです。

こうして尿細管は、水と電解質のかなりの部分を(必要な分だけ)再吸収し、アミノ酸や糖を残らず再吸収し、要らない有機酸・塩基を分泌し、要らないH+を分泌し、最終的に「尿」となるものだけ排泄するようにしているのでした。


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千鳥先生『まあ、今回の話は、すごく以前に細胞膜に埋め込まれているたんぱく質による能動輸送の話をしたところ「原核細胞生物・バクテリアの生活 パートV 細胞膜2 」の応用編ってところだな。 Na/Kポンプ=Na-K ATPアーゼはすべての細胞にあるわけだが、それがすごく特殊な形で使われているのが尿細管でのNa+の再吸収ってことだ。 Na+の再吸収が行われている尿細管の内側の反対側(上皮細胞の側面と基底膜に接した底面)でNa/KポンプがNa+をどんどんかき出し、濃度が低くなった細胞内に、その反対側である尿細管の内側からNa+が入ってくる・・・ちょうどバキューム式掃除機みたいなメカニズムだよな。』
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光圀『長い尿細管すべてで、このプロセスが行われているんです?』

千鳥先生『いや、各部位によってちょっとずつ違うんだ。 詳しいことは、この後でやるけども、ボーマン嚢を出てすぐにある近位尿細管ではNa/Kポンプを使った反対側からのNa+の再吸収、そして水を通しやすいので、それにつられての水やその他のイオンの再吸収、そしてコ・トランスポーターを使ったアミノ酸や糖の再吸収、カウンター・トランスポーターを使ったH+の分泌・・・などが活発に行われる。 実に水と電解質の再吸収の65%がここで行われるし、アミノ酸や糖はほぼ100%ここで再吸収される。 有機酸・塩、そしてペニシリンなどの薬剤も、ここで分泌されて濾過液の中に捨てられることになる。 それに対して、これに続くヘンレのループでは、上行脚と下行脚の水の透過性の違いと周囲の浸透圧の違いを使って尿を濃縮する作業をする。 それに続くヘンレのループの上行脚のうち太い部分 thick ascending loop of Henleと、その次の遠位尿細管では再びNa+の再吸収を行いつつ、しかしここでは水は通さない構造なので尿を薄めることになる。 さらにそれに続く集合管では水の透過性はホルモンである抗利尿ホルモンの影響を受けて、抗利尿ホルモンがあると水を通して再吸収することで尿を濃縮することになる。(抗利尿ホルモンがないと水を再吸収せず、薄まった尿を出すことになる。) こうして、何段階も水や電解質の微調整をしながら、血漿中に再取り込みする成分と尿に出してしまう成分とをわけていくわけなんだ。』

光圀『これだけ再吸収や分泌をATPのエネルギーを使ってやっているということは、相当のエネルギーを消費しそうですよね。』

千鳥先生『実際、腎臓は心拍出量 cardiac outputの約2割ちょっとの血流量を消費しているし、これは1gあたりに換算すると脳の2倍もの消費量になるんだ。 そして、そのうち腎臓の細胞が生きるための基礎的な代謝に必要なのは1/4くらいしかないと言われていて、つまり残りの3/4は「濾過」と「再吸収」に使っているわけだ。 消費される酸素の大部分は尿細管の再吸収での能動輸送に使われているということになるだろうな。』

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