ゆうやけ・こやけ

求めているのは、雨上がりの夕焼けあとにやってくる青空です。

「風子」の場合(2)

 「風子」の場合(2)


 その年の夏、お盆を前にした二週間ほど前、母から達雄に電話があった。母は昨年末に帰ったばかりなのに、またすぐにでは大変だろうが、できれば帰ってこられないかしら? と言った。昨年末、ついうっかりして言い忘れていたが、お盆の期間中に、父の父、つまりは達雄の祖父の十三回忌をやる予定なので、帰って来るようにという要請だった。父は長男だった。その父もできればそうできないか、と言っていると母はつけ加えた。達雄は返事を渋った。そのことは別として、母は風子の近況を達雄に伝えた。風子たちが離婚したという。敦夫が時折つき合っていたという女性と結婚したいため、風子に離婚を申し出た結果だった。すでに敦夫の新しい彼女は敦夫の子どもを身ごもってもいるという。達雄は電話口で絶句した。母にとっても、風子は友人の娘ではあるが、かけがえのない実の娘のような存在だった。しかも、風子は結婚で身内になっていた。母は敦夫のことを非難し、風子と子どもたちの行く末を案じた。達雄は風子の店は? と母に訊いた。生活のためには、つづけていくしかないだろうと、ため息交じりに達雄に伝えた。敦夫は敦夫なりに、スナック店の権利や家族名義の全財産を風子たちに残したというが、それだけではいつまでつづくか、そのためにも、ふうちゃんは店をつづけなければならないのだと話した。達雄はこの話を耳にし、即座に帰省することにした。風子のことがそれとなく気がかりだった。
 達雄は帰省したその日の夜、高校時代の友人を訪ねるからと家族に偽って、風子の店を訪ねた。お盆中のこと、あるいは休みかもしれないと思ったが、「風子」の看板には灯がともっていた。店に入ると、女性ばかりの客が三人ほどいた。風子はいなかった。新しい女性がカウンターの中に立っていた。よくよく見ると、どこかで見た顔だった。多分、風子の高校時代の仲間に相違なかった。
 達雄が彼女に「ママは?」とカウンター越しに訊くと、彼女は「お盆なので、ママは今日、弟さんのお墓参りで実家に帰っています。間もなく帰ってくる頃だと思いますが……」と、応えた。
「そうか。ありがとう。僕は、ママとは同級生なんだ」
 達雄は彼女の警戒心を解くために、そう言った。その声に女性客がいっせいに自分に好奇の眼を向けたのが分かった。
 思いがけず、彼女は「やっぱり」という顔をした。「達雄さんでしょ?」と彼女は言った。「高校のときの顔とあまり変わってませんね」と言われたが、達雄は彼女にあまり覚えはなかった。「あの頃、風子ママから達雄さんのことはよく聞いていましたよ。私も、ときどき、ああこの人が達雄さんなんだと、お顔を拝見したことがあります。ママからは『達雄さんは、私の初恋の人』って聞いてましたよ。ウフフッ」と笑った。達雄は笑われても悪い気がしなかった。風子が果たしてどんなふうに彼女たちに自分のことを話したのか不明だが、悪いようには話したわけではなかったろう。
 達雄はその彼女にボトルを出してくれるように頼んだ。彼女は愛想よく「はい、ありがとうございます」と笑顔で返事をし、すぐに達雄の前にウィスキーのボトルを置いた。
 達雄は彼女が注いでくれるままに、水割りを三拝ほど飲んだ。そんなところに、店のドアが開き、「ただいま」と地味な洋服姿の風子が顔を出した。店にいた女性が、「ママ、お客さんよ」と、達雄のほうに顔を向けた。風子はまさか、という顔をして達雄を見た。
「達ちゃんね、よく来てくれたね」
 風子は多少驚いた顔をした。達雄が頷くと、風子が言った。
「ちょっと着替えてくるね。待っててよ」
 十分ほどして、浴衣姿の風子が再び店に顔を出した。達雄は風子の浴衣姿をまじまじと眺めた。店の中が急に華やいだように思われた。よく似合っていた。そういえば、幼いころに母に連れられて風子の家に行ったとき、あれは夏だったのか、幼い風子が浴衣を着せてもらって、達雄の前で嬉しそうにそれを見せたことがあった。二人とも幼かったが、そのとき風子が自分よりもいくつか年上に見えたことを微かに思い出した。その風子が、同じような浴衣姿で達雄の前に立っている。達雄はそのときのことを風子に話した。「そんなこと、あった?」と、風子は笑った。幼いときのままの笑顔だった。
「風子」と、昔のままの呼び方で、女性客から声がかかった。空になったボトルを振りかざしている。「毎度、ありがとう」と風子は言って、新しいボトルを三人の女性客の前に置いた。再び、達雄の前に立つと、風子は三人を振り返りながら、言った。
「あの人たち、みんな、高校時代のワル仲間よ」
 達雄は風子にそう言われて、女性の三人の客に頭を下げた。改めて三人を見たが、そのころの面影は誰にもなかった。彼女たちも達雄のことに記憶はないようだった。風子はその三人の顔を見て笑い、再び達雄の眼をうかがうようにじっと見た。達雄は照れ隠しのように言った。
「ここでは、いまも風子で通っているんだね」
「そう、昔の仲間はね。いまではみんな普通の奥さまになってしまってるけどね」
 その声が聞こえたのか、「うふふ」と小さな笑いが漏れた。
 時間だけが刻々と過ぎていくようだった。達雄は、唯一、芙美子と接触があったころの幼い日の思い出を話したかった。しかし、そんな話をするには、もうかなりの年月を経ており、容易にそんな話は持ち出せなかった。
「敦ちゃんとのこと、聴いたよ」
 達雄はどうしてなんだ? という思いを込めて風子に訊いた。風子はその言葉に動揺することもなく、小声で応えた。
「仕方ないんよ。ウチが悪いんよ」
「そんなことないだろう。風ちゃんは一生懸命やっていたじゃないか」
「ううん、ウチが店なんかやるから、こうなったんよ。あの人が帰るころには、ウチはもう店に出ていたんでね。最初は、いったんはここに寄って食事もしとったけど、そのうち、いまの奥さんのところに行くようになってしもたんよ。ウチが悪いんじゃ」
 達雄はそればかりではないだろうと思ったが、従兄の悪口を言うようで、そのことは口には出さなかった。従兄の敦夫は、これまでにも女性に関する話題はいくつかあった。もちろん、風子とて、そのことは知っているだろう。現在の彼女とだって、果たしてどれほど持つのか、知れたものではない。そのことは別に、二人の子どもを抱えた風子のこれからが案じられた。幸い風子には、両親が健在だった。風子の父は、地元産業ではあったが、市内では有名な会社の重役を務めている。両親にすれば、風子の弟を失ったいまやたった一人のわが子である。経済的なものを含め、陰日向になって風子を応援してくれるだろうことは容易に想像できた。しかし、二人の幼子たちは出て行った父親をなんと思うのだろうか。そしてまた、肝心の風子自体には、この先、どのような人生が待っているのだろうか。達雄はそんなことを考えながら、悩みなどどれほどもないという顔で客に接している風子を見ていると、なおさら従兄の理不尽な行動に怒りを覚えるのだった。
 敦夫と風子の結婚が決まり、達雄のうちに初めてそろって結婚の報告に訪れた日、敦夫が、「風子の相談に乗ってやれよ」と言ったことを思い出した。達雄はその言葉に「冗談じゃないや」と改めて思った。こんなこと、なんで自分が考えなければならないんだ。いまさら、自分が風子のどんな相談に乗ってやれるんだ、考えなければならないのはお前さんで、若い女といけしゃあしゃあと一緒になっておいて、風子の産んだ子どもたちのことはどうなんだと考えた。
 ちょうどそのとき、三人連れの女性客から「ママ」と呼ばれ、風子はいったん、その客のところに行って、二言三言言葉を交わして再び達雄の前に立った。が、達雄は風子の離婚についてはもう何も言えなかった。
「おばちゃんは元気?」と、風子は達雄の母のことを聴いた。「ああ、相変わらず、小言ばかり言ってるけどいたって元気だよ」と達雄は応えた。
「おばちゃんにも、あの頃は心配をかけたもんね。母がちょっと席を外すと、本当に心配そうな顔をして、その髪型はふうちゃんには似合わんよ。どうしてそうするのかはおばちゃんにもよくわからんが、ふうちゃんにはふうちゃんらしい髪型があるように思うんよ、ってよく言ってくれたこともあったわ。ウチ、心の中で、おばちゃんごめん、と謝りながら、いつも聞き流してしまっとった。悪いことしたわ。心から心配してくれとったんにね」
達雄は黙って頷いた。あの当時、母が達雄にもそう言ってこぼしては、わが子のことのように大きなため息をついていたことを覚えている。
「なんだったのかねえ。今から考えてみると、ウチにもようわからんのよ」
 風子はしんみりした口調で遠い昔を思い出すかのような顔をした。
 達雄は思い切って風子のあの事故と髪型について訊いてみた。風子は事故当時の状況を少しばかり話したのち、顔をゆがめて言った。
「達ちゃん、いま考えると、本当を言うと、さっきも言うたように、私にもようわからんわ。どうしてあんなにつっぱってしもうたんか。ウチ、いまになって思うんは、弟があんな死に方をしたのはウチのせいだと思うことから、逃げたかったんだと思うわ。もちろん、弟に申し訳ないという気持ちからもあんなことに逃げたんやと思うけどね。弟ばかりじゃないよ。両親からもそうじゃった。胸が押し潰されそうで、本当のところ、どうしてええのか、わからんかった。罪をつぐなわなきゃと思ったとき、せめて坊主にと思ったんよ。けれどいくらなんでもと美容師さんに止められ、せめてという思いであそこまで刈り上げてもらったんよ。あのとき、ウチ、思ったんよ。弟が死んで、ウチも死んだんだ、こうして生きているウチは、生まれ変わらなきゃあいけん。そう思ったとたん、まず、行儀のいい芙美子を捨てよう、なんだかそのまま生きていては弟にも済まないように、思ったんよ。それがどうしてなのかはわからんわ。とにかく、そう思ったんよ。いま思うと、あのときはそうでもせんかったら、どうしてええのか、わからんかった。弟の死に顔がウチにいつも迫ってきて、気がついたら、あんな風子になっとったんよ。そのうち、ウチの頭をあざ笑うのが出てきた。ウチは何を言っとんじゃという気持ちになり、死んでもいい気で相手をぶちかましにいった。本気度の差よ。そのうち、みんながウチのこと恐れるようになった。ウチのほうから何かを仕掛けたというわけではないんよ。ウチ……それがいつの間にか、あんなふうなスケバンのようになってしもうてた」
 風子の考えられないような変身は弟の死を乗り越えるための風子の捨て鉢な行動だったのだろうか。しかも、その死が直接ではないものの、あきらかに風子自身が否応もなく関係していた事実は、風子には耐え難く、結果的にそんなふうに自分を追い込むほかなかったのだろうか。
 風子がポツリと言った。
「今日も弟の墓参りに行ったけど、ウチの頭から、あの子の面影がだんだん薄れてしもうとることに気づいた。弟にもう何も言えんかった。お墓の前に立ったときね、はて、あの頃の弟はどういう顔をしていたかな、とふっと思うた。そう考えると、なんだか私のせいで弟は……と、思うてしもうてね……」
風子は浴衣の袂からハンカチを取り出し、まぶたに滲んだ涙をぬぐった。
「ふうちゃん、ごめんな。辛いことを思い出させて」と達雄は言った。
 風子は「ううん、ええのよ。ありがとう」と風子は頭を振った。
 達雄は話題を変えた。
「風子のとこのおばちゃんは?」
「元気よ。最近はほとんど孫の世話にかかりっきり。すまないと思っているのよ。達ちゃんとこのおばちゃんも、いまでもときどきお母ちゃんのところに顔を出してくれて、相変わらずお世話になっとるわ」
「そうか。それにしても、おばちゃんも孫二人の面倒を見るのは大変だなぁ」
「最近はね、子どもたちがウチの子か、母の子かわからないくらいなんよ」
「今日は久美ちゃんも、おばさんのところなの」
「そうなんよ。お母ちゃんはあまり小言を言わんでしょ。よっぽど、子どもたちには居心地がいいんじゃろうね」
 その日、初めて風子が笑った。風子が言った。
「達ちゃん、ありがとう。相変わらず、やさしいね」
 風子はそう言って、テーブルに乗せていた達雄の手の上に、自分の手を重ねた。白くて柔らかで滑らかな肌だった。達雄が触れた、初めての風子の肌の感触だった。
 達雄は次の日、祖父の法事を済ませてから、高校時代の友人を訪ねたその足で、友人を誘い、再び風子の店を訪れた。連日の達雄の出現に、彼女は少し驚いた顔をしたが、友人の手前、そのことには触れなかった。友人は店のカウンター席に腰を下ろすなり、「ママのこと、知っているよ」と、風子に話した。風子は驚いた顔で、その友人を見た。彼は言った。
「知っていると言っても、直接どうこうと言うわけではないけど、僕の妹が高校のとき、ママと同じ学校でお世話をかけたことがあったんだ。その妹から、ママのことときどき聞いていたんだ」と切り出した。
「失礼ですが、お名前は?」
 風子はこの突然に話に、少しだけ不安そうな顔を見せた。達雄の友人は妹の姓名を風子に告げた。風子はすぐに「ああ」という顔をした。
 風子が言った。
「そうなの、あなたがそのお兄さんなの?」
 友人は頷いた。風子は少し安心したような顔をした。友人が少し頭を下げながら言った。
「妹がお世話になって有難うございました。妹はあなたのこと誉めていましたよ」
風子は頭を振った。
「私、そんな学生ではなかったよ」
 友人は言った。
「少なくとも、私は妹から、いろんな話を聞いています。でも、風子さんは私のイメージの中では……。とてもスケバン、ごめんなさい。そんなふうには感じられませんでしたけど……」
 その声に、いまは店を手伝っている風子の昔仲間の彼女がこちらを向いた。
 風子が何かを言おうとしたとき、三人連れ、そして二人連れと客が立てつづけに入ってきた。話は、一時的に中断された。達雄たちは入ってきた客のために、一番奥のカウンターに席を移した。風子は「ごめんなさいね。でもゆっくりして行ってよ」と、二人のグラスに酒を注ぎ、新しい客たちの席の前に移動した。
 友人は、かつてその妹から聞いたという、風子にまつわる話を始めた。彼が話した内容は、おおよそ次のような風子の逸話だった。
 それは彼の妹と風子が高校三年の九月のことだった。新学期が始まった九月の下旬、一つの衝撃的な話が校内を駆け巡った。それは風子とはクラスが違っていたが、同じ三年生の女生徒が妊娠しているという、高校生としてはにわかには信じられないような話だった。学校側が即座に動き、その真偽を確かめたところ、それは間違いのない事実と判定された。まず、学校の教職員内でその事実をどう捉えるかが論議された。意見は真っ二つに割れた。つまり、自主的に退学もしくはすぐに退学処分にすべきだという意見と、学校側もそれは不測の事実としての寛大な処置のもと、卒業までは学業はつづけ、しかる後に出産できるように見守ってやるべきだとの二つに割れた。一時的に、ことは後者のほうに進みそうになったが、その判断に立ちふさがったのが父兄会だった。親が親なら子どもも子どもだということもなかろうに、そうした父兄を持つ何人かの生徒が強硬にその正当性を主張し、その子はやむなく退学をよぎなくされかかったという。そこで、学校側は再度、「彼女に自主退学を勧告する」と態度に変えた。これを聞いた多くの生徒が、まずその措置に反対した。誰にも迷惑をかけているわけではない、ましてあと半年もすれば卒業である。出産はそのあとのことになるわけだから、あえて自主退学を求めることはみんなの言うように人権にも反すると、学校の措置に異を唱え始めた。学内の意見は教職員と全校生徒を巻き込んで、真っ二つに割れたまま、ちょっとした騒ぎになった。妊娠した女子学生は精神的には退学寸前に追い込まれた。構内の雰囲気は当事者である生徒には堪え難いものとなりつつあった。彼女の気持ちは「退学」を決断する一歩手前にあった。そこに登場したのが風子だった。風子はその女子学生に言った。
「ビビること、ないじゃん。せっかく授かった命じゃん。そのことを大事にしてやらんかいな。あんたも産みたいんじゃろ? ちゃんと卒業して、産めばいいじゃん。その子のためにも、卒業だけはしたほうがええ。ウチに任せな。ほかの誰にもとやかく言われることはないよ。そんなこと、とやかく言うのがおったら、ウチが受けてやる。ちゃんと卒業して、産んだらええやんか。卒業するまでウチらがあんたらを守ってあげる。堂々としてたらええが……」
 ここまで話を聞いて、ふと、達雄はこのとき風子の頭の中をよぎっていたのは彼女の亡くした弟のことだったに違いない、と思った。
 風子は何人かの仲間を引き連れて、早速、学校側にも掛け合った。風子は一歩学校を出れば、自分に刃向かう相手には牙をむき出しにすることはあったが、意に反して、学内ではそれほど大きな問題も起こしたことはなく、学校側もこうした風子の意見には誠意を持って耳を傾けたという。風子とて、これまで学校に何ほどの迷惑をかけたことはなかった。もちろん、風子をめぐる学内でのいざこざはあった。ただし衆目が一致していたのは、では風子がそのことでどれほどの学内に迷惑をかけたのか、ということでは、頭をかしげるほかなかった。時間が経つに連れ、風子の応援団が増えていった。
 結果的に、学校側は「卒業まではできるだけ、妊娠していることは目立たないように」という、わけもわからないような条件はつけたものの、彼女の卒業までの在籍は認めた。学内での風子の株は一挙に上がった。おかげで、その生徒は無事に卒業までこぎつけた。風子を恐れ、彼女に後ろ指を指すことも、表面的には控えられた。当の風子は風子で、これまた卒業までいつも通りの風子だったという。
 達雄は幼児の頃の風子の面影を胸に描いた。幼い頃の風子は、おかっぱ頭で日本人形のような顔をし、黒髪に包まれた丸い顔をしていた。そんな風子は愛らしかった。同時に、その女子学生を助けたというときの風子の顔を想像した。二つの顔はまったく違ったもののはずであったのに、達雄の脳裏ではその二つの顔が融解し、結局はいまの風子の顔にかぶさった。
 この話をし終えたとき、この友人は意外な事実を告白した。実はその妊娠した当事者というのは彼女の妹だったと達雄に言った。達雄は彼を見て、黙って頷いた。
「そうだったの。それで妹さんは?」と聴いた。
「うん、卒業して無事に男の子を生んだよ。両親が結婚させることを急いだせいで、結婚式は大きくなったお腹を抱えたままだった。結婚式には風子さんも呼んだが、彼女はそのときには大阪にいて、仕事の関係で出席できないからと、お祝いだけ送ってきてくれたそうだ」
 この話には尾ひれがついていた。風子は自分の結婚式に彼女を呼んでいた。彼女は愛し子を抱いて、風子の席には出席したという。
 達雄はまだ、どんな女性とも関係を持ったことはなかった。大学一年生のとき、同級生の学生と少しばかりいい仲になり、キスしたことがあったのが唯一の女性体験で、それ以外には、どんな経験もなかった。彼女とキスした折、達雄は理屈通り、彼女の下着に手をかけた。その瞬間、彼女が「ダメ!」と言って彼の手を押さえたため、それ以上は進めなかった。本当にダメだったのか、さらに手を伸ばせばどうにかなったのか、いまとなっては判断できないが、それが達雄のこれまでの唯一の女性体験だった。その後、キスした女性とは、その後何度かチャンスはあったが、せいぜいキス止まりで、ついに彼女とは性交渉にはいたらなかった。彼女のほうが、頑として拒否しつづけたからでもあった。一度、何かの行き違いから、彼女とは険悪なムードになったことがあった。達雄はそのことを知った彼女の知人からなじられ、「あなたたちはもう普通の関係ではないでしょう。そんな態度、ずるいわよ」と言われたことがあった。何を刺して普通の関係ではないというのか、達雄にはなはだ疑問だったが、彼女とはそれ以上に交際をつづける気も失せ、そのまま彼女とは疎遠になった。それが達雄の唯一の女性体験だった。

 翌年の春、従兄の敦夫と風子は正式に離婚した。風子にすれば、もう敦夫が自分の元には帰ってこないことを実感したのかもしれない。その年の夏、達雄は自分が担当していた原爆の特集記事の取材で八月の中旬、久々に広島を訪れた。途中、新幹線は達雄の故郷の最寄りの駅に停車した。達雄は社外の変わらぬ風景に目を凝らしながら、風子のことを脳裏に描いた。離婚して、風子がどんなふうに暮らしているのかが気にかかった。ほどなく列車は目的の広島を目指して出発した。それから一時間ほどして、新幹線は広島に着いた。故郷の駅から広島まで、達雄の脳裏を占めていたのは風子だった。久々に入る広島の車窓の風景は、達雄の目の前で、ただただ通り過ぎていくばかりだった。爆心地広島に初めて訪れたのは、中学校の修学旅行の際だった。広島県東部に育った達雄たちにとって、広島は決して遠い場所ではなかったが、それでもまだ新幹線のような高速鉄道は走ってはおらず、同じ県内とはいえ、遠い存在だった。その後、達雄は一回単独で、もう一回は大学一年の折のクラスメートと原爆記念館を訪れるために広島を訪れたことがあった。
 広島についたのは夕刻だった。その日はそのままホテルに入り、達雄は翌朝から特集記事に必要な二つほどの仕事をこなした。夕刻、東京まで帰るつもりで、広島駅で切符を買おうとして、ふと口に出したのは故郷の駅名だった。急に、風子に会いたくなったのだ。ここからなら一時間ほどで着く。風子がまだ店をやっているのかどうかは定かではないが、もしやっていなければそのまま実家に泊まることも考えられた。行くだけ行ってみよう。そう考えただけで、風子への切ない思いが達雄の胸に迫った。あの風子が、こんな形で自分を捉えようとは、つい先ほど、広島駅の切符販売窓口に立つまで、思いもしなかった。新幹線に揺られながら、達雄の脳裏にはかつてのふうちゃん、女子高生時代の風子、従兄と結婚する前後の風子と、さまざまな彼女の顔が去来した。
一時間ほどで、列車は故郷の駅に着いた。「風子」にはその駅から十分ほど歩けば行けた。達雄は店までの距離をゆっくり歩いた。達雄の頭には離婚を余儀なくされた風子の様々な顔が浮かんだ。果たして、離婚してからも店をつづけているという風子はこの時間にはもういるのだろうか、本当に店はつづいているのか……など、さまざまな思いが次々と達雄の頭に去来した。
店の看板には明かりが灯っていた。が、店を目前にして達雄の足は止まった。離婚したという風子に、どんな顔をし、どんなことを話せばいいのか、一瞬迷った。が、思い切って店に入ると、客は誰もいなかった。風子が驚いた顔で達雄を出迎えた。風子は「今頃どうしたん?」と、予測もしなかった客の到来に戸惑っているのが見て取れた。
 達雄は広島での仕事のことを手短に話しながら、カウンターに座った。風子は一通りの準備を済ませると、カウンターから出て達雄の隣に座わり、酒をついだ。そんな風子に、達雄は言いにくそうに「敦ちゃんとのことを聞いたよ。大変だったね」と、切り出した。
 風子は言った。
「達ちゃん、その話、今夜はやめとこう。言いたいことは山ほどあるけど、結局は愚痴になるんよ。もう済んだことなんよ」
達雄は「わかった。ごめん」と言うしかなく、従兄の話はそれでやめた。少しばかり、沈黙が流れた。風子がその気まずい雰囲気を払しょくするかのように一度カウンターに戻り、自分用のグラスを手に、再び達雄の隣に座った。「達ちゃん、今夜はウチも飲むわ」と、達雄の前にグラスを差し出した。そのとき、浴衣姿の風子の体から、香水の匂いが漂った。達雄は風子に、それまでは感じたことのない女を強く意識した。風子は達雄の注いだウィスキーの水割りをそれこそ一気に呑んだ。風子はすぐに達雄の前に、空になったグラスを差し出した。達雄は言った。
「ふうちゃん、そんな呑み方をして、大丈夫かい?」
「大丈夫よ。まだ一杯目。今夜、来てくれるとは思いもしない達ちゃんが来てくれたんだもん、うれしくて、呑まずにはいられんわ」
 風子はそう言って、二敗目に少し口をつけてグラスを置いた。達雄はしばし言葉を失った。風子もあらぬほうに眼を向けている。達雄は従兄のことを口にしたことを後悔した。考えてみれば、傷口に塩を塗るようなものだった。二人はしばし、沈黙した。
そんな雰囲気を破るように、風子が言った。
「ウチねえ、達ちゃんのことで、一つだけ覚えてることがあるんよ。さっき、仕事の話をしてくれたでしょ。それで思い出したこと、あるんよ。どうしてそんなこと、覚えているんか、ようわからんけど……。達ちゃん、小学校六年生のとき、ウチら同じクラスだったこと覚えとる?」
 達雄にはきちんとした記憶はなかった。風子がそう言うからにはそうだったに違いない。達雄はなんとなく頷いた。風子はつづけた。
「あのとき、担任の先生が、今日から小学校最後の授業が始まります。そこで、先生はみんなが将来はどんな職業に就きたいんか聴いてみたいと思います、と先生が言ったことがあったでしょ。覚えてない?」
 達雄は頭を振った。まったく記憶になかった。風子が言った。
「どうして、ウチがそんなことだけ覚えているんかようわからんけど、そのとき、達ちゃんは先生にこう答えたんよ。僕は絵を描くことも、書道でええ字を書くことも、それにハーモニカや木琴など、何かの楽器を演奏することも得意ではないです。ですから、何か、文書をつくるような仕事をしたいです、と応えたんよ。覚えてない?」
 達雄は頭を振った。そんなことを言ったこと自体、恥ずかしかった。そう言われてみれば、それがまるっきり他人の言葉ではないような気もした。そのことよりも、思わぬことを風子が覚えてくれていたというその事実に感動した。
「だからね、さっき仕事の話を聞いたとき、ああ、達ちゃんはあのころの夢をかなえたんかなあ、と、感心したわ。私にはようわからん世界じゃけどね。それに楽器がだめだと言うていたくせに、中学と高校ではブラバンにいたんだし、言うことないわ」
 風子はそんなことを言い、自分のグラスを達雄のグラスに当てて、再びそれを一気に呑み込んだ。
達雄はこんなことが風子の口から出るとは思わなかっただけに、少々慌てた。達雄は言った。
「そう言うけど、何でも中途半端なままだよ。六年間ブラバンにはいたけど、他の人のように音感がないせいか、楽譜がないと演奏できんかった。音感があると、リズムを聞いただけで、自分の楽器で演奏できるものなんだよ。そんなこともできんかった。六年もブラバンにいたのにな。何か書くという仕事にしても、本職は編集という仕事だよ。書くことそのものが本筋ではないんよ。何をやっても中途半端なままなんよ。それが俺の人生なんだと、最近はつくづく思うわ」
 達雄は普段感じていたことを隠さず話した。風子は頭を振った。「それは欲が過ぎるというもんじゃないの」。風子の言葉に、自分の言ったことがなんとなく恥ずかしかった。人にはほどほどということがある。それに気づかず、自分はこの歳になってもなお、どんな夢を追いかけているというのか、達雄はやや悲しかった。
「それにしても、よう覚えとったな。さっきのどんな職業に就きたいのか、などいう話、まったく記憶にないわ」
「ウチにもようわからんわ。ただ、達ちゃんのこと思うと、前にもなんか、そのことを思い出していたんよ。どうしてかね。ウチにもようわからん」
 風子は達雄の記憶にない、幼いころの達雄の印象について、いくつか話してくれたが、それらはまったく達雄の記憶から消出されたものだった。
 三人ほどの客が入って来た。風子は「ごめんね。ゆっくり呑んでいて」と、接客の応対にカウンターの中に入った。風子は、時折、達雄のほうに眼を向けたが、しばらくはその三人の客にかかりきりだった。その客につづいて、さらに何人の客が入ってきた。風子が達雄を相手する暇はなかった。彼女は気づいたように、達雄の前に立って、酒をつぐのが精いっぱいで、あとは客の対応に忙しかった。達雄は少し、うとうとした。気づいたときには、達雄の前に、この前に見たアルバイトの女性が立っていた。店はほぼ満席になっていた。
 どれほど時がたったのか、達雄は不意に風子に起こされた。風子が達雄に囁いた。 
「達ちゃん大丈夫。一人で、よく呑んでたわね。ほら、ボトルが空になってるよ。だいぶ疲れているようね。奥の部屋で、少しばかり休んで」と言った。達雄は「帰るよ」と言った。風子は即座に応えた。「駄目だよ。危ない。いいから、少し酔いを醒ましてからにしてよ」。達雄は、風子に抱かれるようにして奥の部屋に移動した。部屋にはソファーベッドがあった。達雄はそこに座らされたことは覚えているが、いつの間にか再び眠っていた。
 気づいたときには、部屋に朝の光が入っていた。風子が掛けてくれたのだろう、身体はいつの間にか、タオルケットにくるまれていた。気づくと、部屋のテーブルにメモがあった。見ると、「お疲れさま。また会えるといいね。出るときには鍵をかけて、郵便受けから中に投げ込んでおいてください。こちらは合鍵がありますから。また会えるといいね。(芙美子)」とあった。
 達雄は身支度を整え、財布から飲み代のつもりで二万円を取り出し、風子のメモ書きの上に置いた。店を出ると、夏の強い兆しが眼を射た。達雄はそのまま、駅に向かった。実家に帰る気持ちは失せていた。結局、その前夜が達雄と風子が会った最後となった。新しい年が明けた元旦、達雄の元に風子からの年賀状が届いた。賀状には新年の挨拶とともに、「おばちゃんからそちらの住所を聞きました。今度帰ったら、また来てください。芙美子」と書き添えてあった。

 それから半年ほどたった真冬の最中、敦夫の新しい妻が男の子を出産した。その翌日、風子が着物姿のまま、海で死んだ。入水自殺したのだと、その理由をいろいろと詮索する者がいたが、本当に自ら入水したのか、酔っていて誤って海に落ちたのか、その真相は誰にもわからなかった。敦夫の新しい妻が子どもを産んだことで、風子はもう夫を取り戻せないと絶望して死んだのではないかというも者もいたし、二人の子どもを残したまま死を選ぶことはなかなか難しいことだから、やはり事故だったのではないかという者もいた。が、その真相はついに誰にもわからなかった。自殺をほのめかすような言動も書き置きのようなものもなかった。結局、風子の死因は「事故死」と認定された。遺骨は風子の母親のたっての希望から、風子の実家の墓の弟のそばに埋葬された。達雄は葬儀には母とともに参列した。さすがの従兄も風子の二人の子どもとともに出席していたが、のちに訊いた母の話だと、納骨のときには、風子の母親に手を引かれた二人のまだ幼い子どもの姿しかなかったという。
 遺影の風子がはにかんだように笑っていた。遺影は次男が生まれたときの家族写真の風子の顔が使われていた。つい数年前の写真ながら、達雄には少女期の風子の顔が重なって見えた。あの頃のままの顔だった。顔のすぐそばには彼女の手によるものと思われるピースサインが覗いている。恐らく長女の久美に習ったものだろう。幸せそうな家族写真をトリミングして使った遺影だった。それだけに、見る人の涙を誘った。中でも、久美の姿は人の心を胸打つものだった。そのときの彼女はもう中学生になっていた。焼香の際、何を思ったのか、久美はその写真に手を差し出し、自分の胸にひしと抱きしめたまま、一際、悲しげな声で「お母ちゃん、お母ちゃん」と、涙声で連呼した。すでにその父親であることを放棄していた従兄が慌てて駆け寄り、久美から遺影を引き剥がそうとしたが、久美は容易に聞き入れず、「お母ちゃん」を連呼した。姉のその「お母ちゃん」と言う完極まった声に刺激されたかのように、まだ幼いその弟までが、声を上げて泣き出した。結局その場は、風子の母の手によってどうにか収まったものの、二人のその完極まったような惜別の泣き声は、参列者の多くの耳にいつまでも残ったことだろう。無論、達雄もまた、その一人ではあった。
 しばらくして達雄は母から、風子の子どもたちは敦夫たちが引き取ることになった、と聞いた。当然といえば当然だが、 これには敦夫の現在の妻の意見を敦夫が取り入れた結果だったという。現在の妻にすれば、風子の死の一因は自分にあると感じてのことだったのだろう。風子の母は最初、これには反対したらしいが、再三にわたる敦夫夫婦の申し出とともに、敦夫の新しい妻の数度にわたる懇願にいわばしぶしぶ承知した格好だった。
 達雄は翌年の夏、故郷に帰った。東京に帰るその日は暑い日だった。達雄は一人で風子の墓の前で頭を垂れ、手にしていた花束を供え、線香に火をつけた。弟の墓石に、新たに「芙美子」と彼女の名前が付け加えられていた。達雄は指先でその「芙美子」と刻まれた文字をなぞった。真夏の寺にはほかに人影はなかった。達雄は幼い日のことを思い出していた。たとえどんな幼くても、異性を意識することはそれなりの恋と呼べるだろうか。いつも母と一緒か、学校などで単独で出会っても、直接接触する勇気はなかったが、彼女の姿を見ると、遠くから眼を離すこともできず、ただ茫然と彼女を見つめていた。それは高校時代もまた同じだった。頭を刈り上げた風子、それもまた、達雄の心の中では幼いころから見ていた同じ「ふうちゃん」だった。
 達雄は合掌し、墓に向かって、心の中から語りかけた。
「ふうちゃん、なんで死んだんだよ。オレ、ふうちゃん……本当は」と言いかけて後は言葉を飲んだ。達雄の眼に急に涙があふれてきた。突然、そばの松の木にとまっていたヒグラシが「カナカナカナ」と鳴いた。その一声が収まると、寺はまた、気怠いままの夏の静寂に包まれた。達雄は海を前にした風子の姿を想像した。そして思った。もしかして、その瞬間にふうちゃんはまた再びあの風子に戻ったのかもしれない、とそう思った。(完)

*本稿は『ちば文学』第20号(2019年1月末日発行)に掲載されたものに加筆・訂正を加えたものです。転載を同意してくださった「ちば文学会」に感謝します。

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