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そこに別の男性信者が助けに入った。
「あんた、やめとき。やめとき」
「貴様ぁ、邪魔をするなぁ!」
『ありがたい、助けが来た』
恭司は男が持っていた刃物を捥{も}ぎ取ろうとした。恭司が男の左腕を掴んだ瞬間だった。男は刃物を
逆手にして右手に持ち替え、背後にいた恭司の脇腹を突き刺した。恭司は一瞬自分の身に起きたことが信
じられなかった。いまだかつて体験したことがない程の激痛が右脇腹に閃{はし}った。下半身から力が抜
けてゆき、からだの自由が効かない。恭司はへなへなと、その場にしゃがみ込んだ。恐る恐る右の脇腹を
見ると、そこには自分の血でぬらぬらと赤く染まった刺身包丁の柄があった。恭司は最後の力を振り絞っ
て自分の脇腹から刺身包丁を引き抜き、己が身を刺し貫いた凶刃を力なく抛り投げた。生ぬるい血がズボ
ンを濡らしてゆく。内臓が灼{や}け付くような激痛の中でしだいに意識が遠のいてゆく。恭司が最後に見
たものは、夜闇を背に紅蓮の炎に包まれて焼け崩れてゆく《ヤハウェの方舟の「楽園会館」》だった。
『あの中には……まだ……白石姉妹がいる。……助けに行かなけ……れば……』恭司はそこで気を失っ
た。
恭司が見た映像は自分の前世の記憶だった――。
※この続き、第2部以降はファンの方のみの公開となります。
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