夕闇千鳥のお勉強日記

生物学、心理学などを中心に・・・

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内蔵のゆっくりした運動を行う平滑筋 smooth muscleに対して、私たちの四肢、体幹を形作る骨格筋 skeletal muscleは、より素早い動きを要求されます。 素早く動かなければ、生存競争を生きて来られなかったのです。
(骨格筋はさらに、そのほとんどがいわゆる随意筋であり、発生的には体節 somite由来で、すべて脊髄の前角にある運動神経細胞 motor neuronの支配を受けて、そのほとんどが脳→脊髄の指令によって「随意」的に動かすことができるようになっています。もっとも、ここの筋肉をどのような順番でどのように動かしているかを意識できる人はほとんどいないでしょうが。)

圧倒的に素早い動きを可能にするために、骨格筋 skeletal muscleをつくる骨格筋細胞(横紋筋細胞)の構造は、平滑筋に比べて、非常に高度に組織化されています。 つまり、運動タンパク質であるミオシン・フィラメントアクチン・フィラメントの組み合わせは同じなのですが、それによる筋肉収縮のメカニズムが非常に効率よく、整然と組織化されているのです。

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図は、腕の筋肉をどんどんミクロに分解していっている模式図です。 基本的に、脚の筋肉も、背中や腹壁の筋肉も、横隔膜でさえ、だいたい似たような構造でできています。

つまり、骨格筋の筋(スジ)は、いくつかの筋肉をつくる細胞たちが融合して1つの細胞に複数の核を持つ長い筋肉細胞=筋線維 muscle fiberからできています。 その筋肉細胞は、普通の細胞と同様に、細胞膜にかこまれて、内側に細胞質があるのですが、その細胞質の部分にアクチン・フィラメントミオシン・フィラメントが整然と並んでできた線維=筋原線維 myofibrilが縦方向にいくつも詰まっています。 筋原線維は、あまりに整然と並んでいるために、アクチン・フィラメントとミオシン・フィラメントの重なった部分が濃く重なっていない部分が薄く見えるので、そのシマシマ模様のために「横紋筋 striated muscle」とも呼ばれるわけです。

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アクチン・フィラメント actin filamentは、Z板 z disc(=Z線、Z膜ともいう)と呼ばれる両端の構造タンパク質にくっついて、両端から中央に向かって平行に何本も延びています。

その間をミオシン・フィラメントmyosin filamentが並行に、やはり何本も延びています。(ミオシン・フィラメントは、ずれていかないように、その両端をチチン titinというバネ状のタンパク質でZ板に固定されています。)

この両端をZ板に囲まれたアクチン・フィラメント+ミオシン・フィラメントの束が、筋原線維の収縮の最小単位であり、「サルコメア srcomere」と呼ばれるものです。

この筋原線維の収縮のメカニズムは、基本的には平滑筋に似ていて、やはりアクチン・フィラメントの上をミオシン・フィラメントが這うような動きをしてスライドしていくことによっています。

ただ、微妙に違うところがあります。

骨格筋の細胞の中にあるアクチン・フィラメントは、その周囲をトロポミオシン tropomyosinというタンパク質にらせん状に絡まれるようにされていて、そのままではミオシン・フィラメントがくっつくことができないようにされています。

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しかし、ここに筋肉収縮の信号となるカルシウム・イオン Ca++が入ってくると、トロポミオシンを制御するタンパク質であるトロポニン troponinがCa++とくっつき、トロポニンはトロポミオシンに働きかけ、アクチン・フィラメントへの絡まりをずらすような構造変化を起こします。 こうして、アクチン・フィラメントがミオシン・フィラメントとくっつく部分がむき出しにされ、ミオシン・フィラメントがアクチン・フィラメントの上を這うような動きをするという「運動」が開始されることになります。 この時、もちろん高エネルギー物質ATP=アデノシン三リン酸が消費され、ミオシンの頭部がリン酸化されて構造変化を起こし「動く」ことで、ATPの中に蓄えられている「高エネルギーリン酸結合」の化学的エネルギーが、運動エネルギーに変換されるわけです。

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(同じCa++によって収縮が開始されるわけですが、平滑筋の場合は、Ca++はカルシウムを信号にして活性化される酵素であるカルモジュリン calmodulinの作用で、次々に酵素反応が起こり、最終的にミオシンの頭部が高エネルギー物質ATPによってリン酸化されて動くことで、ATPのエネルギーが運動のエネルギーに変換されていました。)

こうして、ふだんはアクチン・フィラメントとミオシン・フィラメントが反応できないために「収縮」することがないのですが、筋肉細胞が興奮すると細胞質内にCa++が出てきてこれが「収縮」への信号になり、アクチン・フィラメントとミオシン・フィラメントの反応が開始され、高エネルギー物質ATPを消費しながら、ミオシン・フィラメントがアクチン・フィラメントの上を這うように移動してスライドしていくことで、「収縮」という運動が達成されるわけです。


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千鳥先生『筋肉では猛烈にATPを消費するために、それをどんどん合成するメカニズムが備わっている。 持続力のある筋肉では、「酸素呼吸」によって、糖分や脂肪を分解してクエン酸回路=クレブス回路=TCA回路と電子伝達系を使って大量にATPをつくり、エネルギーをまかなっている。 一方で、持続力はいらないけど瞬発力を要する筋肉では、クエン酸回路=クレブス回路+電子伝達系を回している暇がないので、糖分や糖分の重合体であるグリコーゲンを分解して解糖系から得られるATPを使ってしのぐこともある。 あるいは、もっと筋肉にわずかばかりに蓄えられているATPそのものや、ATPと同じような高エネルギー物質であるクレアチンリン酸 phosphocreatineをから高エネルギーリン酸結合に含まれるエネルギーをATPという形で取り出すこともある。

まあ、得られるエネルギーの量が全然違うから、長期的には酸素呼吸によるエネルギー供給がメインになってくるのだが、骨格筋は瞬発力を要することが多いので、解糖系やクレアチンリン酸によるエネルギーも、まあまあ重要なんだ。』
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灰泥『確かに解糖系は簡単なだけATPをつくるのは早そうよね。 でも乳酸という副産物がでてきてしまうし、長くは続かないでしょうね。』

千鳥先生『まあ、筋肉に解糖系でできた乳酸がたまってしまうのが筋肉の疲労の要因の1つともいわれているしな。』

灰泥『美しいスタイルを保つためにする運動は、やっぱり脂肪を燃焼することになるだけ、長時間の有酸素運動が必要なのよね、瞬発力型ではなくて。』
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光圀『ところで、筋肉が興奮するとカルシウム・イオンが出てきて信号になって・・・と言ってますけど、どうやって興奮して、どうやってカルシウム・イオンが出てくることになるんです?』

千鳥先生『ああ、それは運動神経と筋肉の接合部の話と、筋肉の興奮がどのようにカルシウム・イオンを放出することになるのか、という次回の話のネタだな。』

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