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https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/012500059/
人為的な気候変動「ある」が急増、米意識調査
 日経/ナショナルジオグラフィック日本版サイト 2019.01.28


2018年10月、ハリケーン・マイケルに襲われた米フロリダ州メキシコビーチでは、住宅や商店が壊滅状態となった。このような災害によって、気候変動に対する意識が変わりつつある。(PHOTOGRAPH BY MARK WALLHEISER, GETTY IMAGES)

 人間の活動による地球温暖化について、米国人を対象に2つの独立した意識調査が行われた。1つはリスクの認識について、もう1つは取りうる対応策についての調査だ。結果は、温暖化による危険の高まりを何十年も訴えてきた科学者や活動家たちが目指す方向に、米国人の意識が向かいつつあることを示すものだった。

 気候変動が「起きているか」という質問に、73%の米国人が「はい」と答えるようになっており、2015年の調査に比べて10ポイント増えている(ただし、7%は温暖化の事実そのものをまったく受け入れていない。これは小さいが、無視できない影響力を持つ数だ)。片方の調査では、いわゆる「炭素税」を支持すると答えた人が半数近くにものぼった。炭素税とは、燃やすと二酸化炭素を排出する燃料に対し、炭素量に応じて課す税金のことだ。(参考記事:「豪、炭素税など新エネルギー法を施行」)

 こうした変化は、政治家の意見を見聞きした結果というよりも、最近の大規模な山火事や、甚大な被害をもたらしたハリケーンをはじめ、全米各地で気候の変化がみられるようになったことが大きく影響しているようだ。両調査が行われた2018年の後半は、カリフォルニア州の山火事が大きく報道されていた。また、温室効果ガス排出の削減が遅れるといかにリスクが大きいかを示した新たな報告書を、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表してから間もない時期でもあった。(参考記事:「地球温暖化の影響は想定より深刻、IPCCが警告」)

 米イェール大学と米ジョージ・メイソン大学の研究者は、ここ10年にわたって、合同で「気候変動に対する米国人の意識」を調査している。最新の調査結果によると、地球の気候は温暖化しており、その主な原因は人間の活動であるという科学的事実を受け入れる人の割合が大きく増加している。2008年にこの調査が始まって以来初めて、(大半の研究の結論と同じく)地球温暖化は主に人間が引き起こしていると回答した人が60%を超え、温暖化は自然現象だと回答した人が25%を下回った。(参考記事:「夏の異常気象、2100年までに1.5倍に? 最新研究」)

 この調査は、12月の第1週前後に行われた。そして、気候変動の問題に、より直接的な関心を寄せる米国人が増えていることもわかった。

「現在、72%の米国人は、地球温暖化を個人的に重要な問題だと考えています。この割合は記録的な高さで、2018年3月から9ポイント上昇しています」。イェール大学で「気候変動コミュニケーション」プログラムの責任者を務めるアンソニー・ライゼロウィッツ氏はそう述べる。

 同調査は、事実の認識とともに、温暖化についてどう感じているかも聞いている。要約によると、「『うんざりする』(53%)や『どうしようもない』(51%)という感情にあてはまると回答した人がそれぞれ過半数にのぼった。『何とかなる』(48%)も半数近くあった」「『もう手遅れだ』(14%)と考えている米国人は少ししかいなかった」


2018年11月、米国カリフォルニアで州史上最悪の山火事が発生し、多数の犠牲者を出した。同州では、かつてないペースで大規模な山火事が起きている。

 もう1つの調査は「人々は気候変動の対策にかかる費用を払おうとするか」というものだ。米シカゴ大学エネルギー政策研究所とシカゴを本拠地とするAP通信・NORC公共問題調査センターが1200人を対象に11月中旬に実施した。こちらでも先の調査と同じく、気候変動が人間によって引き起こされているという科学的事実を受け入れる人が増えているという結果が出た。人為的な温暖化が起きている確信が5年前よりも強まったと答えた人々のうち、76%は考え方を改めた一番のきっかけは極端な異常気象だと回答している。(参考記事:「氷の消失ペースが10年で4倍に、グリーンランド」)

 同調査は、解決策のほうに注目した内容となっているので、米国人が温暖化対策としてどのような方法を好ましいと思っているのかをうかがい知ることができる。たとえば、44%の米国人が炭素税の導入を支持すると回答し、不支持は29%だった。

 ところが、炭素税の用途をあわせて質問すると、意外かつ重要なことがわかった。調査の企画責任者であるシカゴ大学のマイケル・グリーンストーン氏はそう語る。

炭素税の使い道によって支持率に大きな差

 税収を森林や湿地などの環境資源の回復に使うとした場合、炭素税の支持率はなんと67%にまで増える。再生可能エネルギーの研究開発のための財源にするとした場合の支持率も60%近くあり、イェール大学とジョージ・メイソン大学による過去の調査と同じ傾向を示している。(参考記事:「大気で作るガソリンを開発、実用化へ道筋」)

 ワシントンの政治家がもっとも有望視してきた選択肢は、炭素税をすべて家計に還元するというものだ。しかし、この案が提案された場合の炭素税の支持率は49%で、炭素税の賛否だけを問われた場合の支持率44%と比べてもわずかな差しかない。

 炭素税を還付金に使う案は、元NASAの気候学者ジェームズ・ハンセン氏や、レーガン政権で国務長官を務めたジョージ・P・シュルツ氏、同財務長官を務めたジェームズ・A・ベイカー3世氏など、10年以上にわたってさまざまな人が提唱してきた。

 あるインタビューの中でグリーンストーン氏は、還付金案の論理は昔から変わらずシンプルだと述べている。大きな政府を批判する人々に対しては税収が転用されないことを保証でき、低収入の家計にとってはエネルギー費の上昇分を相殺できるというものだ。

 今回の調査では、炭素税による収入を環境の回復に使うという案は、驚くほど人気が高かった。グリーンストーン氏は、この世論を活用して、政治的に停滞している現状を打破する新たなアプローチが考えられるのではないかとも述べる。「これはすばらしいことです。この調査から、炭素税を実現する現実的な道のりが見えてくるのではないかと思っています」

世論が高まるだけでは対策は進まない?

 しかし、実際にどうなるかはわからない。現在の政治情勢は、気候政策についての議論など到底考えられないほど停滞している。

 環境政策に注目している学者の中には、調査結果は喜ばしいものだとしつつも、世論の政治的影響力に期待しすぎだと見る者もいる。

 米ブラウン大学で環境学と社会学の客員教授を務めるロバート・ブルール氏は、環境政策をめぐる攻防について何十年も研究してきた。同氏は、あるインタビューの中で、「環境団体や資金提供者は、政治に変化をもたらす方法として世論の形成を重視しすぎてきた」と述べている。たとえ国中が強力に団結していたとしても、議会の根本的、構造的な問題によって変化が阻まれる場合があるという。その一例が、わずかな進展すら見せていない銃規制だ。(参考記事:「ユダヤ礼拝所乱射事件、憎悪の犠牲者を悼む街 写真18点」)

 地球温暖化のような巨大な問題が相手となれば、さらに状況は悪くなる。大気中の二酸化炭素濃度の上昇を止めるには、今世紀中に全世界で排出量をゼロにする必要がある。しかも、90億人を超える人がそろって不自由のない生活を求める中で実現しなければならない。

 ブルール氏は、「気候変動と社会の怠惰」についての論文を米オレゴン大学のカリ・ノルガード氏と共同で執筆した。その中で、欧州と米国での気候に対する懸念は、一部の人が述べているほど違うわけではないとしている。よく環境に対する意識が高いと称賛される欧州でも、現状の温室効果ガス削減量は、気候変動に関するパリ協定で約束した量からはほど遠いという。

 問題はさらに根深い。新たな脅威に対処するには、これまで長く社会的、個人的、経済的、あるいは政治的に当たり前とされてきたことを再検討するしかない、というのがブルール氏らの論文の主張だ。行動を変えるのは難しく、個人の選択の域にとどまらず、システム全体の再考も必要かもしれない。そうしなければどうなるのか。「人々は、いとも簡単に二重行動に出るでしょう」。大胆な法整備を求め、政治にばかり要求するように。(参考記事:「肉を半分に減らさないと地球に「破滅的被害」」)

 ライゼロウィッツ氏と合同で今回の意識調査を行ったジョージ・メイソン大学の研究員エドワード・メイバック氏は、もう少し明るい希望をもっている。

「気候変動への社会的関心が高まった新しい時代に突入したのではないかと考えています。今後、関心は低下せずに高まっていくはずです。10年前、いや、5年前でさえも、大半の米国人は気候変動という現実を受け入れていました。しかし、当時はそれを遠くにある脅威だと考えていたのです。それが今、変わりつつあるということでしょう」

  文=ANDREW REVKIN/訳=鈴木和博




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平山 滋
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