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高齢者福祉

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マニュアル作り 病院並み防御も


肺炎、食中毒…高齢者に脅威

 入り口に「感染源STOP!!」の文字。(東京都北区の特別養護老人ホーム「みずべの苑」。) 東京都町田市の病院で発生したインフルエンザの集団感染により死亡した3人は、いずれも高齢者だった。インフルエンザ、ノロウイルス、肺炎など、様々な感染症が流行しやすいこの季節は、高齢者施設にとっても細心の注意と防御が必要となる。感染症対策に取り組む現場の工夫と課題を取材した。

3年前の教訓

 東京都北区の特別養護老人ホーム「みずべの苑(その)」。玄関を入ると真っ先に目に入るのが「感染源STOP!!」と書かれたプレートだ。同様の掲示は施設内の至る所にあり、外来者は消毒液で手を殺菌しなければならない。この感染症への警戒ぶりには、3年前の苦い経験が関係している。

 正月に一時帰宅した入所者の一人が、ホームに戻ったその日に嘔吐(おうと)した。川崎千鶴子施設長の脳裏に「ノロウイルスでは」との疑念が一瞬浮かんだが、週末でもあり、様子を見ることにした。

 月曜日を迎えると、事態は急速に悪化していた。感染者はその時点で7人。「感染をワンフロアだけで食い止めよう」という懸命の努力もむなしく、最終的に入所者21人、職員13人へと広がった。

 「稼働できる人数が減り、職員は疲弊していった。マスクなどの物品も足りなくなっていった。いつ終息するのか、先が見えない。恐怖でした」と、川崎施設長は振り返る。

 ノロウイルスは胃腸炎を引き起こすウイルスで、通常は軽症で終わることが多い。しかし、体力の衰えた高齢者が感染すると、死に至る危険性もある。幸いにして、みずべの苑の集団感染は死亡者を出さずに終息し、大きな教訓を残した。感染を「最初の1人から広げない」ということだ。

 職員がウイルスを運ぶのを防ぐため、嘔吐物の処理など感染者の介護は「第一発見者」だけが行い、それを2人の職員がサポートする3人体制をつくった。3人1組での訓練を、全職員が見る前で行い、問題点を指摘し合った。

 必要な物を取りに走ることで感染を広げないために、防護用のガウンや手袋、ビニール袋などをひとまとめにして用意。職員控室では、お菓子を素手で食べることを禁止した。川崎施設長が言う。

 「集団感染は、普通の対策では防げない。常に危機感を維持することが必要だ」

開設時から徹底

 開設時から感染症対策に力を注いでいる新しい施設もある。埼玉県ふじみ野市の老人保健施設「イムスケアふじみの」は、2006年10月の開業以来、一貫して感染症予防策を行い、経験を積み上げてきた。

 総合的なマニュアルに加え、キッチン、風呂、職員の控室など、場所ごとに作業マニュアルと詳細なチェックリストを作成。さらに、「感染委員」も作って、委員による抜き打ち検査を始めた。施設の至る所にアルコール消毒液も置いている。

 岩下美恵子看護主任は、「病院に比べ看護スタッフは少ないが、病院並みの感染症対策をしなければならないし、できると思う」と話す。

検証・訓練が必要

 ノロウイルス感染の発覚に備え、手袋やビニール袋などをひとまとめにしている(東京都北区の特別養護老人ホーム「みずべの苑」で) 冬季はノロウイルスだけでなく、インフルエンザや肺炎などの感染症が流行しやすい。ひとたび感染すると重篤化しやすい高齢者への対策には、厚生労働省も神経をとがらせ、05年には「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」を作成した。それに沿って各施設でも独自にマニュアルが作成されている。

 しかし、型通りのマニュアルだけで、危機に対処できるわけではない。たとえば予防には、「手袋の着用」「せっけんと流水による手洗い」「感染が予想されるときのマスク、ゴーグルの着用」「感染が予想されるときのプラスチックエプロンの使用」といった「標準予防策」の励行が基本とされる。だが、肝心なのは、それを徹底するための努力と工夫だ。

 厚労省のマニュアル作成に携わった東邦大学の辻明良教授も、「マニュアルを作るだけでは不十分。感染が起きたときに、それが機能するかどうかの検証や訓練を、各施設で行う必要がある」と指摘している。(2009年1月27日 読売新聞)

増える介護離職

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不況で再就職なく…共倒れ寸前


 家族の介護で仕事を続けられず、会社を辞めたり、転職を繰り返す人が増えています。「介護離職」は、親や配偶者の介護に直面する40、50代を中心に年間約15万人にのぼり、不況下で転職先が見つからず、介護費用の支払いすら困難になる人も少なくありません。(清水麻子)

 「このまま職が見つからなければ、共倒れになってしまう。こんな生活、いつまでもつでしょうか…」。小雨が降りしきる1月下旬。東京都板橋区のマンションで、畠山きみ代さん(53)=仮名=は深いため息をついた。

 畠山さんは、脳出血の後遺症で右半身が不自由な母(83)=要介護度5=と暮らしている。生活費と介護費を稼ぐため、昨年7月まで、建築資材会社の正社員として働いていたが、会社が介護に理解を示してくれず、離職。現在はハローワークで再就職先を探しているが、不況下で見つからず、貯金を切り崩す生活が続いている。

 働いていたころは、介護保険を支給限度額いっぱいまで使ってデイサービスやヘルパーを利用した。しかし、高齢で抵抗力が弱い母は体調が変わりやすく、ヘルパーらから度々帰宅を要請する連絡が携帯電話に入った。朝起きて具合が悪いときも、デイには行けない。かといって、緊急にヘルパーを雇う余裕はなかった。

 夫は若いころに亡くなり、対応するのは自分だけ。上司に事情を話して有給休暇を申請すると、上司は「仕事は?」と嫌な顔をした。しぶしぶ休みはくれたが、「介護があるならパートにならないか」と打診されたことも。「なぜ勤務を抜けることが許されるの?」という同僚の陰口も、漏れ聞こえてきた。

 
 年末、わらにもすがる思いで、新聞の折り込み広告で見つけたメーター検針員のパート募集に電話をしたら、「介護と育児を抱えている人はご遠慮ください」と断られた。

 母に介護が必要になったのは約10年前。その2年後には父も介護が必要になり、4年前に父が84歳で亡くなるまでは、2人の介護を担う生活。この10年で約10の会社を転々とした。有休を取るのは難しく、どの会社にも介護休業制度はあったが、一度も申請したことはない。

 畠山さんは疲れた表情で話した。「ちょくちょく休めない介護休業なんて、絵に描いたもち。それに有給休暇すら取りづらい状況で、介護休業を下さいなんて、言えっこない」

使われない休業制度


 総務省の就業構造基本調査によると、平成18年10月から19年9月までの1年間に、家族の介護や看護のために会社を辞めたり、転職した人は14万4800人。約10年で1.6倍に増えている。

 背景について、労働政策研究・研修機構の池田心豪(しんごう)研究員は「高齢人口の増加で、介護が必要な家族がいる労働者も増えた。介護を担っているのは多くの場合女性だが、妻を介護する夫や親を介護する独身の息子など、仕事を持つ男性が介護を担うケースも目立っている」と指摘する。

 さらに池田さんは「育児・介護休業法は、家族介護を担う労働者が介護休業を取得できると定めているが、介護休業は使われていないのが実情だ」という。

 厚生労働省の職業安定局雇用保険課によると、介護休業の取得者は増加傾向だが、平成19年度は全国で7100人程度。離転職した人とは、人数が2ケタ違う。

 池田さんらが18年度にまとめた報告書では、介護休業取得者の8割以上が「連続した休みは必要なかった」と答えており、介護休業より、むしろ半日から1日単位の有休を使って仕事と両立させている現状が浮き彫りになった。

 こうした実態を踏まえ、厚労省の労働政策審議会は昨年、「通院の付き添い時」などに1日単位で休める介護休暇制度(要介護者1人につき5日)の創設を提案。厚労省は法改正する意向だ。

 しかし、東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授は「法が現実に合うようになるのは一歩前進だが、運用するのは企業。介護に関する企業の理解が進まない限り、介護離職者は減らない」と指摘する。介護休業法は企業に、介護が必要な従業員に介護休業を取得させることを義務付けているが、罰則がないため、社内規定すらない企業もある。

 不況下で、従業員に介護休業を取らせることは不利益と考える企業は少なくない。ある一部上場企業の元人事担当者は「業績が悪化するなか、社員が介護休業を取れば、代替要員が必要になり、余分な給与が発生する。また休業から復帰したときの配置にも困る」と打ち明ける。

 しかし、佐藤教授は「介護休業を取得する社員が増えればコストがかかる、という論理は最大の誤解。休業中は企業に給与負担はない。社員が介護で離職する場合に比べ、休業を取ったり、短時間で勤務し続ける方が、企業は新規採用や育成のコストを節約できる」と強調する。

 
 「今後、少子高齢化が進み、一人っ子同士の夫婦が4人の親を介護しながら、仕事も続けるケースなどが増えていく。24時間すべてを仕事に使えない社員の方が一般化するのだから、企業は介護が必要な社員が働き続けられる環境を整えないといけない」

【用語解説】介護休業

 育児・介護休業法では、労働者は、介護を必要とする家族1人につき93日を限度に休業が取れると定めている。介護の状態が変わるごとに、複数回の取得が可能。93日の範囲内で勤務時間の短縮やフレックス勤務なども認められる。休業中は雇用保険から、賃金の4割が支給される。事業主は、労働者の介護休業の申請を拒むことができない。

天の恵みですね

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インドネシア人介護福祉士候補者が着任 全国51カ所で


 日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)により来日したインドネシア人の介護福祉士候補者101人が29日、全国51カ所の施設で働き始めた。今後3年間、補助的な業務をしながら、正式な就労の条件となる国家試験合格に向けて勉強する。

 横浜市保土ケ谷区の特別養護老人ホーム「さわやか苑」に着任したのは、エマ・ユリアナさん(23)とチトラ・バレンティンさん(21)。午前10時からあった「入職式」で、大矢清理事長から辞令の交付を受けた。

 2人は職員や利用者を前に「今日からお世話になります」「日本語がまだ上手ではありません。間違えたらおっしゃってください」などと日本語で自己紹介。歓迎の花束を贈られた。

 施設側はイスラム教徒である2人のために礼拝スペースをつくったり、日本で20年以上働くインドネシア人女性を相談役に置いたりと準備してきた。大矢理事長は「3年間で試験に合格し、末永く働いてもらいたい」と話した。
(朝日新聞)

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 自宅で介護を受けることが難しいお年寄りが暮らす特別養護老人ホームへの入所待機者が少なくとも全国で三十八万二千人に上っていることが二十六日、共同通信の調査で分かった。要介護認定者に占める割合は8%。

 全国で特養ホームへの入所者は現在、約四十万人。待機者は入所者に近い数がいることになり、国が社会保障費抑制策を続けてきた結果、需要の高まりに施設整備が追いついていない現状が裏付けられた格好だ。

 今後、市町村が策定する二〇〇九年度から三年間の介護保険事業計画で、待機者数に応じた特養増設などを求める声が強まりそうだ。

 調査は今月、都道府県などに対して実施。一人で複数の施設に申し込んだ分も待機者数に含めている徳島を除く四十六都道府県分(岡山、山口、宮崎、鹿児島は県庁所在地のみ、京都は京都市除く)を集計した。要介護度の重い人だけを待機者に数えるところもあるため、待機者はさらに多いとみられる。

 特養は、介護型療養病床や老人保健施設と同じ介護施設の一つ。入所期限がない“ついのすみか”と位置付けられており、二十四時間ケアが受けられる上、一般的に他の施設より費用が安いため、入所希望者が多い。このため、待機者には今後削減される療養病床やリハビリ目的の老健施設などから特養に移りたい人も含んでいる。

 北海道の入所待機者は二万三千二百七十四人で、うち自宅待機者は千六百二十七人。待機者に数える基準が自治体で異なるため、比較は難しいが、東京、広島に次いで全国三番目の多さとなっている。要介護認定者に占める割合は、広島が21%、三重が20%、山梨が19%などと高い。

 待機者のうち自宅待機者は三十六都道県で把握しており、計約十二万三千人。

 厚生労働省が実施した〇六年の調査では、特養の入所申し込みは三十八万五千人だったが、一人で複数申し込んでいる分を含んでいた。(北海道新聞)

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グループホームでも課題に


 認知症グループホームは、入居者が職員といっしょに家事をするなど、家庭的な雰囲気の施設。認知症でも、要介護度が比較的軽く、動き回れる人に適しているとされます。平成12年の介護保険スタート以降に急増したため、看取り経験のないホームが多い一方、早くから取り組んでいる所もあります。利用者の入居期間が長くなるにつれて看取りが課題になっています。

 群馬県で認知症グループホームなどを運営する「ケアホーム家族の家」は、介護保険が始まる前から、何人もの認知症高齢者を看取ってきた。渡辺高行代表は「最初から看取りをしようと考えていたわけではなく、初期に入られた方に、がんが見つかったのです」と振り返る。

 平成9年4月に入居した70代の男性は脳血管性の認知症のため暴力的になり、入居前にいた病院では看護師にかみつくなどした。ホームに来たときはパジャマ姿で、伸びきったひげ。常に介助が必要な状態だった。翌日から髪を整え、着替えて食事をしてもらったところ、すぐに表情が穏やかになった。

 しかし、貧血がひどく、便は真っ黒で、下血している様子。検査の結果、胃にがんが見つかり、余命1年と宣告された。男性の家族は、暮らしぶりの変化を見てホームを信頼したのか、「手術をしないで、ここで看取ってほしい」と希望した。医師も「職員に覚悟があれば」との条件で協力を約束してくれ、ホームで看取ることになった。

 男性は輸血が必要だったものの、痛みを訴えることもなく、翌年6月に亡くなる直前まで、普通の生活を続けた。体内にチューブで栄養を投与する経管栄養は用いずに口から食べ、亡くなる1週間前には動物園に出かけた。最後は大量吐血し、駆けつけた家族が見守るなか、息を引き取った。

 認知症ケアの専門施設のため、末期がんばかりでなく、アルツハイマー型認知症で、数年かかって全身が衰えて亡くなる事例もある。

 渡辺代表は「ターミナルを1〜2カ月の短期間ではなく、生活そのものと考えています。入居のときから、息を引き取るまで、どのように生きていくか。本人の意志は、ふだんの会話の中で、死生観をそれとなく聞いて記録に残します。ご家族には私たちの理念を説明し、どのような医療を入れるか、話し合います」とする。

 職員は、日ごろから家族とコミュニケーションを図り、信頼関係を築いていく。

 グループホームに看護職員の配置義務はないが、家族の家には看護師がいるため、希望すれば経管栄養もできる。ホームでできる医療行為を説明し、病院や自宅のほかに「ここで看取ることもできる」と選択肢を提示する。

 医療設備の不十分なホームに不安を抱く家族もいるが、希望する場合は看取り同意書を作成する。内容は、緊急時に入院治療をするか、延命治療をするか、終末期に経管栄養を行うか−などの取り決め。家族の気持ちは揺れ動くため、いつでも変更可能で、最期が近づくと最終確認をする。こうして家族の信頼を得ることは、看取りに取り組む職員の支えになるという。

入居者の重度化で行き場は…


 認知症グループホームは、動き回れる高齢者に適しているとされ、身体介護が必要になれば、特別養護老人ホームなどに移るとの考え方もある。介護報酬は、要介護度の軽い人でも手厚いが、重度化してもほとんど同じ。一方、重度化で吸引などの医療ニーズが生じても、「介護職に医療行為ができない」「訪問看護の利用に制限がある」などの課題が指摘されている。

 全国認知症グループホーム協会が20年1月に実施した調査では、前年1年間に看取り経験のあるホームは約2割にとどまった。

 しかし、住み慣れたホームでの看取りを望む本人や家族は多く、制度が整わない中でも要望に応えてきた所もある。行き先がないまま、入居者の高齢化・重度化が進めば、ホームで看取るケースが増えるとみられる。

 高橋誠一・東北福祉大教授は「グループホームには質のばらつきがあり、どこでも看取りができるわけではない。特養を併設する所は、身体介助が必要になると特養に移す所が多い。特性をいかせないと考えるからだ。一方、単独の所では看取る割合が高い。なじんだ生活の継続を支えるとの考え方に基づけば、ホームで看取る選択肢もあるべきだ」と指摘。「がんの終末期は短いが、認知症は3〜4年と長く、普通の生活を続ける方もいる。入居時点で終末期を想定し、事あるごとに本人や家族の意思を確認する必要がある」と話している。

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