|
在宅介護を受ける65歳以上の高齢者が家族に殺害される「介護殺人」で、08年に起きた事件の少なくとも約半数が介護保険制度を利用しながら防げなかったことが、毎日新聞の調べで分かった。介護保険では介護される人(要介護者)の状態を判定し、サービスを自己負担1割で提供しているが、悲劇に歯止めをかけられない実態が浮かんだ。 毎日新聞が06〜08年の3年間で報道した介護殺人・無理心中(未遂を除く)は計97件で、年間30件を超えるペースで起きている。介護保険制度が始まる直前の99年は21件で、約10件多くなっている。 08年の事件は32件だったが、このうち少なくとも15件が行政に自ら要介護認定を申請、うち13件がヘルパー派遣やデイサービスを利用し、介護専門職が家族にかかわっていた。2月に茨城県で77歳妻が起こした嘱託殺人事件では、週6日ヘルパーが家を訪ね、寝たきりの夫(77)を介護していたが、深夜のおむつ交換や食事を担ってきた妻がひざを痛めた際、夫に「殺してくれ」と懇願され、突発的な犯行に及んでいる。 3年間の合計で加害者側の内訳をみると、約7割(70件)は男性。核家族化などで男性介護者が急増していることが背景にある。【毎日新聞・有田浩子、遠藤和行】
|
高齢者福祉
[ リスト | 詳細 ]
|
介護福祉士の資格を持ちながら、福祉・介護分野で働いていない「潜在介護福祉士」に関する初の本格的な調査がまとまった。財団法人・社会福祉振興・試験センターの調査で、回答者の2割が該当した。他分野で働く人の離職理由は「給与などの悪さ」がトップだった。低賃金で転職した事情がうかがえたが、半数が介護職場へ復帰したい意向だった。 調査は福祉・介護分野での人材確保に役立てるため昨年9〜10月に実施。介護福祉士の有資格者約64万人のうち、同意した約25万人に調査票を送付、15万2564人(約24%)から有効回答を得た。 内訳は、福祉・介護分野に就労約79%▽他分野に就労約6%▽非就労約15%。潜在有資格者は約21%(3万2497人)を占めた。 他分野に就労する人のうち、福祉・介護分野の就労経験者(7220人)に、離職理由(複数回答)を聞くと「給与等の労働条件が悪い」が最も多く約32%。「仕事の内容がきつい」約25%、「体調を崩した」約20%と続き、「やりがいがない」は約4%にとどまった。福祉・介護分野の仕事に「ぜひ戻りたい」が約7%、「条件があえば」は約44%で、半数以上が復帰したい意向で、「戻りたくない」は約19%だった。 淑徳大の結城康博准教授(社会保障論)は「潜在介護福祉士の多くが、賃金が上がれば介護職場に戻るだろうということが調査で分かる。国や自治体は介護未経験の非正規労働者らを介護職場へ向けようとするが、それより潜在介護福祉士を呼び戻す方が先だ」と話した。【毎日新聞・佐藤浩】
|
|
「引っ越したら要介護度が軽くなった」。要介護認定は、市町村によってばらつきがあると指摘されてきました。その一因を、厚生労働省は「認定調査員の判断のばらつき」にあるとみて、4月からの新たな要介護認定では、認定調査員の判断基準を明確化しました。認定方法の見直しで、地域ごとのばらつきは減ると期待される一方、要介護度が大きく変わる人が出てくる可能性も指摘されています。 「2年ほど前に母が川崎市で認定を受けたときは要介護3でしたが、昨年、横浜市で受けると要介護2。症状は悪化の一途なのに、軽く判定されて戸惑いました」。こう話すのは、横浜市の会社員、山崎正さん(44)=仮名=だ。 山崎さんの母、優子さん(66)=仮名=はかつて川崎市で1人暮らしをしていた。パーキンソン病で、2年余り前からバランスを崩すと姿勢を立て直すのが難しくなり、転びやすくなった。そのため、平成18年11月に介護保険を申請したところ、要介護3と認定された。その後も独居を続けていたが、自宅で転んだまま8時間も動けなかったことがあり、正さんは同居を決意した。 19年12月に同居した直後、優子さんは外出時に階段で転倒。顔面から転げ落ちて、ほおを骨折する大けがをした。退院後は訪問介護と通所リハビリを利用していたが、症状は悪化の一途をたどった。トイレに行こうとして動作が固まったり、転んで仏壇に突っ込み、灰だらけになったり。正さんは「勝手に動いては転ぶので、目が離せなくなった」と話す。 ところが昨年10月、横浜市の正さん宅に移って最初の要介護認定を受けると、要介護2。そのころには薬を飲み忘れたり、急に泣きじゃくるなど感情が不安定な面も顕著に。優子さんは「家族に苦労をかけたくないので施設の世話になりたい」と言い、ショートステイ(短期入所)を利用して、複数の施設を転々としている。 要介護3なら介護保険サービスを月約27万円まで自己負担1割で利用できるが、要介護2だと約19万円に減る。認定に納得できない正さんは同年11月、要介護度の区分変更を申請したものの、「状態の変更が認められない」と却下された。「母の症状は明らかに悪化しているのに、要介護度は軽くなっている。地域によって認定にばらつきがあるのではないか」と疑問を抱く。 要介護度に違いが出る背景には、調査項目ごとの評価方法が、認定調査員によってまちまちだったという事情があるようだ。 「『上衣(じょうい)の着脱』の項目の判定では、季節や気候に合わない着衣を着るため、衣服を用意して手渡されている場合でも、介助なしで行っていたら『自立(介助なし)』を選び、詳細を特記事項に記してください」 ある自治体が認定調査員を対象に開いた説明会で、職員がこう説明した。すると、会場にどよめきが起きた。参加者のひとりは「一部介助にチェックすると思っていた。自立になるなんて、思いもしなかった」と打ち明ける。 こうした判断のばらつきをなくすため、厚労省は調査員向けの新テキストで、調査項目ごとに「能力」「介助の方法」「障害や現象(行動)の有無」の評価軸を示した。「上衣の着脱」は「介助の方法」を評価する項目だ。また、項目ごとに間違いやすい事例や特記事項の具体例なども記載した。 地域によるばらつきが減るとみられる一方、認定にかかわる人たちの間では「全体的に軽度化を促す気がする」との懸念もある。これに対し、厚労省老人保健課は「軽度化されるケースもあるかもしれないが、人によって重度化されるケースもあり、結果として大きな差は生じないと考えている」と説明する。 NPO法人「神奈川県介護支援専門員協会」の松川竜也理事は「例えば『上衣の着脱』では、調査員が特記事項に分かりやすく書かなければ、(ひとりで着替えができない実態を)介護認定審査会で見落とされかねない。調査員は『着脱はできるが、自分で衣服を選べず、季節に合わない服装になる』などと実態が分かるように、これまで以上に詳しく記述すべきだ」とする。 龍谷大学の池田省三教授は「介護保険のサービスは要介護度に応じて利用でき、費用負担の大部分を全国から徴収された税金と介護保険料が占めている。要介護認定で、地域によって判定基準の解釈のばらつきがあるのは問題だ。介護認定審査会の委員の判断基準も統一すべきだ」と指摘する。その上で「要介護度の判定が大きく変わる人がたくさん出てくるのは望ましくない。対象者が適切なサービスを受けられているかを、ケアマネジャーなどがチェックする必要がある」と注意を促している。(産経新聞)
|






