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障害者が働く作業所などの施設で利用者の工賃が低下している。不況で企業からの受注が激減したせいだ。工賃アップに結びつけるため、「読売光と愛の事業団」からの助成を新たな自主事業の一部に充てようとしている施設を訪ねた。(読売新聞・野口博文) 調理場で仲間2人とともに、パン生地を40グラムずつ取り分け、手で次々に丸めていく。パン作りはこの4月に始まったばかり。三原さんは「戸惑うこともありますが、売れるのを期待してます」と笑みをこぼした。 主力だった自動車部品の組み立て作業の受注が昨秋から徐々に減り、今年1月以来ゼロのまま。作業が早々と終わり、ビデオを見て過ごす日もあった。この影響で昨年7月に月額9300円台だった平均工賃は今年2月、4800円強にまで落ち込んだ。 施設長の原田淑子さん(37)は「下請け作業だけでは限界。十分な工賃を支払うには、どうしても新たな事業が必要なんです」と強調する。 コッペパンなどを製造するのは週に3日間。製造個数が少なく、工賃アップは実現していない。今は障害者施設の給食用に卸したり、温泉施設で販売したりするにとどまっているが、これから販路を広げる予定で、原田さんは「地域の人にパンを喜んで食べてもらえ、働く張り合いも大きい」と語る。利用者の一人、原紀代子さん(69)はパン屋で働きたくて、3店で面接を受けた経験があり、「希望がかなって本当に幸せです」と満足そうだった。 Tシャツ工房名古屋市の地域活動支援センター「花*花」でも、自動車部品の仕事が激減した。和田貴之さん(19)の工賃は、昨年9月の月額9000円に対し、今年5月は7500円強に。1日当たりの施設利用料550円と昼食代の350円に、工賃のすべてが消えてしまう。 指導員の安島一樹さん(30)は和田さんの個性的な絵に注目した。太陽などをモチーフに毎日100枚もの絵を描く。それをTシャツにプリントして売り出せないか。思いついて「Tシャツ工房」の準備を始めた。 同センターを運営するNPO法人理事長の江部真弓さん(51)は「施設の魅力作りのためにも得意な面を伸ばしたい」と積極的だ。 売り上げ26%減厚生労働省が全国の授産施設などを対象に緊急調査した結果、今年1月の平均売り上げは昨年10月に比べて26・7%、平均工賃は7・3%、それぞれ減っていた。東京都社会福祉協議会の調査でも、都内の作業所などの約6割が「企業からの受注が減った」と回答。この調査を担当した都社協総務部の森純一さん(39)は「新たな事業は利用者の喜びや自信につながるのでは」と評価する。 作業所などの全国組織「きょうされん」(東京)は今年6月、全国各地の独自製品を通信販売するホームページ「TOMO市」(http://www.tomoichiba.jp/)を新設。現在、約60か所の製品約700点を紹介する。事務局長の多田薫さん(48)は「全国にアピールし、収益、工賃アップに結びつけたい」と期待している。
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2009年09月24日
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「世界アルツハイマーデー」の21日、松江市朝日町の松江テルサで記念講演会が開かれ、京都市の堀川病院元院長の早川一光(かずてる)医師(86)が、「呆(ほう)けたっていいさ!〜家族会の原点に戻って〜」をテーマに、笑いを織り交ぜながら認知症との向き合い方を語った。 「認知症の人と家族の会県支部」(堀江徳四郎代表世話人)の主催で、約110人が参加した。早川医師は、京都市の西陣地区で約50年間、地域医療に携わった。講演では壇上に上がらず、客席の間を歩きながら語りかける独特のスタイルで、「困っている人にすぐ手をさしのべるおせっかいな人や、よく笑う人は、ぼけない」と持論を展開。すかさず「この話を学会に持ちかけても、相手にされませんでしたけどな」とおどけてみせるなど、軽快な語り口に、会場は終始笑いに包まれた。 質疑応答では、若年性認知症の妹を介護している松江市の女性(67)から、「オムツはかぶれるので、自発的にトイレへ行ってほしい。どうすればよいか」との質問があり、早川医師は「自分でトイレに行けたら思い切りほめてあげて。喜びを共有すれば、また頑張れる」とアドバイスした。(2009年9月22日 読売新聞)
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認知症の人にどう接したらよいか、悩む介護職員は多い。認知症ケアの先進国・スウェーデンの介護方法を取り入れ、そのノウハウを日本でも生かそうとする現場を訪ねた。(読売新聞・内田健司) 千葉県浦安市のJR新浦安駅から車で5分余り。住宅街の一角に、薄緑色の壁に真っ白な柱や窓枠が一際映える、ヨーロッパ風のデザインの建物がある。介護付き有料老人ホームと認知症デイサービス、小規模多機能型サービスが一体となった、高齢者複合施設「舞浜倶楽部新浦安」だ。 ここでは、「親孝行のお手伝い」を理念に、「認知症になっても安心して暮らせる環境づくり」に力を入れている。今年1月からは、スウェーデン生まれのグスタフ・ストランデルさん(35)が総支配人を務めている。 ストランデルさんは、日本の高校、大学への留学経験などを通じ、日本で「スウェーデンは福祉の国」と呼ばれていることを知り、母国の高福祉を再認識。2003年に東京でスウェーデン福祉研究所長に就任し、日本各地の介護施設を訪ねるうち、母国では現場で徹底されている「個人に合わせたケア」を普及させる必要性を痛感した。 舞浜倶楽部では、スウェーデンで実践されている認知症ケアのうち、「ブンネ楽器」という専用に開発された楽器を用いた音楽療法や、「タクティール」と呼ばれるマッサージ法などを取り入れている。 ブンネ楽器は、ギターのような形をした楽器のことで、大きめの文字と色で3段階のキーが示してあり、レバーを押さえれば簡単に演奏できる。徐々に身の回りのことができなくなっていく不安をもつ認知症の人が、「自分にも演奏できる」という達成感を味わえるのが魅力だ。ストランデルさんが十八番の演歌、「雪国」を実演しながら歌うこともある。「演奏を楽しむと同時に、脳を活性化させる効果も期待できる」と強調する。 タクティールは、オイルを付けた手で、手や足などをなでるように触れるもの。緩和ケアとして、注目を集めている。本場で研修を受けた舞浜倶楽部デイサービス管理者の北島文さん(34)は「鎮静効果があり、会話を交わさなくてもコミュニケーションがとれる感じがします」と話す。 スウェーデンでは、年をとっても障害をもっても普通に暮らす「ノーマライゼーション」の理念が普及しており、舞浜倶楽部でも、地域のにぎわいが感じられる場所で、地域の人たちと密着しながら暮らしていくことに力を注いでいる。今年6月には、母国の「夏至祭」をまねたイベントを企画し、利用者と近隣住民らとの交流を深めた。 認知症ケアに力を入れる施設では、舞浜倶楽部のように、職員をスウェーデン研修に派遣している事例も多い。 1984年に全国で初めて認知症専門病院を開設した「きのこエスポアール病院」(岡山県笠岡市)でも、関連の施設を含めて、スウェーデンで研修した約30人の職員が働いている。 佐々木健院長は「個別ケアと言って、形だけまねてもダメ。認知症になっても一人の人間として生きているというノーマライゼーションの理念を持つことが欠かせない。現場の人間が『共生』の意味をよく理解して、実践することが何より大切だ」と話している。(読売新聞)
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