http://jp.techcrunch.com/2017/01/26/20170125good-luck-silencing-science/
科学を黙らせる努力、やりたいようにやってみれば!
TechCrunch Japan 2017年1月26日 by Devin Coldewey
テクノロジーとインターネットは、ビジネスやコミュニケーションと並んで科学にも力を与えてきた。ほかのものと同様にテクノロジーは、科学の努力も、その活動と到達の範囲をグローバルにし、妨害に対して強くし、数十億の人びとがアクセスできるものにした。それは、権力の承諾の有無とは無関係に。そのことは、現在の政権の、科学の研究に口輪をはめようとする努力が失敗する、理由のひとつにすぎない。
オンラインのコミュニケーションを改ざんされたり、即座に閉鎖された国の省庁のリストが、日に日に成長している。環境保護局、国立公園庁、エネルギー省、農務省、運輸省、そして内務省、などなど。その雑でぶきっちょなやり方を見ると、これらの省庁がもっぱら気候変動に関して情報活動を抑圧されたことが明らかだ。うまくいくと、いいけどね!
しかしまず、早とちりを防いでおきたい。今はしょせん、政権移行期だ。模様替えでちょっとした失敗が起きるのは、当然ではないか? ホワイトハウスのWebサイトのスペイン語バージョンが完全になくなったのも、入れ替えに手間取っているだけかもしれない。
しかし、現政権のエネルギー計画に、“solar”や“wind”、“renewable”の言葉がないことは、たまたまではない。
また、Obamaの気候変動政策に代わるものや、まして反証すらもないことは、偶然ではない。
国立公園庁が、気候変動に関するいくつかのツイートのあとで叱責されたのも、
疾病管理センターが気候変動に関する会議を突然キャンセルしたことも、
閣僚指名者たちが何度も繰り返して、気候変動の存在やその危急性を認めることを拒否したのも、
硬軟多様なコミュニケーションの制限を受け取った省庁の多くに、気候変動に大きく影響する、あるいは影響される、担当行政職掌があることも、
環境保護局が気候変動のページを閉鎖され、削除を命令され、そして今では同局の研究を公表前に政府が検査するとなったのも、偶然ではない。
これは移行作業のちょっとしたミスでも、正々堂々とした主張でも、特定の考え方の誇大宣伝でもない。ほかのことは何を語ってもよいが、気候変動はだめ。それは、政府による、政府が危険と見なす話題に関連する情報の、意図的な抑圧だ。
もっと、ふさわしい言葉がある。今日(こんにち)、その言葉は誤用されることが多いが、この場合は正しい使い方だ。それは、検閲である。
検閲志望者にとって不運なことに、そんなものが有効だったのは遠い昔だ。どんなに強力な情報抑止努力よりもStreisand effectの方が強いことは、何年も前から証明されている。でも今回のは、そんなレベルではない。要するに、科学を黙らせることは、誰にもできないのだ。
関連記事
Hola Trump ¿Dónde está la versión en español en la web de la Casa Blanca?
ホワイトハウスの公式Webサイトから気候変動への言及がいっさい消え去る
ホワイトハウスのWebサイトからLGBTの人権ページが消えた
とくに気候変動は、おとなしく寝かせておくことが難しい厄介者だ。ここ数十年にわたって、世界中の何千×n人もの科学者たちによる研究が、人為起源の気候変動(あるいは、いわゆる“地球温暖化”)という理論(重力や進化が理論だ、という意味での理論)に到達し、それを日々強化している。
それは、どこかの小さな研究室のひとにぎりのインテリたちではない。その膨大な数の科学者たちを、ほかの研究課題へ再配置したり、彼らの膨大な量の論文を小さな学術誌に封じ込めることは、誰にもできない。結果はすでに目の前にある。産業界はすでに、対応努力をしている。かつては議論があった場所の突然の沈黙は、これらの省庁が言うかもしれない文句などよりもずっと大声で語るだろう。それは、誰かに月について語るな、と言うのと同じで、そんなことをやってみようと思うだけでも、十分に異様だ。
しかしさらに加えて、今の科学は何にも増してグローバルであり、そしてテクノロジーに強い。科学のグローバルなコミュニティとテクノロジーおよびインターネットは、今や切っても切り離せない親密な仲だ。どの研究所にも、すべての実験を詳述している小さなブログがあり、そんなブログは何千もある。大学のニュースサービスは教授たちのインタビューを載せ、公刊されている学術誌は新しい研究を誰もがレビューできる形で公開し、Natureのような巨大でグローバルな出版物は、話題を求めて研究者たちの世界を掘りあさり、おもしろい研究結果を載せる。TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアも、ほとんど無限にある研究や意見の公式/非公式なアウトレットだ。その一つを切り殺せば、そこに新たな二つが生まれる。
要するに、彼らがやっていることは無駄である。もちろん、今日の人類が直面している最重要な問題への言及は、どの政権にとっても不快にきまっている。それらの言及は、過去の政策を批判し、新しい政策を求めているからだ。たぶん、現政権がやっている気候変動の無視は、ほかでもあったし、現にほかでもやっているだろう。それはとても不幸なことだけれども、でも、言及を削除するやり方は、単なる、途方もないアホだ。
今ではたくさんの気象衛星が地球のまわりの大気を見張り、そのデータを各国に報告している。海洋では多くのブイや船が水温等を調べ、結果を世界中のいろんな機関に共有している。専門の研究機関が世界各地にあって、研究者たちが毎日のようにたくさんのペーパーを発表している。今ぼくらがこうしているあいだにも、海水面の上昇が続き、国全体が水没しつつある。それを黙らせるなんて!
科学者も、自己の情熱というものを持つ個人である。ロボットの改良でも、疾病の治療法の発見でも、そしてこの惑星の気候というミステリーの解明でも。彼らは書き、共有し、友だちと話し合う。彼らは、真実を探求する者たちのグローバルなコミュニティだ。友だちの誰かがひどい目に遭ったら、黙っていないだろう。そのひどい目が、どんなに幼稚で無意味な方法だったとしても。彼らは、自分たちが発見したものに関する知識を、広める方法を見つける。ぼくたちは、彼らを助ける。そして、そう、彼らもワシントンでデモ行進をする。
ところで、2016年が記録の上では史上最温暖の年だった、と言っているツイートはすべて消されるかもしれないから、ここでも言っておこう。2016年は記録上最温暖の年でした。〔 NASAのこのページは日本時間 1/26 11:54 現在、消されていない。〕
http://gqjapan.jp/culture/column/20170125/post-truth-era
Post-Truth Era
ウソがまかり通る時代がやってきた
GQ JAPAN 2017-01-30 Author: 堤伸輔 Tag: コラム 、 国際政治 、 アメリカ 、 政治家
何かを決めるとき、事実かどうかはさして重要な問題ではなくなった──。国家レベルの意思決定で予想外の事態が頻発した2016年。その背景にあるのは?
必然的に教科書の書き直しを求められる─進歩や変化の激しい時代に起こる現象だが、2016年に最もその必要に迫られたのが「メディア・リテラシー」の分野だろう。
ここ数年、社会人向けの大学院で、メディア・リテラシーを講じてきた。相も変わらず「新聞の読み方」を教えることが中心となっている大学の例なども耳にしてきたので、それではもはや何の役にも立たないと論じる。たとえば、アラブの春以降の中東を見てほしい。エジプトで揺り戻しのようなクーデターが成立した際、首謀した軍の幹部は、その呼びかけをツイッターで行なった。かつてなら軍の命令系統を使って順次伝わったはずのゴーサインが、今では一気に末端の兵士にまで達するのだ。当然、メディアもそれを知り、報じる。しかし、電波や活字になる頃には、すでに世の中の多くの人の知るところとなっている。
「メディア(媒体)の中抜き」という、言語矛盾的現象が、世界中で露になりつつあった。そこへ決定的な一撃を加えたのが、2016年のキーワードというべきpost-truthの横行だ。具体例は枚挙に遑がない。イギリスのEU離脱をめぐる国民投票でも、この種のウソがはびこった。そして、候補者トランプと、その支持者である個人や組織が拡散させた数々のデマ。「ヒラリー・クリントン候補は梅毒だ。あるいはパーキンソン病だ」という“全米医師団体のアンケート結果”が日本の一部メディアでも伝えられたが、アメリカで拡散したこの情報の出元をたどってみると、すべてひとつのサイトに行き着いた。それは、誰でも自由にアンケート結果などを投稿できるサイト。もちろん事実確認などなされておらず、医師団体とやらも怪しげな存在だった。クリントン候補の健康不安説を煽ろうとした、選挙の終盤での出来事は、とうとう世界がpost-truth politicsの時代に入ったことを象徴していた。
真実に立脚しない言説のはびこる状況を表すpost-truthという言葉を最初に用いたのは、デイヴィッド・ロバーツという環境問題のブロガーだったとされる。地球温暖化対策の必要性が叫ばれ始めた1990年代以降、それにかかるコストを避けたいがゆえに異を唱える連中が使ったのが、「そもそも温暖化など起こっていない」という言説だった。今回、「温暖化は中国などがでっち上げたデマだ」というトランプ陣営の主張に、見事に受け継がれている。
オバマ大統領を(そして間接的にクリントン候補を)攻撃するために使われたのが、“birther”という運動だった。これはもともと英語にはない単語で、オバマはアメリカ生まれではない(つまり本来、大統領になる資格がない)と言い募る輩たちの合い言葉であり、彼ら自体を指す。オバマ候補が最初に出馬した2008年から言われていたが、当然ながらデマであり、一度は潰えた説だ。しかし今回また、トランプ陣営によって蘇ったのだ。やむをえずオバマ大統領は出生証明書のフルバージョンを公開した。この手の、いったん消えた明らかな「謀略説」の復活が、post-truth時代の特徴でもある。
“birther”を引っ込めざるを得なくなったトランプの言い分は、「最初に”birther”を言い出したのは(2008年に民主党候補の座を争った)ヒラリーだった。今回、私が(オバマのアメリカ出生を認めることで)それに終止符を打った」。物は言いよう、ウソも吐きよう、である。
Breitbart News Network というデマ情報総本山と呼ぶべきウェブサイトの元主宰者で、選挙戦中も側近としてこうした偽りの言説の先頭に立ってきたスティーブン・バノンなる男が、首席戦略官となってホワイトハウスに入る。大統領官邸から謀略論がバラ撒かれ、それに基づく政策が実行される恐れが現実のものとなりつつある。
問題は、真実なき言説がはびこっているのは、何もアメリカだけに限らないということ。世界中で(ロシアを見よ)、そして日本で、いまや旧来からあるメディアとネットメディアとを問わず、ウソとデマをまことしやかに唱えてやまない現象がある。メディア・リテラシー、すなわち情報の正しい読み方の教科書を全面改訂する必要が分かるはずだ。
大統領選をめぐっては、勝敗の予測が外れたことに大手メディアはショックを受け、世間からの批判もそこに集まる。しかし、より大きな問題は、再び「真実に依って立つ時代」を私たちは取り戻すことができるのかにある。(12月6日記)
堤 伸輔 1956年、熊本県生まれ。1980年、東京大学文学部を卒業し、新潮社に入社。『週刊新潮』編集部に所属し、作家・松本清張を担当、国内・海外の取材に数多く同行する。2004年から2009年まで『フォーサイト』編集長。その後、出版部編集委員として『ドナルド・キーン著作集』を担当。14年よりBS-TBSテレビ「週刊報道LIFE」などで国際問題のコメンテーターを務めている。
|
「EVを普及させるために自動車メーカーに必要なこと」をまとめたマッキンゼーの報告書が公開される - gigazine
電気自動車しか買えなくなる国ってどこ?エコ超大国オランダのエコ暮らしとは。
|