立派な大人の「夢や妄想」

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来訪者 2009

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10月の中旬に2〜3日、凄まじく寒い日があったかと思えば
急にポカポカ陽気になったり。

だが今年は平均して温かい。
平年に比べ明らかに気温が高いように思える。

そして、今年も11月に入り、
暦の上ではすでに立冬を過ぎていた。


いつもならオイラは忘れているのだ。
忘れているところへ、虚を衝くように「あの人」はやってくる。

今年は何故かオイラはあの人の到来を待っていた。

あの人は・・・
あの人はまだ来ないのだろうか。

そんな事を漫然と考えていた。

そして冷たい雨が降った先日、オイラはなんとなく
傘をさしてマンションの外に出た。

雨の飛沫が白く煙る道路のはるか前方に
ユラリとした影が見えた。

馬だ・・・

冷たく激しい雨を浴びながらユッタリとこちらに向って
馬が歩いてくる。


その馬の上には
よろい兜をかぶり、戦国時代の戦闘装備に身を包んだ


そう・・・


「冬将軍」がまたがっていた。




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『冬将軍・・・なんか雰囲気が変わったなぁ・・・』

 オイラはひとりごちた。



           「冬将軍の到来」で、ある・・・・



冬将軍がオイラが立つマンションの前に到着した。


冬将軍 『一年ぶりだね、元気だった?』

オイラ 『ご無沙汰してます、将軍お待ちしてましたよ』

冬将軍 『寒いのに外で待っててくれたの?感激だなぁ!』

ふと、オイラは異変に気付いた。

馬の手綱を持つ冬将軍の前に、小さな男の子がまたがっているではないか。
二人は馬を降り、オイラと共に雨の当たらない所に移動した。


オイラ 『・・・あれ?将軍・・・?その子は・・・?』

冬将軍 『ああ、紹介するね!この子は余の息子なんだ』

オイラ 『ええええ!このお坊ちゃんが!あ、いやご子息!』

冬将軍 『アハハ、いいんだよ!そんな堅苦しく言わなくてさ!
     ほら挨拶しなさい、小冬丸』

オイラ 『小冬丸さまとおっしゃるのでちゅね?はじめまして』

冬将軍 『ガハハハ!ダイワハウチュだ!』

大人二人が大笑いしているのを、しらけた目をして見ている将軍の息子。
こちらの挨拶にも応答しない。

まぁ、人見知りする年頃なのだろう。


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冬将軍 『困ったもんだよ、甘やかして育てちゃったからねぇ。ゴメンね』

オイラ 『いやいやいや、そんな事!全然大丈夫です』


しかし、まじまじと冬将軍を見ると、昨年までの「昼行灯」みたいな
暢気さがなくなり、別人のように凛々しく変貌している。

これが「父親になった」という自覚の成したことなのであろうか?
しかし語り口や、人格はそのままお茶目で温和そのものである。


冬将軍 『遅くなってゴメンねぇ、寒気が安定しなくてさぁ』

まず「侘び」から入る、これも平年通り将軍の定番である。 

オイラ 『いえいえ、それは将軍のせいではないですもん
     それより部屋の中にお入りください』


冬将軍 『そうしたいんだけどさぁ、この息子がワンちゃんが苦手でさぁ』

オイラ 『あ、そうなんですか?だったら犬を別の部屋に入れておきますから
     どうぞ遠慮なさらずに・・・』

冬将軍 『幼い頃に犬に追っかけられて、それがトラウマになったみたい
     プ・・・“犬なのにトラウマ”だって・・・ククク』

この人はダジャレのクオリティのキープ力は凄い・・・
と、いうより、若干低下してるのか・・・?


冬将軍 『いや、それとね、ほら今回この子を色んな所へ挨拶回りさせる
     っていう目的も兼ねているから、あまり時間がなんだよ』

オイラ 『ああ、そんなんですかぁ、それは残念です』

冬将軍 『おい小冬丸、ここのワンちゃんは大きいけど大人しくて可愛いんだぞ
     名前は“ユズ”と“マゴコロ”って言うんだ』

また、今年もタドコロの名前でふんわりとボケた!
これも毎年の定番だが、あえてツッコまないでおこう。

冬将軍 『寄って行きたいのはマウンテンマウンテンなんだけどねぇ』

小冬丸 『父上、それを言うなら“山々”です!』

息子がクールにツッコんだ!

これまた将軍の「ド定番」のボケ「マウンテンマウンテン」
しかも第一声が父親のボケに対してのツッコみとは!

なんという親子なんだ・・・


冬将軍 『あ、これ』

紙包みを差し出す冬将軍。
毎年恒例の「将軍の手土産」であろう。


オイラ 『ああ、毎年すみません。気を遣わせちゃって』

冬将軍 『今年は絶対喜んでくれるはず!なんてったって今や入手困難の
     人気のお菓子!花畑牧場の生キャラメルだー!』

オイラ 『・・・・・・・ああ、ありがとうございます』

冬将軍 『いやこれはねぇ、買うの大変だったんだよ!
     ただ、あの田中義剛に儲けさせるのはシャクだったけどね
     ガハハハハ!・・・・・あれ・・・・?』

オイラの芳しくないリアクションを見て、また悟ったらしく 

冬将軍 『ああああ、キミ甘いものダメだったんだよね!うわぁ!また
     下手こいたぁぁぁぁ・・・』

オイラ 『いや、ホント!感謝です!あんな入手困難なお菓子を
     わざわざ・・・マジで嬉しいんですよ!』

冬将軍 『ホント、ダメだよねぇ・・・余は・・・』


これら、ちょっと面倒臭い毎年恒例の一連の流れ。

面倒臭いのだが、これに付き合うと「冬が来たんだなぁ」と
実感できるから不思議だ。




マンションの玄関先に三人と馬、一頭。


冬将軍は、少しだけ「ピッ」と背筋を伸ばし
衣服を整え、


冬将軍 『それでは改めて・・・』

オイラ 『あ、はい。よろしくお願いいたします』



それまでのフランクだった空気が一変し
軽い緊張感が漂う。



冬将軍 『2009年、11月10日、本日をもって”冬到来”とし、
     短パンから長パンへの衣替えを正式に命ずる』

オイラ 『はい。謹んでその命、承りました。
     気象庁への連絡は責任を持って私が・・・』



激しい雨音だけが聴こえる。

厳かな時間が流れる。



冬将軍 『・・・はいっ!堅苦しい儀式は以上!』

オイラ 『ありがとうございました!』


それからオイラたちは15分ほど立ち話をした。

日本の気象の変化について。
世界の気象の変化について。

経済の事、金融の事。

今年も多くの偉人が亡くなってしまった事。

エドはるみの事。

険悪だった大奥との仲も、最近はお互いが歩み寄り
良い方向に向いているとの事。

途中どうでもいい話題が1つ2つあったが
とてもためになる、充実した立ち話だった。

そして「お世継ぎ問題」


オイラ 『しかし、良かったですねぇ。こんな立派なお世継ぎが出来て』

冬将軍 『うん、そうなんだ!本当に余にはもったいないくらい
     出来の良い世継ぎでね、もう安心だよ』


将軍は目を細め、満足そうに我が子の頭を撫で
ちょっとだけ目線をそらし遠くを見るような仕草をした

オイラには彼の仕草から若干の寂しさのようなものを感じた。


・・・冬将軍職の交代・・・


冬将軍 『もうね、心置きなく引退ができるってもんだよ』

オイラ 『なんか・・・でも・・・寂しいですね』

冬将軍 『いやいや、たまに遊びに来るって!』


もう来年から、この暢気で温厚で昼行灯のような・・・

愛すべきキャラクターの冬将軍とは会えないのか・・・

そう思うと無性に悲しくなってきた。


オイラは少し泣いた。
つられて将軍も泣いた。オイラより大きな声で。


来年から冬将軍の職を継承する一人の少年が
その光景を黙って見つめている。


オイラ 『うぇーん!本当ですよ!本当に遊びに来てくださいよ!』

冬将軍 『うぇっ、うぇっ!約束、するよ。うぇっ!』

オイラ 『オイラ、将軍のボケを聞かないと冬になった気がしなんですもん』

冬将軍 『うぇっ、うぇっ!余はボケた覚えなど一度もないよ。うぇっ!』


最後までボケっぱなしだった。



オイラ 『小冬丸さま、来年からよろしくお願いいたしますね』


それまで言葉少なに大人たちの会話を聞いていた
その「小さな将軍」に挨拶をした。

小冬丸 『こちらこそよろしく頼む!正確に冬が告げられるよう
     邁進するつもりなので、そちもしっかりとやってくれ』

これは・・・立派な所信表明だ。

父親よりも何十倍もしっかり者なのだろう。

「シャン」と胸を張った毅然とした立ち居振る舞いは
先ほどの「人見知りする子供」の態度など微塵も感じられない。



冬将軍 『それじゃあねぇ!またねぇ!』

小冬丸 『それでは失礼する!』


そして親子は馬にまたがって、未だ降り止まない
激しい冬の雨に打たれて、南方面へと歩きだした。



姿がだいぶ小さくなってからオイラはひとりごちた。

オイラ 『しかし・・・ちょっとあの子・・・堅物、というか・・・
     子供っぽさがない、というか・・・可愛気がもうちょっとなぁ・・・』




遠くで将軍親子と、犬の散歩をしている人がすれ違うのが見えた。



馬にまたがる人影が大きく揺れ
遠くから、子供の泣き叫ぶ声が響き渡った。

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